スモールステップとは
目標を、達成できる小さな段階に分けて、順に積み上げていく進め方です。支援の場面で広く使われている考え方で、関連する用語には次のようなものがあります。
| 用語 | 指していること |
| 課題分析 | 一つの活動を、細かい動作の順序に分けること |
| シェイピング | 目標に近い行動から順に、少しずつ形を近づけていくこと |
| プロンプト | できるようにするための手がかり・補助 |
| フェイディング | その手がかりを、少しずつ減らしていくこと |
実際に段階を定義した方法の例としては、PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)があります。PECSは6つのフェイズで構成され、順に進む形が決められています(→PECSとは?)。
🔴 刻む前に——「今できること」と「教えたらできること」を分ける
ASHAは、評価の方法として動的アセスメントを次のように記述しています。
ASHAの記述
「動的アセスメントは、その人の現在の力と、学ぶ可能性(learning potential)の両方を明らかにするのに役立つ、言語の評価方法(test–teach–retest)である」——
テストする → 教える → もう一度テストする。この3段階で、
教えたらどこまで動くかを見ます。
ここが、スモールステップを設計するときの手がかりになります。
| やってみた結果 | 読み取れること | 刻み方 |
| 教えたら、すぐできた | 手がかりが足りていなかっただけ | 刻まなくてよい。手がかりを足す |
| 教えたら、少しできた | そこが今の境目 | その一段だけ刻む |
| 教えても、動かない | 段階がまだ手前にある | もっと手前に戻る。刻みを細かくしても届かない |
いちばんよくある失敗
三つ目を、二つ目だと思って刻み続けることです。
届いていない課題を細かく刻んでも、届きません。刻みが細かくなるほど回数が増え、
できない経験だけが積み重なります。
「刻んでもうまくいかない」ときは、
刻み方ではなく、出発点を疑うほうが早いことがあります。
※動的アセスメントは専門職が用いる評価方法です。ここでは、家庭で段階を考えるときの手がかりとして紹介しています。
国のガイドラインが書いている「成功体験」
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインは、基本活動の一つ「日常生活の充実と自立支援のための活動」について、こう書いています。
原文
「こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする」
また児童発達支援ガイドラインは、支援に当たっての留意事項として次のように書いています。
原文
「単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、「育つ上での自信や意欲」、「発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上」、「自由で多様な選択」等も踏まえながら、こどものできること、得意なこと及び可能性に着目し可能性を拡げることや、苦手なことにも挑戦できる支援を行うこと」
「自信や意欲」が、検査の数値と並べて書かれている——スモールステップが目指しているのは、ここです。
家庭での使い方
- まず、一度やってもらう——どこまで自分でできるか。手を出す前に見るのが最初です。
- 止まったところで、手がかりを足す——ことばで言う、やってみせる、手を添える。どの手がかりで動いたかを覚えておきます。
- その一段だけを、練習の対象にする——前後は手伝ってかまいません。全部を一人でやらせない。
- 手がかりを、少しずつ減らす——手を添える→指さす→ことばだけ→何も言わない。この順で減らします(フェイディング)。
- できた段は、そこで終わりにする——できた直後にもう一段足すと、できた感じが消えます。
- 記録する——日付・どこまで自分でできたか・どの手がかりが要ったか。三行で足ります。
例:くつ下をはく
「くつ下をはく」を一段と数えると、多くの子には大きすぎます。
①持つ ②つま先を入れる ③かかとまで引く ④上まで上げる——とすると、④だけできる、③と④ができる、と
今の位置が見えます。
そして
最後の一段から自分でやる形にすると、「自分で終えた」という形が毎回残ります。
うまくいかないときのチェック
| 様子 | 見直すところ |
| 何度やっても進まない | 出発点が手前すぎないか/遠すぎないか。教えても動かないなら、段階はもっと手前にあります |
| できたのに、次の日にできない | 手がかりを減らすのが早すぎた可能性。前の段に戻します |
| 嫌がるようになった | 回数が多すぎる/時間が長すぎる。ASHAは支援検討の目安に「苦痛や不快をもたらす」を挙げています |
| 場面が変わるとできない | 場所・道具・人が変わると成り立たないことがあります。いつもの場面から少しずつ広げます |
この記事で書かないこと
「何段に分ければよい」という数字は書きません。確認できた一次情報に、段数の目安が示されていないためです。
段数は課題によっても、その子によっても変わります。
決めるのは数字ではなく、やってみた結果です。
どこに相談すればいいか
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
何段に分ければいいですか?
数字は書きません。確認できた一次情報に段数の目安が示されていないためです。段数は課題によっても、その子によっても変わります。一度やってもらって、止まったところで分けるのが実際的な決め方です。
刻んでいるのに、うまくいきません
出発点を疑ってください。ASHAが記述する動的アセスメント(test–teach–retest)の考え方では、教えても動かないなら、段階はもっと手前にあります。届いていない課題を細かく刻んでも、できない経験が増えるだけになります。
手伝いすぎでしょうか?
前後を手伝うことは、その一段を練習の対象にするためのやり方です。手がかりは、手を添える→指さす→ことばだけ→何も言わないの順で少しずつ減らします(フェイディング)。減らすのが早すぎると、翌日にできなくなることがあります。
できた直後に、もう一段進めたくなります
できた段で終わるほうが、「できた」という形が残ります。国のガイドラインは「成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする」と書いています。
スモールステップは、勉強にも使えますか?
考え方は同じです。
一度やってもらい、止まったところで分ける——そのうえで、量と終わりを見える形にします(→
集中が続かない子の学習)。
療育では、どのように使われますか?
個別支援計画にもとづいて段階を設定する形が一般的です。段階を定義した方法の例としては、6つのフェイズで構成されるPECSがあります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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