🔴 国のガイドラインは「自己肯定」と「情動の調整」をつないでいます
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインは、五つの支援領域のうち「人間関係・社会性」の中で、こう書いています。
原文
「自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解し、自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する」——ほめることは、
行動を調整する力の土台として位置づけられています。
また児童発達支援ガイドラインは、支援に当たっての留意事項として「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、『育つ上での自信や意欲』……こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと」と定めています。
「自信や意欲」が、検査の数値と並べて書かれている——これは、この領域の文書の中でも特徴的な書き方です。
🔴 年齢で、ほめ方の効き方が変わります
放課後等デイサービスガイドラインは、こどもの発達の過程を四つの区分で示しています。ほめ方を考えるうえで、この記述はそのまま使えます。
| 時期 | ガイドラインの記述 | ほめ方への含み |
おおむね6〜8歳 (小学校低学年) | 「大人に見守られることで、努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる。その後の時期と比べると、大人の評価に依存した時期である」 | 大人がほめることが、直接届く時期です |
おおむね9〜10歳 (小学校中学年) | 「同年代の集団や仲間を好み、大人に頼らずに活動しようとする。他者の視線や評価に一層敏感になる」/「言語や思考、人格等の……質的変化として表れる『9、10歳の節』」 | 人前でほめられるのを嫌がることがあります。個別に、短く |
おおむね11〜12歳 (小学校高学年) | 「自らの得意不得意を知るようになる」/「大人から一層自立的になり、少人数の仲間で『秘密の世界』を共有する」 | 本人が自分を評価しています。事実を返す形が合いやすくなります |
おおむね13歳以降 (思春期) | 「親からの自立を目指した一連の動きは、反抗的あるいは攻撃的な態度として表れることも多く」 | ほめても反発が返ることがあります。やり方を変える時期です |
「9、10歳の節」という言葉
ガイドラインは、この時期の変化を
「9、10歳の節」と呼び、
「特有の内面的な葛藤がもたらされる」と書いています。
そして
「この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである」と続けています。
ほめ方が効かなくなったと感じるとき、
やり方が悪くなったのではなく、時期が変わったのかもしれません。
※ガイドライン自身が「同年齢のこどもの均一的な発達の基準ではなく、個人差や障害の特性等によりその発達過程は様々である」と注記しています。年齢の区分は目安です。
叱られる回数そのものが、積み上がります
ASHAは、支援を検討する目安の一つに「苦痛や不快をもたらす」を挙げています。
動きが多い、切り替えが難しい、忘れ物が多い——そうした特性があると、一日に受け取る否定的な声かけの回数がどうしても多くなります。
減らす工夫は、ほめる工夫と同じくらい重要です
ほめる回数を増やすより、叱る回数を減らすほうが早いことがあります。
・先に決めておく(あとで注意する場面を減らす)
・環境を変える(できない状況を作らない)
・役を渡す(叱られる立場から外す)
・一日に注意することを、あらかじめ二つに絞る
国のガイドラインが環境の要件として
「時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること」を挙げているのは、この方向の話でもあります。
家庭での、具体的なやり方
- 行動を、そのまま言う——「えらいね」より「くつをそろえたね」。何がよかったのかが伝わります。
- その場で言う——あとで思い出して言うより、やっている最中か、直後に。
- 結果ではなく、過程も言う——「100点」だけでなく「最後まで消さずにやったね」。結果が出ない日にも言えるものが残ります。
- 短く言う——長いほめ方は、次に「でもね」が来る合図になっていることがあります。短く、そこで終える。
- 年齢で形を変える——低学年は声で。中学年以降は人前を避けて、個別に。
- 目に見える形に残す——できたことのメモ、シール、写真。言えなかった日の分を、あとから拾えます。
ほめるところが見つからない日
それでかまいません。毎日見つける必要はありません。
そういう日に使えるのは
「事実を返す」形です。「起きたね」「ごはん食べたね」「行ったね」——評価ではなく、
見ていたことを伝えるだけの言い方です。
国のガイドラインは、アタッチメントを
「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台」と定義しています。
ほめることだけが、その経験ではありません。
この記事で書かないこと
「ほめると自己肯定感が上がる」とは書きません。また、「結果をほめると伸びない/過程をほめると伸びる」といった効果の断定もしません。
この記事で確認できたのは、国のガイドラインが「自己を肯定的に捉えられる機会」を支援内容に位置づけていることと、年齢によって大人の評価の受け取り方が変わると記述していることまでです。
効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援/放課後等デイサービス | 「人間関係・社会性」は国のガイドラインが定める五つの支援領域の一つです |
| ペアレント・トレーニング | ガイドラインの「家族支援」に明記されています |
| 小児科・児童精神科 | 強く落ち込んでいる、眠れない、「どうせ自分なんて」が続くとき |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
ほめると、自己肯定感は上がりますか?
この記事では断定しません。効果を示す一次情報を確認できていないためです。確認できたのは、国のガイドラインが「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し」と書き、自己肯定を行動を調整する土台として位置づけていることまでです。
結果をほめるのと、過程をほめるのは、どちらがいいですか?
効果の比較はしません。ただし過程を言う形には、結果が出ない日にも言えるものが残るという実際上の利点があります。
最近、ほめても喜びません
国のガイドラインは、おおむね9〜10歳を「他者の視線や評価に一層敏感になる」時期と記述し、この時期の変化を「9、10歳の節」と呼んでいます。やり方が悪くなったのではなく、時期が変わったのかもしれません。人前を避け、個別に短く伝える形を試せます。
ほめるところが見つかりません
毎日見つける必要はありません。そういう日は「事実を返す」形——「起きたね」「行ったね」——が使えます。国のガイドラインは、安心の土台を「受け止め、寄り添う経験の繰り返し」として定義しており、ほめることだけがその経験ではありません。
叱ってばかりです
ほめる回数を増やすより、叱る回数を減らすほうが早いことがあります。先に決めておく、環境を変える、役を渡す、注意することを一日二つに絞る——などの方法があります。
低学年と高学年で、ほめ方を変えるべきですか?
国のガイドラインは、おおむね6〜8歳を「大人の評価に依存した時期」、9〜10歳を「他者の視線や評価に一層敏感になる」時期と記述しています。ただしガイドライン自身が「同年齢のこどもの均一的な発達の基準ではない」と注記しています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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