はじめに——この記事で扱わないこと
先に、書かないことをはっきりさせておきます。
- 検査の問題・課題の内容
- 数値の意味や、その範囲ごとの解釈
- 受けると何が分かるか、という個別の説明
- ほかの検査との比較
🔴 三つの理由
①
検査の内容は、事前に知られることを想定して作られていません。あらかじめ問題を知ってしまうと、結果の意味そのものが変わります。
②
検査は刊行物であり、内容を書き写すことはできません。③
結果の解釈は、実施した専門職が、その場の様子を含めて行うものです。一般の記事が数値の読み方を書けば、実施者の説明と食い違ったときに、ご家族が迷うことになります。
——
意味がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
そのかわりに、制度の側から確かめられることを並べます。こちらは条文と国の文書に書かれているので、はっきりお伝えできます。
誰が行うのか
心理検査に関わる国家資格として、公認心理師があります。
公認心理師法 第2条(定義・抜粋)
「公認心理師」とは、……
保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
🔴 第1号の「心理状態を観察し、その結果を分析すること」が、心理検査を含む業務にあたります。そして第3号により、ご家族への相談・助言も法律上の業務です(→公認心理師とは?)。
🔴 主治医がいるときの決まり
公認心理師法 第42条第2項:「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る
主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。」
——
主治医がいるかどうかで、進み方が変わります。通院先がある場合は、そのことを伝えておくと話が早くなります。
なお、都道府県の児童相談所にも判定の業務があります。児童福祉法 第11条第1項第2号ハは、「児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行うこと」としています。
🔴 「心理学的」は、五つのうちの一つです
条文が並べているのは
医学的・心理学的・教育学的・社会学的・精神保健上の五つ。
心理検査の結果だけで判定が決まるという書き方には、条文はなっていません。
🔴 療育の計画づくりに、検査は求められていません
児童発達支援の計画を作るときの手続きは、省令に細かく定められています。そこに検査という言葉は出てきません。
指定基準省令 第27条第2項(アセスメントの定義・要点)
「……
適切な方法により、障害児について、
その有する能力、その置かれている環境及び日常生活全般の状況等の評価を通じて
通所給付決定保護者及び障害児の希望する生活並びに課題等の把握……を行う」
🔴
「適切な方法により」——方法は指定されていません(→
アセスメントとは?)。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインも、「標準化されたツールを用いたフォーマルなアセスメント」と「日々の行動観察なども含むインフォーマルなアセスメント」を並べて挙げています。
🔴🔴 ガイドラインの留意事項⑦
「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、『育つ上での自信や意欲』、『発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上』、『自由で多様な選択』等も踏まえながら、こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと。」——
国の文書が、検査の数値と「自信や意欲」を並べて書いています。数値を軽く見ろ、ではありません。
それだけにとどまるな、という書き方です。
🔴 就学先の基準は、数値では書かれていません
ここは意外に知られていないところです。特別支援学校への就学を検討する際の「障害の程度」は学校教育法施行令 第22条の3の表に定められています。
第22条の3(知的障害者の欄)
一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの🔴
「意思疎通」「日常生活」「社会生活への適応」——
検査の数値は、この条文に出てきません。
しかも、この表に当てはまれば就学先が決まるわけでもありません。学校教育法施行令 第5条は、市町村教育委員会が「その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して」判断するとしています(→特別支援学校とは?)。
また第18条の2は、就学の通知をしようとするときに保護者及び教育学・医学・心理学その他の専門的知識を有する者の意見を聴くものとするとしています。心理学は、聴くべき意見の一つとして並んでいます。
受けるときに、整えておけること
検査の結果は、そのとき・その場で・その方法で測った結果です。体調や場の慣れが影響することは、実施する側も前提にしています。
- 体調と睡眠——直前の予定を詰めすぎないほうが、ふだんに近い様子が出やすくなります
- 場所と人への慣れ——初めての場所が苦手なお子さまは、そのことを事前に伝えておく
- 伝える手段——ふだん使っている手段(指さし、絵カード、機器など)を伝えておく(→AACとは?)
- 通院先の有無——公認心理師法 第42条第2項の関係で、主治医の有無は伝えておく
- 気になっている場面——検査で見えることと、家や園で困っていることは別々に伝える
結果を聞くときに尋ねられること
・「今日の様子は、ふだんと比べてどうでしたか」・「この結果から、明日から試せることはありますか」・「次に確かめたほうがよいことは何ですか」・「この結果は、どこに、どのくらいの期間使えますか」——数値そのものより、
この四つのほうが日々の暮らしにつながります。
🔴 「今できること」と「学べる可能性」は別です
米国言語聴覚協会(ASHA)は、評価の方法として
動的アセスメント(test–teach–retest)を挙げています。
いま持っている力と、
手がかりを与えたときにどのくらい伸びるか(学ぶ可能性)を
分けて見る考え方です。
一度の測定は、前者の一部を写したものです。
後者は、関わり方を変えて確かめていくものとされています。
結果は、どこで使われるのか
| 場面 | 根拠と、そこでの位置づけ |
| 医療機関 | 診断・治療の判断は医師が行います。療育は医療ではありません |
| 児童相談所の判定 | 児童福祉法 第11条第1項第2号ハ。医学的・心理学的・教育学的・社会学的・精神保健上の五つの判定のうちの一つ |
| 就学相談 | 学校教育法施行令 第18条の2。保護者及び専門的知識を有する者の意見を聴くものとする。程度の基準(第22条の3)は数値ではなく生活の記述 |
| 児童発達支援・放課後等デイサービスの計画 | 指定基準省令 第27条第2項。「適切な方法により」とされ、検査は求められていません |
| 家庭・園・学校 | 児発ガイドライン留意事項⑦は「検査上に表される知的能力にとどまらず」としています |
有効期間について
この記事では書きません。手続きごとに求められる資料や期間の扱いが異なり、
自治体・機関によっても運用が違うためです。
結果の説明を受けるときに
「この結果は、どの手続きに、いつまで使えますか」と尋ねておくのが確実です。
この記事で書かないこと(まとめ)
検査の内容・数値の読み方・ほかの検査との比較は書きません(冒頭の三つの理由のとおりです)。
手帳の判定の基準も書きません。判定の考え方は自治体によって異なり、全国共通の基準を一次情報として確認できなかったためです(→療育手帳について)。
「検査を受けるべきかどうか」も書きません。それは、医師・公認心理師など実施する専門職と一緒に決めることです。
書けるのは、誰が行う仕事なのか、結果が制度のどこで使われるのか、そして条文と国のガイドラインが数値をどう扱っているかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 医療機関 | 診断・治療に関する判断。検査の実施と結果の説明 |
| 公認心理師のいる機関 | 公認心理師法 第2条第1号(心理状態の観察と分析)・第3号(関係者への相談・助言) |
| 児童相談所 | 児童福祉法 第11条第1項第2号ハの判定。手帳に関する相談 |
| 市区町村教育委員会(就学相談) | 学校教育法施行令 第18条の2にもとづく意見聴取(→就学相談とは?) |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 結果を日々の支援にどうつなぐか(→個別支援計画とは?) |
| 発達障害者支援センター | 相談先の整理 |
※本記事は一般的な情報提供です。検査の実施・結果の解釈・手帳の判定は、実施機関と自治体の判断によります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
この記事に、検査の内容や数値の見方は書かれていますか?
書いていません。理由は三つです——①検査の内容は事前に知られることを想定して作られておらず、知ってしまうと結果の意味が変わること、②検査は刊行物であり内容を書き写せないこと、③結果の解釈は実施した専門職が、その場の様子を含めて行うものであることです。
検査は誰が行うのですか?
心理検査に関わる国家資格として公認心理師があります。公認心理師法 第2条第1号は業務を「心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること」と定めています。医療機関では医師の関与のもとで行われます。
通院しているのですが、伝えたほうがよいですか?
はい。公認心理師法 第42条第2項は「主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」としています。通院先があることは、早めにお伝えください。
療育を受けるのに、検査は必要ですか?
省令に検査を求める規定はありません。指定基準省令 第27条第2項は「適切な方法により」としています。国のガイドラインも標準化されたツールを用いたフォーマルなアセスメントと日々の行動観察なども含むインフォーマルなアセスメントを並べて挙げています。
就学先は、検査の数値で決まるのですか?
条文はそうなっていません。学校教育法施行令 第22条の3の知的障害者の欄は「他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度」などと生活の様子で書かれています。さらに第5条は「地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して」としています。
数値が思ったより低くて、落ち込んでいます
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、『育つ上での自信や意欲』……等も踏まえながら、こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し」支援を行うこととしています。数値は、見るもののうちの一つとして書かれています。
結果を聞くとき、何を尋ねればよいですか?
「今日の様子は、ふだんと比べてどうでしたか」「この結果から、明日から試せることはありますか」「次に確かめたほうがよいことは何ですか」「この結果は、どこに、どのくらいの期間使えますか」——この四つが、日々の暮らしにつながりやすい問いです。
一度の結果で、その子の力が決まるのですか?
米国言語聴覚協会(ASHA)は、評価の方法として動的アセスメント(test–teach–retest)を挙げています。いま持っている力と手がかりを与えたときにどのくらい伸びるかを分けて見る考え方で、後者は関わり方を変えて確かめていくものとされています。
結果はいつまで使えますか?
この記事では書きません。手続きごとに求められる資料や期間の扱いが異なり、自治体や機関によっても運用が違うためです。結果の説明を受けるときに「どの手続きに、いつまで使えますか」とお尋ねになるのが確実です。
手帳の判定はどうなっていますか?
児童福祉法 第11条第1項第2号ハは、都道府県の業務として「医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行うこと」と定めています。心理学的判定は五つのうちの一つです。判定の考え方は自治体により異なるため、この記事では基準を書きません。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
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