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視覚支援とは?——「見てわかる」形にして伝える

最終更新:2026年9月3日
視覚支援は、伝えたいことを目で見てわかる形にする工夫です。写真、絵、文字、実物——手がかりを目に見える形で置きます。

「ことばで言っても伝わらない」ときの代わり、と思われがちですが、米国言語聴覚学会(ASHA)が挙げている働きは、それより広いものです。手順を進める、注意を向ける、次に移る、そして気持ちを保つ——この4つに効くとされています。

定義——手がかり(cue)や促し(prompt)として働くもの

ASHAは活動スケジュールと視覚支援について、物、写真、絵、書かれた語が含まれ、それらが手がかり(cue)や促し(prompt)として働くと説明しています。

実物や、その一部(お風呂=タオル、外出=くつ)
写真その子が実際に使っている物・行く場所の写真
イラスト、線画、絵文字のようなシンボル
書かれた語文字。読める子には、これがいちばん早いこともあります

その子がどの形なら分かるかで選びます。写真より実物のほうが分かる子もいれば、文字がいちばん確かな子もいます。

🔴 何を助けるのか——ASHAが挙げている4つ

ASHAは、活動スケジュールと視覚支援が助けることとして、次の4つを挙げています。

助けること場面の例
一連の課題や活動を完了する着替えの手順、帰りの支度を最後までやりきる
課題に注意を向ける今やることが目に見えているので、そこに戻ってこられる
ひとつの課題から次へ移る(移行)遊びから片づけへ。切りかえの場面
さまざまな場面で情動の調整を保つ見通しが立っていると、気持ちが崩れにくい
4つ目に注目してください
「情動の調整を保つ」——視覚支援は、指示を伝える道具だと思われがちですが、気持ちの安定そのものに働くとされています。

切りかえで崩れる、予定が変わると混乱する——そうした場面は「わがまま」ではなく、見通しが立たないことによることがあります。

AACの中での位置——「道具を使う・ローテク」

視覚支援は、AAC(拡大・代替コミュニケーション)の枠組みの中にきちんと位置づけられます。

ASHAはAACを道具が要らないもの(unaided)道具が要るもの(aided)に分け、後者をローテクハイテクに分けています。

分類ASHAが挙げている選択肢
道具が要らない身ぶり、表情、手指文字、手のサイン、発声、発話
道具が要る・ローテクコミュニケーションボード・ブック、写真視覚的スケジュール書くこと
道具が要る・ハイテクパソコン・タブレット・スマートフォンのアプリ、文字の読み上げ、音声表出機器(SGD)

視覚的スケジュールが、ASHAのAACの選択肢にはっきり挙げられています。つまり視覚支援は、その場しのぎの工夫ではなく、AACの一形態です。

そしてASHAは、ひとつの形だけを使う人も、道具が要らないもの・ローテク・ハイテクを組み合わせて使う人もいるとしています。視覚支援と、サインや絵カードを併用してかまいません。

視覚的な促しは、何をしているのか

ASHAは視覚的な促しの方法(visual prompting strategies)について、視覚的な手がかり(指さしや身ぶりなど)を使って次のことを助けると説明しています(Hodgdon, 1995)。

2つ目が見落とされます
「話しことばの理解を助ける」——視覚支援は、ことばの代わりではなくことばの理解を支えるものでもあります。

「言ってわからないから見せる」ではなく、言いながら見せる。そのほうが、ことばそのものも入りやすくなります。(→ことばの「表出」と「理解」

促しには「全般的なもの」と「特定的なもの」があります

ASHAは、視覚的な促しを2種類に分けています。

種類内容使い分け
全般的な促しコミュニケーションのしくみ全体のほうを身ぶりで示す(「これを見て」と手で示す)自分で探せるようになってきたとき
特定的な促し特定の場所を指さす(「ここ」と1か所を示す)まだ迷うとき。確実に伝わります
段階を下げる・上げるという考え方
うまくいかないときは特定的な促しに戻し、できるようになったら全般的な促しへ。

「見て分かるようにする」だけでなく、助け方の強さを変える——これが方法として設計されている部分です。

「スクリプト」という形もあります

ASHAは、やりとりを始めたり、続けたりするための書かれた/視覚的な促し「スクリプト」と呼ぶと説明しています。

「かして」「いれて」「てつだって」——よく必要になるひとことを、カードや紙に書いて手元に置いておく形です。

その場で思い出せなくても、そこに置いてあれば使える。ことばを知っているかどうかと、必要な瞬間に出せるかどうかは、別のことです。

家庭での作り方

  1. 場面をひとつ決める——朝の支度、お風呂、帰りの支度など。全部を作ろうとしないこと。
  2. 流れを3〜5枚で表す——写真がいちばん確かです。その子の家の実物を撮ってください。市販のイラストより伝わることがあります。
  3. 終わったら外す・裏返す——「終わった」が目に見えると、進んでいる感じが出ます。
  4. 予定が変わったら、見せて変える——口で説明するより、カードを差し替えるほうが伝わります。ASHAが挙げる「移行」と「情動の調整」に効く場面です。
  5. 本人が見える高さに置く——大人の目線ではなく、その子の目線の高さに。
  6. しまい込まない——ASHAはAACについて「使う人は、自分の道具や機器にいつでもアクセスできる状態であるべき」としています。使う時間だけ出すのでは足りません。

うまくいかないときは、枚数を増やすより1枚に絞るほうが定着しやすくなります。

ほかの方法との違い

何をするか特徴
視覚支援見通しや手順を、目に見える形で示す幅が広い。伝える場面にも、気持ちを保つ場面にも使える
PECS絵カードを相手に手渡す自分から伝えることを教える。6つのフェイズで進む
マカトン法話しことばにサインを添える話しことばと同時に使うことが前提

視覚支援は「大人が伝える」側にも、「子どもが伝える」側にも使えます。PECSは後者に、マカトン法は主に前者から始まります。目的で選び分けられます。

聞き取りにくさがある場合は、視覚支援がとくに助けになります(→聴覚情報処理(APD)とは?)。

どこに相談すればいいか

言語聴覚士(ST)が、その子にどの形(実物・写真・絵・文字)が合うかを含めて評価します。ASHAは言語聴覚士の役割に他の専門職への紹介も挙げており、手の使い方や姿勢の面は作業療法士・理学療法士と分担します。

※本記事は一般的な情報提供です。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

視覚支援を使うと、ことばが育たなくなりませんか?
ASHAは、視覚的な促しの働きのひとつに「話しことばの理解を助ける」ことを挙げています。ことばの代わりではなく、ことばを支えるものです。「言ってわからないから見せる」ではなく言いながら見せるほうが、ことばも入りやすくなります。
写真とイラスト、どちらがいいですか?
その子が分かる形を選びます。ASHAは視覚支援に含まれる形として物・写真・絵・書かれた語を挙げており、どれが良いという順位はありません。実物のほうが分かる子も、文字がいちばん確かな子もいます。家庭ではその子の家の実物を撮った写真が伝わりやすいことが多いです。
何枚くらい作ればいいですか?
ひとつの場面を3〜5枚から始めてください。全部の場面を作る必要はありません。うまくいかないときは、枚数を増やすより1枚に絞るほうが定着しやすくなります。
使う時間だけ出すようにしていますが、いいですか?
ASHAはAACについて「使う人は、自分の道具や機器にいつでもアクセスできる状態であるべき」としています。視覚支援もAACのローテクの一形態です。常に手元に置くことをお勧めします。
予定が急に変わったときは、どうすればいいですか?
カードを差し替えて見せてください。口で説明するより伝わります。ASHAは視覚支援が助けることとして「ひとつの課題から次への移行」と「さまざまな場面で情動の調整を保つこと」を挙げています。切りかえの場面は、まさにここです。
PECSやマカトン法との違いは何ですか?
視覚支援は見通しや手順を伝える幅の広い工夫で、大人が伝える側にも子どもが伝える側にも使えます。PECSは絵カードを相手に手渡すところから始め、マカトン法は話しことばにサインを添えて使います。目的で選び分けられ、併用もできます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。