言語聴覚士の仕事は、言語聴覚士法(平成9年法律第132号)第2条に書かれています。
この条文は、3つの部分に分けて読むとわかりやすくなります。
| 条文の部分 | 意味 |
|---|---|
| 音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者 | 対象——声、ことば、聞こえのいずれか。子どもも大人も含まれます |
| その機能の維持向上を図るため | 目的——治すことではなく、機能の維持と向上 |
| 言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助 | 行うこと——訓練だけでなく、検査・助言・指導が法律に明記されています |
見落とされやすいのが最後の部分です。「検査」「助言」「指導」が、法律の中に訓練と並んで書かれています。保護者への助言や、関わる大人への指導も、STの業務として法律に位置づけられているということです。
日本言語聴覚士協会は、STの仕事をこう説明しています。
——ことばによるコミュニケーションの問題について、その問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行う。
「ことばの練習をたくさんすれば伸びる」とは限りません。何が起きているかを見立てないまま練習を重ねても、その子にとっていちばん必要なことに手が届かないことがあります。
協会は、STが対応する問題として次のものを挙げています。子どもに関わるものも、大人に関わるものも含まれます。
| 領域 | どんな状態か | 子どもに関わるか |
|---|---|---|
| ことばの発達の遅れ | 年齢に比べてことばが出ない、増えない | ◎ 中心的な領域 |
| 構音障害 | 発音がはっきりしない | ◎ |
| 聴覚障害 | 相手の声が聞き取れない、何度も聞き返す、テレビの音を大きくする | ◎ |
| 音声障害 | 声が出にくい、かすれる、小さくなる | ○ |
| 嚥下障害 | 上手に噛めない、うまく飲み込めない | ○(食べることの相談) |
| 言語障害(失語症) | うまく話せない、話が理解できない、文字が読めない | 主に大人(脳の病気などの後) |
| 高次脳機能障害 | 忘れやすい、気が散りやすい、複雑な内容を手順通りに進められない | 主に大人 |
つまりひとりのSTが、子どものことばから高齢者の飲み込みまでを守備範囲とする資格です。そのため、子どもの発達を専門にしてきたSTかどうかは、実際には大きな違いになります。
「言語聴覚士に相談したい」と思っても、なかなか見つからない——そう感じる方は少なくありません。その理由は、STがどこで働いているかの数字を見るとわかります。
日本言語聴覚士協会は、会員のうち有職者22,511人の勤務先を、施設の種類別に公表しています。
| 勤務先 | 割合 |
|---|---|
| 医療 | 60.70% |
| 医療/介護 | 16.71% |
| 介護 | 6.56% |
| 福祉(障害者福祉施設、児童福祉施設、保健所など) | 5.26% |
| 学校養成所 | 2.20% |
| 医療/福祉 | 2.20% |
| 医療/介護/福祉 | 1.30% |
| 研究・教育機関 | 0.96% |
| 学校教育(特別支援学校、小中学校など) | 0.37% |
協会は、STが働く「福祉施設」の例として、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、児童発達支援センター(事業所)、放課後等デイサービスを挙げています。
なお、この割合は協会の会員を対象にした数字です。会員でないSTも存在するため、全国のST全体の分布とは完全には一致しない点にご留意ください。
ここは、「診断がないと相談できないのでは」と考えている方に、ぜひ知っていただきたい点です。
言語聴覚士法は、医師または歯科医師の指示が必要な行為を、限定して定めています。
つまり、医師の指示が必要と法律に書かれているのは嚥下訓練・人工内耳の調整などです。第2条が定めることばの訓練・検査・助言・指導そのものは、この規定の対象ではありません。
ただし、法律にはもうひとつ条文があります。
「主治医があるときは」——ここが要点です。かかりつけの医師がいる場合はその指導を受けますが、診断や主治医がいることが、相談の前提条件として定められているわけではありません。
※これは法令の説明であり、個別のご事情への判断ではありません。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、まず小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。
園や学校との連携は、STにとって心がけの問題ではなく、法律に書かれた義務です。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第43条第1項 | 業務を行うに当たっては、医師、歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない |
| 第43条第3項 | 業務を行うに当たっては、福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない |
| 第44条 | 正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。言語聴覚士でなくなった後においても、同様とする |
第43条第3項の「福祉に関する業務を行う者その他の関係者」には、保育士や児童指導員、園や学校の先生など、そのお子さまに関わる人が含まれます。STが単独で完結する仕事ではないことが、法律の前提になっています。
第44条の守秘義務には、違反した場合の罰則(50万円以下の罰金)も定められています。面談でお話しいただいた内容が守られる根拠は、ここにあります。
事業所や教室を選ぶときに、知っておくと役に立つ法律があります。
これは名称独占と呼ばれるしくみです。「言語聴覚士」と書かれていれば、国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受けた人である、ということが法律で担保されています。
一方で、「ことばの先生」「ことばの指導員」といった呼び方は、それ自体が国家資格を示す名称ではありません。熱心で経験豊かな方が使っていることも多く、呼び方だけで良し悪しは決まりませんが、国家資格の有無を確かめたいときは、「言語聴覚士」という表記があるかどうかを見るのが確実です。
ご不安な場合は、見学や面談の際に「言語聴覚士の資格をお持ちの方はいますか」とそのまま尋ねていただいてかまいません。答えにくい質問ではありません。
言語聴覚士が国家資格になったのは1997年(平成9年)です。理学療法士・作業療法士(1965年)より30年以上あとにできた資格で、リハビリテーション関連の国家資格の中では新しい部類に入ります。
協会によれば、国家試験には毎年1,600人から2,000人程度が合格しており、有資格者数は2018年3月に3万人を超え、2023年3月には4万人近くになりました。
資格の歴史が浅いことは、そのまま「人数が足りていない」ことを意味します。医療の現場での需要が大きいため、福祉の領域まで行き渡っていないのが現状です。
次のようなことが気になっているなら、STに相談する意味があります。
「様子を見ましょう」と言われて、そのまま時間が過ぎている——という方も多くいらっしゃいます。STの仕事は、まず検査と評価で今の状態を確かめることです。調べた結果「心配はいりません」となることも、立派な結果です。
詳しくは、ことばが出ない・遅い気がするときや、言語聴覚士による支援の内容もあわせてご覧ください。
※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。