🔴 順番が書かれています
上の一文は、放課後等デイサービスガイドラインの本人支援「人間関係・社会性」の<自己の理解と行動の調整>という項目です。三つのことが、この順で並んでいます。
- 自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解し
- 🔴自己を肯定的に捉えられる機会を通じて
- 気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように
🔴 これが意味すること
「まず落ち着けるようになってから、自信をつける」——という順番では書かれていません。
ガイドラインの順番は逆です。
自己を肯定的に捉えられる機会が先にあり、それを
通じて気持ちの調整と行動が来ます。
——
できるようになったら褒める、ではなく、肯定的に捉えられる機会そのものが支援内容として書かれている、ということです。
児童発達支援ガイドラインの同じ項目は「大人を介在して自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する」です。🔴 「大人を介在して」——ひとりで気づくものとしては書かれていません。
どこで育つと書かれているか
放課後等デイサービスガイドラインは、自己肯定感を複数の場面で挙げています。
| 場面 | ガイドラインの記述 |
| 日常生活の充実と自立支援(4つの基本活動の一つ) | 「こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする」 |
| 多様な遊びや体験活動 | 「学校や家庭とは異なる時間、空間、人、多様な遊びや体験活動等の機会を提供することにより、こどもが自己肯定感や自己有用感を高め」 |
| 思春期 | 「様々な葛藤を抱えたり、家族・友人との関係などに悩んだりする繊細な時期。思春期のこどもが、自己肯定感を高められるよう支援を行うことが重要であり、こどもの意思を受け止めつつ、一人一人の悩みや葛藤、個別性に合わせて寄り添って支援を行っていく」 |
| 不登校の状態にあるとき | 🔴「まずはこども本人の気持ちに寄り添い、共感することで、こどもの自己肯定感を高めることが大切」 |
🔴 「成功体験の積み増し」
「積み増し」という言い方が使われています。
——
できることを増やす前に、できた経験を増やす。そして、その手段として書かれているのは
「意欲的に関われるような遊び」です(→
スモールステップについて)。
🔴🔴 年齢で、効き方が変わると書かれています
放課後等デイサービスガイドラインは、発達過程を四つの区分で記述しています。そのうち二つに、周囲の評価との関係が書かれています。
| 時期 | ガイドラインの記述 |
おおむね6歳〜8歳 (小学校低学年) | 「大人に見守られることで、努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる。その後の時期と比べると、🔴大人の評価に依存した時期である」 |
おおむね9歳〜10歳 (小学校中学年) | 「同年代の集団や仲間を好み、大人に頼らずに活動しようとする。🔴他者の視線や評価に一層敏感になる」/「『9、10歳の節』と呼ばれる大きな変化を伴っており、特有の内面的な葛藤がもたらされる。🔴この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである」 |
🔴 支え方の重心が動きます
低学年は
「大人の評価に依存した時期」——
大人がどう返すかが、そのまま届く時期として書かれています。
中学年は
「他者の視線や評価に一層敏感になる」時期——
このとき必要なこととして書かれているのは
「自己の多様な可能性を確信する」ことです。
——
ほめ方を変えるのではなく、見せる可能性の幅を広げる、と読める書き方です。
🔴 下がるほうの記述も、国の文書にあります
文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」は、自己肯定感が下がる経路を具体的に書いています。
手引より(注意欠陥多動性障害の章)
「……周囲の大人から行動を強く規制されたり、注意や叱責を受けたりする場面が増える可能性が高い。」「このような関わりの繰り返しにより、自己肯定感が低下し、『自分はどうせ、何をやっても叱られる』『やりたいことは大人に禁止されてばかりだ』といった自己肯定感の低い投げやりな気持ちや無力感に陥ってしまう可能性が高くなる。」
手引が挙げている対応
「注意や叱責をするよりも、望ましい行動を具体的に示したり、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的である。」——
「すぐに」と書かれています(→
ほめ方について)。
手引は、病弱教育の章でも同じ向きのことを書いています——「子供のいいところ、頑張っているところ、できたこと、可能性などを見つけて、適切に『ほめる』『認める』ことで自尊感情を高め、『頑張る力』を引き出すことが大切である」。
そして、下がったままの行き先も書かれています。手引は不安やうつ症状、不登校、心身症などを二次的な障害として記述しています(→二次障害とは?)。
🔴 検査の数字と並べて書かれていること
児童発達支援ガイドライン 留意事項⑦
「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、『育つ上での自信や意欲』、『発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上』、『自由で多様な選択』等も踏まえながら、こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと。」
🔴 「育つ上での自信や意欲」が、検査に表れる知的能力と並べて書かれています。おまけの部分としては書かれていません(→田中ビネー知能検査とは?/強みに着目するという考え方)。
土台にあるもの
児童発達支援ガイドラインは、アタッチメント(愛着)の脚注でこう定義しています——
「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台。こどもに自らや社会への基本的な信頼感をもたらし……」そして大人の役割を
「安心の基地」としています(→
愛着(アタッチメント)とは?)。
この記事で書かないこと
🔴自己肯定感の測り方・尺度・チェックリストは書きません。確かめた一次情報にそうしたものがないためです。
「こうすれば上がる」という手順も書きません。国の文書が挙げているのは成功体験の積み増し/意欲的に関われるような遊び/望ましい行動を具体的に示すこと/良い面をすぐに褒めること/気持ちに寄り添い共感することという関わりの向きまでです。
年齢ごとの目安も書きません。ガイドラインの発達過程の区分は「おおむね」としており、到達すべき状態の一覧ではありません。
書けるのは、国のガイドラインと手引が何と書いているかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 🔴ガイドラインが「自己を肯定的に捉えられる機会」を支援内容に挙げています。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 叱責の場面が増えていないかの共有。手引は「注意や叱責をするよりも、行動の良い面を見つけたらすぐに褒める」としています |
| スクールカウンセラー | 学校教育法施行規則 第65条の3(児童の心理に関する支援に従事する) |
| 医療機関 | 🔴眠れない・食べられない・気持ちが落ち込む状態が続くとき。療育は医療ではありません |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
| 親の会・保護者同士の交流 | 同じ立場の人とつながる |
※本記事は一般的な情報提供です。発達には個人差があります。療育は医療ではありません。
出典
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(放課後等デイサービスガイドライン 令和6年7月)本人支援「人間関係・社会性」<自己の理解と行動の調整>(自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解し、自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する)/4つの基本活動(日常生活の充実と自立支援=こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする/多様な遊びや体験活動=学校や家庭とは異なる時間、空間、人、多様な遊びや体験活動等の機会を提供することにより、こどもが自己肯定感や自己有用感を高め)/思春期(こどもの意思を受け止めつつ、一人一人の悩みや葛藤、個別性に合わせて寄り添って支援)/不登校の状態にあるこども(まずはこども本人の気持ちに寄り添い、共感することで、こどもの自己肯定感を高めることが大切)/発達過程(おおむね6歳〜8歳=大人に見守られることで努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる/その後の時期と比べると大人の評価に依存した時期である。おおむね9歳〜10歳=他者の視線や評価に一層敏感になる/「9、10歳の節」/この時期に自己の多様な可能性を確信することは発達上重要なことである)
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン 令和6年7月)本人支援「人間関係・社会性」<自己の理解と行動の調整>(大人を介在して自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する)/<アタッチメント(愛着)の形成と安定>(安心の基地の役割)/アタッチメントの脚注定義(こどもが怖くて不安なときに、身近なおとながそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台/こどもに自らや社会への基本的な信頼感をもたらし)/留意事項⑦(単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、「育つ上での自信や意欲」「発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上」「自由で多様な選択」等も踏まえながら、こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと)
- 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(令和3年6月改訂)第3編Ⅹ 注意欠陥多動性障害(周囲の大人から行動を強く規制されたり注意や叱責を受けたりする場面が増える可能性が高い/「自分はどうせ、何をやっても叱られる」「やりたいことは大人に禁止されてばかりだ」といった自己肯定感の低い投げやりな気持ちや無力感/注意や叱責をするよりも望ましい行動を具体的に示し、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めることが効果的)/病弱教育の章(子供のいいところ、頑張っているところ、できたこと、可能性などを見つけて、適切に「ほめる」「認める」ことで自尊感情を高め、「頑張る力」を引き出すことが大切)/二次的な障害(不安やうつ症状、不登校、心身症)
- 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)/e-Gov法令検索第65条の3(スクールカウンセラーは小学校における児童の心理に関する支援に従事する)
- e-Gov法令検索(法令横断のキーワード検索)2026年9月6日に全法令を横断して検索した結果、「自己肯定感」に該当する法令なし
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
落ち着いてから、自信をつけるものではないのですか?
国のガイドラインの順番は逆です——「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する」。自己肯定が先で、行動の調整があとです。
何をすると育つと書かれていますか?
放課後等デイサービスガイドラインは「こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする」としています。できることを増やす前に、できた経験を増やすという順番です。
年齢によって、支え方は変わりますか?
ガイドラインはおおむね6歳〜8歳を「大人の評価に依存した時期」、おおむね9歳〜10歳を「他者の視線や評価に一層敏感になる」時期とし、後者について「この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである」としています。
叱ることが多くなってしまいます
国の手引が、その循環を書いています——「注意や叱責を受けたりする場面が増える可能性が高い」「『自分はどうせ、何をやっても叱られる』……無力感に陥ってしまう可能性が高くなる」。そのうえで「望ましい行動を具体的に示したり、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的」としています。
検査の結果ばかりが気になります
児童発達支援ガイドラインは「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、『育つ上での自信や意欲』……にも着目し」としています。検査の数字と並べて書かれています。
学校に行きたがりません
放課後等デイサービスガイドラインは
「まずはこども本人の気持ちに寄り添い、共感することで、こどもの自己肯定感を高めることが大切」としています(→
登園・登校をしぶるとき)。
自己肯定感は、どう測るのですか?
この記事では測り方を書きません。確かめた一次情報に尺度やチェックリストがないためです。
土台になるものはありますか?
児童発達支援ガイドラインは、アタッチメント(愛着)を「安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台」とし、「自らや社会への基本的な信頼感をもたらし」としています。大人の役割は「安心の基地」です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。