🔴🔴 ASHAが挙げている二つの柱
ASHA「Autism」Positive Behavior Support より
「よく用いられる方略は、二つの側面に焦点を当てる——①
困難な行動を機能的に評価して、それらの行動とコミュニケーションとの関係を明らかにすること②
困難な行動を、適切で、機能的に等価な代わりの行動に置き換えること
🔴 ①に「コミュニケーションとの関係」と書かれています
評価するのは
行動の激しさでも
回数でもありません。
その行動と、伝えることとの関係です。
——
行動を「何かを伝えようとしているもの」として見るということです。
🔴 ②の「機能的に等価な」
ただ別の行動に替えるのではありません。同じはたらきをする(機能的に等価な)行動に置き換える、と書かれています。
——
その行動が果たしていた役割は残したまま、やり方だけを変えるという考え方です。
ASHAはさらに、「多要素からなる介入の計画には、予防の方略(すなわち先行事象へのはたらきかけ)が含まれることが多い」としています。起きてから対応するだけではない、という書き方です(→ABC分析とは?)。
「行動分析の原理」と「本人中心の価値」
ASHAより
「PBSは、行動分析の原理と本人を中心に据えた価値を統合し、困難な行動に代わる力を育てる。」「PBSは、問題となる行動を示す
自閉症のこどもと大人を支えるために用いられうる」(Carr et al., 2002)
🔴 二つが並んでいることの意味
ASHAは、ABAについて
支持する立場と反対する立場を併記しています。反対の側の言い分は
「行動の修正に焦点を当てることが自律性を奪う」でした。
PBSの定義に
「本人を中心に据えた価値」が入っているのは、その論点に関わるところです(→
ABA(応用行動分析)とは?)。
ASHAはPBSを「教育・学校を基盤とする行動的介入」の節に置いており、同じ節にはSCERTSモデルやTEACCHなどのプログラム例が並んでいます(→TEACCHとは?)。
🔴🔴 国のガイドラインは、出どころを三つ挙げています
「積極的行動支援」「PBS」という語は法令にも、こども家庭庁のガイドラインにも、文部科学省の手引にも見当たりませんでした(2026年9月6日確認)。
ただし、同じ向きの記述は国のガイドラインにあります。
児童発達支援ガイドライン「認知・行動」領域
「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び対応」——🔴
出どころが三つ挙げられています。
①感覚の偏り ②認知の偏り ③
コミュニケーションの困難性そして
「予防及び対応」——
予防が先に書かれています。
環境について書かれていること
「事業所等は……計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」・
こどもによる選択ができるよう配慮すること・
時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること・
不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えること——ASHAのいう
「先行事象へのはたらきかけ」にあたるものが、国の文書では
環境の義務として書かれています(→
環境調整とは?)。
また文部科学省の手引は「注意や叱責をするよりも、望ましい行動を具体的に示したり、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的である」としています。罰ではない側の記述です。
「置き換える」の具体例
ASHAは、同じページの別の項目で置き換えの具体的なかたちを書いています。
機能的コミュニケーション訓練(FCT)
「不適応行動のコミュニケーション上の機能の評価と、ABAの手続きを用いて代わりの反応を教えることを組み合わせた行動的介入プログラム。
問題となる行動は消去によって取り除かれ、必要や要求を伝える、より適切な別の方法に置き換えられうる。」(Carr & Durand, 1985)
ASHAは、FCTが
「幅広い年齢の自閉症のこどもに、認知の水準や表出コミュニケーションの力にかかわらず用いられうる」としています。
🔴 「伝える手段」がないままでは置き換えられません
置き換える先が
「必要や要求を伝える、より適切な別の方法」である以上、
伝える手段があることが前提になります。
ASHAは
AACについて
「AACの介入に前提条件はない」としています。
——
話しことばが出てから、ではありません(→
AACとは?/
PECSとは?)。
ASHAは自閉症のページで、支援の視点として「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」も挙げています。
面談で確かめられること
- この行動は、何を伝えようとしていると考えていますか——ASHAの①「行動とコミュニケーションとの関係」です
- 置き換える先は、何ですか——ASHAの②「機能的に等価な代わりの行動」です
- 伝える手段は足りていますか——置き換える先が「伝える方法」である以上、前提になります
- 起きる前にできることは何ですか——ASHAは「予防の方略(先行事象へのはたらきかけ)」を挙げています
- 環境の側で変えられることはありますか——児発GLは環境を「行わなければならない」側に書いています
- いつ見直しますか——省令は少なくとも六月に一回以上と定めています
🔴 「減らす」だけの計画になっていないか
ASHAの定義は
二つの柱でできています。
①機能を評価する ②
置き換える——
減らすことだけが書かれている計画は、この二つ目が抜けているということになります。
この記事で書かないこと
🔴PBSの手続き・段階・様式は書きません。ASHAが書いているのは定義と二つの柱までで、手順は示されていないためです。
🔴効果も書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
行動の見方の一覧(チェックリスト)も載せません。確認できた一次情報にそうしたものがありません。かわりに、解釈をつけずに、見たことを日付つきで書き留めることをお勧めしています。
書けるのは、ASHAと国のガイドラインが実際に何と書いているかと、そこから何を尋ねられるかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 🔴「置き換える先は何ですか」。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 言語聴覚士 | 伝える手段。置き換える先が「伝える方法」である以上、ここが要になります |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 起きる前にできること、環境の側で変えられること |
| 作業療法士 | 感覚の側から(児発GLは出どころの一つに感覚の偏りを挙げています) |
| 小児科・児童精神科など | 🔴けがにつながる行動があるとき。療育は医療ではありません |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
※本記事は一般的な情報提供です。支援の方法は事業所や専門職によって異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
PBSとは何ですか?
米国言語聴覚協会(ASHA)の定義は「困難な行動を減らすために肯定的な(罰を用いない)介入を用いるアプローチ」(Carr et al., 2002)です。「罰を用いない」が定義に入っています。
二つの柱とは何ですか?
①困難な行動を機能的に評価して、それらの行動とコミュニケーションとの関係を明らかにすること②困難な行動を、適切で、機能的に等価な代わりの行動に置き換えることです。
「機能的に等価な」とは?
同じはたらきをする行動に置き換える、ということです。その行動が果たしていた役割は残したまま、やり方だけを変えるという考え方です。
起きてから対応するだけですか?
ASHAは「多要素からなる介入の計画には、予防の方略(すなわち先行事象へのはたらきかけ)が含まれることが多い」としています。
国の文書にはありますか?
「積極的行動支援」「PBS」の語は見当たりません(2026年9月6日確認)。ただし児発ガイドラインは行動障害を「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる」ものとし、「予防及び対応」としています。
置き換える先がありません
置き換える先が「必要や要求を伝える、より適切な別の方法」である以上、伝える手段があることが前提になります。ASHAは「AACの介入に前提条件はない」としており、話しことばが出てから、ではありません。
計画に「減らす」しか書かれていません
ASHAの定義は二つの柱でできています。減らすことだけが書かれている計画は、二つ目(置き換えること)が抜けているということになります。
効果はありますか?
この記事では効果を書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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