ASHAが記述している「食べること」の特徴
ASHAは、感覚と食べることの現れ方として次のような例を挙げています。
- 好きな料理・食感・色の食べ物への好みを示す
- 立ったまま食事を楽しむ
- 食べ物の食感や味の小さな変化を見分けることができる
- 決まった食具を一貫して使う
読み方に注意してください
これらは
「困った行動」として書かれていません。
そういう現れ方をすることがある、という記述です。
とくに
「小さな変化を見分けることができる」——これは
能力として書かれています。
いつものメーカーでないと食べない、切り方が違うと食べない——
気づいてしまうから起きていることかもしれません。
そのうえでASHAは、支援が必要になりうる困難として環境音・におい・光・触覚刺激などに対する過剰反応・低反応・混合した反応のパターンを挙げています。食べることは、感覚と地続きです。
「好き嫌い」と分けて考える手がかり
医学的な線引きではありませんが、家庭で見るときの手がかりを整理します。
| よくある好き嫌い | 感覚が関わっていそうなとき |
| 断り方 | 食べたくない、と言う | 見ただけで逃げる/においで吐きそうになる |
| 範囲 | 特定の食材 | 食感・色・温度など、食材をまたいで共通する |
| 変化への反応 | 気にしない | いつもと違う切り方・器・メーカーで食べない |
| 広がり | 少しずつ増える | 数が増えない、むしろ減ることがある |
| ほかの感覚 | 特になし | 音・服の素材などにも似た反応がある |
右側にあてはまるものが多いほど、味の好みではなく感覚の受け取り方が関わっている可能性があります(→感覚過敏)。
※この表は家庭で気づくための目安であり、診断の基準ではありません。
先に確かめておきたいこと
感覚の話に進む前に、外しておきたいものがあります。
| 確かめること | どこへ |
| 噛む・飲み込むことの困難 | むせる、丸のみ、口から出す、時間がかかる——嚥下の面は言語聴覚士の対象領域です(言語聴覚士法第2条) |
| 口の中の状態 | むし歯、歯の生え変わり、口内炎。痛みがあれば食べません——歯科へ |
| 体調・アレルギー | 小児科へ |
嚥下は言語聴覚士の領域です
「食べること」と「ことば」は別の話に見えますが、
どちらも口・のどの働きに関わります。
日本言語聴覚士協会も、STの対応領域に
嚥下障害(上手に噛めない・うまく飲み込めない)を挙げています。
ただし
嚥下訓練は医師または歯科医師の指示の下で行うと法律で定められています(言語聴覚士法第42条)。まずは相談から。
家庭でできること
- 食べられるものを確保する——まず栄養と体重です。食べられるものが減らないようにするのが先。広げるのは、そのあとです。
- 共通点を探す——食べられるもの/食べられないものを書き出して、食感・色・温度・においの共通点を見ます。食材名では見えないことが見えます。
- 変えるのは一度に一つ——いつもの食べ物の形だけ、量だけ、置く場所だけ。同時に変えないこと。
- 食べなくていい前提で出す——皿に乗っているだけから始めます。触れる、においをかぐ、口に近づける——食べることはゴールの何段も先です。
- 食事の場を戦いにしない——ASHAの記述には「立ったまま食事を楽しむ」も含まれています。姿勢や場所は、あとから整えられます。
- 記録する——食べられるものの数と日付。増えているかどうかが、いちばん大事な情報です。
「一口だけ」も、慎重に
無理に口に入れた経験は、
その食べ物だけでなく食事の場そのものへの抵抗につながることがあります。
食べられるものが
減っていくときは、広げようとするより
先に相談してください。
園・学校に伝えるとき
給食のある場では、あらかじめ伝えておくと本人の負担が変わります。
- 食べられるものを具体的に(食材名だけでなく、食感・調理法まで)
- どうしても難しいものと、その理由(においで吐きそうになる、など)
- どう対応してほしいか——量を減らして出す、皿に乗せるだけ、別皿にする など
- 無理強いしないでほしいことを、はっきりと
専門職が園を訪問して一緒に考えるしくみもあります(→保育所等訪問支援とは?)。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 小児科 | 体重・成長が心配なときは、まずここ |
| 歯科 | 口の中の痛み、噛み合わせ |
| 言語聴覚士(ST) | 噛む・飲み込むことの相談。嚥下はSTの対応領域です |
| 作業療法士(OT) | 感覚の受け取り方、食具の使い方、姿勢 |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
※本記事は一般的な情報提供です。体重が増えない・減っている、食べられるものが減っているといった場合は、まず小児科にご相談ください。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
偏食は、しつけの問題ですか?
そうとは限りません。ASHAは、好きな食感や色への好み、食感や味の小さな変化を見分けることができること、決まった食具の使用などを、感覚と食べることの現れ方として記述しています。苦手なのではなく、気づいてしまうために起きていることがあります。
「一口だけ食べなさい」は言ってもいいですか?
慎重にお願いします。無理に口に入れた経験が、その食べ物だけでなく食事の場そのものへの抵抗につながることがあります。まずは皿に乗っているだけから。食べられるものが減っていくときは、広げようとするより先にご相談ください。
いつもと同じメーカーでないと食べません
ASHAは「食べ物の食感や味の小さな変化を見分けることができる」と記述しています。わがままではなく、違いに気づいてしまうために起きている可能性があります。
何から相談すればいいですか?
体重や成長が心配な場合は、まず小児科です。噛む・飲み込むことが気になる場合は言語聴覚士(嚥下はSTの対応領域です)、感覚の受け取り方や食具・姿勢は作業療法士が近い領域です。
食べられるものが減ってきました
先に相談してください。広げようとするより優先されます。体重や成長に影響が出ている場合は小児科へ。口の中の痛み(むし歯・口内炎・歯の生え変わり)が原因のこともあるため、歯科の確認も有効です。
給食が心配です。園に何を伝えればいいですか?
食べられるものを具体的に(食材名だけでなく食感・調理法まで)、どうしても難しいものとその理由、どう対応してほしいか(量を減らす・皿に乗せるだけ など)、そして無理強いしないでほしいことをはっきり伝えてください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。