「切り替え」は何と呼ばれ、どう記述されているか
ASHAは、自閉症のあるこどもに見られうる行動面の課題として、次のように記述しています。
ASHAの記述
「日課の変化への対応、および、ある活動から次の活動へ移ることの困難」さらに、DSM-5-TRにもとづく反復的な行動様式の中に
「決まった手順への、融通のきかない固執」が挙げられています。
——切り替えの難しさは、
「いつもと同じ」を求めることと地続きのものとして書かれています(→
こだわりが強い)。
そして視覚的支援の領域では、視覚的な手がかりが助けるものとして課題の完了・注意・移行・情動の調整の四つが挙げられます。「移行」はその一つに名前で入っています(→視覚的支援とは?)。
🔴 国のガイドラインは、環境の側に要件を書いている
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、事業所が整えなければならない環境として次のように書いています。「工夫するとよい」ではなく、「留意しつつ、計画的に環境を整え、工夫して……支援を行わなければならない」という書き方です。
- 「障害の特性を踏まえ、時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること」
- 「不安な気持ちを落ち着かせる環境を整える」
- 「こども自らが環境に関わり、自発的に活動し……こどもによる選択ができるよう配慮すること」
さらに、発達障害のあるこどもへの配慮事項として「予定等の見通しをわかりやすくすることや、感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)に留意し、安心できる環境づくりが必要である」と明記されています。
読みどころ
切り替えは、本人が身につけるものとしてではなく、
環境の側が整えるものとして書かれています。
「見通しを持たせる」ではなく
「見通しをわかりやすくする」——主語が、支援する側にあります。
家庭でできる工夫
- 終わりを、始まる前に決める——「あと3回すべったら」「この曲が終わったら」。始めたあとに言うより、始める前に言うほうが通りやすくなります。
- 時間ではなく、回数や量で区切る——「あと5分」は、時計が読めない年齢では意味を持ちにくい言い方です。数えられるもののほうが確実です。
- 予告は二段階——「あと少しで終わり」→「次で終わり」。一度だけの予告より、区切りが分かりやすくなります。
- 終わりを見える形にする——タイマー、砂時計、絵カード、片づけ箱。目で確かめられると、ことばの押し問答が減ります。
- 次にすることを、先に見せる——「終わり」だけを伝えると、失うことだけが残ります。次に何があるかとセットにします。
- 終わりの動作を決めておく——箱に入れる、電源を切る、「ばいばい」と言う。毎回同じ動きにすると、それ自体が合図になります。
- 選べる形にする——「今おしまいにする? もう一回やってからにする?」。国のガイドラインは「こどもによる選択ができるよう配慮すること」と書いています。
いちばん効くのは、たいてい「次」です
切り替えが難しいのは、
終わることそのものより
この先が見えないことであることが少なくありません。
「おしまい」ではなく
「おしまい→次はごはん」。予定表を目に見える形にしておくと、その場のことばが減ります。
それでも難しいときに見るところ
| 見るところ | 考えられること |
| 特定の活動だけ難しい | その活動が途中で終わる形になっていないか。区切りのある形(1ゲーム、1周)に変えられないか |
| 特定の場所・時間帯だけ難しい | 音・光・人の多さ・疲れ。感覚が関わっている可能性(→感覚過敏) |
| 予定が変わった日に崩れる | 見通しの問題。変更を先に伝える形にできないか |
| どの場面でも、全般に難しい | ことばの理解の面も含めて相談する価値があります(→理解と表出) |
ASHAは、支援を検討する目安として「機会を制限する」「苦痛や不快をもたらす」「自己管理に影響する」の三つを挙げています。切り替えの難しさが行ける場所を減らしているなら、相談する理由になります。
※この表は家庭で気づくための手がかりであり、診断の基準ではありません。
園・学校に伝えるとき
集団の場では、切り替えの回数そのものが家庭より多くなります。
- どの切り替えが難しいか(外遊びから戻るとき、給食の前、など場面を具体的に)
- 効いている工夫——予告の仕方、タイマー、終わりの動作
- 崩れたときにどうすると戻りやすいか
- 無理に引き離さないでほしいことを、はっきりと
専門職が園を訪問して一緒に考えるしくみもあります(→保育所等訪問支援とは?)。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 見通しの持ち方・環境の整え方は「認知・行動」の領域に含まれます |
| 作業療法士(OT) | 感覚の受け取り方が関わっていそうなとき |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの理解や、伝える手段の面が気になるとき |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
「あと5分」と言っても効きません
時計が読めない年齢では、時間の予告は意味を持ちにくい言い方です。回数や量(あと3回、この曲が終わったら)や、タイマー・砂時計など目で確かめられるものに置き換える方法があります。
切り替えは、練習すればできるようになりますか?
効果を保証することはできません。ただし国のガイドラインは、切り替えを本人が身につけるものとしてではなく、「時間や空間を本人にわかりやすく構造化する」環境の要件として書いています。まず環境の側を動かす、という順序です。
無理にでも止めさせたほうがいいですか?
ASHAは、支援を検討する目安として「苦痛や不快をもたらす」を挙げています。止め方そのものがつらい経験として重なると、その活動や場面自体を避けるようになることがあります。終わりを、始まる前に決めておくほうが負担が小さくなります。
なぜ「次」を見せるとよいのですか?
切り替えが難しいのは、終わることそのものよりこの先が見えないことである場合が少なくないためです。国のガイドラインも「予定等の見通しをわかりやすくすること」を配慮事項に挙げています。
園でだけ崩れます
集団の場は切り替えの回数が家庭より多くなります。どの場面が難しいかと家庭で効いている工夫をセットで伝えると、その日から使えます。専門職が園を訪問するしくみ(保育所等訪問支援)もあります。
相談したほうがいい目安はありますか?
ASHAが挙げる三つ——機会を制限する/苦痛や不快をもたらす/自己管理に影響する——のいずれかに当てはまるときです。とくに行ける場所・できる活動が減ってきたときは相談の理由になります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。