🔴🔴 留意事項⑦を、分けて読みます
児童発達支援ガイドライン 留意事項⑦(全文)
「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、『育つ上での自信や意欲』、『発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上』、『自由で多様な選択』等も踏まえながら、こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと。」
| 部分 | 書かれていること |
| ①「単に……にとどまらず」 | 🔴運動機能と検査上に表される知的能力だけでは足りない、という書き出しです |
| ②並べられている三つ | 「育つ上での自信や意欲」/「発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上」/「自由で多様な選択」 |
| ③着目するもの | 🔴できること・得意なこと・可能性 |
| ④それだけではない | 「苦手なことにも挑戦できる支援」も、同じ文に入っています |
🔴 ④が大事です
この留意事項は
「得意なことだけを見る」とは書いていません。「こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと」——
両方が並んでいます。
——
苦手を見ないこととしては書かれていません。
出発点を、できることの側に置くという書き方です。
家族についても、同じ書き方です
この向きは、こどもだけでなく家族への支援にも及んでいます。
児童発達支援ガイドライン「家族支援の提供」より
「家族の支援に当たっても、こどもの支援と同様、家族のウェルビーイングの向上につながるよう取り組んでいくことが必要であり、家族自身が内在的に持つ力を発揮できるよう、エンパワメントを前提とした支援をすることが重要である。」🔴
「家族自身が内在的に持つ力」——
支援は
足りないものを補うこととしてではなく、
もともとある力が出せるようにすることとして書かれています。
「こどもの支援と同様」とある通り、こどもについても家族についても、同じ考え方で書かれている、ということです。
計画の条文にも入っています
支援計画をつくるときのアセスメントの定義にも、同じ語が入っています。
指定基準省令 第27条第2項
「児童発達支援管理責任者は、児童発達支援計画の作成に当たっては、適切な方法により、障害児について、
その有する能力、その置かれている環境及び日常生活全般の状況等の評価を通じて
通所給付決定保護者及び障害児の希望する生活並びに課題等の把握……を行う」
🔴
「その有する能力」が、
環境や
希望する生活と並んでいます(→
アセスメントとは?)。
こども家庭庁のガイドラインも、アセスメントで集める情報として「こどもの発育状況、自己理解、心理的課題、こどもの興味・関心、養育環境、これまで受けてきた支援、現在関わっている関係機関、地域とのつながり、利用に当たっての希望、将来の展望」を挙げています。
🔴 面談で確かめられること
「計画に、できること・得意なことはどう書かれていますか」「興味・関心は、どこに反映されていますか」——どちらも、条文とガイドラインに根拠のある問いです。
省令は計画の見直しを
少なくとも六月に一回以上と定めています(→
個別支援計画とは?)。
学会の側の書き方
米国言語聴覚協会(ASHA)は、strengths-based approaches(強みを活かすアプローチ)という語を使っています。
ASHA「Autism」より
社会モデルを踏まえる臨床家は、
強みを活かすアプローチ・配慮(accommodations)・本人を中心に据えたケアを用いる、としています。
そして、言語聴覚士の役割について——
「自閉症の人がもつ、自閉症でない同年代とは違って見えるかもしれない力を観察し、記録する。その強みを使って新しい力を築くことを助ける」
🔴 ASHAは、具体例も「力」として書いています
感覚と食事の欄の
“そう見えることがある”には、こうあります——
「食べ物の食感や味の小さな変化を見分けることができること」——
偏食として語られがちなことが、「できること」として書かれています(→
偏食があるとき)。
また、ASHAは自閉症の人について「幅広い能力と経験をもつ。……同じ人は一人としていない」としています。
書き留めておくと使えるもの
「得意なこと」は、聞かれたときにすぐ出てこないことがあります。国の文書が挙げている項目に沿って書き留めておくと、面談や引き継ぎでそのまま使えます。
- できること——完成したことでなく、できた場面の条件も添えて(どこで/誰と/どんな手がかりで)
- 得意なこと——同年代と比べてではなく、その子の中で差があること
- 興味・関心——ガイドラインがアセスメントの項目に挙げています
- 「自由で多様な選択」の材料——選べたもの、選びたがったもの
- 将来の展望——ガイドラインが集める情報に挙げています。ご家族が思っていることで大丈夫です
🔴 移行のときに、そのまま渡せます
児童発達支援ガイドラインは、移行支援で共有する例として
「得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段」を挙げています。
——
困りごとの一覧ではなく、「どうすればうまくいくか」を渡すという書き方です(→
移行支援とは?)。
この記事で書かないこと
🔴「ストレングス視点」の定義や、その理論は書きません。確かめた一次情報のどれにもこの語がなく、定義を書けば、それは私の作文になってしまうためです。そういう考え方がないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。
強みの見つけ方の手順や、その効果も書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
🔴「苦手は見なくてよい」とも書きません。ガイドラインの留意事項⑦は「苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと」を同じ文の中に置いています。
書けるのは、国のガイドライン・省令・学会が実際に何と書いているかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 🔴計画にできること・得意なこと・興味関心がどう反映されているか。見直しは少なくとも六月に一回以上 |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 得意なことと、うまくいく条件の共有 |
| 相談支援専門員 | サービス全体の設計。希望する生活から組み立てる立場です |
| 言語聴覚士・作業療法士 | ASHAは「その強みを使って新しい力を築くことを助ける」としています |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
| 親の会・保護者同士の交流 | 同じ立場の人とつながる |
※本記事は一般的な情報提供です。発達には個人差があります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
「ストレングス」は国の文書にある言葉ですか?
見当たりませんでした。法令・こども家庭庁のガイドライン・文部科学省の手引のいずれにもこの語はありません(2026年9月6日確認)。ただし同じ考え方は、別の言い方で書かれています。
どんな言い方で書かれていますか?
児童発達支援ガイドラインの留意事項⑦です——「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず……こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げること」。
苦手なことは見なくてよいのですか?
そうは書かれていません。同じ留意事項⑦の同じ文に「苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと」が並んでいます。出発点を、できることの側に置くという書き方です。
「得意なこと」がすぐに思いつきません
ガイドラインがアセスメントで集める情報に挙げているものが手がかりになります——こどもの興味・関心/利用に当たっての希望/将来の展望。できた場面の条件(どこで・誰と・どんな手がかりで)を添えると、そのまま面談で使えます。
計画に反映されているか、確かめられますか?
指定基準省令 第27条第2項は、アセスメントを「その有する能力、その置かれている環境及び日常生活全般の状況等の評価を通じて……希望する生活並びに課題等の把握」と定義しています。「計画のどこに書かれていますか」と尋ねられます。
家族についても同じ考え方ですか?
ガイドラインは「家族の支援に当たっても、こどもの支援と同様……家族自身が内在的に持つ力を発揮できるよう、エンパワメントを前提とした支援をすることが重要である」としています。
学会は何と書いていますか?
米国言語聴覚協会(ASHA)はstrengths-based approachesという語を使い、「自閉症でない同年代とは違って見えるかもしれない力を観察し、記録する。その強みを使って新しい力を築くことを助ける」としています。
園や学校に引き継ぐとき、何を渡すとよいですか?
ガイドラインが移行支援で挙げている例は「得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段」です。困りごとの一覧ではなく「どうすればうまくいくか」という形です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。