先に、確かめた結果
| 調べたもの | 行動分析の意味での「強化」 |
| e-Gov法令検索(全法令を横断) | 「強化子」に該当する法令はありません |
| こども家庭庁 児童発達支援ガイドライン | 「強化」は7か所ありますが、すべて「体制強化」「さらに強化・充実を図る」等の一般語です |
| こども家庭庁 放課後等デイサービスガイドライン | 同上 |
| 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」 | 同上 |
🔴 これが意味すること
そういう考え方がない、という意味ではありません。この呼び名で定義した国の文書を確かめられなかった、という意味です。
ですから、この記事では
「強化とは○○である」という定義を書きません。かわりに、
一次情報が実際に書いていることを並べます。
🔴 学会が書いている、いちばん近い記述
米国言語聴覚協会(ASHA)の自閉症のページは、支援の選択肢の一つ「偶発教授(Incidental Teaching)」をこう説明しています。
ASHA「Autism」より
「臨床家は、子どもの興味にもとづいた自然に生じる教える機会を提供する。臨床家は子どものリードに従い、その試みが望ましいコミュニケーション行動に近づくにつれて、コミュニケーションの試みを強化する。」(G. G. McGee et al., 1999)
🔴 三つ、読み取れること
①
「子どもの興味にもとづいた」「子どものリードに従い」——大人が場面を作って与える形としては書かれていません。
②
強化されるのは「コミュニケーションの試み」です。
——できあがった正解ではなく、
試み。
③
「近づくにつれて」——完成してからではなく、
近づいている途中から。
ASHAは、この方法を「自然な環境の中に統合される方法」(Milieu Therapy)の一つとしても挙げ、「『セラピーの時間』だけでなく、一日を通して行われる日常の環境と活動の中での訓練を含む」(Kaiser et al., 1992)としています。
国の文書が書いている「ほめる」
「強化」という語は使われていませんが、同じ向きの記述は国の文書にあります。
文部科学省「教育支援の手引」(注意欠陥多動性障害の章)
「注意や叱責をするよりも、望ましい行動を具体的に示したり、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的である。」🔴
「すぐに」——時間が空かないことが、条件として書かれています。
🔴
「望ましい行動を具体的に示したり」——ほめる前に、
何が望ましいかを示すことが先に並んでいます。
同(病弱教育の章)
「子供のいいところ、頑張っているところ、できたこと、可能性などを見つけて、適切に『ほめる』『認める』ことで自尊感情を高め、『頑張る力』を引き出すことが大切である。」——
「できたこと」だけではありません。頑張っているところと
可能性も並んでいます。
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインも、4つの基本活動の一つを「こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする」としています(→自己肯定感とは?)。
🔴 ASHAが「罰ではない」と書いている箇所
ASHAは
積極的行動支援(PBS)を
「困難な行動を減らすために肯定的な(罰を用いない)介入を用いるアプローチ」と定義しています(Carr et al., 2002)(→
積極的行動支援(PBS)とは?)。
行動の「出どころ」について書かれていること
ほめ方の前に、国のガイドラインが書いていることがあります。
児童発達支援ガイドライン「認知・行動」領域
「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び対応」——
三つ挙げられています。
①感覚の偏り ②認知の偏り ③コミュニケーションの困難性
🔴 行動のあとに何を返すかだけでは、この三つのどれにも触れていないかもしれません。ガイドラインは環境について「計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」としています(→環境調整とは?)。
ASHAが「置き換える」と書いていること
ASHAは
機能的コミュニケーション訓練(FCT)について、
「問題となる行動は消去によって取り除かれ、必要や要求を伝える、より適切な別の方法に置き換えられうる」(Carr & Durand, 1985)としています。
🔴
「置き換える」——減らすだけとしては書かれていません(→
消去とは?)。
この記事で書かないこと
🔴「強化」の定義・種類・強化子の選び方は書きません。確かめた一次情報のどれにもこの語の定義がなく、定義を書けば、それは私の作文になってしまうためです。そういう考え方がないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。
🔴効果も書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。ただし、国の手引が「注意や叱責をするよりも、望ましい行動を具体的に示したり、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的である」と書いていることは、事実としてお伝えできます。
ごほうびの与え方・回数・減らし方も書きません。確認できた一次情報にその記述がありません。
書けるのは、ASHAと国の文書が実際に何と書いているかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 支援の中でどう関わっているか。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 🔴手引は「注意や叱責をするよりも……行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的」としています |
| 言語聴覚士・作業療法士 | 伝える手段・感覚の側から |
| 小児科・児童精神科など | 診断に関する判断。療育は医療ではありません |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
| 親の会・保護者同士の交流 | 同じ立場の人とつながる |
※本記事は一般的な情報提供です。支援の方法は事業所や専門職によって異なります。療育は医療ではありません。
出典
- American Speech-Language-Hearing Association「Autism」(Practice Portal)Treatment Options/Incidental Teaching(臨床家は子どもの興味にもとづいた自然に生じる教える機会を提供する/子どものリードに従い、その試みが望ましいコミュニケーション行動に近づくにつれてコミュニケーションの試みを強化する。G. G. McGee et al., 1999)/Milieu Therapy(「セラピーの時間」だけでなく、一日を通して行われる日常の環境と活動の中での訓練を含む。Kaiser et al., 1992)/Positive Behavior Support(困難な行動を減らすために肯定的な(罰を用いない)介入を用いるアプローチ。Carr et al., 2002)/Functional Communication Training(問題となる行動は消去によって取り除かれ、必要や要求を伝えるより適切な別の方法に置き換えられうる。Carr & Durand, 1985)
- 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(令和3年6月改訂)第3編Ⅹ 注意欠陥多動性障害(注意や叱責をするよりも、望ましい行動を具体的に示したり、行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的である)/病弱教育の章(子供のいいところ、頑張っているところ、できたこと、可能性などを見つけて、適切に「ほめる」「認める」ことで自尊感情を高め、「頑張る力」を引き出すことが大切)。なお行動分析の意味での「強化」の定義は、2026年9月6日に全文を確認した範囲で見当たらない
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン/放課後等デイサービスガイドライン 令和6年7月)児発GL「認知・行動」(感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び対応)/支援を行うに当たっての環境(計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない)/放デイGL 日常生活の充実と自立支援(こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする)。なお両ガイドラインに出てくる「強化」は「体制強化」「さらに強化・充実を図る」等の一般語であり、行動分析の意味での定義は見当たらない
- e-Gov法令検索(法令横断のキーワード検索)2026年9月6日に全法令を横断して検索した結果、「強化子」に該当する法令なし
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
「強化」の定義を教えてください
🔴この記事では定義を書きません。法令・こども家庭庁のガイドライン・文部科学省の手引のいずれにもこの意味での定義が見当たらなかったためです(2026年9月6日確認)。そういう考え方がないという意味ではありません。
ガイドラインに「強化」と書いてありますが?
体制強化・さらに強化充実を図るといった一般語としての使われ方です。行動分析の意味での定義は見当たりませんでした。
学会は何と書いていますか?
米国言語聴覚協会(ASHA)は、偶発教授について「子どものリードに従い、その試みが望ましいコミュニケーション行動に近づくにつれて、コミュニケーションの試みを強化する」としています。できあがった正解ではなく「試み」が対象です。
ほめるタイミングはありますか?
国の手引は「行動の良い面を見つけたらすぐに褒めたりすることが効果的」としています。「すぐに」が条件として書かれています。
何をほめればよいですか?
手引は「子供のいいところ、頑張っているところ、できたこと、可能性などを見つけて」としています。できたことだけではありません。
ごほうびは使ってよいのでしょうか?
この記事では、与え方・回数・減らし方を書きません。確認できた一次情報にその記述がないためです。通っている事業所や専門職とご相談ください。
行動を減らしたいのですが
こども家庭庁の児発ガイドラインは、行動障害を「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる」ものとしています。出どころが三つ挙げられています。またASHAは「別の方法に置き換えられうる」としており、減らすだけとしては書かれていません。
効果はありますか?
この記事では効果を書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。