法律のうえでの位置
母子保健法は、健康診査について2つの条文を持っています。
| 条文 | 中身 |
| 第12条 | 市町村は、満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児と満3歳を超え満4歳に達しない幼児に健康診査を行わなければならない |
| 第13条 | 前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない |
🔴 5歳児健診が置かれているのは、第13条のほう
第12条は
年齢を名指しして義務にしています。第13条は
「必要に応じ」で、年齢を書いていません。
だから5歳児健診は、法律上「やらなければならない」ものではありません。それでも国が広げようとしているのは、
3歳児健診のあと、就学時健康診断まで3年近く空いてしまうからです。
国は何をしているのか
こども家庭庁は、乳幼児健診をこう整理しています。
| 健診 | 国の支え方 |
| 1歳6か月児健診・3歳児健診 | 母子保健法第12条で義務。地方交付税措置により全国で実施 |
| 3から6か月児健診・9から11か月児健診 | 地方交付税措置 |
| 1か月児健診・5歳児健診 | 国庫補助 |
5歳児健診について、こども家庭庁が持っている事業は次のとおりです。
- 「1か月児」及び「5歳児」健康診査支援事業——費用を助成することにより、出産後から就学前までの切れ目のない乳幼児健診の実施体制を整備する
- 乳幼児健康診査実施支援事業——3から6か月児健診、9から11か月児健診、5歳児健診について、体制整備のための費用を助成し、小児科医や専門職の確保が難しい地域や過疎地等での健診実施を図る
- 1か月児及び5歳児健康診査に係る健診医研修事業——研修を実施する団体を支援し、健診医の養成と質の向上を図る
🔴 「健診医の養成」から始まっている段階です
3つ目の事業に注目してください。
健診を担当する医師を育てるところから国が支援しています。
つまり5歳児健診は、
いま全国に広げている途中の健診です。お住まいのまちで実施されていなくても、
そのまちが子育てに冷たいということではありません。医師や専門職の確保という現実的な壁があります。
こども家庭庁は令和7年度改訂版の5歳児健康診査マニュアルを作成し、令和7年11月25日の事務連絡で自治体に周知しています。やり方の標準を国が示している段階に来ている、ということです。
なぜ「5歳」なのか——就学までの逆算
5歳という年齢は、就学から逆算すると意味がはっきりします。
| 時期 | 起きること |
| 3歳の誕生日〜4歳の誕生日 | 3歳児健診(母子保健法第12条・義務) |
| 5歳ごろ(年中〜年長) | 5歳児健診(実施している市区町村のみ) |
| 年長の10月末まで | 学齢簿の作成(学校教育法施行令第2条=毎学年の初めから5月前まで) |
| 年長の11月末まで | 就学時健康診断(学校保健安全法施行令第1条=翌学年の初めから4月前まで) |
| 年長の1月末まで | 入学期日の通知(学校教育法施行令第5条=翌学年の初めから2月前まで) |
| 4月 | 小学校入学 |
🔴🔴 就学時健康診断は、項目の立て方が違います
学校保健安全法施行令第2条が定める就学時健康診断の検査項目は
7つ——栄養状態/脊柱及び胸郭/視力及び聴力/眼/耳鼻咽頭及び皮膚/歯及び口腔/
その他の疾病及び異常。
1歳半健診・3歳児健診のように
「精神発達の状況」「言語障害の有無」という名前の項目は立っていません。ただし
中身が無いわけではありません。学校保健安全法施行規則第3条第10号が、第七号「その他の疾病及び異常の有無」の方法をこう定めています——
「知能及び呼吸器、循環器、消化器、神経系等について検査するものとし、知能については適切な検査によつて知的障害の発見につとめ、……言語障害、精神神経症その他の精神障害……等の発見につとめる」。——
知能と言語障害は「その他」の枠のなかに入っています。ただし1歳半・3歳児健診のように独立した項目として立っているのとは重みが違い、どこまで見るかは市区町村の実施のしかたによります。この幅を埋めるのが5歳児健診です。
実施されているかどうかを、どう確かめるか
- お住まいの市区町村の母子保健担当課(保健センター)に電話する。こども家庭庁も「お住まいの地域における乳幼児健診の実施の状況等については、住所のある市区町村の母子保健担当課等にお問い合わせください」と案内しています。
- 「5歳児健診はありますか」と、そのまま聞く。名称が違うことがあります(就学前健診、年中児健診など)。無いと言われたら、「かわりに発達の相談ができる窓口はありますか」と続けてください。
- 通っている園にも聞いてみる。園が自治体の巡回相談を受け入れていることがあります。園の先生は、その子を毎日見ている人です。
5歳児健診が無い市区町村でも、相談の窓口が無いわけではありません。母子保健法第10条は、市町村に対して「乳児若しくは幼児の保護者に対して……必要な保健指導を行い」と定めています。健診という形でなくても、相談する道はあります。
5歳児健診を待たなくてよいこと
実施していない市区町村にお住まいの場合、「5歳児健診が無いから確かめようがない」と思われるかもしれません。そうではありません。
| 困っていること | 5歳児健診を待たずにできること |
| ことばが出にくい・発音がはっきりしない | 市区町村の発達相談/かかりつけの小児科/耳鼻咽喉科(聞こえの確認)/言語聴覚士のいる児童発達支援。診断がなくても相談できます |
| 集団に入りにくい・落ち着きにくい | 園の先生に、園での様子を具体的に教えてもらう/自治体の巡回相談/発達相談 |
| 就学が心配 | 就学相談。年中の後半から年長の春に始まる自治体が多く、就学時健康診断より前に動くことになります |
| 療育に通わせたい | 受給者証の申請。市区町村の障害福祉担当課が窓口です |
🔴 就学相談は、就学時健康診断より前に始まります
就学時健康診断は
年長の11月末まで(学校保健安全法施行令第1条)。しかしその前に、
学齢簿の作成が年長の10月末まで(学校教育法施行令第2条)に済んでいます。
就学先の相談をするなら、
この流れが動き出す前——年中の後半から年長の春です。
5歳児健診を待っていると、間に合わないことがあります。時期は市区町村で違いますので、教育委員会に早めに確かめてください。
出典
- 母子保健法(昭和40年法律第141号)/e-Gov法令検索第12条(市町村は「満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児」「満3歳を超え満4歳に達しない幼児」に健康診査を行わなければならない)/第13条(そのほか、必要に応じ健康診査を行い、又は受けることを勧奨しなければならない)/第10条(保健指導)
- こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」内の5歳児健康診査関連資料「1か月児」及び「5歳児」健康診査支援事業(費用を助成し、出産後から就学前までの切れ目のない乳幼児健診の実施体制を整備する)/乳幼児健康診査実施支援事業(5歳児健診等の体制整備)/1か月児及び5歳児健康診査に係る健診医研修事業/令和7年度改訂版5歳児健康診査マニュアル(令和7年11月25日 事務連絡・別添は令和8年2月17日掲載)
- こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」1歳6か月児健診・3歳児健診は地方交付税措置により全国で実施/3から6か月児健診・9から11か月児健診も地方交付税措置/1か月児健診・5歳児健診は国庫補助/「特別な配慮が必要な児に対する乳幼児健康診査のかかり増し経費支援事業」=発達障害のため集団健診会場に行くことが困難な児や医療的ケア児などの健診を推進するため市町村を支援
- 学校保健安全法施行令(昭和33年政令第174号)/e-Gov法令検索第1条(就学時の健康診断の時期=学齢簿が作成された後、翌学年の初めから4月前まで。就学に関する手続の実施に支障がない場合は3月前まで)/第2条(検査の項目7=栄養状態/脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無/視力及び聴力/眼の疾病及び異常の有無/耳鼻咽頭疾患及び皮膚疾患の有無/歯及び口腔の疾病及び異常の有無/その他の疾病及び異常の有無)/第3条(保護者への事前通知)/第4条(就学時健康診断票を翌学年の初めから15日前までに校長へ送付)
- 学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)/e-Gov法令検索第3条(就学時の健康診断の方法及び技術的基準)第10号=「その他の疾病及び異常の有無は、知能及び呼吸器、循環器、消化器、神経系等について検査するものとし、知能については適切な検査によつて知的障害の発見につとめ、呼吸器、循環器、消化器、神経系等については臨床医学的検査その他の検査によつて結核疾患、心臓疾患、腎臓疾患、ヘルニア、言語障害、精神神経症その他の精神障害、骨、関節の異常及び四肢運動障害等の発見につとめる」/第4条(就学時健康診断票の様式は第一号様式)
- 学校教育法施行令(昭和28年政令第340号)/e-Gov法令検索第2条(学齢簿は毎学年の初めから5月前までに作成)/第5条第1項(入学期日は翌学年の初めから2月前までに通知)/第11条第1項(特別支援学校への就学の通知は翌学年の初めから3月前までに)/第18条の2(通知をしようとするときは、その保護者及び教育学、医学、心理学その他の専門的知識を有する者の意見を聴くものとする)
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
5歳児健診は必ずありますか?
いいえ。母子保健法第12条が市町村に義務づけているのは1歳6か月児健診と3歳児健診の2つで、5歳児健診は含まれていません。こども家庭庁が国庫補助による事業として体制整備を進めている段階で、実施の有無は市区町村によって異なります。
5歳児健診があるかどうかは、どこで分かりますか?
お住まいの市区町村の母子保健担当課(保健センター)にお尋ねください。こども家庭庁も、実施状況は市区町村へ問い合わせるよう案内しています。名称が違うこともあるので、「5歳児健診はありますか」「無ければ、発達の相談ができる窓口はありますか」と続けて聞くのが確実です。
なぜ5歳なのですか?
母子保健法が義務づけている健診は3歳児健診が最後で、次は小学校の就学時健康診断になります。就学時健康診断の検査項目(学校保健安全法施行令第2条・7項目)には「精神発達の状況」「言語障害の有無」という名前の項目が立っておらず、知能と言語障害は「その他の疾病及び異常の有無」の枠のなかで見ることになっています(同施行規則第3条第10号)。独立した項目として立っているのとは重みが違い、この幅を埋めるためです。こども家庭庁は「出産後から就学前までの切れ目のない乳幼児健診の実施体制を整備する」ことを目的に挙げています。
5歳児健診が無いまちでは、どうすればよいですか?
母子保健法第10条は市町村に保健指導を求めており、相談の窓口は健診が無くてもあります。あわせて、就学が心配な場合の就学相談は教育委員会が窓口で、就学時健康診断より前(年中の後半〜年長の春)に始まる自治体が多くあります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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