条文を、そのまま読む
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)は、行政機関等と事業者を分けて定めています。
| 条 | 対象 | 内容 |
| 第7条第1項 | 行政機関等 | 不当な差別的取扱いの禁止 |
| 第7条第2項 | 行政機関等 | 合理的配慮の提供 |
| 第8条第1項 | 事業者 | 不当な差別的取扱いの禁止 |
| 第8条第2項 | 事業者 | 合理的配慮の提供 |
第8条第2項(事業者)の条文
「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」第7条第2項(行政機関等)も、ほぼ同じ文言です。
公立の学校・園は「行政機関等」、私立の学校・園や学習塾は「事業者」にあたります。どちらも「しなければならない」——義務として書かれています。
※事業者の合理的配慮は、改正法により令和6年(2024年)4月1日から義務となりました。それ以前は努力義務でした。
障害者差別解消法の二つの条文。左が第5条の環境の整備(努力義務)、右が第7条第2項・第8条第2項の合理的配慮(義務)。
🔴 起点は「意思の表明」です
条文の「意思の表明があった場合において」という書き方は、黙っていると始まらないことを意味します。
- 本人でなくてもかまいません——条文は「障害者から」ですが、家族などが本人を補佐して行う意思の表明も想定されています
- 書面でなくてもかまいません——形式の定めは条文にありません
- 「合理的配慮」という言葉を使う必要もありません——何が困っていて、どうしてほしいかが伝われば足ります
だから、伝え方が結果を左右します
「配慮してください」だけでは、相手も動きようがありません。効くのは、この形です——
①
何が難しいか(読む/書く/写す/待つ/音、と分けて)
②
どうなっているか(時間・回数など、事実で)
③
してほしいこと(複数の案を出す)
③を一択にしないほうが通りやすくなります。「量を減らす/形を変える/期限を延ばす、のどれかはできますか」という尋ね方です。
🔴 「過重な負担」という限界も、条文にあります
「その実施に伴う負担が過重でないとき」——この条件があるので、求めれば必ず通るものではありません。
だからこそ、合理的配慮は一方が要求して決まるものではなく、できる形を一緒に探すものとして運用されています。
| ありがちな受け止め | 条文からの読み方 |
| 「特別扱いを頼むこと」 | 社会的障壁の除去。同法第2条は社会的障壁を「事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」と定義しています |
| 「断られたら終わり」 | 「過重な負担」の理由を聞き、別の案を出すことができます |
| 「一度決めたら固定」 | 状況が変われば見直しを相談できます |
| 「本人が言えないと無理」 | 家族などが補佐して伝えることが想定されています |
もう一つ、別の条文があります
第5条(環境の整備)は、行政機関等および事業者について
「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない」としています。
——
個別の求めを待たずに、あらかじめ整えておくという話で、こちらは
努力義務です。合理的配慮(義務)とは別のものです。
子どもの場面での例
以下は考え方の例です。何が認められるかは、個別の状況と話し合いによります。
| 困っていること | 相談できる形の例 |
| 板書を写すのが間に合わない | 写真での記録、プリントでの配付、写す量の調整(→読み書きが苦手) |
| 教科書の文字が読みにくい | 音声教材の利用(文部科学省が原則無償で提供しています)、拡大 |
| 宿題が終わらない | 量・形・期限の調整(→宿題に座っていられない) |
| 音がつらい | 席の位置、イヤーマフの使用、別室の利用(→感覚過敏) |
| 予定の変更が苦手 | 変更を事前に伝える、見える形にする(→切り替えが苦手) |
| 行事に参加しづらい | 参加する部分を選ぶ、いつでも抜けられる場所を決めておく |
記録を残しておく
- いつ、誰に、何を伝えたかを書き留める
- 返ってきた答えも、そのまま書き留める
- 試した結果を記録する——効いた/効かなかった
- 見直しの時期を決めておく——学期ごと、など
配慮の内容を継続的に共有するしくみとして個別の教育支援計画があります。発達障害者支援法第8条(教育)は、その作成の推進を国・地方公共団体の措置として定めています(→個別の教育支援計画とは?)。
※本記事は一般的な情報提供です。個別の可否は、学校・園・事業者との話し合いによります。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 担任・特別支援教育コーディネーター | まずここ。具体的な困りごとを伝える |
| 教育委員会の教育相談 | 学校だけで決まらないとき |
| 区市町村の障害者福祉・発達相談の窓口 | 制度についての相談 |
| 発達障害者支援センター | 発達障害者支援法第14条にもとづき都道府県等が指定 |
※制度の運用は自治体・学校により異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
合理的配慮は、お願いすれば必ず通りますか?
必ずではありません。条文に「その実施に伴う負担が過重でないとき」という条件があります。断られた場合は、理由を聞いて別の案を出すという進め方ができます。
こちらから言わないといけないのですか?
はい。条文は「意思の表明があった場合において」としています。ただし、家族などが本人を補佐して伝えることも想定されており、書面である必要も、「合理的配慮」という言葉を使う必要もありません。
私立の学校や学習塾にもお願いできますか?
できます。第8条第2項(事業者)が適用されます。事業者の合理的配慮は、改正法により令和6年(2024年)4月1日から義務となりました。
「特別扱い」になりませんか?
条文の言葉は「社会的障壁の除去」です。同法第2条は社会的障壁を「事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」と定義しており、設備だけでなく慣行も含まれます。
どう伝えると話が進みますか?
①何が難しいか(分けて)②どうなっているか(事実で)③してほしいこと(複数の案)——この形です。③を一択にせず「量を減らす/形を変える/期限を延ばす、のどれかはできますか」と尋ねると動きやすくなります。
第5条の「環境の整備」とは何ですか?
個別の求めを待たずに、あらかじめ施設や設備を整え、職員研修を行うことです。こちらは努力義務で、義務である合理的配慮とは別のものとして条文に書かれています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。