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発達相談は、何をするところか——四つの仕組みと、当日の流れ

最終更新:2026年9月7日
「発達相談に行ってみてください」——健診の会場や園でそう言われて、家に帰ってから検索されたのだと思います。
けれど調べてみると、「発達相談」という名前の窓口が、どこにも一つに定まっていないことに気づかれたはずです。保健センター、子ども家庭センター、発達支援センター、児童相談所、病院——出てくる名前がばらばらで、どれが「その発達相談」なのかが分からない。これは調べ方の問題ではありません。「発達相談」は、根拠になる法律の違う複数の仕組みに、あとから付いた通称だからです。
この記事では、その四つの仕組みを条文から分けたうえで、迷ったときの選び方・予約から当日までの流れ・その場で何をするのか・結果がどう返るのか・園や学校に伝わるのかまでを、確認できた一次資料の範囲で順に開いていきます。

「発達相談」という一つの窓口は、法律上ありません

先に結論から書きます。「発達相談」という名前の制度は、法律のどこにもありません。実際にあるのは、目的も根拠法も違う四つの仕組みで、そのどれもが結果として「子どもの発達について相談を受ける場」になっています。だから自治体によって呼び名が変わり、検索しても一つに収束しません。

どこか(呼ばれ方の例)根拠になる法律と、そこが引き受けること
市区町村の保健センター
こども家庭センター

保健相談所・健康センター・子ども家庭支援センター等
母子保健法 第9条の2・第10条児童福祉法 第10条・第10条の2
乳幼児健診を行い、育児に関する相談と保健指導を担当します。いちばん手前にある入口で、多くの場合ここから始まります。根拠=母子保健法第9条の2「市町村は……母子保健に関する相談に応じなければならない」
児童発達支援センター
子ども発達センター・療育センター等
児童福祉法 第43条
条文は「地域の障害児の健全な発達において中核的な役割を担う機関」と書いています。通所での発達支援を提供し、家族や他の事業者に対しても相談・専門的な助言を行うことが目的に含まれています。
児童相談所
児童相談センター・こども家庭センター(都道府県の)
児童福祉法 第12条
都道府県(および特別区・政令市等)が設置します。相談の種類に「障害相談」があり、東京都はその中身を「知的障害相談(愛の手帳の相談含む)、ことばの遅れ相談、肢体不自由相談、重症心身障害相談など」と説明しています。
医療機関
小児科・児童精神科・小児神経科
医療の枠組み
医学的な診断を行えるのは医師だけです。ほかの三つは、診断をする場ではありません。だから「相談に行ったのに診断名がつかなかった」は、多くの場合その場の役割どおりの結果です

四つのうち上の三つは、いずれも「診断がなくても使える」点で共通しています。そして四つとも、必要があればお互いにつなぎ合う前提で組まれています(次の節でその条文を見ます)。

名前が違うのは、自治体が独自に付けているからです

たとえば新宿区では、発達の相談の専門窓口が「子ども総合センター 児童発達支援センター」という名前で、区の案内は「言葉や生活面、友だちとのかかわり方等、お子さんの発達へのご不安、ご心配について、専門スタッフが電話にて相談を受けつけています」と書いています。同じ機能が、別の区では別の名前で置かれています。

探すときのコツは、名前で探さないこと。お住まいの市区町村のサイトで「発達」「健診」「子ども家庭」のどれかで引くか、母子健康手帳の後ろに載っている連絡先に電話するのが、いちばん早い道です。

※ 児童相談所は都道府県が設置する機関ですが、特別区や政令市など自ら設置している自治体もあります。お住まいの地域でどこが担当かは、自治体の案内でご確認ください。

迷ったときの選び方——「何を決めたいか」で分かれます

四つのどれに行くべきかは、いま決めたいことが何かで決まります。「うちの子はどれに当たるのか」で選ぶ必要はありません。当たるかどうかを調べるのが、そもそも相談の中身だからです。

いま決めたいことまず当たるところ
何が起きているのかを、まず誰かと一緒に見たい
健診で言われた/園で言われた/自分で気になっている
市区町村の保健センター・こども家庭センター
無料で、診断も紹介状も要りません。母子保健法第9条の2が「相談に応じなければならない」と定めている窓口です
通うところ(児童発達支援など)を考え始めた市区町村の障害児支援の窓口/児童発達支援センター
児童福祉法第43条は、センターを地域の中核と位置づけ、家族への相談・助言も役割に入れています(→ 児童発達支援 完全ガイド
ことば・聞こえのことを確かめたい耳鼻咽喉科/言語聴覚士のいる場
順番として聞こえの確認が先に来ます(→ ことばの相談はどこへ
診断名がつくのかを知りたい/薬や医学的な検査の相談をしたい小児科・児童精神科などの医療機関
診断は医師が行います。かかりつけの小児科から紹介してもらう道もあります
手帳のことを相談したい児童相談所
東京都は「障害相談」の中身に「知的障害相談(愛の手帳の相談含む)」を挙げています(→ 療育手帳
どこから始めればいいのか、それ自体が分からない市区町村の窓口へ。入口を間違えても戻されない仕組みが、法律に書かれています(下の枠)
つなぐのは、こちらではなく行政の側の義務です

児童福祉法 第10条は、市町村が相談に応じる業務について、こう定めています。

第2項——「市町村長は、前項第三号に掲げる業務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものについては、児童相談所の技術的援助及び助言を求めなければならない
第3項——「市町村長は、……医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を必要とする場合には、児童相談所の判定を求めなければならない

「求めることができる」ではなく「求めなければならない」と書かれています。手に負えない話が来たときに、市町村がそのまま抱えるのではなく上の機関に渡す——それが法律上の建て付けです。だから、最初の一本の電話をどこにかけるかで、道が閉じることはありません。

同じことが、逆向きにも書かれています。児童福祉法 第21条の11は、市町村が子育て支援事業について「保護者から求めがあつたときは、当該保護者の希望、その児童の養育の状況、当該児童に必要な支援の内容その他の事情を勘案し、当該保護者が最も適切な子育て支援事業の利用ができるよう、相談に応じ、必要な助言を行うものとする」と定め、さらに求めがあった場合には「あつせん又は調整」まで行うものとしています。「どこに行けばいいか教えてください」は、制度が想定している問いかけです。

※ 相談の入口はいくつあってもかまいません。保健センターと事業所の見学を同じ週に並行して進める、という進め方も一般的です。

健診を待たずに、自分から相談してよいのか——条文で確かめます

いちばん多いためらいが、これだと思います。「健診で何も言われていないのに、こちらから相談していいのか」。結論から書くと、相談の側に「健診で指摘されたこと」という条件は付いていません。条文を順に見ます。

母子保健法 第10条(保健指導)

条文

「市町村は、妊産婦若しくはその配偶者又は乳児若しくは幼児の保護者に対して、妊娠、出産又は育児に関し、必要な保健指導を行い、又は医師、歯科医師、助産師若しくは保健師について保健指導を受けることを勧奨しなければならない

主語は市町村、義務の形は「しなければならない」。そして対象は「乳児若しくは幼児の保護者」——健診を受けたかどうか、何かを指摘されたかどうかは、条文のどこにも書かれていません。幼児の保護者であること自体が、保健指導を受けられる根拠になっています。

母子保健法 第9条の2(相談及び支援)

条文

「市町村は、母性又は乳児若しくは幼児の健康の保持及び増進のため、母子保健に関する相談に応じなければならない」(第1項)

「市町村は、母性並びに乳児及び幼児の心身の状態に応じ、健康の保持及び増進に関する支援を必要とする者について、母性並びに乳児及び幼児に対する支援に関する計画の作成その他の内閣府令で定める支援を行うものとする」(第2項)

第1項は相談を受けること自体が市町村の義務だと書いています。第2項はさらに一歩進んで、支援が必要な人については計画を作るところまでを市町村の仕事にしています。

母子保健法 第12条と第13条——決まっている健診と、それ以外の健診

健診についても、じつは二段構えです。第12条が定める「満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児」「満3歳を超え満4歳に達しない幼児」への健康診査は市町村の義務で、こども家庭庁は地方交付税措置により全国で実施されていると説明しています。そして第13条は、「前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない」と定めています。

この第13条が、5歳児健診や2歳児歯科健診など自治体ごとに有無が違う健診の根拠です。こども家庭庁は、1か月児健診と5歳児健診については国庫補助を行っていると書いており、つまり第12条の二つ以外は、住んでいる場所によって受けられる健診が変わります(→ 5歳児健診とは)。

児童福祉法 第10条・第11条——福祉の側の入口

福祉の側にも同じ形の条文があります。児童福祉法 第10条第1項第3号は、市町村の業務として「児童及び妊産婦の福祉に関し、家庭その他からの相談に応ずること並びに必要な調査及び指導を行うこと」を挙げ、冒頭で「次に掲げる業務を行わなければならない」としています。都道府県については第11条が、「児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること」を業務としています。

児童相談所は「どなたからも受け付けています」

東京都児童相談センター・児童相談所の案内は、「原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けています」と書いています。そして相談の方法のページには、「相談は無料です。」「相談内容はすべて秘密を守ります。」と明記されています。

紹介状も、診断も、誰かの許可も、条件として書かれていません。

※ 相談の運用(受付時間・予約の要否・回数)は自治体ごとに違います。条文が保障しているのは「相談に応じること」までで、やり方までは決めていません。

予約から当日まで——電話でこれだけ聞いておくと、あとが早い

多くの窓口は、まず電話、そのあと来所という二段構えです。新宿区の児童発達支援センターの案内も、電話での相談を受け付けたうえで「来所での相談・サービス利用相談等のご案内」に進み、「来所での相談は予約制です」と書いています。東京都の児童相談所も「来所される場合は、あらかじめ予約していただくと、お待たせすることなく相談できます」としています。

  1. 電話をかける——母子健康手帳の連絡先、または自治体サイトの発達相談・子ども家庭の窓口へ。「発達のことで相談したい」の一言で通じます。診断名も、整理された説明も要りません
  2. その場で聞かれること——お子さんの年齢、気になっていること、これまでに相談したことがあるか、園に通っているか。うまく言えなくてかまいません(→ 発達相談で聞かれること
  3. 来所の日を決める——ここで「いちばん早い日はいつですか」を必ず聞いてください。数字で答えが返ります
  4. 事前の書類——問診票や同意書が郵送されることがあります。届いたら、当日までに書ける範囲で書きます
  5. 当日——受付、問診(面接)、お子さんの様子を見る時間、そのあと結果や今後の話。所要はおおむね1〜2時間の設定が多いですが、窓口によります
  6. 当日のあと——その場で全部が決まるとは限りません。職員間で持ち帰って検討し、後日あらためて連絡が来る形もよくあります

待ち時間について、確認できたことと、できなかったこと

「予約から何日で会えるか」の全国的な目安は、公的な資料の中に見つけられませんでした。自治体ごと、機関ごとに差が大きく、数字を一つ挙げると誤解を生みます。ここでは書きません。

ただし、待つことが起きているということ自体は、国の資料に前提として書かれています。こども家庭庁ほかが発出した5歳児健診のフォローアップ体制の通知は、都道府県が活用すべき事業として「発達障害専門医療機関初診待機解消事業」を名指しで挙げています。「初診待機」を解消するための事業が国に置かれている——待つのが自分の段取りの悪さではないことは、ここから分かります。

電話のときに、この三つだけ聞いておく
  • 「いちばん早い日はいつですか」——待つ長さが分かると、待つあいだの過ごし方が決まります
  • 「当日は何をしますか。何分くらいですか」——検査をするのかどうかも、ここで分かります
  • 「キャンセルが出たときに連絡をもらえますか」——空きが回ってくることがあります

加えて、待っているあいだも別の入口は使えます。医療機関の予約を取りながら市区町村の相談を受ける、事業所の見学に行く——並行して進めることに制限はありません。

※ 受付時間の例——新宿区の児童発達支援センターの電話相談は月〜金 8時30分〜18時00分、土 8時30分〜17時00分。東京都の児童相談所の来所相談は月〜金 午前9時〜午後5時。いずれも2026年9月7日に各公式ページで確認した内容です。

当日そこで何をするのか——問診・行動観察・発達検査

当日の中身は、機関によって濃さが違いますが、骨組みはほぼ共通しています。こども家庭庁が公開している「乳幼児健康診査事業実践ガイド」は、健診の場のプロセスを事前カンファレンス → 問診 → 計測・診察 → 個別の保健指導とフォローアップについての判断 → 事後カンファレンスおよび総合判定という順で示しています。発達相談の場も、これに近い形で進みます。

1. 問診(面接)——ここがいちばん長い

実践ガイドは、問診の目的を「親子の健康課題の明確化」と書き、「問診で(できるだけ直接対面して)十分に状況を把握し、健康課題を明確化することが必要である」としています。そのうえで、「このプロセスそのものが、保護者の気持ちに寄り添う支援の始まりでもある」とも書いています。つまり問診は、情報を取るための手続きではなく、それ自体が支援の一部として設計されています。

見られるのは子どもの発達だけではありません。実践ガイドは「発育・発達状況に加えて、生活習慣や親子関係、家族の健康状態、保護者の生活状況などを含めて多角的にアセスメントすることが重要である」としています。家のことを聞かれるのは、詮索ではなく手順に含まれている項目です。

2. 行動観察——遊んでいる場面を見ています

お子さんに遊んでもらいながら、職員がその様子を見る時間があります。実践ガイドは、計測や診察の場面について「子どもの全身の観察ができる機会であり、他の場面では見ることができない子どもの反応やそれに対する保護者の対処も把握できる」と説明しています。また、健診後のカンファレンスで検討する内容として「集団の場に導入して子どもの遊びと保護者の関わりを見ること」も挙げています。

その日うまくできなくても、その1回では決まりません

初めての場所で、初めての人に会って、いつもどおりにできる子のほうが少ないと思います。実践ガイドは、健診で気になる状況があっても直ちに支援対象とはせず「一定期間、状況変化を確認することがある」と書き、「期限を決めて再アセスメントし、支援の必要性について判定する」という進め方を示しています。

その日の一場面だけで結論が出る設計にはなっていません。だから、家での様子を伝えることに意味があります。動画があれば、それが最短です。

3. 発達検査——する日もあれば、しない日もあります

実践ガイドは、発達の遅れやアンバランスが疑われる場合の検討事項として「カンファレンスで心理職による発達検査の導入(市町村により健診当日に検査を行っている場合は、カンファレンスの結果を待つまでは必要ない)」を挙げています。当日その場で行う自治体と、あらためて日を取る自治体の両方があるということです。

使われる検査について、実践ガイドは「発達状況については、保健センターなどで、新版K式発達検査、田中ビネー知能検査などが実施されている」と書いています(→ 発達検査を勧められたら田中ビネー知能検査)。

4. 誰が対応するのか

そこにいる職種(一次資料に書かれているもの)
市区町村の健診・相談の場実践ガイドは、乳幼児健診に関わる職種として医師・歯科医師、保健師、看護師、助産師、歯科衛生士、管理栄養士・栄養士、心理職、保育士を挙げ、「多職種の従事者がワンストップのサービスを提供する集団健診は、乳幼児健診に特有のスタイルである」と書いています
児童相談所東京都の案内は「児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門スタッフが相談にあたります」としています。児童福祉法第12条の3も、判定をつかさどる所員に医師または心理を専修した者等を置くことを定めています

最初に話を聞くのが保健師、検査をするのが心理職(公認心理師など)、ことばのことを見るのが言語聴覚士、医学的な判断をするのが医師——役割が分かれているので、1人が全部に答えるとは限りません(→ 公認心理師言語聴覚士(ST)とは)。

※ 実際にどの職種が配置されているかは、機関の規模と地域の事情によって違います。「言語聴覚士に相談できますか」は、電話のときに聞いてよいことです。

検査は、受けなければいけないのか

はっきりお答えします。発達検査は、受けることを強制される手続きではありません。一次資料の書きぶりから、それが読み取れます。

第一に、実践ガイドで発達検査は職員側が「導入」を検討するものとして書かれています——「カンファレンスで心理職による発達検査の導入……を検討する」。提案されて、受けるかどうかを決めるという構造です。

第二に、断られたときの対応が、一次資料にはっきり書かれています。実践ガイドは、「支援を拒否する場合や、支援の利用に同意が得られない場合には、『全ての親子に必要な支援が行き届くことを保障する』との標準的な保健指導の考え方に基づいて、丁寧なフォローアップと相手の状況に合わせた支援への促しが必要である」としています。断ったら関係が切れる、という設計ではありません。

待つという判断も、手順の中に書かれています

実践ガイドには、こう書かれています。

「例えば、発達障害の可能性が疑われても、保護者はすぐに受容できず拒否的な態度をとることがある。そのような場合、中長期的に考えると、無理に療育等をすすめて関係が途切れて必要な支援が届かなくなるよりは、少し待って信頼関係の構築を優先することが有益であると判断する場合もある

心の準備ができていないことは、想定外の事態ではなく、専門職の側の手順書に最初から書き込まれている状況です。「今日は決められません」と言ってよい、ということです。

受けるかどうかを決める前に、聞いておくとよいこと

なお、個人情報の保護に関する法律 第62条は、行政機関等が本人から直接書面で個人情報を取得するときは「あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない」と定めています。問診票や申込書に利用目的の欄が付いているのは、この条文があるからです。読んでから書いて構いません。

※ 検査を受けること自体は、診断でも、療育の申し込みでもありません。結果をどう使うかは、そのあとに決めることです。

結果はどう返るのか——診断名がつくとは限りません

ここが、いちばん誤解の多いところです。相談の場で返ってくるのは「診断」ではなく「判定」や「見立て」で、この二つは一次資料の中で明確に区別されています。

国の通知が、はっきり書き分けています

こども家庭庁ほかが令和6年3月29日に発出した「5歳児健康診査の実施に当たって求められる地域のフォローアップ体制等の整備について」は、本文中で「判定」という語に、わざわざこの注記を付けています。

「判定(健診後カンファレンス等で総合的な判断に基づいて行われるものであり、専門医療機関等で行われる診断とは異なる。以下同じ。)」

判定=支援が要るかどうかの総合判断。診断=医師が行う医学的な判断。別のものだと、国の通知が明示しています。

健診票の場合——判定は二つの欄に分かれています

こども家庭庁が示している1歳6か月児・3歳児の健康診査票の様式を見ると、記入欄が二つに分かれていることが分かります。これは相談の結果の返り方を理解するうえでも役に立ちます。

選択肢と、その意味
判定
体や発達についての所見
1 異常なし/2 既医療/3 要経過観察/4 要紹介(要精密・要治療)
4 を選んだ場合は「紹介先」を書く欄が続きます。3歳児健診の様式では、要経過観察に「( か月位)」という期間の欄があります
子育て支援の必要性の判定
別の欄として立てられています
1 特に問題なし/2 保健師による支援が必要/3 その他の支援が必要(  )
体の所見とは独立した欄です。子どもの側に所見がなくても、支援が必要だと判定されうる設計になっています

この二つ目の欄は、あまり知られていません。けれど「発達相談につながる入口」として実際に機能しているのはこちらです。実践ガイドも、支援対象者の選定に「子育て支援の必要性の判定など健診従事者間で共通の判定区分を用いることが、支援の評価には必要である」と書いています。

医療機関へ回るとき——「精密健康診査(判定相談)受診票」

健診から専門機関へ紹介されるときに使われる様式も、同じ通知に載っています。「1歳6か月児・3歳児 健康診査 精密健康診査(判定相談)受診票」という一枚で、宛先は「委託医師(児童相談所長)」、差出人は「市町村長(特別区長)」です。そして注記に、こう書かれています——「この票で1歳6か月児精密健康診査及び3歳児精密健康診査を受けるときは、無料で受診できます。」

健診から児童相談所や委託医師へ回る道は、様式まで決まっていて、費用がかからない——これが一次資料から確認できることです。受診票には有効期間の欄もあるので、渡されたら期限を確かめてください。

診断名がつかなくても、支援は動きます

「はっきりした診断がつかないと、何も始められないのでは」と思われるかもしれません。そうではありません。先の通知は、就学後についてこう書いています——「医師の診断の有無にかかわらず、校内委員会等により特別な教育的支援を必要とすると判断された児童に対しては、個別の教育支援計画を作成するなど合理的配慮を含む必要な支援を行うことが重要となる」

就学前についても同じで、児童発達支援の利用に必要なのは通所受給者証であって診断名ではありません(→ 受給者証とは)。

※ 診断は医師が行います。本記事は一般的な情報提供であり、個々のお子さまの状態についての判断ではありません。

相談したことは、保育園や学校に伝わるのか

これを気にして相談をためらう方は、とても多いと思います。結論——市区町村が相談の内容を園や学校に渡すには、原則として保護者の同意が要ります。根拠は二つあります。

1. 個人情報の保護に関する法律 第69条

条文(第1項・第2項第1号)

行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」(第1項)

第2項は、この例外にあたる場合を列挙しており、その第一号が「本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。」です。

市区町村は「行政機関の長等」にあたります。つまり集めたときの目的の外に情報を出すことは、原則として禁じられていて、同意はその禁止を解く条件のひとつという構造です。同意が「お願い」ではなく「法律上の条件」だということが、ここから分かります。

2. 国の通知が、実務としても同じことを求めています

5歳児健診のフォローアップ体制の通知は、市町村に求める留意事項として、こう書いています。

通知の本文

関係機関に対してこどもや保護者に関する情報の共有を依頼する際には、あらかじめ市町村が保護者から同意を取得することが必要となるので留意すること。

逆向き——園から健診側へ情報を渡す場合についても、同じ通知は「市町村から保護者の同意を得て依頼があった場合には、こどもや保護者と日常的に接している保育士等が把握している、こどもの集団生活の様子からの気付きや保護者が感じている課題等の情報を、保育所等から健診に関わる保健師等に共有することが望ましい」としています。

行きも帰りも、保護者の同意が前に置かれています。

同意は「全部か、ゼロか」ではありません

同意を求められたときに、範囲を確かめてから決めてよいということも、押さえておく価値があります。同じ通知は、関係者間で共有する様式について「5歳児健診の結果やその後のフォローアップの状況、これらを踏まえた事後の支援方針に係る内容を精査し記載することが望ましい」としており、何でも全部渡す前提では書かれていません。

この四つは、同意書にサインをする前に聞いてよいことです。そして、共有することに利点がある場面も確かにあります——園で困っている場面が伝われば、園の側の配慮が具体的になります。同じ通知も、保育所等が健診の結果を「日常の教育・保育の充実に活用することも考えられる」と書いています。渡す/渡さないを、こちらが選べるという点が大切です。

引っ越したときの記録

少し違う話ですが、母子保健法 第19条の2は、市町村が必要と認めるときに他の市町村に対して健康診査等に関する情報の提供を求めることができると定めています。転居しても、健診や相談の経過をゼロから話し直さずに済む仕組みが法律に置かれている、ということです。引っ越し先の窓口で「前の市の記録を取り寄せられますか」と聞けます。

※ 民間の事業所(児童発達支援など)は行政機関ではないため、適用される条文が変わります。事業所に相談する場合は、その事業所の個人情報の取り扱いの説明をご確認ください。

相談のあと、どこにつながるのか

相談は終着点ではなく、分岐点です。そこから先に何があるのかを知っておくと、当日の話が具体的になります。

つながる先何をするところか/根拠
経過を見る(フォローアップ)期間を決めて、もう一度確かめます。実践ガイドは「気になる状況にあるケースは、健診後のフォローアップ対象者とし、期限を決めて再アセスメントし、支援の必要性について判定する」としています。「様子を見ましょう」の実体はこれです。「いつ、何をもって見直しますか」と確かめておくと、期間が数字になります
親子教室・事後教室市区町村が行う小集団の場です。実践ガイドは、健診後の支援事業として事後教室を挙げ、「多くの市町村で、母子グループ等を実施しており、子どもの発達を見守りつつ保護者の心配事を傾聴し子どもへの対応を相談することは有効な支援である」と書いています
児童発達支援児童福祉法にもとづく通所支援です。利用には市町村が交付する通所受給者証が必要になります(→ 受給者証とは利用料と無償化
児童発達支援センター児童福祉法第43条が「地域の障害児の健全な発達において中核的な役割を担う機関」と定める施設です。5歳児健診の通知も、センター等が「小学校・特別支援学校から相談があった場合には、情報共有や福祉の観点からの助言を行う」ことに留意するよう求めています
園への訪問支援同じ通知は、保育所等が「保育所等訪問支援等や巡回支援専門員の活用も含めて」教育・保育の充実を図ることを挙げています(→ 保育所等訪問支援とは
医療機関診断や医学的な検査が必要な場合。健診からの紹介には、費用のかからない受診票の仕組みがあります(前の節)
発達障害者支援センター発達障害者支援法にもとづき都道府県等が指定する専門の相談機関です(→ 発達障害者支援センターとは
相談支援専門員サービスを複数使う段になったら、全体を組み立てる立場の人が付きます(→ 相談支援専門員とは
「通うことになる」とは限りません

相談に行った全員が、療育に通う流れになるわけではありません。実践ガイドは、健診後の判断について「継続的支援が必要であるか、今回の支援でまずは解決しそうか(フォローアップ不要)を判断し」と書いています。「フォローアップ不要」という結論が、正式な選択肢として最初から用意されています。

調べた結果として「いまは大丈夫です」が返ってくることも、相談の成果です。

そして、つながった先での支援が始まったあとも、市区町村の側は手を離しません。母子保健法 第22条は、こども家庭センターの事業に「母子保健に関する各種の相談に応ずること」「母性及び児童の保健医療に関する機関との連絡調整」の両方を挙げています。相談する場と、つなぐ場が、同じところに置かれているという建て付けです。

※ 制度の運用は自治体により異なります。本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。

今日から明日にかけて、できること

最後に、順番だけまとめます。全部を一度にやる必要はありません。

  1. 母子健康手帳を出す——健診の記録と、市区町村の連絡先が載っています。ここが最短の入口です
  2. いちばん気になっていることを、一つだけ書く——整理しなくてかまいません。日付と、見たままの様子を
  3. 市区町村の窓口に電話する——「発達のことで相談したい」で通じます。無料で、診断も紹介状も要りません
  4. 電話で「いちばん早い日はいつですか」と聞く——待つ長さが分かると、待つあいだの過ごし方が決まります
  5. 待つあいだも、別の入口を並行して使う——事業所の見学、耳鼻咽喉科での聞こえの確認など
  6. 当日は、聞かれるだけの場ではないと思って行く——こちらから確かめてよいことがあります(→ 発達相談で聞かれること
覚えておいていただきたい一行

母子保健法 第9条の2は「市町村は……母子保健に関する相談に応じなければならない」と書いています。

相談は、お願いして受けてもらうものではありません。市町村の側の義務として、法律に書かれているものです。健診で何も言われていなくても、診断がなくても、これは変わりません。

出典

※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

健診で何も言われていません。それでも相談していいですか?
できます。母子保健法 第10条は、市町村が「乳児若しくは幼児の保護者に対して」育児に関し必要な保健指導を行い、又は保健指導を受けることを勧奨しなければならないと定めていて、健診での指摘は条件になっていません。さらに第9条の2第1項は「市町村は……母子保健に関する相談に応じなければならない」としています。相談は、市町村の側の義務として法律に書かれているものです。
「発達相談」はどこにありますか。名前がばらばらで分かりません
「発達相談」という名前の制度は法律にはありません。実際にあるのは市区町村の保健センター・こども家庭センター(母子保健法・児童福祉法)、児童発達支援センター(児童福祉法第43条)、児童相談所(同第12条)、医療機関の四つで、自治体がそれぞれ独自の名前を付けています。名前で探すより、お住まいの市区町村のサイトで「発達」「健診」「子ども家庭」で引くか、母子健康手帳の連絡先に電話するのが早い道です。
入口を間違えたら、また一から探し直しですか?
そうはならない仕組みが法律に書かれています。児童福祉法 第10条第2項・第3項は、市町村長について「専門的な知識及び技術を必要とするものについては、児童相談所の技術的援助及び助言を求めなければならない」「……判定を必要とする場合には、児童相談所の判定を求めなければならない」と定めています。また第21条の11は、保護者から求めがあった場合に市町村が「あつせん又は調整」を行うものとしています。つなぐのは行政の側の仕事として書かれています。
発達検査は、断ってもいいのですか?
断れます。国の「乳幼児健康診査事業実践ガイド」は、検査を職員側が「導入」を検討するものとして書いており、断られた場合についても「支援を拒否する場合や、支援の利用に同意が得られない場合には……丁寧なフォローアップと相手の状況に合わせた支援への促しが必要である」としています。さらに「無理に療育等をすすめて関係が途切れて必要な支援が届かなくなるよりは、少し待って信頼関係の構築を優先することが有益であると判断する場合もある」とも書かれています。「今日は見送って、◯か月後にもう一度声をかけてください」と伝える形もあります。
相談に行くと、診断名がつきますか?
つくとは限りません。こども家庭庁ほかの通知は「判定(健診後カンファレンス等で総合的な判断に基づいて行われるものであり、専門医療機関等で行われる診断とは異なる)」と明確に書き分けています。医学的な診断を行えるのは医師で、市区町村の相談の場が返すのは「支援が必要かどうか」の判断や見立てです。健診票の判定欄も「異常なし/既医療/要経過観察/要紹介」の四つで、診断名を書く欄ではありません。
相談したことは、保育園や小学校に伝わりますか?
原則として、保護者の同意なしには伝わりません個人情報の保護に関する法律 第69条第1項は「行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない」と定め、第2項第1号でその例外の第一に「本人の同意があるとき」を挙げています。こども家庭庁ほかの通知も「関係機関に対して……情報の共有を依頼する際には、あらかじめ市町村が保護者から同意を取得することが必要」としています。同意を求められたら、誰に・何を・いつまで、を確かめてから決めて構いません。
予約してから、どれくらい待ちますか?
全国的な目安になる数字は、公的な資料の中に見つけられませんでした。自治体や機関によって差が大きく、一つの数字を挙げると誤解を招くため、ここには書きません。電話のときに「いちばん早い日はいつですか」と直接お尋ねください。なお、待ちが生じていること自体は国も前提にしていて、5歳児健診のフォローアップ体制の通知では都道府県が活用すべき事業として「発達障害専門医療機関初診待機解消事業」が挙げられています。
相談したら、必ず療育に通うことになりますか?
なりません。「乳幼児健康診査事業実践ガイド」は、健診後の判断を「継続的支援が必要であるか、今回の支援でまずは解決しそうか(フォローアップ不要)を判断し」と書いており、「支援は要りません」という結論も正式な選択肢として置かれています。また、経過を見る(期限を決めて再アセスメントする)、親子教室に参加する、といった段階も間にあります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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