🔴 遊びの育ちには、記述された順序があります
児童発達支援ガイドラインは、五つの支援領域のうち「人間関係・社会性」の中で、「遊びを通じた社会性の促進」をこう書いています。
原文
「周囲にこどもがいても無関心である一人遊びの状態から並行遊びを行い、大人が介入して行う連合的な遊び、役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する」
| 段階 | 様子 |
| 一人遊び | 周囲にこどもがいても無関心 |
| 並行遊び | 同じ場所で、それぞれが自分の遊びをしている |
| 連合的な遊び | 大人が介入して成り立つ、いっしょの遊び |
| 協同遊び | 役割分担したり、ルールを守って遊ぶ |
「入れない」ではなく「途中」
この順序に照らすと、
一人で遊んでいることも、同じ場所で別々に遊んでいることも、順序の中の位置です。
そして三番目に
「大人が介入して行う」と書かれていることに注目してください。
こども同士だけでは、まだ成り立たない段階がある——それが前提として書かれています。
「輪に入れない」のではなく、
大人が間に入る段階を飛ばしているだけかもしれません。
※この順序は支援の考え方を示すものであり、年齢の目安ではありません。ガイドラインにも年齢の記載はありません。
🔴 「こどもの希望に応じて」——無理に入れない根拠
同じガイドラインの「仲間づくりと集団への参加」には、こう書かれています。
原文
「集団に参加するための手順やルールを理解し、こどもの希望に応じて、遊びや集団活動に参加できるよう支援するとともに、共に活動することを通じて、相互理解や互いの存在を認め合いながら、仲間づくりにつながるよう支援する」
国の文書が「こどもの希望に応じて」と書いている以上、全員を輪の中に入れることが目標だ、とは書かれていないということになります。
さらにガイドラインは、精神的に強い不安や緊張を示すこどもへの配慮として、こう書いています。
- 「特定の人との関係性を軸に、周囲の人との関わりを拡げていく」
- 「安心感のある肯定的な関わりを大切にする」
- 「少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意する」
一人の人との関係が先、そこから広げる——という順序です。いきなり集団に入れる方法は、ここには書かれていません。
「入れない」の背景として、文書に書かれていること
背景は一つではありません。文書に記載のあるものを挙げます。
| 背景 | 文書での記述 |
| 感覚の受け取り方 | ASHA=環境音・におい・光・触覚への過剰反応・低反応・混合したパターン。集団は刺激が多い場です(→感覚過敏) |
| やりとりの技能 | ASHA=会話への参加(開始・話題の維持・順番交代・応答)、行き違いの修復(→順番が待てない) |
| ことばの理解 | 集団の指示は、一斉・長い・抽象的になりがちです(→理解と表出) |
| 不安・緊張 | 国のガイドライン=少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意する |
| 話せない場面がある | 国のガイドライン=場面緘黙について、話すことを強制したり話さないこどもとみなしたりしないこと(→場面緘黙) |
行き違いは、双方向のものとして記述されています
ASHAは
二重の共感の問題(double empathy problem)を紹介しています(Milton 2012、Crompton et al. 2020)。
これは、
理解のずれは一方の側だけの問題ではないという考え方です。
また、目を合わせる・表情・ボディランゲージといった行動は
社会文化的および個人的な要因の影響を受けるとも明記されています(→
共同注意とは?)。
家庭・園でできること
- 一人の相手から——集団の前に、大人一人、こども一人。ガイドラインの「特定の人との関係性を軸に」という書き方に沿った順序です。
- 大人が間に入る——「連合的な遊び」は大人が介入して行うものとして書かれています。放っておいて混ざるのを待つ段階ではないことがあります。
- 見ているだけの参加を、参加として認める——並行遊びも順序の中にあります。輪の外から見ていることを「不参加」と数えないでください。
- 刺激を減らす——人数、音、時間。全部に参加するのではなく参加できる部分を選ぶ形にします。
- 役を渡す——配る、鳴らす、めくる。役があると、輪の中に居場所ができます。
- 本人に確かめる——「入りたい? 見てる?」。国の文書が「こどもの希望に応じて」と書いている以上、聞くことは支援の一部です。
園と一緒に考えるしくみ
保育所等訪問支援は、専門職が園や学校を訪問して支援を行うしくみです。その目的は児童福祉法第6条の2の2第5項に定められています。
条文の読みどころ
保育所等訪問支援の目的は
「当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援」と書かれています。
「当該施設における」——つまり、
その園での過ごし方そのものが対象です。子どもがどこかへ出向いて練習する形ではありません(→
保育所等訪問支援とは?)。
また、発達障害者支援法第7条(保育)は、市町村について「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めています。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「人間関係・社会性」は国のガイドラインが定める五つの支援領域の一つです |
| 保育所等訪問支援 | 園での過ごし方を、専門職が園に入って一緒に考える |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの理解・やりとりの面が気になるとき |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
無理にでも輪に入れたほうがいいですか?
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、集団への参加を「こどもの希望に応じて」支援すると書いています。全員を輪の中に入れることが目標だ、とは書かれていません。
一人で遊んでばかりで心配です
国のガイドラインは、遊びの育ちを一人遊び→並行遊び→大人が介入して行う連合的な遊び→協同遊びという順序で記述しています。一人遊びも並行遊びも、その順序の中にある段階として書かれています。
こども同士で遊ばせておけば、そのうち混ざりますか?
順序の三番目は「大人が介入して行う連合的な遊び」と書かれています。こども同士だけでは、まだ成り立たない段階があることが前提になっています。大人が間に入る形を試す価値があります。
行事に参加できません
全部に参加するか、しないかではなく、参加できる部分を選ぶ形があります。人数・音・時間を減らす、役を渡す、見ているだけの参加を参加として数える——などです。
園ではしゃべらないのに、家では話します
国のガイドラインは場面緘黙(選択性かん黙)について、「話さないということだけに着目して、話すことを強制したり、話さないこどもとみなしたりするのではなく」と明記し、指さしやカード、身振りなどことば以外の方法でのやりとりを工夫することを挙げています。
園に専門職が来てくれるしくみはありますか?
保育所等訪問支援があります。児童福祉法第6条の2の2第5項は、その目的を「当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援」と定めています。その園での過ごし方そのものが対象です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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