ガイドラインが挙げている四つ
「次の事項」として並んでいるものです。
| 書かれていること |
| ① | こども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことにより、興味関心を拡げ、🔴こどもによる選択ができるよう配慮すること |
| ② | こどもの活動が豊かに安全・安心に展開されるよう、設備や環境を整えるとともに、衛生管理や安全の確保等に努めること |
| ③ | 生活する空間は、温かで、親しみやすく、くつろげる場となるようにするとともに、障害の特性を踏まえ、🔴時間や空間を本人にわかりやすく構造化することや、🔴不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えるなど、個々のニーズに配慮した環境の中で、生き生きと活動できる場となるように配慮すること |
| ④ | こどもが人と関わる力を育てていくため、こども自らが周囲のこどもや大人と関われるようにすること |
🔴 ①に「選択」が入っています
環境を整えるというと、
大人が決めて与えるもののように聞こえるかもしれません。
ところが、ガイドラインが最初に挙げているのは
「こどもによる選択ができるよう配慮すること」です。
——
選べる状態を作ることも、環境調整として書かれています。
🔴🔴 「構造化」を、国の文書が平易に定義しています
「構造化」ということばは、説明が難しくなりがちです。ところが、こども家庭庁のガイドラインの自己評価表の注記に、とても平易な説明があります。
児童発達支援ガイドライン(自己評価表の注記)
「『本人にわかりやすく構造化された環境』とは、こども本人がこの部屋で何をするのかがわかりやすいよう、机や本棚の配置などを工夫することです。」
🔴 「この部屋で何をするのかがわかりやすい」——これが、国の文書による構造化の説明です。そして手段として挙げられているのは「机や本棚の配置」。特別な道具の話ではありません。
同じガイドラインの、別の場所にも
本人支援の「健康・生活」領域には、こうあります——
「・構造化等による生活環境の調整——生活の中で、様々な遊びを通した学びが促進されるよう環境を整える。また、障害の特性に配慮し、時間や空間を本人に分かりやすく構造化する。」「運動・感覚」領域には——
「<感覚の特性への対応>感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。」——
領域をまたいで出てきます(→
5領域とは?)。
🔴🔴 法律は、二つの条文に分けています
ここは、園や学校と話すときに効いてくる区別です。障害者差別解消法は、環境に関することを二つの別の条文で定めています。
| 条と、その語尾 | 何を定めているか |
第5条(環境の整備) 語尾=努めなければならない(努力義務) | 不特定多数に向けた、あらかじめの整備。施設・設備の改善、職員研修など |
第7条第2項(行政機関等)/第8条第2項(事業者) 語尾=しなければならない(義務) | 🔴その人に向けた合理的配慮。「その旨の意思の表明があった場合において」始まり、「負担が過重でないとき」という留保がつく |
🔴 この違いが効く場面
「うちの学校では、そういう設備がないので」——これは
第5条(環境の整備)の話です。
「この子には、この配慮を」——これは
第7条第2項・第8条第2項(合理的配慮)の話で、
意思の表明があれば始まる義務です。
——
二つは別の条文なので、設備が整っていないことは、個別の配慮をしない理由としては条文上つながりません。(ただし、合理的配慮の条文にも
「負担が過重でないとき」という留保はあります。)
→
合理的配慮とは?
事業者の合理的配慮は、令和6年4月1日から義務になりました。
🔴 「環境で変わりうる」と、国の手引が書いています
文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」の、知的障害の章です。
手引より
「教育的対応を含む広義の環境条件を整備することによって、知的発達の遅れがあまり目立たなくなったり、適応行動がある程度改善されたりする場合もある。」「さらに、適応行動の問題は、その適応行動が要求されない状況になると顕在化しなくなるということもある。」そして結論——
🔴
「つまり、知的障害は、個体の条件だけでなく、環境的・社会的条件との関係で、その障害の状態が変わり得る場合があることに留意する必要がある。」(→
知的障害とは?)
同じ向きは、法律にもあります。発達障害者支援法 第2条第2項は「発達障害者」を「発達障害及び社会的障壁により……制限を受けるもの」と定義し、第3項は社会的障壁を「事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」としています。
🔴 「慣行」も環境です
社会的障壁は、段差やスロープの話だけではありません。
「全員が同じ時間、同じ姿勢で」「宿題は全員同じ量」「行事は全員参加」——こうした
運用のしかたも、条文上は
「慣行」にあたり得ます。
同法 第2条の2第2項は、支援について
「社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない」としています。
相談するときの整理のしかた
ガイドラインと条文の言葉を使うと、お願いごとが具体的になります。
| 整えられるもの | そう言える根拠 |
| 場所(座席、しきり、静かな場所) | 「時間や空間を本人にわかりやすく構造化する」「不安な気持ちを落ち着かせる環境を整える」 |
| 時間(見通し、順番、区切り、待つ長さ) | 同上(「時間や空間を」と、時間が先に書かれています) |
| 量(課題の数、一枚に載せる量) | 「個々のニーズに配慮した環境の中で、生き生きと活動できる場」 |
| 手段(見せる、書く、道具、機器) | 「感覚の偏りに対する環境調整等の支援」/視覚支援・AAC |
| 選べること(やり方、順番、場所) | 🔴「こどもによる選択ができるよう配慮すること」(①に明記) |
- 場面を特定する——「朝の会」「移動教室」「給食」「宿題」など
- そのとき何が起きているかを、解釈をつけずに書き留める——日付と時刻つきで
- うまくいっている場面も書く——そこに、環境の手がかりがあります
- 上の五つ(場所・時間・量・手段・選べること)で案を出す
- いつ見直すかを決める——「一学期試して面談で見直す」と期限を添える
🔴 「本人が慣れるまで待つ」以外の道
国のガイドラインも手引も、
環境の側を動かすことを支援内容として書いています。
本人が慣れることと、環境を整えることは
どちらか一方ではありません。手引の言い方でいえば——
「環境条件を整備することによって……適応行動がある程度改善されたりする場合もある」です。
ことばの使われ方について
正確を期して、書いておきます。
確かめた結果(2026年9月6日)
・
e-Gov法令検索——「環境調整」を含む法令はありますが、
少年法や保護司に関する規則など、
この記事とは別の文脈のものです
・
こども家庭庁のガイドライン——
「感覚の偏りに対する環境調整等の支援」「支援方法や環境調整等に関する相談援助」として使われています
・
文部科学省の手引——「環境調整」の語が使われています
——
発達支援の分野では、国の文書で使われていることばです。
この記事で書かないこと
具体的な配置図や、道具の名前は書きません。ガイドラインが挙げているのは「机や本棚の配置などを工夫すること」までで、どう置くのが良いかは書かれていないためです。
環境を整えることの効果も書きません。ただし、国の手引が「環境条件を整備することによって……適応行動がある程度改善されたりする場合もある」と書いていることは、事実としてお伝えできます。
感覚統合の訓練の効果は書きません。一次情報を確認できなかったためです(このシリーズで一貫している判断です)。
書けるのは、ガイドラインと条文が何を求めているかと、そこから何を尋ねられるかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 場所・時間・量・手段・選べることの相談。合理的配慮は「意思の表明があった場合」に始まります |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | ガイドラインが「行わなければならない」としている側。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 保育所等訪問支援 | 専門職が園・学校を訪問する制度。児発GLは地域支援に「支援方法や環境調整等に関する相談援助」を挙げています |
| 作業療法士・言語聴覚士 | 姿勢・道具・伝える手段の側から |
| 市区町村教育委員会 | 学校との調整、通級や教材の相談 |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
※本記事は一般的な情報提供です。実際にどこまでできるかは、園・学校・事業所とのご相談になります。療育は医療ではありません。
出典
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン 令和6年7月)支援を行うに当たっての環境(「事業所等は、こうした人、物、場等の環境が相互に関連しあい、こどもの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」/①こどもによる選択ができるよう配慮すること/②設備や環境を整え衛生管理や安全の確保に努めること/③温かで、親しみやすく、くつろげる場/時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること・不安な気持ちを落ち着かせる環境/④こども自らが周囲のこどもや大人と関われるようにすること)/自己評価表の注記(「本人にわかりやすく構造化された環境」とは、こども本人がこの部屋で何をするのかがわかりやすいよう、机や本棚の配置などを工夫すること)/本人支援「健康・生活」(構造化等による生活環境の調整)/「運動・感覚」<感覚の特性への対応>(感覚の偏りに対する環境調整等の支援)/地域支援(保育所等や学校等との情報連携や調整、支援方法や環境調整等に関する相談援助)
- 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)/e-Gov法令検索第5条(環境の整備=不特定多数に向けたあらかじめの整備。努めなければならない=努力義務)/第7条第2項(行政機関等の合理的配慮)・第8条第2項(事業者の合理的配慮。令和6年4月1日から義務)=「その旨の意思の表明があった場合において」「その実施に伴う負担が過重でないときは」「しなければならない」/第2条第2号(社会的障壁=事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)
- 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(令和3年6月改訂)第3編Ⅲ 知的障害(教育的対応を含む広義の環境条件を整備することによって、知的発達の遅れがあまり目立たなくなったり、適応行動がある程度改善されたりする場合もある/適応行動の問題は、その適応行動が要求されない状況になると顕在化しなくなるということもある/知的障害は個体の条件だけでなく、環境的・社会的条件との関係でその障害の状態が変わり得る場合がある)
- 発達障害者支援法(平成16年法律第167号)/e-Gov法令検索第2条第2項(発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの)/第3項(社会的障壁=事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)/第2条の2第2項(社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない)
- e-Gov法令検索(法令横断のキーワード検索)2026年9月6日に全法令を横断して検索した結果、「環境調整」を含む法令は少年法や保護司に関する規則など、発達支援とは別の文脈のものであった
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
環境調整は、事業所がやるべきことですか?
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは「事業所等は……計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」としています。配慮や心がけではなく、支援する側がすることとして書かれています。
「構造化」とは、どういう意味ですか?
国のガイドラインの注記に、平易な説明があります——「『本人にわかりやすく構造化された環境』とは、こども本人がこの部屋で何をするのかがわかりやすいよう、机や本棚の配置などを工夫することです。」
学校に「設備がないので」と言われました
障害者差別解消法は、二つを別の条文で定めています。第5条が不特定多数に向けた環境の整備(努力義務)、第7条第2項・第8条第2項がその人に向けた合理的配慮(義務)です。設備が整っていないことは、個別の配慮をしない理由としては条文上つながりません。(ただし合理的配慮の条文にも「負担が過重でないとき」という留保はあります。)
何をお願いできますか?
ガイドラインの言葉に沿って整理すると、場所・時間・量・手段・選べることの五つです。ガイドラインは「時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること」「不安な気持ちを落ち着かせる環境」「こどもによる選択ができるよう配慮すること」を挙げています。
本人が慣れるのを待つべきでしょうか?
国の手引は「教育的対応を含む広義の環境条件を整備することによって……適応行動がある程度改善されたりする場合もある」と書いています。本人が慣れることと、環境を整えることは、どちらか一方ではありません。
環境で、そんなに変わるものですか?
国の手引は、知的障害についてこう結論しています——「知的障害は、個体の条件だけでなく、環境的・社会的条件との関係で、その障害の状態が変わり得る場合がある」。
「みんな同じにしています」と言われました
発達障害者支援法 第2条第3項は、社会的障壁に「事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」を含めています。運用のしかたも、条文上は「慣行」にあたり得ます。同法 第2条の2第2項は、支援を「社会的障壁の除去に資することを旨として」行うこととしています。
園に来て見てもらうことはできますか?
保育所等訪問支援という制度があります。児発ガイドラインも、地域支援の内容に「支援方法や環境調整等に関する相談援助」を挙げています。窓口は市区町村の障害福祉担当です。
どう配置するのがよいですか?
この記事では書きません。ガイドラインが挙げているのは「机や本棚の配置などを工夫すること」までで、どう置くのが良いかまでは書かれていないためです。通っている事業所や作業療法士とご相談ください。
感覚のことも環境で対応できますか?
児発ガイドラインは、本人支援の「運動・感覚」領域に「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う」という項目を置いています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。