🔴 国のガイドラインによる定義
原文(脚注の定義)
「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台。こどもに自らや社会への基本的な信頼感をもたらし、その基本的な信頼感は、自他の心の理解や共感、健やかな脳や身体の発達を促す。また、安定した愛着は、非認知能力の育ちに影響を与える重要な要素でもあり、生きる力につながっていく」
読みどころを二つ挙げます。
- 「怖くて不安なとき」が起点になっている——楽しく過ごしている時間のことではなく、崩れたときにどうなるかの話として書かれています
- 「経験の繰り返しを通じて獲得される」——一回の関わりで決まるものではなく、積み重ねとして書かれています
支援の目標の一番目に置かれています
児童発達支援ガイドラインは、支援の目標を四つ挙げています。その①がこれです。
原文
「①アタッチメントの形成とこどもの育ちの充実——安定したアタッチメント(愛着)を形成していくことや、将来のこどもの発達・成長の姿を見通しながら、日常生活や社会生活を円滑に営めるよう、障害の状態や発達の状況、障害の特性等に応じ、様々な遊びや多様な体験活動の機会を提供することを通じて、こどもの自尊心や主体性を育てつつ、発達上のニーズに合わせて、こどもの育ちの充実を図ること」
また、5領域のうち「人間関係・社会性」のねらいの筆頭も「アタッチメント(愛着)の形成と安定」です(→5領域とは?)。
技能より先に置かれています
順番に意味があります。
やりとりの技能や、集団への参加より
前に、
安心が置かれている——そういう組み立てで書かれています。
🔴 「安心の基地」——大人の役割
ガイドラインは、「人間関係・社会性」領域の支援内容を二つに分けています。
| 区分 | 支援内容(原文の要点) |
| アタッチメントの形成 | 「こどもが基本的な信頼感を持つことができるように、環境に対する安心感・信頼感、人に対する信頼感、自分に対する信頼感を育む支援を行う」 |
| アタッチメントの安定 | 「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう『安心の基地』の役割を果たせるよう支援する」 |
「折り合いをつける力」は、受け止められた先に書かれています
受け止める → 安心する → 折り合いをつけられるようになる——この順序で書かれています。
かんしゃくのたびに受け止めることは、甘やかしとしてではなく
力が育つ過程として位置づけられている、と読めます(→
かんしゃくが激しい)。
「環境に対する安心感」「人に対する信頼感」「自分に対する信頼感」——三つが並んでいることも、見どころです。
不安が強いお子さまへの配慮
ガイドラインは、障害特性に応じた配慮事項の中でも、この方向のことを書いています。
- 「精神的に強い不安や緊張を示すこどもに対しては、特定の人との関係性を軸に、周囲の人との関わりを拡げていく」
- 「安心感のある肯定的な関わりを大切にする」
- 「少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意する」
一人の人との関係が先。そこから広げる。——いきなり集団に入れる方法は、ここには書かれていません(→集団に入れない)。
また、環境の要件として「不安な気持ちを落ち着かせる環境を整える」ことも挙げられています。
ガイドラインの言葉から、家庭で試せること
以下は、ガイドラインが挙げている三つの信頼感と「安心の基地」という書き方から、家庭の場面に置き換えたものです。
| 育むとされているもの | 家庭での場面に置き換えると |
| 環境に対する安心感・信頼感 | いつもと同じが守られていること。場所・順番・持ち物が決まっていること |
| 人に対する信頼感 | 呼べば来る、言えば応じるが積み重なること。約束が守られること |
| 自分に対する信頼感 | 自分でできたが残ること。最後の一段を自分でやる形にする |
- 崩れたときに、そばにいる——ガイドラインの定義は「怖くて不安なとき」が起点です。
- ことばを減らす——落ち着くまでは、説明より存在です。
- 落ち着いてから、短く言う——「こわかったね」。説教はこの時間にしません。
- 戻れる場所を決めておく——ガイドラインは環境の要件に「不安な気持ちを落ち着かせる環境を整える」を挙げています。
- 予定を先に伝える——見通しがあると、崩れる回数そのものが減ることがあります。
- 一人の大人との関係を、まず太くする——ガイドラインは不安の強いこどもについて「特定の人との関係性を軸に」としています。
うまくできない日があっても
定義は
「経験の繰り返しを通じて獲得される」です。
一回の対応で決まるものとしては書かれていません。
そして、ご家族自身が余裕を失っているときに「安心の基地」であり続けるのは難しいことです。
家族支援は、同じガイドラインの中に柱として置かれています(→
家族支援とは?)。
※この節はガイドラインの記述を家庭の場面に置き換えたものであり、効果を保証するものではありません。
この記事で書かないこと
愛着の「型」の分類や、それがのちの発達をどう予測するかは書きません。また「愛着障害」についても、ここでは扱いません。確認できた一次情報の範囲を超えるためです。
確認できたのは、国のガイドラインがアタッチメントを「安心の土台」と定義していること、それを支援の目標の一番目に置いていること、大人の役割を「安心の基地」と書いていること——ここまでです。
ご家族への支援も、同じガイドラインの中にあります
「家族支援」のねらいの筆頭も
「アタッチメント(愛着)の形成」で、支援内容に
「こどもの信頼感を育み、家族や周囲の人と安定した関係を形成するための支援」が挙げられています。
ガイドラインはまた
「乳幼児期は、親が障害のあるこどもを育てる初期の不安な時期であり、孤立感を感じやすい時期でもある」とも書いています(→
家族支援とは?)。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「人間関係・社会性」は5領域の一つです |
| ペアレント・トレーニング | ガイドラインの「家族支援」に明記されています |
| 小児科・児童精神科 | 診断について知りたいとき |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン 令和6年7月)アタッチメントの定義(脚注)=こどもが怖くて不安なときに身近なおとなが受け止め寄り添うことで安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台であること/第2章3(1)児童発達支援の目標①アタッチメントの形成とこどもの育ちの充実/第3章「人間関係・社会性」領域(アタッチメントの形成と安定・「安心の基地」)/障害特性に応じた配慮事項(精神的に強い不安や緊張を示すこども)/第3章2(2)家族支援
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
愛着(アタッチメント)とは何ですか?
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台」と定義しています。
受け止めてばかりだと、甘やかしになりませんか?
ガイドラインは、大人の役割を「安心の基地」と書き、「自分の感情に折り合いをつけたりできるよう」支援する、と位置づけています。受け止める→安心する→折り合いをつけられるようになるという順序で書かれています。
愛着は、いつまでに形成されるものですか?
時期は書きません。確認できた一次情報に期限の記載がないためです。定義は「経験の繰り返しを通じて獲得される」という書き方になっています。
愛着の「型」について知りたいのですが
この記事では扱いません。また「愛着障害」についても扱いません。確認できた一次情報の範囲を超えるためです。ご心配な場合は医療機関にご相談ください。
不安が強い子には、どう関わればいいですか?
ガイドラインは「特定の人との関係性を軸に、周囲の人との関わりを拡げていく」「少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意する」としています。一人の人との関係が先、という順序です。
親の関わり方が原因でしょうか?
ガイドラインは「乳幼児期は、親が障害のあるこどもを育てる初期の不安な時期であり、孤立感を感じやすい時期でもある」とし、家族支援を支援の柱の一つに定めています。ご家族を支えることも、制度の中に位置づけられています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。