背景として、文書に書かれていること
「行きたくない」の背景は一つではありません。推測を並べる代わりに、一次情報に記載のあるものを挙げます。
| 背景 | 文書での記述 |
| 感覚の受け取り方 | ASHA=環境音・におい・光・触覚への過剰反応・低反応・混合したパターン。園は音も人も多い場です(→感覚過敏) |
| 見通しの立てにくさ | 国のガイドライン=発達障害のあるこどもには「予定等の見通しをわかりやすくすること」が必要 |
| 移行そのものの難しさ | ASHA=日課の変化への対応、活動間の移行の困難(→切り替えが苦手) |
| 不安・緊張 | 国のガイドライン=少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意する |
| やりとりの難しさ | ASHA=会話への参加、行き違いの修復(→友だちトラブル) |
| 食事の場面 | ASHA=食感・色への好み、決まった食具の使用(→偏食)。給食が理由のこともあります |
「園で何かあった」とは限りません
いじめや叱責のような、はっきりした出来事がなくても起こります。
むしろ
毎日少しずつ積み重なる負担——音、人数、切り替えの回数、分からない指示——が限界を超えたときに、朝の形で表れることがあります。
「理由を言えないから、理由がない」わけではありません。
🔴 「安心の基地」——国のガイドラインの言葉
児童発達支援ガイドラインは、五領域のうち「人間関係・社会性」の支援内容として、こう書いています。
原文
「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう『安心の基地』の役割を果たせるよう支援する」また同じガイドラインは、アタッチメント(愛着)を
「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台」と定義しています。
「受け止める」ことが、折り合いをつける力の土台として書かれている——この順序は、朝の対応を考えるときの支えになります。
泣いているのを受け止めることは、行かせないことと同じではありません。受け止めたうえで、行くか休むかを決める——順番は分けられます。
朝の対応で、試せること
- 前の晩に、翌日の予定を伝えておく——国のガイドラインが挙げる「予定等の見通しをわかりやすくすること」です。朝より前に済ませます。
- 朝の手順を、毎日同じにする——順番を決めて、目に見える形(絵・写真・並べた持ち物)にします。考える量を減らします。
- 問い詰めない——「どうして行きたくないの」に答えられないことは多くあります。先に受け止めるほうが早く落ち着くことがあります。
- 選べる形にする——「歩いていく? 自転車?」「何を持っていく?」。国のガイドラインは「こどもによる選択ができるよう配慮すること」を挙げています。
- お守りを持たせる——家のもの、小さなカード、写真。家とつながっている物があると落ち着く子がいます。
- 迎えの時刻を、はっきり伝える——「お昼のあと」「おやつを食べたら」。終わりが見えることが効くことがあります。
- 記録する——日付、その日の様子、前日の出来事、園での活動。曜日や活動に偏りがないかが見えてきます。
いちばん見えやすいのは、曜日と活動です
「水曜だけ」「プールの日だけ」「行事の前だけ」——
記録をつけると、偏りが出ることがあります。偏りが見つかれば、園に相談する内容が具体的になります。
「行きたがりません」より「水曜のリトミックの日に強く出ます」のほうが、園も動けます。
休ませる判断について
この記事では、休ませるべき/行かせるべきという答えは書きません。確認できた一次情報に、その判断基準が示されていないためです。
代わりに、判断のときに見られる材料を挙げます。
- 体の症状があるか——熱、嘔吐、腹痛。まず小児科で確かめる場面です
- 眠れているか、食べているか——生活のリズムに影響が出ているかどうか
- 続いている期間——数日か、数週間か。記録があると分かります
- 強まっているか、和らいでいるか——同じ「行きたくない」でも、方向が違えば意味が変わります
- ご家族が持ちこたえられているか——ここも、判断材料の一つです
ご家族への支援も、制度の中にあります
児童発達支援ガイドラインは
「家族支援」を支援の柱の一つとして定め、相談援助、
家族のレスパイトの時間の確保、心理的カウンセリング、保護者同士の交流の機会、
ペアレント・トレーニングなどを支援内容に挙げています。
「乳幼児期は、親が障害のあるこどもを育てる初期の不安な時期であり、孤立感を感じやすい時期でもある」——ガイドライン自身の言葉です。
🔴 園に相談するときの、法的な裏づけ
発達障害者支援法第7条(保育)は、次のように定めています。
条文
「市町村は、児童福祉法第24条第1項の規定により保育所における保育を行う場合又は同条第2項の規定による必要な保育を確保するための措置を講じる場合は、発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」
配慮を相談することは、お願いごとであると同時に、制度の側に位置づけのあることだと分かります。
園に伝えるとよいこと:
- いつ強く出るか(曜日・活動・時間帯)
- 家で効いている工夫——予告、選べる形、お守り、迎えの時刻を伝える
- 園で試してほしいこと——朝の受け入れの形、逃げ場所、参加の量を減らす
- 本人が言えていること/言えていないこと
専門職が園を訪問して一緒に考えるしくみもあります(→保育所等訪問支援とは?)。その目的は児童福祉法第6条の2の2第5項に「当該施設における」支援と定められており、その園での過ごし方そのものが対象です。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 小児科 | 体の症状があるときは、まずここ |
| 園(担任・主任) | 園での様子。曜日・活動の偏りを一緒に確かめる |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 保育所等訪問支援 | 専門職が園に入って、過ごし方を一緒に考える |
| 児童発達支援 | ご家族への支援(家族支援)も、ガイドラインが定める支援の一部です |
※本記事は一般的な情報提供です。体調の変化がある場合はまず小児科にご相談ください。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
休ませてもいいのでしょうか?
この記事では、休ませるべき/行かせるべきという答えは書きません。確認できた一次情報に判断基準が示されていないためです。見る材料としては、体の症状/眠れているか・食べているか/続いている期間/強まっているか和らいでいるか/ご家族が持ちこたえられているかがあります。体の症状があるときは、まず小児科です。
理由を聞いても答えません
答えられないことは多くあります。はっきりした出来事がなくても、音・人数・切り替えの回数といった負担が積み重なって表れることがあります。問い詰めるより、先に受け止めるほうが早く落ち着くことがあります。
泣いているのを受け止めるのは、甘やかしですか?
国のガイドラインは、大人の役割を「安心の基地」と書き、「自分の感情に折り合いをつけたりできるよう」支援する、と位置づけています。受け止めることと、行かせるかどうかの判断は、分けて考えられます。
原因を見つけるには、どうすればいいですか?
記録が最も役に立ちます。日付・その日の様子・前日の出来事・園での活動を書き留めると、曜日や活動の偏りが見えることがあります。「行きたがりません」より「水曜の◯◯の日に強く出ます」のほうが、園も動けます。
園に配慮をお願いしてもいいのでしょうか?
発達障害者支援法第7条は、市町村について「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めています。相談することには制度上の位置づけがあります。
親のほうが限界です
ご家族への支援も、国のガイドラインが定める支援の一部です。「家族支援」の支援内容には、相談援助、家族のレスパイトの時間の確保、心理的カウンセリング、保護者同士の交流の機会などが明記されています。区市町村の窓口にご相談ください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。