AACは2つのことばが並んでいますが、この2つは使う場面が違います。ここを分けて理解すると、「うちの子にはどれが必要か」が考えやすくなります。
| どういうとき | 例 | |
|---|---|---|
| 拡大(Augmentative) | すでにある発語を補うために使う。発語はあるが、相手に理解してもらえない/複雑な文が作れない/具体的なことが伝えられないとき | 「いく」と言いながら、行き先の写真を指さす |
| 代替(Alternative) | 発語がない、または機能していないとき、話しことばの代わりに使う | 絵カードを手渡して「ジュースがほしい」を伝える |
ASHAは、AACを「話しことばの産出や理解の困難を補う、あるいは代わりを果たす臨床実践の領域」と定義し、すでにある発語を補うときは拡大的、発語が無い・機能していないときは代替的、と整理しています。
国内でも同じ整理がされており、AACは幅広い年齢の、あらゆる人によって使われるものだと説明されています。障害のある子どものためだけの特別なものではありません。
ASHAはAACの形を、大きく「道具が要らないもの(unaided)」と「道具が要るもの(aided)」に分けています。道具が要るものは、さらにローテク(低・軽テクノロジー)とハイテク(高テクノロジー)に分かれます。
| 種類 | 何を使うか | 具体例 |
|---|---|---|
| 道具が要らない (unaided) | 体だけ。ある程度の運動のコントロールが必要 | 身ぶり、表情、手指文字、手のサイン、発声、発話 |
| 道具が要る・ローテク (low-tech/light-tech) | 電子機器ではない道具 | コミュニケーションボード・ブック、実物、絵、写真、視覚的スケジュール、書くこと |
| 道具が要る・ハイテク (high-tech) | 電子機器 | パソコン・タブレット・スマートフォンのコミュニケーションアプリ、文字を読み上げる機能、音声表出機器(SGD) |
これが、保護者からいちばん多く聞かれる不安です。答えは研究で確かめられています。
絵カード交換式コミュニケーション(PECS)を開発した団体も、国内向けの公開資料の中で、指導法が発語の発達を阻害したり妨げたりすることはないことが研究により示されていると明記しています。
ただし、「AACを使えば必ず話せるようになる」ということではありません。発達には一人ひとり違いがあります。ここで確かなのは、「話すようになるために、AACを使わずに待つ」必要はないということです。
ASHAは、「幼い子どもは学齢期になるまでAACの準備ができていない」と考えられることがあるが、早い時期からのAACの使用は発話とことばの発達を助けうると述べています。
「もう少し様子を見てから」と先送りされやすい領域ですが、伝えられない時間が続くこと自体が、その子にとって負担になります。伝わらないことがきっかけで、かんしゃくや行動の課題につながることもあります。
これは知っておいていただきたい、大切な原則です。
「意図を示せること」「因果関係がわかること」といった認知の力がAACを使う前提だと考えられがちですが、ASHAは認知面の困難があっても、コミュニケーションができなくなるわけではないと述べています。
ASHAは、重度の障害のある人のコミュニケーションのニーズに関する全米合同委員会(NJC)の「誰も除外しない方針(zero-exclusion policy)」に賛同する立場をとっています。つまり「この子にはまだ無理だから」は、AACを見送る理由にはならない、という考え方です。
AACというと「子どもに使い方を教える」ものだと思われがちですが、ASHAが紹介している方法のひとつは、大人の側がAACを使ってみせるというものです。
これはAugmented input(拡大入力)と呼ばれ、「自然な支援言語」「支援言語刺激」「支援言語モデリング」とも呼ばれます。話しかけながら、同時にAACのシンボルを指さす——たとえば「ジュース、飲む?」と言いながら、ジュースの絵カードを指でトンと触れる。それだけです。
これは、ことばの入力(インプット)を、その子が使っている形式で届けるという考え方にもとづいています。話しことばだけで届けても入りにくい子に、話しことば+シンボルで届ける、ということです。
「小さいうちから画面を見せていいのか」——これも、よく聞かれます。ASHAは、この点にはっきり答えています。
あわせてASHAは、AACを使う人は、自分のコミュニケーションの道具や機器に、いつでもアクセスできる状態であるべきだとしています。これは実際の生活では、「使う時間だけ出して、あとはしまっておく」ではなく、常に手元に置いておくということを意味します。
話す人がいつでも口を使えるのと同じように、AACを使う人にはいつでも道具が必要だ、という考え方です。
日本の療育の現場でよく使われている方法を、AACの枠組みの中に置いてみます。
| 方法 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| マカトン法 | 道具が要らない(サイン)+ローテク(シンボル) | 話しことばと同時に使うことを前提にしている。330の核語彙から選ぶ |
| PECS | ローテク(絵カード) | 絵カードを相手に手渡すことから始める。6つのフェイズで進む |
| 視覚支援 | ローテク | 見通しや手順を伝える幅広い工夫。写真・イラスト・文字など |
| 音声表出機器(SGD/VOCA) | ハイテク | 押すと音声が出る機器やアプリ。声の年齢・性別などを選べるものもある |
| コミュニケーションボード・ブック | ローテク | 絵や文字を並べた板や冊子。指さして伝える |
どれが優れているという話ではありません。その子の運動の力、見てわかる力、今のコミュニケーションの段階によって、合うものが変わります。組み合わせて使うこともできます。
AACの評価と導入は、言語聴覚士(ST)の専門領域のひとつです。ASHAは、言語聴覚士の役割として、生涯を通じたコミュニケーション相手の支援、さらなる評価や紹介の必要性の判断、そして作業療法士・理学療法士・特別支援教育の担当者・視覚の専門家など、他の専門職への紹介を挙げています。
AACは一人の専門職だけで完結しません。手や体の使い方は作業療法士、姿勢は理学療法士、園や学校での使い方は先生——関わる人が同じ方向を向いていることが、実際にはいちばん効きます。
※お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、まず小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。
※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。