先に、ことばの位置
| 調べたもの | 「ABC分析」の語 |
| ASHA(Practice Portal) | 🔴この呼び名では出てきません。ただし先行事象・反応・結果という三つ組は離散試行訓練の説明にあります |
| e-Gov法令検索(全法令を横断) | 該当なし |
| こども家庭庁 児童発達支援ガイドライン(令和6年7月) | 出てきません |
| こども家庭庁 放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月) | 出てきません |
| 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月改訂) | 出てきません |
🔴 だから、この記事は
記録用紙の書き方や、分析の手順は書きません。確かめられた一次情報にそうしたものがないためです。
かわりに、
ASHAが三つ組をどう使っているかと、
国のガイドラインが行動の出どころをどう書いているかを並べます。
ASHAが三つ組を使っている二つの場面
① 教える単位として(離散試行訓練)
ASHA「Autism」Discrete Trial Training より
「一対一の指導的アプローチで、行動的な方法を用いて、小さく段階的な単位で、体系的で統制されたやり方で力を教える。
教える機会は、先行事象(たとえば教える人からの指示)、学習者からの反応、そしてその反応に対する結果あるいはフィードバックから成る一つの試行である。」DTTがよく用いられるのは、次のような力だとされています——
(a)
学習者が自分からは始めていないもの
(b)
明確で正しい手順があるもの(c)
一対一の場面で教えられるもの
🔴 (a)(b)(c) が効きます
ASHAは
「どんな力にも使う」とは書いていません。三つの条件が挙げられており、
そこから外れるものには別の方法が並べられています——
自然な発達的行動介入(子ども主導・自然な場面)、
偶発教授、
ミリューセラピーなど(→
ABA(応用行動分析)とは?)。
② 行動を理解する枠として(積極的行動支援)
ASHA「Positive Behavior Support」より
「よく用いられる方略は、二つの側面に焦点を当てる——①
困難な行動を機能的に評価して、それらの行動とコミュニケーションとの関係を明らかにすること②
困難な行動を、適切で、機能的に等価な代わりの行動に置き換えることそして——
「多要素からなる介入の計画には、予防の方略(すなわち先行事象へのはたらきかけ)が含まれることが多い」
🔴 「先行事象へのはたらきかけ」——つまりA(前)を変えることが、予防の方略として挙げられています(→積極的行動支援(PBS)とは?)。
🔴🔴 国のガイドラインは、出どころを三つ挙げています
「ABC分析」という語はありませんが、行動をどこから見るかについて、国のガイドラインにはっきりした記述があります。
児童発達支援ガイドライン「認知・行動」領域
「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び対応」——🔴
出どころが三つ挙げられています。
①
感覚の偏り(→
感覚過敏とは?)
②
認知の偏り③
コミュニケーションの困難性そして
「予防及び対応」——
予防が先に書かれています。
環境について書かれていること
「事業所等は……計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」・
こどもによる選択ができるよう配慮すること・
時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること・
不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えること——
A(前)にあたるものが、国の文書では環境の義務として書かれています(→
環境調整とは?)。
ASHAも、支援の視点として「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」を挙げています。
書き留めるときに
分析の手順は書きませんが、解釈をつけずに書き留めることは、どこに出しても使えます。
- いつ・どこで——日付と時刻、場所
- 直前に何があったか——ASHAのいう「先行事象」にあたる部分です
- 何が起きたか——「集中していない」ではなく「10分で3回立った」のように、解釈をつけずに
- そのあとどうなったか——まわりの反応、本人の様子
- 起きなかった日は、何が違ったか——ここがいちばん手がかりになります
🔴 「なぜ」は書かなくて大丈夫です
ASHAは、行動の機能を評価することを
支援する側の役割として書いています。
——
ご家族が理由を突き止めてから相談する、という順番ではありません。解釈を足さない記録は、
園・学校・事業所・医療機関のどこに出してもそのまま使えます。
通所支援を利用している場合、省令は少なくとも六月に一回以上の計画の見直しを定めています。見直しの相談は、いつでも申し出ることができます(→モニタリングとは?)。
この記事で書かないこと
🔴記録用紙の書き方・分析の手順・行動の分類は書きません。確かめた一次情報にそうしたものがなく、手順を書けば、それは私の作文になってしまうためです。そういう方法がないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。
🔴効果も書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
「この行動の理由は○○」という読み方も書きません。国のガイドラインは出どころを三つ挙げており、ひとつに決まるものとしては書かれていません。
書けるのは、ASHAと国のガイドラインが実際に何と書いているかと、解釈をつけずに書き留めることまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 🔴「この行動は、何を伝えようとしていると考えていますか」——ASHAの①の言い方です |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 起きる場面と、起きない場面の共有 |
| 言語聴覚士 | 伝える手段。置き換える先が「伝える方法」である以上、要になります |
| 作業療法士 | 感覚の側から(GLは出どころの一つに感覚の偏りを挙げています) |
| 小児科・児童精神科など | 🔴けがにつながる行動があるとき。療育は医療ではありません |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
※本記事は一般的な情報提供です。支援の方法は事業所や専門職によって異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
ABC分析とは何ですか?
米国言語聴覚協会(ASHA)はこの呼び名では書いていませんが、離散試行訓練の説明で「教える機会は、先行事象、学習者からの反応、そしてその反応に対する結果あるいはフィードバックから成る一つの試行である」としています。
記録用紙の書き方を教えてください
🔴この記事では書きません。確かめた一次情報にそうしたものがないためです。解釈をつけずに、いつ・どこで・直前に何があったか・何が起きたか・そのあとどうなったかを書き留めることは、どこに出しても使えます。
理由を突き止めてから相談すべきですか?
そうではありません。ASHAは、行動の機能を評価することを支援する側の役割として書いています。解釈を足さない記録のまま相談していただいて大丈夫です。
行動の理由は、一つに決まりますか?
こども家庭庁の児発ガイドラインは、行動障害を「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる」としており、出どころが三つ挙げられています。
起きる前にできることはありますか?
ASHAは「予防の方略(すなわち先行事象へのはたらきかけ)」を挙げています。国のガイドラインも環境について「計画的に環境を整え、工夫して……行わなければならない」としています。
何を書き留めるといちばん役に立ちますか?
起きなかった日は、何が違ったかです。起きた場面だけでなく、起きなかった場面の条件が手がかりになります。
どんな力に使う方法ですか?
ASHAは離散試行訓練について、よく用いられるのは(a)学習者が自分からは始めていない (b)明確で正しい手順がある (c)一対一の場面で教えられる力だとしています。どんな力にも使うとは書かれていません。
効果はありますか?
この記事では効果を書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。