国のガイドラインが書いている「どこから生じるか」
児童発達支援ガイドラインは、支援の五つの領域のうち「認知・行動」のねらいに「行動障害への予防及び対応」を掲げ、その支援内容をこう書いています。
原文
「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び適切行動への対応の支援を行う」——こども家庭庁『児童発達支援ガイドライン』(令和6年7月)
出どころとして挙げられているのは
感覚・
認知・
コミュニケーションの三つです。
ASHAも同じ方向のことを書いています。自閉症のあるこどもの周囲にいる人の課題として、「かすかなコミュニケーションの働きかけに気づいて応じること」と「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」を挙げています。
行動を、伝えようとしていることとして読む——これは気休めの言い換えではなく、専門の文書に書かれている読み方です。
三つの出どころを、家庭で見分ける
「感覚」「認知」「コミュニケーション」を、見るところに置き換えると次のようになります。
| 出どころ | 見るところ | 手がかり |
| 感覚 | 起きた場所と、そのときの環境 | 音・光・におい・人の多さ。同じ場所で繰り返し起きていないか |
| 認知 | その直前に何が変わったか | 予定の変更、終わりの合図、順番。見通しが崩れた瞬間ではないか |
| コミュニケーション | そのとき何を伝えたかったか | 要求・拒否・注目・助けて。ことばで言えていたら起きたか |
三つ目がいちばん見落とされます
「言えないから起きている」という形があります。
伝える手段が増えると、そのぶん行動で伝える必要が減る——という考え方は、代替手段(AAC)の領域で長く扱われてきたものです(→
AACとは?)。
ことばに限りません。指さし、サイン、絵カード、「おしまい」「かして」の二語でも足ります。
※ここに挙げたのは家庭で気づくための手がかりであり、原因を特定する方法ではありません。
起きている最中にできること
起きてしまってからは、教える時間ではありません。安全と、落ち着くことが先です。
- まわりを安全にする——固いもの、角、階段。人ではなく物を動かします。
- ことばを減らす——長い説明は、この時間帯には届きにくいと考えておきます。短く、少なく。
- 刺激を減らす——音・視線・人。可能なら人が離れるのではなく、静かな場所へ移るほうが早いことがあります。
- そばにいる——国のガイドラインは、大人の役割を「安心の基地」という言葉で書いています(次の節)。
- 落ち着いてから、短く言う——「こわかったね」「いやだったね」。説教は、この時間にしません。
- あとで記録する——日付・時刻・場所・直前の出来事・続いた時間。これが次の手がかりになります。
要求を通すかどうか、について
「泣けば通ると学習する」という言い方があります。
この記事では、その是非を断定しません。確認できた一次情報の範囲を超えるためです。
そのうえで、国のガイドラインもASHAも共通して書いているのは
「行動の前に何があったか」を見るという順序です。
通す/通さないの判断より先に、
同じことが繰り返し起きている条件を見つけるほうが、結果として近道になります。
🔴 「安心の基地」——国のガイドラインの言葉
児童発達支援ガイドラインは、五領域のうち「人間関係・社会性」の支援内容として、こう書いています。
原文
「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう『安心の基地』の役割を果たせるよう支援する」同じガイドラインは、アタッチメント(愛着)を
「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台」と定義しています。
「感情に折り合いをつける」力は、受け止められる経験の繰り返しから育つ——国の文書は、そういう順序で書いています。
かんしゃくのたびに受け止めることは、甘やかしとしてではなく、折り合いをつける力を育てる過程として位置づけられている、と読めます。
減らしていくために、環境の側でできること
国のガイドラインが挙げている環境の要件は、家庭でもそのまま使えます。
- 時間と空間を、本人にわかりやすく構造化する——次に何があるか、どこまでやるかを見える形に(→構造化・視覚的支援)
- 不安な気持ちを落ち着かせる環境を整える——戻れる場所を一つ決めておく
- 予定等の見通しをわかりやすくする——変更は、当日その場ではなく先に伝える
- こどもによる選択ができるよう配慮する——「どちらにする?」の形を増やす
- 伝える手段を増やす——ことば以外も含めて(→AAC)
起きてからの対応より、起きる条件を減らすほうが、家庭の負担は軽くなります。
相談を考えたいとき
次のようなときは、家庭の工夫だけで抱えないほうがよい状況です。
- 本人や周りにけががある、または危険が伴う
- 回数や長さが増えている
- 行ける場所・できることが減ってきた
- ご家族が眠れない、追いつめられている
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「認知・行動」「人間関係・社会性」は国のガイドラインが定める支援の領域です |
| 言語聴覚士(ST) | 伝える手段を増やす相談 |
| 小児科・児童精神科 | けががある、眠れない、急に変わったとき |
ご家族への支援も、ガイドラインが定める支援の一部です(「家族支援」——相談援助、レスパイト、保護者同士の交流、ペアレント・トレーニングなどが明記されています)。
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
かんしゃくは、しつけの問題ですか?
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、行動障害について「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる」と書いています。国の文書が挙げている出どころは、この三つです。
その場では、どうすればいいですか?
安全を確保し、ことばと刺激を減らし、そばにいる——この順序です。落ち着いてから短く声をかけます。起きている最中は、教える時間ではありません。
要求を通すと、泣けば通ると学習しませんか?
この記事では、その是非を断定しません。確認できた一次情報の範囲を超えるためです。そのうえで、国のガイドラインもASHAも「行動の前に何があったか」を見るという順序を共通して書いています。繰り返し起きている条件を見つけるほうが、結果として近道になることが多いと考えられます。
抱きしめるのは甘やかしになりませんか?
国のガイドラインは、大人の役割を「安心の基地」と書き、「自分の感情に折り合いをつけたりできるよう」支援する、と位置づけています。受け止められる経験の繰り返しが折り合いをつける力につながる、という書き方です。
ことばが出ていれば、かんしゃくは減りますか?
そうとは限りませんが、伝える手段が増えると行動で伝える必要が減るという考え方は、代替手段(AAC)の領域で長く扱われてきたものです。ことばに限らず、指さし・サイン・絵カードも手段に含まれます。
いつ相談すればいいですか?
けががある/回数や長さが増えている/行ける場所が減ってきた/ご家族が限界に近い——このいずれかに当てはまるときです。ご家族への支援も、ガイドラインが定める支援の一部です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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