🔴 まず、法律を確かめます
言語聴覚士法(平成9年法律第132号)第2条は、業務をこう定めています。
条文
「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう」——
検査・助言・指導が、条文に明記されています。
そして、医師の指示については第42条が定めています。
🔴 ここが読みどころです
第42条が
「医師又は歯科医師の指示の下に行う」としているのは、
嚥下訓練、人工内耳の調整その他の政令で定める行為です。
——つまり
ことばの相談そのものは、医師の指示を前提とする行為として書かれていません。理学療法士・作業療法士は、
定義そのもの(法第2条)に「医師の指示の下に」が入っています。言語聴覚士は入っていません。この違いが、相談の入口の広さになります(→
ST・OT・PTの違い)。
なお、言語聴覚士は名称独占の資格です(第45条)。「言語聴覚士」を名乗れるのは有資格者に限られます(→言語聴覚士(ST)とは?)。
相談先を、目的で分ける
| 相談先 | 何をするところか | 根拠・特徴 |
| 市区町村の乳幼児健診 | 定期の健康診査。ことばについても尋ねられます | 母子保健法第12条=1歳6か月児・3歳児。あいだに約1年半あきます |
| 市区町村の発達相談窓口 | 無料の相談。診断の有無にかかわらず | 健診とは別に、いつでも使えます |
| 耳鼻咽喉科 | 聞こえの確認、口・のどの状態 | ことばの相談の前に、まずここ(→聞こえの検査) |
| 小児科・児童精神科 | 診断、体の状態 | 診断は医師が行います |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの評価と支援 | 法第2条に検査・助言・指導が明記。医師の指示は第42条の行為に限定 |
| 児童発達支援 | 就学前の通所支援 | 児童福祉法にもとづく。利用には受給者証が必要(→受給者証とは?) |
| ことばの教室(通級による指導) | 就学後、通常の学級に在籍しながらの指導 | 学校教育法施行規則第140条第1号「言語障害者」 |
| 発達障害者支援センター | 発達障害に関する相談 | 発達障害者支援法第14条にもとづき都道府県等が指定 |
入口は一つでなくてかまいません
「まず病院に行ってから」と考えて止まってしまうことがあります。
市区町村の発達相談窓口は、診断の有無にかかわらず、無料で使えます。そこから必要な先につないでもらう——という順序でも進みます。
健診の間隔と、「様子を見ましょう」
母子保健法第12条が定める健康診査は、満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児と満3歳を超え満4歳に達しない幼児です。
あいだが、約1年半あきます
1歳6か月児健診で「様子を見ましょう」と言われると、次の定期の機会は
3歳児健診です。
この間に気になることが出てきても、
次の健診を待つ必要はありません。そして「様子を見ましょう」と言われたときは、
「いつ、何をもって見直しますか」と確かめておくと、次の一歩が決まります。
また発達障害者支援法第5条は、市町村について「母子保健法第12条及び第13条に規定する健康診査を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならない」と定めています。
同法第3条第4項は、施策を講じるにあたって「発達障害者及び発達障害児の保護者の意思ができる限り尊重されなければならない」としています。保護者の意向は、法律上、尊重されるべきものとして書かれています。
相談の前に、用意しておくと役に立つもの
- 今できていること——言える語(同じ基準で数えたもの)、伝える手段(指差し・身振り)。「できていない」だけでなく「できている」を。
- 通った言い方/通らなかった言い方——理解の面の手がかりになります(→ことばの理解がゆっくり)。
- いつからか——気になり始めた時期、変化があった時期。
- 聞こえの確認をしたか——した/していない。した場合は結果。
- 園での様子——連絡帳、先生から言われたこと。
- いちばん困っていること——一つだけ挙げるとしたら何か。
準備用のメモはこちらにまとめています(→発達相談で聞かれることメモ)。
記録は、解釈をつけずに
「たぶん◯◯だと思う」ではなく、
見たこと・聞いたことを、そのまま日付つきで。
解釈は専門職の仕事です。
材料が正確なほど、見立ての精度が上がります。
見つからないと感じるとき
「言語聴覚士に相談したいのに、見つからない」——この実感には、背景があります。言語聴覚士の多くは医療の領域で働いており、福祉の領域で働く割合は限られています(→言語聴覚士(ST)とは?に数字をまとめています)。
- 市区町村の発達相談窓口で、STのいる場を尋ねる
- 児童発達支援事業所に、STが在籍しているかを確かめる
- 耳鼻咽喉科・小児科に、地域の相談先を尋ねる
- 就学後は、ことばの教室(通級による指導)を学校・教育委員会に相談する
また、ことば以外の手段は待つあいだにも使えます(→AACとは?)。ASHAは「AACの介入に前提条件はない」と記述しています。
まとめ——順番の目安
- 耳鼻咽喉科で、聞こえを確かめる
- 市区町村の発達相談窓口に相談する(無料・診断不要)
- 必要に応じて、医療機関へ(診断は医師が行います)
- 受給者証の申請(児童発達支援などを利用する場合)
- 就学後は、学校・教育委員会にことばの教室を相談する
※これは一般的な目安であり、順番は状況により変わります。制度の運用は自治体により異なります。本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
診断がないと、ことばの相談はできませんか?
法律上は、そうではありません。言語聴覚士法第2条は、業務に検査・助言・指導を明記しています。医師の指示を要する行為は第42条で嚥下訓練、人工内耳の調整その他の政令で定める行為に限定されています。また、市区町村の発達相談窓口は診断の有無にかかわらず無料で使えます。
まず、どこへ行けばいいですか?
耳鼻咽喉科で聞こえを確かめることと、市区町村の発達相談窓口に相談すること——このどちらからでも始められます。窓口から必要な先につないでもらう順序でも進みます。
健診まで待ったほうがいいですか?
待つ必要はありません。母子保健法第12条の健康診査は1歳6か月児と3歳児で、あいだにおよそ1年半の間隔があります。
「様子を見ましょう」と言われました
「いつ、何をもって見直しますか」と確かめておくことをおすすめします。なお発達障害者支援法第3条第4項は、施策を講じるにあたって「発達障害者及び発達障害児の保護者の意思ができる限り尊重されなければならない」としています。
言語聴覚士が見つかりません
言語聴覚士の多くは医療の領域で働いており、福祉の領域で働く割合は限られています。市区町村の発達相談窓口でSTのいる場を尋ねる/児童発達支援事業所にSTの在籍を確かめる/耳鼻咽喉科・小児科に地域の相談先を尋ねる——このあたりが実際的です。
相談まで待つあいだ、できることはありますか?
ことば以外の手段は待つあいだにも使えます。ASHAは「AACの介入に前提条件はない」と記述しています。あわせて、言える語/通った言い方を日付つきで記録しておくと、相談のときに役に立ちます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。