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言語聴覚士(ST)とは?——法律・仕事の範囲・どこにいるのか

最終更新:2026年9月3日
言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist、略してST)は、1997年に制定された国家資格です。厚生労働大臣の免許を受けた人だけが名乗れます。

「ことばの練習をしてくれる人」と思われがちですが、法律が定める仕事の中心はまず「調べること」にあります。この記事では、言語聴覚士法の条文日本言語聴覚士協会の公開情報にもとづいて、STの仕事の範囲、医師の指示が要る行為・要らない行為、そしてSTが実際にどこにいるのかまで説明します。

法律は、言語聴覚士をこう定義しています

言語聴覚士の仕事は、言語聴覚士法(平成9年法律第132号)第2条に書かれています。

言語聴覚士法 第2条(定義)
この法律で「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。

この条文は、3つの部分に分けて読むとわかりやすくなります。

条文の部分意味
音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者対象——声、ことば、聞こえのいずれか。子どもも大人も含まれます
その機能の維持向上を図るため目的——治すことではなく、機能の維持と向上
言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助行うこと——訓練だけでなく、検査・助言・指導が法律に明記されています

見落とされやすいのが最後の部分です。「検査」「助言」「指導」が、法律の中に訓練と並んで書かれています。保護者への助言や、関わる大人への指導も、STの業務として法律に位置づけられているということです。

「訓練する人」ではなく、まず「調べる人」

日本言語聴覚士協会は、STの仕事をこう説明しています。

——ことばによるコミュニケーションの問題について、その問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行う

順番に意味があります
①検査・評価 → ②対処法を見出す → ③必要に応じて訓練。「ことばが出ない」の理由はひとつではありません。聞こえの問題、口や舌の動きの問題、ことばを理解する側の問題、伝えようとする気持ちの育ちの問題——原因が違えば、やることが変わります。

だからSTは、練習を始める前に「なぜ出ないのか」を調べます

「ことばの練習をたくさんすれば伸びる」とは限りません。何が起きているかを見立てないまま練習を重ねても、その子にとっていちばん必要なことに手が届かないことがあります。

STが対応する範囲

協会は、STが対応する問題として次のものを挙げています。子どもに関わるものも、大人に関わるものも含まれます。

領域どんな状態か子どもに関わるか
ことばの発達の遅れ年齢に比べてことばが出ない、増えない◎ 中心的な領域
構音障害発音がはっきりしない
聴覚障害相手の声が聞き取れない、何度も聞き返す、テレビの音を大きくする
音声障害声が出にくい、かすれる、小さくなる
嚥下障害上手に噛めない、うまく飲み込めない○(食べることの相談)
言語障害(失語症)うまく話せない、話が理解できない、文字が読めない主に大人(脳の病気などの後)
高次脳機能障害忘れやすい、気が散りやすい、複雑な内容を手順通りに進められない主に大人

つまりひとりのSTが、子どものことばから高齢者の飲み込みまでを守備範囲とする資格です。そのため、子どもの発達を専門にしてきたSTかどうかは、実際には大きな違いになります。

🔴 STはどこにいるのか——福祉領域は5.26%

「言語聴覚士に相談したい」と思っても、なかなか見つからない——そう感じる方は少なくありません。その理由は、STがどこで働いているかの数字を見るとわかります。

日本言語聴覚士協会は、会員のうち有職者22,511人の勤務先を、施設の種類別に公表しています。

勤務先割合
医療60.70%
医療/介護16.71%
介護6.56%
福祉(障害者福祉施設、児童福祉施設、保健所など)5.26%
学校養成所2.20%
医療/福祉2.20%
医療/介護/福祉1.30%
研究・教育機関0.96%
学校教育(特別支援学校、小中学校など)0.37%
この数字が意味すること
STの6割以上は医療機関で働いています。児童発達支援事業所や放課後等デイサービスが含まれる「福祉」は、5.26%です。

つまり、STは全国で4万人近くいても、療育の現場でSTに会える機会は、多くありません。「探しても見つからない」という実感には、根拠があります。

協会は、STが働く「福祉施設」の例として、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、児童発達支援センター(事業所)、放課後等デイサービスを挙げています。

なお、この割合は協会の会員を対象にした数字です。会員でないSTも存在するため、全国のST全体の分布とは完全には一致しない点にご留意ください。

医師の指示が要る行為と、要らない行為

ここは、「診断がないと相談できないのでは」と考えている方に、ぜひ知っていただきたい点です。

言語聴覚士法は、医師または歯科医師の指示が必要な行為を、限定して定めています。

言語聴覚士法 第42条(業務)
言語聴覚士は、保健師助産師看護師法第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

つまり、医師の指示が必要と法律に書かれているのは嚥下訓練・人工内耳の調整などです。第2条が定めることばの訓練・検査・助言・指導そのものは、この規定の対象ではありません。

ただし、法律にはもうひとつ条文があります。

言語聴覚士法 第43条第2項
言語聴覚士は、その業務を行うに当たって、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者に主治の医師又は歯科医師があるときは、その指導を受けなければならない。

主治医があるときは」——ここが要点です。かかりつけの医師がいる場合はその指導を受けますが、診断や主治医がいることが、相談の前提条件として定められているわけではありません

※これは法令の説明であり、個別のご事情への判断ではありません。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、まず小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

法律に書かれた「連携」と「秘密を守る義務」

園や学校との連携は、STにとって心がけの問題ではなく、法律に書かれた義務です。

条文内容
第43条第1項業務を行うに当たっては、医師、歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない
第43条第3項業務を行うに当たっては、福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない
第44条正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。言語聴覚士でなくなった後においても、同様とする

第43条第3項の「福祉に関する業務を行う者その他の関係者」には、保育士や児童指導員、園や学校の先生など、そのお子さまに関わる人が含まれます。STが単独で完結する仕事ではないことが、法律の前提になっています。

第44条の守秘義務には、違反した場合の罰則(50万円以下の罰金)も定められています。面談でお話しいただいた内容が守られる根拠は、ここにあります。

🔴「言語聴覚士」は、名乗れる人が決まっています

事業所や教室を選ぶときに、知っておくと役に立つ法律があります。

言語聴覚士法 第45条(名称の使用制限)
言語聴覚士でない者は、言語聴覚士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

違反した場合は、第51条第2号により30万円以下の罰金と定められています。

これは名称独占と呼ばれるしくみです。「言語聴覚士」と書かれていれば、国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受けた人である、ということが法律で担保されています。

一方で、「ことばの先生」「ことばの指導員」といった呼び方は、それ自体が国家資格を示す名称ではありません。熱心で経験豊かな方が使っていることも多く、呼び方だけで良し悪しは決まりませんが、国家資格の有無を確かめたいときは、「言語聴覚士」という表記があるかどうかを見るのが確実です。

ご不安な場合は、見学や面談の際に「言語聴覚士の資格をお持ちの方はいますか」とそのまま尋ねていただいてかまいません。答えにくい質問ではありません。

1997年にできた、比較的新しい資格

言語聴覚士が国家資格になったのは1997年(平成9年)です。理学療法士・作業療法士(1965年)より30年以上あとにできた資格で、リハビリテーション関連の国家資格の中では新しい部類に入ります。

協会によれば、国家試験には毎年1,600人から2,000人程度が合格しており、有資格者数は2018年3月に3万人を超え、2023年3月には4万人近くになりました。

資格の歴史が浅いことは、そのまま「人数が足りていない」ことを意味します。医療の現場での需要が大きいため、福祉の領域まで行き渡っていないのが現状です。

どんなときに相談すればいいか

次のようなことが気になっているなら、STに相談する意味があります。

「様子を見ましょう」と言われて、そのまま時間が過ぎている——という方も多くいらっしゃいます。STの仕事は、まず検査と評価で今の状態を確かめることです。調べた結果「心配はいりません」となることも、立派な結果です。

詳しくは、ことばが出ない・遅い気がするときや、言語聴覚士による支援の内容もあわせてご覧ください。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

言語聴覚士に相談するのに、診断は必要ですか?
言語聴覚士法が医師または歯科医師の指示を必要としているのは、嚥下訓練や人工内耳の調整などです(第42条)。ことばの検査・助言・指導そのものは、この規定の対象ではありません。ただし第43条第2項により、主治医がいる場合はその指導を受けることになっています。診断や主治医がいることが、相談の前提条件として法律で定められているわけではありません。
「ことばの先生」と言語聴覚士は違うのですか?
違います。言語聴覚士法第45条は「言語聴覚士でない者は、言語聴覚士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない」と定めており、違反には30万円以下の罰金があります(第51条第2号)。「ことばの先生」といった呼び方は、それ自体が国家資格を示す名称ではありません。
児童発達支援事業所に言語聴覚士がいるのは珍しいのですか?
日本言語聴覚士協会の公表によれば、会員の有職者22,511人のうち医療が60.70%、福祉は5.26%です。児童発達支援事業所や放課後等デイサービスはこの「福祉」に含まれます。STの多くは医療機関で働いているため、療育の現場で出会う機会は多くありません。
何をしてくれるのですか?
言語聴覚士法第2条は、業務を「言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助」と定めています。訓練だけでなく検査・助言・指導が法律に明記されており、実際にはまず検査・評価で「なぜことばが出にくいのか」を確かめるところから始まります。
園や学校と連携してもらえますか?
言語聴覚士法第43条第3項は、「福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない」と定めています。連携は心がけではなく、法律に書かれた義務です。
言語聴覚士は全国に何人いますか?
日本言語聴覚士協会によれば、有資格者数は2018年3月に3万人を超え、2023年3月には4万人近くになりました。国家試験には毎年1,600人から2,000人程度が合格しています。1997年に制定された、比較的新しい国家資格です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。