📣 放課後等デイサービスは 2027年4月 開所予定です(現在、指定申請の準備を進めています)
お問い合わせ・見学予約
🌱 のびのび発達ラボ|こどもの発達と学びの情報室(記事一覧へ
ホームのびのび発達ラボ > 📖 用語・基礎知識 > AACとは?——ことば以外でも「伝える」を支える方法
📖 用語・基礎知識

AACとは?——ことば以外でも「伝える」を支える方法

最終更新:2026年9月3日
AAC(エーエーシー)は Augmentative and Alternative Communication の略で、日本語では「拡大・代替コミュニケーション」と訳されます。話しことば以外の方法で、あるいは話しことばに加えて「伝える」を支える方法の総称です。

絵カード、サイン、写真、文字、タブレットのアプリ——手段はさまざまですが、目的はひとつ、その子が伝えたいことを、伝えられるようにすることです。この記事は、米国言語聴覚学会(ASHA)の実践ポータルと国内の一次情報にもとづいてまとめています。

「拡大」と「代替」は、別のことを指しています

AACは2つのことばが並んでいますが、この2つは使う場面が違います。ここを分けて理解すると、「うちの子にはどれが必要か」が考えやすくなります。

どういうとき
拡大(Augmentative)すでにある発語を補うために使う。発語はあるが、相手に理解してもらえない/複雑な文が作れない/具体的なことが伝えられないとき「いく」と言いながら、行き先の写真を指さす
代替(Alternative)発語がない、または機能していないとき、話しことばの代わりに使う絵カードを手渡して「ジュースがほしい」を伝える

ASHAは、AACを「話しことばの産出や理解の困難を補う、あるいは代わりを果たす臨床実践の領域」と定義し、すでにある発語を補うときは拡大的、発語が無い・機能していないときは代替的、と整理しています。

国内でも同じ整理がされており、AACは幅広い年齢の、あらゆる人によって使われるものだと説明されています。障害のある子どものためだけの特別なものではありません。

道具を使わないAACと、道具を使うAAC

ASHAはAACの形を、大きく「道具が要らないもの(unaided)」「道具が要るもの(aided)」に分けています。道具が要るものは、さらにローテク(低・軽テクノロジー)ハイテク(高テクノロジー)に分かれます。

種類何を使うか具体例
道具が要らない
(unaided)
体だけ。ある程度の運動のコントロールが必要身ぶり、表情、手指文字、手のサイン、発声、発話
道具が要る・ローテク
(low-tech/light-tech)
電子機器ではない道具コミュニケーションボード・ブック、実物、絵、写真、視覚的スケジュール、書くこと
道具が要る・ハイテク
(high-tech)
電子機器パソコン・タブレット・スマートフォンのコミュニケーションアプリ、文字を読み上げる機能、音声表出機器(SGD)
ひとつに絞らなくていい
ASHAは、ひとつの形だけを使う人もいれば、道具が要らないもの・ローテク・ハイテクを組み合わせて使う人もいると説明しています。「絵カードか、タブレットか」の二択ではありません。場面によって使い分けてかまいません。

🔴「AACを使うと、しゃべらなくなる」は誤解です

これが、保護者からいちばん多く聞かれる不安です。答えは研究で確かめられています

研究が示していること
ASHAは、幼い時期からのAACの使用は、発話とことばの発達を助けうると、複数の研究を挙げて説明しています。また、3歳以下の発達に遅れのある子どもでは、AACの使用で語彙が増えたという研究も紹介されています。受容語彙(聞いてわかることば)が改善しうるという報告もあります。

絵カード交換式コミュニケーション(PECS)を開発した団体も、国内向けの公開資料の中で、指導法が発語の発達を阻害したり妨げたりすることはないことが研究により示されていると明記しています。

ただし、「AACを使えば必ず話せるようになる」ということではありません。発達には一人ひとり違いがあります。ここで確かなのは、「話すようになるために、AACを使わずに待つ」必要はないということです。

🔴「まだ早い」も、多くの場合あてはまりません

ASHAは、「幼い子どもは学齢期になるまでAACの準備ができていない」と考えられることがあるが、早い時期からのAACの使用は発話とことばの発達を助けうると述べています。

「もう少し様子を見てから」と先送りされやすい領域ですが、伝えられない時間が続くこと自体が、その子にとって負担になります。伝わらないことがきっかけで、かんしゃくや行動の課題につながることもあります。

AACに「前提条件」はありません

これは知っておいていただきたい、大切な原則です。

ASHAの記載
「AACの介入に前提条件はない(There are no prerequisites for AAC intervention)」——ASHAはこう明記しています。そして、コミュニケーション能力がその人のニーズを満たしていないなら、すべての人がAACの対象になるとしています。

「意図を示せること」「因果関係がわかること」といった認知の力がAACを使う前提だと考えられがちですが、ASHAは認知面の困難があっても、コミュニケーションができなくなるわけではないと述べています。

ASHAは、重度の障害のある人のコミュニケーションのニーズに関する全米合同委員会(NJC)の「誰も除外しない方針(zero-exclusion policy)」に賛同する立場をとっています。つまり「この子にはまだ無理だから」は、AACを見送る理由にはならない、という考え方です。

家庭で今日からできること——大人が先に使ってみせる

AACというと「子どもに使い方を教える」ものだと思われがちですが、ASHAが紹介している方法のひとつは、大人の側がAACを使ってみせるというものです。

これはAugmented input(拡大入力)と呼ばれ、「自然な支援言語」「支援言語刺激」「支援言語モデリング」とも呼ばれます。話しかけながら、同時にAACのシンボルを指さす——たとえば「ジュース、飲む?」と言いながら、ジュースの絵カードを指でトンと触れる。それだけです。

  1. 場面をひとつ決める——おやつ、お風呂、寝る前など。毎日必ずある場面がやりやすいです。
  2. 大人が先に使う——子どもに求める前に、大人が話しながらカードを指さす。返事を求めなくてかまいません。
  3. 待つ時間をつくる——ASHAは、子どもが自分から始めないとき、期待して見つめること(expectant look)と、少し間を置くことだけで十分なこともある、と述べています。すぐに手を添えたり、答えを言ってしまわないこと。

これは、ことばの入力(インプット)を、その子が使っている形式で届けるという考え方にもとづいています。話しことばだけで届けても入りにくい子に、話しことば+シンボルで届ける、ということです。

タブレットのAACと「スクリーンタイム」

「小さいうちから画面を見せていいのか」——これも、よく聞かれます。ASHAは、この点にはっきり答えています。

ASHAの記載
幼い子どもの画面の使いすぎに関する懸念は、AACシステムの一部として画面を使う場合には当てはまりません。AACの画面は、動画やゲームの画面とは目的が違うためです。

あわせてASHAは、AACを使う人は、自分のコミュニケーションの道具や機器に、いつでもアクセスできる状態であるべきだとしています。これは実際の生活では、「使う時間だけ出して、あとはしまっておく」ではなく、常に手元に置いておくということを意味します。

話す人がいつでも口を使えるのと同じように、AACを使う人にはいつでも道具が必要だ、という考え方です。

主なAACの方法

日本の療育の現場でよく使われている方法を、AACの枠組みの中に置いてみます。

方法分類特徴
マカトン法道具が要らない(サイン)+ローテク(シンボル)話しことばと同時に使うことを前提にしている。330の核語彙から選ぶ
PECSローテク(絵カード)絵カードを相手に手渡すことから始める。6つのフェイズで進む
視覚支援ローテク見通しや手順を伝える幅広い工夫。写真・イラスト・文字など
音声表出機器(SGD/VOCA)ハイテク押すと音声が出る機器やアプリ。声の年齢・性別などを選べるものもある
コミュニケーションボード・ブックローテク絵や文字を並べた板や冊子。指さして伝える

どれが優れているという話ではありません。その子の運動の力、見てわかる力、今のコミュニケーションの段階によって、合うものが変わります。組み合わせて使うこともできます。

どこに相談すればいいか

AACの評価と導入は、言語聴覚士(ST)の専門領域のひとつです。ASHAは、言語聴覚士の役割として、生涯を通じたコミュニケーション相手の支援、さらなる評価や紹介の必要性の判断、そして作業療法士・理学療法士・特別支援教育の担当者・視覚の専門家など、他の専門職への紹介を挙げています。

AACは一人の専門職だけで完結しません。手や体の使い方は作業療法士、姿勢は理学療法士、園や学校での使い方は先生——関わる人が同じ方向を向いていることが、実際にはいちばん効きます。

※お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、まず小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

何歳から使えますか?
年齢の下限はありません。ASHAは、幼い子どもは学齢期までAACの準備ができていないと考えられることがあるが、早い時期からのAACの使用は発話とことばの発達を助けうると述べています。3歳以下の発達に遅れのある子どもで語彙が増えたという研究も紹介されています。
AACを使うと、話さなくなりませんか?
研究では逆のことが示されています。ASHAは早期のAAC使用が発話とことばの発達を助けうるとしており、PECSの開発団体も、指導法が発語の発達を阻害・妨害しないことが研究で示されていると明記しています。ただし「必ず話せるようになる」という意味ではありません。
知的な遅れがあっても使えますか?
使えます。ASHAは「AACの介入に前提条件はない」と明記し、認知面の困難があってもコミュニケーションができなくなるわけではない、と述べています。コミュニケーションの力がその人のニーズを満たしていないなら、すべての人が対象になる、という考え方です。
タブレットのアプリと絵カード、どちらがいいですか?
どちらが優れているというものではありません。ASHAは、ひとつの形だけを使う人も、道具の要らないもの・ローテク・ハイテクを組み合わせて使う人もいる、としています。お子さまの運動の力や見てわかる力によって合うものが変わるため、言語聴覚士など専門職の評価をお勧めします。
画面を見せる時間が増えるのが心配です
ASHAは、幼い子どもの画面の使いすぎに関する懸念は、AACシステムの一部として画面を使う場合には当てはまらないと述べています。また、AACを使う人は自分の道具や機器にいつでもアクセスできる状態であるべきだ、ともしています。
家庭と園で違う方法になってもいいですか?
組み合わせて使うこと自体は問題ありません。ただし同じ場面で違う方法が使われると、お子さまが混乱することがあります。関わる大人の間で「この場面ではこれを使う」を共有しておくと伝わりやすくなります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。