練習が始まってからの数週間、家で起きやすいこと
運動会の練習は、たいてい本番の三〜六週間前から始まります。園庭や校庭に出る時間が増え、いつもの日課が組み替えられ、繰り返しの練習が入ります。その時期に、家のほうで次のようなことが起きることがあります。
- 朝、行きたがらない。玄関で止まる。前の週まで普通に行けていたのに、急に渋りはじめる
- 帰ってきてから、いつもより長く泣く。理由の見えないかんしゃくが増える
- 寝つきが悪い、夜中に起きる、朝起きられない
- 食欲が落ちる、逆に帰宅後に一気に食べる
- 園や学校では何も言わないのに、家に着いた途端に崩れる
- 「運動会きらい」「行かない」と言うようになる
これは「後退」ではなく、多くの場合「疲れ」です
練習の期間は、いつもより感覚の入力が多く、予定が読めず、待つ時間が長い日々が続きます。園や学校で持ちこたえていた分が、安心できる家で出ている、という順番で起きていることがあります。
家で崩れるのは、家が安全だからです。保護者の関わり方が原因で起きているのではないことのほうが多く、実際、家庭の対応を変えても練習の時期が終わるまで戻らないことがあります。まず、ご自身を責めないでください。
「何が原因か」は、本人に聞いても出てこないことがあります
「どうして行きたくないの」と尋ねても、「わかんない」「なんでもない」としか返ってこないことがあります。年齢が小さいほど、また言葉で説明することが得意でないほど、そうなります。これは隠しているのではなく、自分の中で何が起きているかを言葉にする力が、まだ育っている途中だからです。ですから、聞き出すより、いつ・どこで崩れるかを外側から見るほうが早く手がかりが出ます。
- 朝だけ渋るのか、帰ってから崩れるのか、両方か
- 練習がある日だけか、ない日もか(園や学校に週の予定を聞くと分かります)
- 崩れる日が全体練習の日と重なっていないか(人数と音が一気に増える日です)
- 特定の種目の練習があった日に集中していないか
※ 一週間だけ、カレンダーの端に「◎ふつう/△しんどそう/×崩れた」と書き足してみてください。三つの記号だけで十分です。園や学校に相談するとき、この一枚がそのまま材料になります。→ 登園しぶり
苦手の正体を、五つに分けてみる
「運動会が苦手」とひとまとめにすると、手の打ちようがなくなります。実際には、苦手になりやすい場所は五つに分けられます。分ければ、一つずつ手当てができます。
※ はじめにお断りしておきます。「運動会」を名指しで扱った国の文書は、確認できた範囲では見当たりません。以下は、国の法令・基本方針・ガイドラインが行事や日常の場面全般について書いていることを、運動会の場面に当てはめて整理したものです。根拠のある部分と、そうでない部分を分けて書きます。
① 音
ピストルの号砲、拡声器を通した大音量の音楽、笛、太鼓、そして数百人分の歓声。運動会は、一年でもっとも音が大きくなる日のひとつです。音の苦手さは、こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)が定める本人支援の五領域のうち「運動・感覚」の中に、はっきり位置づけられています。ねらいのひとつが「感覚の特性への対応」で、支援内容には「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う」と書かれています。
つまり国のガイドラインは、本人を慣れさせるのではなく環境の側を調整することを支援内容として挙げています。内閣府の「合理的配慮サーチ」も、発達障害の合理的配慮の提供の例として「感覚過敏があるときには、それを和らげるための対処(例えば聴覚過敏に耳栓使用)を行えるようにする」を挙げています。耳栓やイヤーマフは、国が例として書いている配慮です。→ 感覚過敏とは?
② 見通し
運動会は、一日まるごといつもと違います。時間割が違い、場所が違い、保護者や来賓という見慣れない人がいて、先生の声も大きくなります。「次に何が起きるか」が読めない状態が朝から夕方まで続く、という点で、運動会は年間でもかなり負荷の高い日です。練習の期間もそうで、「今日は練習がある日なのか、ない日なのか」が本人に伝わっていないと、毎朝が賭けになります。
③ 待ち時間
実は、運動会で本人が動いている時間は多くありません。大半は待っている時間です。出番の前に整列して待つ、他学年の競技を座って見る、入退場の列で立って待つ。動くことは平気でも、何もしないで待つことが最も苦手、というお子さんは少なくありません。この場合、練習を頑張らせても改善しません。待ち方のほうを変える必要があります。
④ 整列・並ぶ・一斉に動く
前にならえ、体操隊形に開く、笛の合図で走り出す、列を崩さずに歩く。これらは周りを見て自分の位置を調整し続ける作業です。体を動かすこと自体は得意でも、この調整が負担になることがあります。また、隣の人との距離が近いことが苦手な場合もあります。→ 集団に入れない/粗大運動とは?
⑤ 勝ち負け
かけっこで負ける、リレーで抜かれる、自分の組が負ける。負けたことより、負けたときにどうすればいいか分からないことがつらい、という形で出ることがあります。当日その場で泣くのが心配、というご相談も多い場面です。
| 苦手の正体 | まず何を頼むか(一つずつ) |
| ① 音 | イヤーマフ・耳栓の持ち込みと使用を認めてもらう。ピストルを笛やホイッスルに替えられないか尋ねる。スピーカーから離れた位置に並ばせてもらう 根拠=内閣府 合理的配慮サーチ(発達障害)に「聴覚過敏に耳栓使用」が例示。児童発達支援ガイドラインの「運動・感覚」=感覚の偏りに対する環境調整 |
| ② 見通し | プログラムを事前にもらう。練習のある日を週の初めに教えてもらう。当日の流れを絵や写真で作れるよう、会場の写真や並び順を先に見せてもらう 根拠=児童発達支援ガイドライン「認知・行動」=環境や状況を把握・理解できるようにする支援 |
| ③ 待ち時間 | 待つ場所を日陰やテントにしてもらう。座って待てる場所を決めてもらう。待っている間に持てるもの(タオル、小さな物)を認めてもらう。出番の直前まで別の場所で待たせてもらう |
| ④ 整列・一斉行動 | 並ぶ位置を端か最後尾にしてもらう。隣を決まった子にしてもらう。合図の前に個別に声をかけてもらう。目印(線・コーン・マット)を置いてもらう 根拠=内閣府 合理的配慮サーチ(発達障害)「作業手順や道具配置などにこだわりがあるときには、一定のものを決めておく」 |
| ⑤ 勝ち負け | 順位のつかない種目に替えてもらう。負けたときにどこへ行けばよいかを先に決めておく。結果より「出た」ことを先生から言葉にしてもらう |
| 共通 | 途中で抜けられる場所(保健室、教室、テントの裏、保護者席)をあらかじめ決めておく。抜けたあとどう戻るかまで決めておく |
※ 全部を一度に頼む必要はありません。いちばん困っている一つから始めるほうが、園や学校も動きやすくなります。
配慮をお願いすることには、法律の根拠があります
「うちの子だけ特別扱いをお願いするようで、言い出しにくい」——このためらいは、とてもよくうかがいます。けれど、園や学校に配慮をお願いすることは、好意にすがることではありません。根拠になる法律があります。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号。障害者差別解消法)です。
内閣府のページによれば、この法律は平成28年4月1日に施行され、令和3年法律第56号による改正法が令和6年4月1日に施行されました。この令和6年4月の改正が、後で述べるとおり、私立の園や学校の義務の重さを変えました。
第7条第2項(行政機関等)・第8条第2項(事業者)——条文はまったく同じ文です
行政機関等〔事業者〕は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
※ 〔 〕は第8条第2項の語。第7条第2項と第8条第2項は、主語以外は同一の文です。
ここに書かれている条件は、たった二つです。①保護者や本人から「これが必要です」と伝えることと、②その対応が過重な負担でないこと。この二つがそろえば、園や学校は「しなければならない」という書き方になっています。
公立か私立かで、義務のかかり方が違います
同じ法律の中で、行政機関等(第7条)と事業者(第8条)が書き分けられています。第2条第3号は「行政機関等」に地方公共団体を含めており、同条第7号は「事業者」を「商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)」と定義しています。つまり区立・市立の保育園や小学校は行政機関等、私立の幼稚園・保育園・小学校は事業者にあたります。
| どちらの条文がかかるか | 義務の重さ |
区立・市立・都立の園や学校 =第7条(行政機関等) | 不当な差別的取扱いの禁止=禁止(第7条第1項) 合理的配慮の提供=義務(第7条第2項)。平成28年4月1日の施行時から義務です |
私立の幼稚園・保育園・小学校、認定こども園など =第8条(事業者) | 不当な差別的取扱いの禁止=禁止(第8条第1項) 合理的配慮の提供=義務(第8条第2項)。ただし義務になったのは令和6年4月1日から。それ以前は努力義務でした |
※ 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月)は、第7条第1項・第8条第1項の不当な差別的取扱いの禁止について「国公私立学校とも法的義務となっている」と明記しています。また同手引は、事業者の合理的配慮について「令和3年5月に成立した同法の改正法により、合理的配慮の提供が努力義務から法的義務へと改められた」と書いています。
東京都では、私立の園や学校はもっと前から義務でした
東京都には「東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」があり、豊島区のページによれば平成30年10月1日から施行されています。この条例は、障害者差別解消法に先んじて、都内で事業を行う事業者の合理的配慮の提供を義務化しました。対象は「都内で事業を行う者」で、本社や事務所が都外であっても都条例の対象とされています。つまり東京都内の私立園・私立学校は、国の法改正を待たずに、平成30年10月から合理的配慮が義務だったということです。
診断や手帳がなくても、対象になります
ここが、健診や就学相談で指摘を受けたばかりのご家庭にとって、いちばん大事な点かもしれません。内閣府の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(令和5年3月14日閣議決定)は、この法律の対象となる障害者について、こう書いています。
基本方針(令和5年3月14日閣議決定)
法が対象とする障害者の該当性は、当該者の状況等に応じて個別に判断されることとなり、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。
同じ箇所で、対象となる障害には発達障害や高次脳機能障害、難病等に起因する障害が含まれることも明記されています。診断名がついていなくても、手帳がなくても、「困っている状態がある」ことを伝えれば、この法律の話ができます。いま診断の有無で迷っておられるとしても、運動会の相談を先に進めて構いません。→ 合理的配慮とは?
入口は「意思の表明」、その先は「建設的対話」
第7条第2項・第8条第2項をもう一度見ると、配慮が動き出す引き金が書かれています。「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合」——これが入口です。国の側は、この「意思の表明」をかなり広くとっています。
基本方針——本人が言えなくてもかまいません
障害者からの意思表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う意思の表明も含む。
なお、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。
つまり、保護者が代わりに伝えてよいと、国の基本方針にはっきり書かれています。園児や小学校低学年のお子さんが自分で先生に交渉することは想定されていません。保護者が伝えることが、制度上の正規の入口です。
同じ基本方針は、伝え方についてもこう書いています。「言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など」の手段で伝えられる、そして「社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることが望ましい」。難しい言い方をする必要はなく、「何に困っていて、どうしてほしいか」を具体的に言えば足ります。
断られたときに、次に何が起きるか
「それは難しいです」と言われることもあります。そのときに何が起きるべきかも、基本方針に書かれています。園や学校が過重な負担にあたると判断した場合、基本方針は「障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」としています。そして「代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる」とも書いています。
「過重な負担」は、その場の気分で決めるものではありません。基本方針は、個別の事案ごとに次の要素を考慮し、総合的・客観的に判断するとしています。
- 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
- 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
- 費用・負担の程度
- 事務・事業規模
- 財政・財務状況
基本方針が「不当な差別的取扱い」に当たり得るとしている断り方
基本方針は、次のような対応を不当な差別的取扱いに当たり得る例として挙げています。運動会の相談でも、そのまま出てきそうな言い方が並びます。
- デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること
- 移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること
- 弱視の方から見やすい席での受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること
「前例がない」「何かあったら困る」「特別扱いはできない」——この三つは、それ自体では断る理由にならないと国の基本方針が書いている、ということです。
とはいえ、相談の場でこの条文を持ち出す必要はまったくありません。基本方針が繰り返し使っている言葉は「建設的対話」です。「障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と行政機関等・事業者が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である」——これが国の想定している場面です。お願いする側と、される側という関係ではありません。一緒に案を出す場だと思って臨んでよいということです。
※ 基本方針は、合理的配慮について「事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない」ことにも留意が必要としています。運動会そのものを別の行事に作り替えることは含まれませんが、参加のしかたを変えることは本質的な変更にはあたらないと考えるのが自然です。
いつ、誰に伝えるか——練習が始まる前がいちばん動きやすい
これは制度の話ではなく、段取りの話です。プログラムと配置が決まる前に伝えたほうが、園や学校は圧倒的に動きやすくなります。並び順、出番の順序、係の割り当ては、いったん全体の表になってしまうと一箇所だけ変えにくくなるからです。
いまは九月です。すでに練習が始まっている園や学校が多い時期ですが、プログラムの細部や当日の配置は、まだ確定していないことが多い段階です。今週が動きどきです。
誰に言えばよいか
| 場所 | 最初に話す相手 |
| 保育園・幼稚園・認定こども園 | まず担任。担任が「園として決めます」と答えたら、主任または園長に同席をお願いする。園全体の判断が必要な配慮(並び順、待機場所、音の出し方)は、担任だけでは決められないことがあります |
| 小学校 | まず担任。あわせて特別支援教育コーディネーターの先生につないでもらう。文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」も、子供の実際の活動場面を観察する担当者として特別支援教育コーディネーターを挙げています |
| 通級・特別支援教室を使っている場合 | そちらの担当の先生にも同じ内容を伝えておく。在籍学級と指導の場の両方で同じ情報が共有されているほうが、当日の動きが決まりやすくなります |
| 児童発達支援や放課後等デイサービスを使っている場合 | 児童発達支援管理責任者に伝える。こども家庭庁のガイドラインは「移行支援」の支援内容として「併行利用先とのこどもの状態や支援内容の共有(例:得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段の共有)」を挙げています。園や学校への伝達を事業所側から行う道があります |
口で言うより、一枚の紙にする
面談で口頭だけで伝えると、その場にいなかった先生には伝わりません。運動会当日は、担任以外の先生が本人のそばにいる時間のほうが長くなります。紙で渡すと、職員間で回覧され、当日の担当まで届きます。
どう書けばよいか迷われるときは、世田谷区が就学の場面で使っている「就学支援シート」の考え方が参考になります。区のページには、保護者が記入するにあたって「様式欄のすべてを記入しなくても結構です。『ここだけは』というポイントをご記入ください」と書かれています。引き継ぐ内容として挙げられているのも、「お子さんの好きなことや得意なこと、また、お子さんがどうしても苦手なこと」という並びです。苦手だけを書く紙ではありません。
- できていること・好きなことを先に書く(例:走るのは好き、音楽が好き、○○先生の声だと動ける)
- 苦手なことを、場面で書く(例:ピストルの音/整列して待つ時間/負けたあと)
- すでに家で効いている方法を書く(例:先に写真で見せると落ち着く、耳を押さえると持ちこたえる)
- お願いしたいことを、数を絞って具体的に書く(例:イヤーマフの持ち込み、並ぶ位置を最後尾に、抜ける場所を決めておく)
- 当日、崩れたときにどうしてほしいかを書く(例:声をかけずに保健室へ、保護者席へ連れてきてもらう)
※ A4一枚で十分です。長くする必要はありません。むしろ短いほうが当日の先生に伝わります。→ 相談の前に用意しておくメモ
学校の場合、決まったことは書類に残せます
文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」は、合理的配慮の決定・提供について、「設置者及び学校と本人及び保護者により、個別の教育支援計画を作成する中で、発達の段階を考慮しつつ、(中略)合理的配慮について可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましい」とし、「その内容は、個別の教育支援計画に明記するとともに、個別の指導計画においても活用されることが重要である」と書いています。
運動会のために一度決めた配慮は、その場かぎりで消える必要がありません。「これは個別の教育支援計画に書いていただけますか」と尋ねることは、この手引の書きぶりに沿った質問です。来年の運動会、遠足、学芸会にも同じ配慮が引き継がれます。→ 個別の教育支援計画とは?
実際に頼めることの一覧
文部科学省の手引は、合理的配慮を考えるときの観点を三つに整理しています。中央教育審議会初等中等教育分科会報告(平成24年7月23日)から引かれたもので、①教育内容・方法、②支援体制、③施設・設備の三つです。その中には「学習内容の変更・調整」「学習機会や体験の確保」「心理面・健康面の配慮」といった項目が並んでいます。運動会で頼めることを、この三つに当てはめて並べてみます。
※ 以下の個々の例は、国の文書に運動会の例として載っているものではありません。三つの観点は手引に載っているもので、当てはめ方はこの記事によるものです。
① 内容・方法にかかわるもの
- 出番の前に予告してもらう(「次、○○ちゃんの番だよ」と一対一で)
- 種目を替える/減らす(走る種目だけ出る、団体演技は前半だけ など)
- 役割を替える(旗を持つ、用具を運ぶ、得点板をめくる、放送席で手伝う)
- 順位のつかない形にしてもらう(同着でゴール、走る距離を分ける など、学校の方針の範囲で)
- 合図を替えてもらう(ピストルではなく笛、旗、手を挙げる合図)
- 練習の一部を見学にしてもらう(毎回全部出なくてよい、と本人にも伝えてもらう)
② 人と体制にかかわるもの
- 当日の担当を決めてもらう(「困ったらこの先生」と本人が分かる形で)
- 並ぶ位置を決めてもらう(最後尾、端、壁側、決まった友だちの隣)
- 途中で抜けてよいことを、職員間で共有してもらう(担任以外の先生に止められないように)
- 抜けたあとの戻り方まで決めてもらう(戻らなくてもよい、という選択肢も含めて)
- 崩れたときの合図を決めてもらう(カードを見せる、手を挙げる、決めた言葉を言う)
③ 場所と物にかかわるもの
- イヤーマフ・耳栓の持ち込みと使用(内閣府の合理的配慮サーチは「聴覚過敏に耳栓使用」を例に挙げています)
- スピーカーから離れた待機位置
- 日陰・テント・屋内の待機場所
- クールダウンできる部屋(保健室、空き教室、テントの裏)と、そこへの行き方
- 目印を置いてもらう(立ち位置のテープ、コーン、マット)
- プログラムの事前配布と、会場の写真
「環境の整備」は、また別に定められています
同じ法律の第5条は、こう定めています。「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない」。努力義務です。
基本方針は、これを「事前的改善措置」と呼び、不特定多数の障害者を主な対象としてあらかじめ行うものだと説明しています。文部科学省の手引はこれを教育の文脈で「基礎的環境整備」と呼びます。
つまり、個々の子に個別に行うのが合理的配慮、あらかじめみんなのために整えておくのが環境の整備という二段構えです。基本方針は「環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である」と書いています。
※ ですから、「毎年お願いするのは気が引ける」と感じたときは、「来年から、そもそもテントに待機場所を用意していただけませんか」という言い方もできます。それは環境の整備の話です。
見通しを立てる——家でできる準備と、当日の朝
ここからは家の側の話です。こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、本人支援の五領域のうち「認知・行動」の支援内容として、「取得した情報を過去に取得した情報と照合し、環境や状況を把握・理解できるようにするとともに、これらの情報を的確な判断や行動につなげることができるよう支援を行う」と書いています。運動会の準備でいえば、当日を「初めて」にしないということです。
一週間前から
- プログラムをもらう。園や学校に「先にいただけますか」と頼めば、たいてい出してもらえます
- 本人が出る種目だけに印をつけた紙を作る。全部を見せると情報が多すぎることがあります
- 会場の写真を見せる。テント、トイレの位置、保護者席、待つ場所。園庭や校庭であれば、送り迎えのときに一緒に見るだけでも違います
- 朝から帰るまでの流れを、絵か短い文で作る。「起きる→朝ごはん→園(学校)へ行く→体操→○○の種目→おべんとう→○○の種目→終わり→帰る」で十分です
- 「途中で抜けてもいい」ことを、本人に伝えておく。逃げ道を先に見せておくと、かえって最後までいられることがあります
※ 絵カードやスケジュール表の作り方は 視覚支援とは? と 切り替えが苦手 にまとめています。上手に作る必要はありません。手書きで十分です。
前日
- 持ち物を一緒に並べる(並べる作業そのものが、当日の予行になります)
- 朝の起きる時刻を確認する。いつもより早い場合は、その差だけを伝える
- 特別なことをしすぎない。「明日は大事な日だよ」と繰り返すほど、緊張が上がることがあります
- 寝る時刻を早めにする。ただし早く寝かせようとして粘ると逆効果になるので、ふだんどおりでも構いません
当日の朝
- いつもの朝と同じ順番で進める。順番を変えないことが、いちばん効く見通しです
- 朝ごはんは、食べ慣れたものにする。量が減っても気にしない
- 今日の紙をもう一度見せる。一週間前に作った流れの紙です
- 「行けたら行く」で出る。「絶対に最後までいようね」と約束させない
- 先生に一言だけ伝える。「昨日あまり眠れていません」「朝は落ち着いています」——当日の担当が判断を変えられます
持ち物
- イヤーマフ/耳栓(事前に許可を取っておく)
- 帽子・水筒・タオル(多めの水分。九月でも暑い日があります)
- 着替え一式(汗、水、泣いたあと)
- 本人の落ち着くもの(小さなぬいぐるみ、ハンカチ、決まった感触の物)。持ち込みの可否を先に確認しておく
- 今日の流れを書いた紙(本人のポケットか、先生に預ける)
- 連絡の取り方のメモ(保護者席のどこにいるか。抜けたときに合流できるように)
参加のしかたは、ひとつではありません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。「全部出られたら成功、出られなかったら失敗」ではありません。運動会の参加には、実際には幅があります。
- 全部出る
- 一部の種目だけ出る(得意な種目、短い種目、順位のつかない種目)
- 出る種目を、当日の朝や直前に決める(前もって「どちらでもよい」と決めておく)
- 別の役割で参加する(用具係、放送、得点、旗)
- 見学席から見る(会場にいる、という参加のしかた)
- 保護者と一緒に、外から見る
- 写真だけ撮って帰る(体操着で会場に立った、それも参加です)
- その日は休んで、後日ビデオで見る
「参加させること」を目的にしない
目的は、運動会という日を、その子が自分の力で通り抜けられることです。全部出て一日じゅう耐えて、翌週から園や学校に行けなくなるより、半分だけ出て笑って帰るほうが、その子にとってはずっと良い一日です。
そして、どの形を選ぶかは、園や学校と一緒に決められます。相談の場で「どこまで出せますか」と聞かれることがありますが、「これとこれなら出られそうです。当日の様子で減らしてもいいですか」と、こちらから幅のある形で返して構いません。
「みんなと一緒」の意味
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、地域社会への参加・包摂(インクルージョン)について、「一人一人のこどもの育ちと個別のニーズを共に保障した上で」推進するという書き方をしています。個別のニーズを脇に置いて同じ場所に立たせることが、インクルージョンだとは書かれていません。同じガイドラインは、移行支援について「特に入園・入学時等のライフステージの移行時における『移行支援』は、こどもを取り巻く環境が大きく変化することも踏まえ、支援の一貫性の観点から、より丁寧な支援が求められる」とも書いています。
運動会も、環境が大きく変わる日です。丁寧に用意されるべき日であって、耐える力を試す日ではありません。
終わったあとの数日と、きょうだいのこと
翌日から数日は、反動が出ることがあります
当日をうまく越えられても、翌日にどっと崩れることがあります。練習期間から本番までの数週間、ずっと通常より高い負荷がかかっていたためです。「あんなに頑張れたのに、次の日に行けなくなった」というご相談は、この時期によくあります。
- 翌日は、予定を入れない。買い物やお出かけを重ねない
- 寝る時刻が乱れても、数日は目をつぶる
- 「よく頑張ったね」より、具体的に一つ(「入場のとき、ちゃんと並んでたね」)。抽象的にほめられても本人には残りません
- 反省会をしない。「来年はもっと」の話は、いま必要ありません
- 翌週いっぱい、しんどさが続いても異常ではないと考えておく
- 園や学校に、当日の様子を聞く(家では言わないことが、先生からは出てきます)
うまくいったことは、必ず記録に残す
運動会が終わったら、効いた配慮を一行でメモしてください。「イヤーマフで最後までいられた」「最後尾だと崩れなかった」「テントで待てた」。
これは来年の運動会だけでなく、遠足、学芸会、避難訓練、そして進級・進学のときの引き継ぎ材料になります。学校であれば、前述のとおり個別の教育支援計画に書いてもらうことができます。一度勝ち取った配慮を、毎年ゼロから交渉しなくてよくなります。
きょうだいがいる家庭の、当日の動き方
きょうだいがいると、当日の段取りはさらに複雑になります。「上の子の出番と下の子の出番が重なる」「片方に付き添うと、もう片方の競技を見られない」「途中で抜ける可能性があるので、そもそも席を離れられない」。
- 可能なら、大人を二人確保する(祖父母、親族、ふだんから本人が知っている大人)
- 付き添いが必要になりそうな時間帯を、先に園や学校に伝えておく。出番の順序を調整してもらえることがあります
- きょうだいにも、先に段取りを説明しておく。「今日はお母さんが途中でいなくなるかもしれない」と先に言っておくだけで、当日の落胆が変わります
- きょうだいの出番だけは必ず見る、と決めて、そこを固定する
- ビデオを頼む。見られなかった分は、あとから一緒に見れば埋まります
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、「家族支援」の対象について、「対象を保護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母等への支援も含まれる。特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくない」と書いています。支援内容にも「きょうだい同士の交流の機会の提供やきょうだいに対する相談援助」が挙げられています。きょうだいのしんどさは、国のガイドラインが名指しで書いている論点です。家庭で抱え込む前に、通っている事業所に相談していただいて構いません。→ きょうだい児支援とは?
話が進まないときに、相談できるところ
園や学校と話しても前に進まない、あるいは「そういう決まりですので」で止まってしまう。そういうときの相談先が、制度として用意されています。
① 内閣府「つなぐ窓口」
国が設置している、障害者差別に関する相談窓口です。窓口のページによれば、「障害者差別解消法に関する質問に対して回答することや、障害を理由とする差別に関する相談事案を適切な自治体・各府省庁等の相談窓口に円滑につなげるための調整・取次を行うこと」を目的としています。
- 電話:0120-262-701(フリーダイヤル)
- ウェブの相談フォーム、メールでも受け付けています
- 電話リレーサービス・手話でも相談できます
- 「どこに相談すればよいか分からない」段階の相談を、想定して作られた窓口です
※ 同じページには、法の対象について「障害者手帳をお持ちの方に限りません」、事業者に該当するものの一例として教育機関が挙げられています。分野についても「教育、医療、福祉、公共交通等、全般的に対象」と書かれています(雇用・就業関係は対象外)。
② 東京都の「広域支援相談員」
東京都には、都条例にもとづく広域支援相談員が置かれています。豊島区のページによれば、「障害者ご本人や周りの関係者の方、民間事業者からの相談も含め、幅広く相談を受け付けます」とされ、「区市町村と連携し、相談者への助言や調査、情報提供及び関係者間の調整などを行います」と説明されています。
さらに都条例には、広域支援相談員に相談しても解決しない場合の仕組みとしてあっせん・勧告・公表の手続きがあり、公正かつ中立な第三者機関である「東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会」が関わるとされています。同じページには、相談者は「区の窓口でも、東京都の広域支援相談員でも、望む相談先に相談していただくことができます」とも書かれています。
③ お住まいの区市町村の窓口
区市町村にも障害福祉の相談窓口があります。また、園や保育の入り口の段階から相談できる場合もあります。たとえば新宿区は、区内の認可保育園・認定こども園の全園で障害児等保育を行っており、「入園申込みにあたって、お子さんの健康状況、発育状況について、気になることがありましたらご相談ください」と案内しています。同時に「集団での保育であるため、お子さんに保育士が常に1対1で対応するものではありません」とも明記されています。できることとできないことを先に示しているのは、相談する側にとってはむしろ話しやすい書き方です。
④ 学校で、意見が一致しないとき
文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」は、合理的配慮の決定について、「設置者及び学校と本人及び保護者の意見が一致しない場合には、教育支援委員会等の助言等により、その解決を図ることが望ましい」と書いています。学校とご家庭の二者で行き詰まったときに、第三者が入る道が想定されているということです。
⑤ すでに通っている事業所
児童発達支援や放課後等デイサービスを利用しておられる場合、児童発達支援管理責任者に相談することができます。こども家庭庁のガイドラインは「移行支援」の支援内容として、「移行先との支援方針・支援内容の共有や、こどもの状態・親の意向・支援方法についての伝達」や「移行先の受け入れ体制づくりへの協力」を挙げており、併行利用先との連携も支援内容に含めています。保護者が一人で交渉する必要はありません。→ 児童発達支援管理責任者(児発管)とは?
※ 保育所等訪問支援を利用している場合は、訪問支援員が園や学校を訪れて、集団の中での様子を見たうえで助言する仕組みもあります。→ 保育所等訪問支援とは?
出典
- 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)/e-Gov法令検索第2条第1号=障害者の定義(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの)/第2条第2号=社会的障壁の定義(日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)/第2条第3号=行政機関等に地方公共団体を含む/第2条第7号=事業者=商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)/第5条=行政機関等及び事業者は、合理的配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に「努めなければならない」(努力義務)/第7条第1項=行政機関等の不当な差別的取扱いの禁止/第7条第2項=行政機関等は、意思の表明があった場合において、実施に伴う負担が過重でないときは、性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を「しなければならない」/第8条第1項=事業者の不当な差別的取扱いの禁止/第8条第2項=第7条第2項と同一の文で、事業者にも「しなければならない」/第11条=主務大臣は事業者のための対応指針を定める/第12条=主務大臣は事業者に対し報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる/第14条=国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの相談に的確に応ずるとともに、紛争の防止又は解決を図ることができるよう体制の整備を図る
- 内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」平成25年6月に障害者差別解消法が制定され、平成28年4月1日から施行されたこと/令和3年5月に同法が改正され(令和3年法律第56号)、同改正法が令和6年4月1日に施行されたこと/障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針が平成27年2月24日閣議決定、令和5年3月14日に新たに閣議決定されていること/パンフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」及びチラシ「障害者差別解消法が改正に 事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました」が公開されていること/障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」が置かれていること/障害者差別解消支援地域協議会の設置・運営等に関するガイドラインが公開されていること
- 内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(令和5年3月14日閣議決定)法が対象とする障害者の該当性は個別に判断されることとなり「いわゆる障害者手帳の所持者に限られない」/対象となる障害に発達障害及び高次脳機能障害、難病等に起因する障害を含む/意思の表明は言語(手話を含む)のほか点字・拡大文字・筆談・実物の提示や身振りサイン等による合図・触覚による意思伝達など障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段により伝えられ、社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることが望ましい/「障害者からの意思表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う意思の表明も含む」/意思の表明がない場合であっても社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、建設的対話を働きかけるなど自主的な取組に努めることが望ましい/過重な負担の考慮要素5つ=事務・事業への影響の程度/実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)/費用・負担の程度/事務・事業規模/財政・財務状況/過重な負担に当たると判断した場合は「障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」/代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる/合理的配慮は事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない/建設的対話に当たっては必要かつ実現可能な対応案を障害者と行政機関等・事業者が共に考えていくために双方がお互いの状況の理解に努めることが重要/不当な差別的取扱いに当たり得る例=前例がないことを理由に必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること/「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず断ること/事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で断ること/環境の整備=不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置であり努力義務、合理的配慮は環境の整備を基礎として特定の障害者に個別の状況に応じて講じられる措置/「環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である」
- 内閣府「合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)——発達障害」発達障害の「合理的配慮の提供の例」として3件が挙げられていること=「書籍やノートなどを用いた読み書きに困難があるときには、タブレットなどの補助具を用いることができるようにする」/「感覚過敏があるときには、それを和らげるための対処(例えば聴覚過敏に耳栓使用)を行えるようにする」/「作業手順や道具配置などにこだわりがあるときには、一定のものを決めておくようにする」
- 内閣府「障害者差別に関する相談窓口 つなぐ窓口」つなぐ窓口の目的=障害者差別解消法に関する質問に対して回答することや、障害を理由とする差別に関する相談事案を適切な自治体・各府省庁等の相談窓口に円滑につなげるための調整・取次を行うこと/電話番号 0120-262-701/相談フォーム及びメールでも受付/電話リレーサービス・手話リンクでの相談が可能/令和6年4月から事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化されたこと/法の対象となる障害者は「障害者手帳をお持ちの方に限りません」/「事業者」に該当するものの一例として株式会社、社団法人、NPO、医療機関、教育機関、個人のボランティア活動等/対象分野は教育、医療、福祉、公共交通等、全般的に対象(雇用、就業関係は対象外)
- 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(令和3年6月)第1編障害者差別解消法第5条により、合理的配慮を的確に行えるようにする環境の整備が行政機関及び事業者の努力義務とされていること/この合理的配慮の基礎となる環境整備を「基礎的環境整備」と呼ぶこと/第7条第1項・第8条第1項の不当な差別的取扱いの禁止は「国公私立学校とも法的義務となっている」こと/合理的配慮の提供は国の行政機関・地方公共団体・独立行政法人等では法律上の義務であり、事業者については令和3年5月に成立した改正法により努力義務から法的義務へと改められたこと/合理的配慮の定義(中央教育審議会初等中等教育分科会報告)=障害のある子どもが他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うこと/設置者及び学校と本人及び保護者の意見が一致しない場合には教育支援委員会等の助言等により解決を図ることが望ましいこと/個別の教育支援計画を作成する中で合理的配慮について可能な限り合意形成を図った上で決定し提供されることが望ましく、その内容は個別の教育支援計画に明記するとともに個別の指導計画においても活用されることが重要であること/合理的配慮の観点3類型=①教育内容・方法(①-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮/①-1-2 学習内容の変更・調整/①-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮/①-2-2 学習機会や体験の確保/①-2-3 心理面・健康面の配慮)②支援体制(②-1 専門性のある指導体制の整備/②-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮/②-3 災害時等の支援体制の整備)③施設・設備(③-1 校内環境のバリアフリー化/③-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮/③-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮)/子供の実際の活動場面を観察する担当者として特別支援教育コーディネーターが挙げられていること
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)本人支援の五領域=「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」/「運動・感覚」のねらいに「感覚の特性への対応」が含まれ、支援内容に「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う」と明記/「運動・感覚」の「保有する感覚の活用」=視覚、聴覚、触覚、嗅覚、固有覚、前庭覚等の感覚を十分に活用できるよう遊び等を通して支援する/「認知・行動」の支援内容=取得した情報を過去に取得した情報と照合し、環境や状況を把握・理解できるようにするとともに、これらの情報を的確な判断や行動につなげることができるよう支援を行う/地域社会への参加・包摂(インクルージョン)は「一人一人のこどもの育ちと個別のニーズを共に保障した上で」推進するものであること/移行支援=「特に入園・入学時等のライフステージの移行時における『移行支援』は、こどもを取り巻く環境が大きく変化することも踏まえ、支援の一貫性の観点から、より丁寧な支援が求められる」/移行支援の支援内容=移行先との支援方針・支援内容の共有や、こどもの状態・親の意向・支援方法についての伝達/家族への情報提供や移行先の見学調整/移行先の受け入れ体制づくりへの協力/併行利用先とのこどもの状態や支援内容の共有(例:得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段の共有)/家族支援の支援内容に「きょうだい同士の交流の機会の提供やきょうだいに対する相談援助」が含まれること/「『家族支援』は、対象を保護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母等への支援も含まれる。特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、きょうだい向けのイベントを開催する等の対応を行っていくことも必要である」/「家族支援」は母親が中心となる場合が多いが、父親やきょうだい、さらには祖父母など家族全体を支援していく観点が必要であること
- 世田谷区「就学支援シート」(2026年1月5日更新)就学支援シートの目的=幼稚園、保育園、療育機関など就学前機関のお子さんの様子や支援の様子等を区立小学校または都立特別支援学校に引き継ぐとともに、就学後に必要と思われる支援等について保護者、就学前機関、小学校がともに考えていくこと/作成・活用等は保護者の同意のもとに行われること/主な対象=(1)就学相談を申し込んでいるお子さん(2)現在、療育機関に通っているお子さん/引き継ぐ具体的な内容=(1)家庭での様子(生活・健康、人とのかかわりなど)(2)保育園、幼稚園、療育機関での様子(3)入学した先での本人や保護者の希望など/「お子さんの好きなことや得意なこと、また、お子さんがどうしても苦手なことなど、就学に向けて小学校に知ってもらいたいことを引き継いでいきます」/保護者記入用について「様式欄のすべてを記入しなくても結構です。『ここだけは』というポイントをご記入ください。」と案内されていること/配布は12月上旬から、保護者記入→就学前機関記入→保護者が受領→就学校決定後に保護者から小学校へ提出という流れ
- 新宿区「新宿区の障害児等保育」(2025年10月1日更新)区の認可保育園、認定こども園では、発達状況や健康状態等に応じて、集団の中で成長を支援できるよう配慮した障害児等保育を行っていること/「入園申込みにあたって、お子さんの健康状況、発育状況について、気になることがありましたらご相談ください」/「集団での保育であるため、お子さんに保育士が常に1対1で対応するものではありません。(障害・発達に関する専門的な訓練は行いません。)」/対象=区内在住の集団保育が可能な心身に障害を有するお子さんや特別な配慮を要するお子さん/認可保育園、認定こども園の全園で実施し、原則として障害児は2名まで各園の定員内で受入れ/保育時間は発達過程や障害の状態、保護者の就労状況等に応じて園長が決定/申込みから入園決定までの流れ=申込み→内々定した園での観察会→入園及び保育環境検討会→内定した園での面接・健康診断→入園決定/居宅訪問型保育事業[障害児対応型]を実施していること
- 豊島区「東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」(2024年9月5日更新)東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例が平成30年10月1日より施行されたこと/主なポイント3つ=事業者による「合理的配慮の提供」の義務化/相談体制/紛争解決の仕組み/対象は「都内で事業を行う者」であり、本社や事務所が都外であっても都条例の対象であること/障害者差別解消法に先んじて都条例では事業者の合理的配慮の提供が義務化されたこと(法では令和6年度から義務化)/行政機関・民間事業者とも不当な差別的取扱いは禁止、合理的配慮の提供は行政機関・民間事業者とも義務(法は令和6年4月1日より義務化)/知識経験のある「広域支援相談員」を東京都に配置し、障害者本人や周りの関係者、民間事業者からの相談も含め幅広く受け付けること/広域支援相談員は区市町村と連携し、相談者への助言や調査、情報提供及び関係者間の調整などを行うこと/相談者は区窓口でも東京都の広域支援相談員でも望む相談先に相談できること/紛争解決の仕組みとしてあっせん・勧告・公表の手続きがあり、公正中立な「東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会」が関わること
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
もう練習が始まっています。いまから相談しても遅くないでしょうか。
遅くありません。プログラムの細部(並び順、出番の順序、待機場所、係の割り当て)は、練習が始まったあとでも動くことが多い部分です。また、当日の配慮だけでなく練習期間の配慮——見学にする、途中で抜ける、練習のある日を事前に教えてもらう——は、今日からでも効きます。まずは担任の先生に、いちばん困っていること一つを伝えるところからで十分です。
診断も手帳もありません。それでも「配慮」をお願いできますか。
お願いできます。内閣府の基本方針(令和5年3月14日閣議決定)は、障害者差別解消法が対象とする障害者の該当性について、「当該者の状況等に応じて個別に判断されることとなり、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない」と明記しています。内閣府の「つなぐ窓口」のページにも「障害者手帳をお持ちの方に限りません」と書かれています。診断名を伝える必要もありません。「この場面で、こう困っています」という具体の話で進められます。
「特別扱いはできません」と言われました。それで終わりでしょうか。
内閣府の基本方針は、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ることを、不当な差別的取扱いに当たり得る例として挙げています。「前例がないことを理由に一律に断ること」「『何かあったら困る』という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せずに断ること」も同じ並びに挙げられています。ただし、いきなり法律を持ち出すよりも、「では、どういう形なら可能でしょうか」と代替案を一緒に探すほうが早く進むことが多いです。基本方針も、代替措置の選択を含めて柔軟に検討することを求めています。それでも動かないときに、次の質問の窓口があります。
園や学校と話しても進みません。どこに相談できますか。
三つあります。①内閣府の「つなぐ窓口」(電話 0120-262-701)——どこに相談すればよいか分からない段階の相談を想定した国の窓口で、適切な自治体や府省庁の窓口へ取り次ぎます。②東京都の広域支援相談員——都条例にもとづく相談員で、区市町村と連携して助言・調査・調整を行います。解決しない場合はあっせん・勧告の手続きもあります。③お住まいの区市町村の窓口。豊島区のページによれば、相談者は区の窓口でも東京都の広域支援相談員でも、望む相談先に相談できるとされています。
公立と私立で、頼めることに違いはありますか。
法律のかかり方が違います。区立・市立・都立の園や学校は行政機関等にあたり、障害者差別解消法第7条第2項により平成28年4月1日から合理的配慮の提供が義務です。私立の幼稚園・保育園・小学校などは事業者にあたり、第8条第2項により令和6年4月1日から義務になりました(それ以前は努力義務)。ただし東京都では、都条例により平成30年10月1日から都内で事業を行う事業者の合理的配慮の提供が義務化されています。なお、不当な差別的取扱いの禁止は、文部科学省の手引によれば国公私立学校とも法的義務です。
当日、全部は出られそうにありません。休ませたほうがよいでしょうか。
「全部出るか、休むか」の二択にする必要はありません。一部の種目だけ出る、別の役割で参加する、見学席から見る、写真だけ撮る、途中で抜ける——実際にはこれだけの幅があり、どの形にするかは園や学校と一緒に決められます。目的は、その一日を、その子が自分の力で通り抜けられることです。当日の朝に決める、という決め方も含めて、あらかじめ先生と共有しておくと動きやすくなります。
うまくいった配慮を、来年も続けてもらえますか。
学校であれば、書類に残す道があります。文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」は、合理的配慮について「その内容は、個別の教育支援計画に明記するとともに、個別の指導計画においても活用されることが重要である」としています。運動会が終わったら、効いた配慮を一行メモしておき、次の面談で「これを個別の教育支援計画に書いていただけますか」と伝えてみてください。遠足や学芸会、進級のときの引き継ぎにも使えます。
運動会のあと、行きしぶりが強くなりました。何かおかしいのでしょうか。
練習期間から本番まで、通常より高い負荷が数週間続いたあとです。反動が翌日以降に出ることは珍しくありません。数日から一週間ほど、予定を減らして休ませる時間をとってみてください。あわせて、園や学校に当日と練習中の様子を聞いてみると、家では言わなかったことが出てくることがあります。長く続く場合や、食事・睡眠に大きく影響している場合は、通っている事業所や区市町村の相談窓口にご相談ください。→
登園しぶり
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。