🔴 ASHAの定義
ASHA「Autism」Treatment Options より
「応用行動分析(ABA)——行動における意味のある肯定的な変化をもたらすことに焦点を当てた行動的介入。ABAの技法は、自閉症のある人が
さまざまな力(例:コミュニケーション、社会的スキル、自己コントロール、自己モニタリング)を築くこと、そして
それらの力をほかの場面に般化させることを助けるために発展してきた。
提供者は、
一対一または集団での指導、構造化された場面(例:教室)、日常の場面(例:家族の夕食時)で技法を用いる。」
そして、こう続きます——「介入は、その人のニーズ、興味、家族の状況にもとづいて個別に組み立てられる。」
時間についての記述
「ABAの技法は、集中的な早期介入プログラム(4歳未満の子どもを対象)で、生活上の力の全範囲に対して用いられることが多い。集中的なプログラムは、週25〜40時間を1〜3年間である。」——
数字が書かれています。これは
集中的なプログラムの場合の記述です。
🔴🔴 ASHAが併記している、二つの立場
ここが、このページのいちばん特徴的なところです。ASHAは定義に続けて、賛成と反対を並べて書いています。
| 立場 | ASHAの記述 |
| 支持する側 | 「伝統的なABAの支持者は、高度に構造化されたアプローチが自閉症のある人への主たるサービスとして用いられるべきだと考えているかもしれない」 |
| 🔴反対する側 | 「伝統的なABAに反対する人々は、行動の修正に焦点を当てることが自律性を奪うと考えているかもしれず、そのためより子ども主導の支援アプローチを支持する」 |
🔴 この併記が意味すること
学会が、方法の中身だけでなく「その方法をどう受け止めるか」の対立まで書いている——これは、めずらしいことです。
だから、この記事も
どちらかを選びません。——
選ぶのは、ご家族と、実際に関わる専門職です。この記事にできるのは、
選ぶときに知っておくとよいことをそのままお渡しすることまでです。
ASHAは、言語聴覚士について「資源を最大限に活かし、最善の成果を促すために、認定行動分析士(Board Certified Behavioral Analysts)と協働することがある」としています。
ASHAが並べている、ほかの選択肢
ASHAは、ABAを選択肢の一つとして、ほかの方法と並べて記述しています。同じ節に並んでいるものを挙げます。
| 名前 | ASHAの説明(要点) |
| DTT(離散試行訓練) | 一対一で、力を小さく段階的な単位に分けて体系的に教える。教える機会は先行事象・学習者の反応・結果(フィードバック)から成る(→ABC分析とは?) |
| FCT(機能的コミュニケーション訓練) | 問題となる行動のコミュニケーション上の機能を評価し、別の反応を教える。行動は消去で取り除かれ、より適切な伝え方に置き換えられうる(Carr & Durand, 1985) |
| 🔴NDBI(自然な発達的行動介入) | 活動と目標は子ども主導で、自然な場面で提示される。遊びにもとづく行動的アプローチを含む |
| 偶発教授 | 子どもの興味にもとづいた自然に生じる機会を用いる。臨床家は子どものリードに従う |
| ミリューセラピー | 「セラピーの時間」だけでなく、一日を通して行われる日常の環境と活動の中での訓練(Kaiser et al., 1992) |
🔴 「構造化」と「子ども主導」が並んでいます
ASHAの並べ方を見ると、
高度に構造化されたものから
子ども主導・自然な場面のものまで、
幅として示されています。
ASHAは評価の場面でも
「離散試行、伝統的な行動的アプローチ」と
「社会語用的、自然な発達的行動アプローチ」を並べて挙げています。
——
一つの正解として書かれてはいません。
なおPECSも、ASHAはこの節に例として挙げています(Bondy & Frost, 1998/Forbes et al., 2024)(→PECSとは?)。
🔴🔴 ASHAは「推奨しない」ものも明示しています
同じページには、「ASHAが推奨しない支援」という節があります。学会が名指しで否定しているものです。
| 名前 | ASHAの立場(引用) |
| 聴覚統合訓練(AIT) | 「AITは、聴覚士および言語聴覚士による実践を正当化する有効性の科学的基準を満たしていない」(ASHA, 2004) |
| ファシリテイティッド・コミュニケーション(FC) | 「FCは信用を失った技法であり、用いられるべきではない」/「メッセージは障害のある人ではなく『介助者』によって書かれているという科学的証拠が広範に存在する」/「害に関する広範な証拠もある」(ASHA, 2018a) |
| ラピッド・プロンプティング法(RPM) | 🔴「RPMの使用は、プロンプト依存と科学的妥当性の欠如のため推奨されない」(ASHA, 2018b) |
🔴 これを載せる理由
ASHAは、推奨するものと推奨しないものを分けて書いています。そして
ABAは「推奨しない」の側には入っていません。同時に
「これが最善だ」とも書いていません——賛成と反対を併記しています。
——
学会の書き方そのものが、この分野での判断の仕方を示しています。
国の文書での位置
| 調べたもの | 「応用行動分析」「ABA」の語 |
| e-Gov法令検索(全法令を横断) | 該当なし |
| こども家庭庁 児童発達支援ガイドライン(令和6年7月) | 出てきません |
| こども家庭庁 放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月) | 出てきません |
| 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月改訂) | 出てきません |
🔴 国の文書が求めていること
国のガイドラインは
方法の名前ではなく、支援の中身を書いています。
・
本人支援の5領域を網羅する(→
5領域とは?)
・
「5領域の視点が網羅されていない状況で支援を提供することは、総合的な支援としては相応しいとは言えない」・計画には
各領域との関連性を必ず記載——
「どの方法か」より「5領域が入っているか」が国の基準です。事業所に尋ねるときも、この形が使えます。
また、指定基準省令 第26条第4項は、事業所に「心身の健康等に関する領域を含む総合的な支援を行わなければならない」とし、同条第1項は「指定児童発達支援の提供が漫然かつ画一的なものとならないよう配慮しなければならない」としています。
見学や面談で確かめられること
- 5領域のどれと、どうつながっていますか——児発GLは計画に各領域との関連性を必ず記載するとしています
- うちの子の興味は、どこに反映されていますか——ASHAは「その人のニーズ、興味、家族の状況にもとづいて個別に」としています
- 家や園でも同じことができますか——ASHAは般化を「ほかの場面に」と書いています(→般化とは?)
- 子どもが「いやだ」と示したとき、どうしますか——ASHAが併記している反対意見は、自律性についてのものです
- 見直しはいつですか——省令は少なくとも六月に一回以上と定めています
🔴 ここは、はっきり書いておきます
この記事は、どの方法がよいかを判断しません。ASHAが賛否を併記している事柄について、私が片方に寄せて書くことは、
読む方の判断材料を減らすことになると考えるためです。
実際に選ぶときは、
関わる専門職に、上の五つをそのまま尋ねてみてください。
この記事で書かないこと
🔴🔴ABAの効果は書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。ASHA自身が賛成と反対を併記しており、一方に寄せることが、この記事の役割ではないと考えるためです。
具体的な手続き・技法の手順も書きません。ASHAが書いているのはそれぞれの説明までで、実施の手順は示されていません。
「何時間受けるべきか」も書きません。ASHAの週25〜40時間・1〜3年という記述は集中的な早期介入プログラムの場合のもので、推奨量として書かれてはいません。
書けるのは、ASHAと国の文書が実際に何と書いているかと、そこから何を尋ねられるかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 支援の中身と5領域とのつながり。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 言語聴覚士 | ASHAは認定行動分析士と協働することがあるとしています |
| 作業療法士 | 感覚・身体の使い方の側から |
| 相談支援専門員 | 事業所の選び方、サービス全体の設計 |
| 小児科・児童精神科など | 診断に関する判断。療育は医療ではありません |
| 親の会・保護者同士の交流 | 実際に受けている方の話 |
※本記事は一般的な情報提供です。支援の方法の選択は、ご家族と実際に関わる専門職の判断によります。療育は医療ではありません。
出典
- American Speech-Language-Hearing Association「Autism」(Practice Portal)Treatment Options/Applied Behavior Analysis(行動における意味のある肯定的な変化をもたらすことに焦点を当てた行動的介入/コミュニケーション、社会的スキル、自己コントロール、自己モニタリング等の力を築き、それらをほかの場面に般化させること/一対一または集団、構造化された場面、日常の場面/介入はその人のニーズ、興味、家族の状況にもとづいて個別に/集中的なプログラムは週25〜40時間を1〜3年間/伝統的なABAの支持者は高度に構造化されたアプローチが主たるサービスとして用いられるべきだと考えているかもしれない/伝統的なABAに反対する人々は、行動の修正に焦点を当てることが自律性を奪うと考えているかもしれず、より子ども主導の支援アプローチを支持する/言語聴覚士は認定行動分析士と協働することがある)/DTT/FCT(Carr & Durand, 1985)/NDBI/Incidental Teaching/Milieu Therapy(Kaiser et al., 1992)/PECS(Bondy & Frost, 1998)/Treatment Not Endorsed by ASHA(Auditory Integration Training=有効性の科学的基準を満たしていない(ASHA, 2004)/Facilitated Communication=信用を失った技法であり用いられるべきではない、メッセージは「介助者」によって書かれているという科学的証拠、害に関する広範な証拠(ASHA, 2018a)/Rapid Prompting Method=プロンプト依存と科学的妥当性の欠如のため推奨されない(ASHA, 2018b))
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン 令和6年7月)本人支援の5領域/「5領域の視点が網羅されていない状況で支援を提供することは、総合的な支援としては相応しいとは言えない」/計画には各領域との関連性を必ず記載。なお「応用行動分析」「ABA」の語は、2026年9月6日に全文を確認した範囲で見当たらない
- 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)/e-Gov法令検索第26条第1項(指定児童発達支援の提供が漫然かつ画一的なものとならないよう配慮しなければならない)/第26条第4項(心身の健康等に関する領域を含む総合的な支援を行わなければならない)/第27条第8項(少なくとも六月に一回以上、計画の見直し)
- 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(令和3年6月改訂)2026年9月6日に全文を確認した範囲で「応用行動分析」「ABA」の語は見当たらない
- e-Gov法令検索(法令横断のキーワード検索)2026年9月6日に全法令を横断して検索した結果、「応用行動分析」に該当する法令なし
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
ABAは効果がありますか?
🔴この記事では効果を判断しません。米国言語聴覚協会(ASHA)自身が支持する立場と反対する立場の両方を併記しているためです。効果がないという意味ではありません。
反対の意見とは、どういうものですか?
ASHAはこう書いています——「伝統的なABAに反対する人々は、行動の修正に焦点を当てることが自律性を奪うと考えているかもしれず、そのためより子ども主導の支援アプローチを支持する」。
ASHAはABAをどう定義していますか?
「行動における意味のある肯定的な変化をもたらすことに焦点を当てた行動的介入」とし、コミュニケーション・社会的スキル・自己コントロール・自己モニタリング等の力を築き、それらをほかの場面に般化させることを助けるものとしています。
週に何時間くらい必要ですか?
この記事では必要量を書きません。ASHAの「集中的なプログラムは週25〜40時間を1〜3年間」という記述は集中的な早期介入プログラムの場合のもので、推奨量として書かれてはいません。
国の制度では、どう扱われていますか?
「応用行動分析」「ABA」の語は、法令にも、こども家庭庁のガイドラインにも、文部科学省の手引にも見当たりません(2026年9月6日確認)。国の基準は方法の名前ではなく、本人支援の5領域が網羅されているかです。
事業所に何を尋ねればよいですか?
「5領域のどれと、どうつながっていますか」が使えます。児発ガイドラインは計画に各領域との関連性を必ず記載するとしており、「5領域の視点が網羅されていない状況で支援を提供することは、総合的な支援としては相応しいとは言えない」としています。
ほかにどんな方法がありますか?
ASHAは同じ節にDTT・FCT・NDBI(子ども主導・自然な場面)・偶発教授・ミリューセラピー・PECSなどを並べて挙げています。高度に構造化されたものから子ども主導のものまで、幅として示されています。
学会が「やめたほうがよい」としている方法はありますか?
あります。ASHAは聴覚統合訓練(AIT)・ファシリテイティッド・コミュニケーション(FC)・ラピッド・プロンプティング法(RPM)を「ASHAが推奨しない支援」として挙げています。ABAはこの側には入っていません。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。