どの領域に置かれているか
児童発達支援ガイドラインの本人支援は5領域でできています(→5領域とは?)。感情に関することは「人間関係・社会性」にあり、その中は四つに分かれています。
| 項目 | 支援内容(ガイドラインより) |
| ①アタッチメント(愛着)の形成と安定 | 「こどもが基本的な信頼感を持つことができるように、環境に対する安心感・信頼感、人に対する信頼感、自分に対する信頼感を育む支援を行う」/🔴「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう「安心の基地」の役割を果たせるよう支援する」 |
| ②遊びを通じた社会性の促進 | 模倣行動の支援/感覚・運動遊びから象徴遊び(見立て遊び・つもり遊び・ごっこ遊び)への支援/一人遊び→並行遊び→連合的な遊び→協同遊び |
| 🔴③自己の理解と行動の調整 | 「大人を介在して自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する」 |
| ④仲間づくりと集団への参加 | 「集団に参加するための手順やルールを理解し、こどもの希望に応じて、遊びや集団活動に参加できるよう支援する」 |
🔴 ①が先に置かれています
四つの並び順は、
アタッチメントが最初です。
そして③の<自己の理解と行動の調整>は
「大人を介在して」から始まります。
——
気持ちの調整は、関係の中で育つものとして書かれている、ということです。
🔴🔴 「安心の基地」——崩れたときのこと
ガイドラインの中で、感情についていちばん具体的なのはアタッチメントの「安定」の項目です。
ガイドラインより(そのまま)
「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう『安心の基地』の役割を果たせるよう支援する。」
🔴 三つ、読み取れること
①
感情が崩れることが前提になっています。
——崩れないようにすること、とは書かれていません。
②
大人がすることは「相談にのること」です。
——止めること・教えること、とは書かれていません。
③
目標は「折り合いをつけられること」です。
——
感じなくなることではありません。
アタッチメントについて、ガイドラインは脚注でこう定義しています——「こどもが怖くて不安なときに、身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台」(→愛着(アタッチメント)とは?)。
放課後等デイサービスの側は、順番が書かれています
同じ項目を、放課後等デイサービスガイドラインは少し違う書き方にしています。
放課後等デイサービスガイドライン<自己の理解と行動の調整>
「自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解し、自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する。」🔴
児発版に無い一句が入っています——
「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて」。
つまり
自己肯定が先で、気持ちの調整があとという順番になっています(→
自己肯定感とは?)。
同じガイドラインは、思春期について「様々な葛藤を抱えたり、家族・友人との関係などに悩んだりする繊細な時期」とし、「こどもの意思を受け止めつつ、一人一人の悩みや葛藤、個別性に合わせて寄り添って支援を行っていくことが重要」としています。
🔴 学会が「力」として書いていること
米国言語聴覚協会(ASHA)の自閉症のページは、行動と感情の領域で“そう見えることがある”と“専門的な支援を要しうる”を分けています。前者の欄に、こう並んでいます。
ASHA“Behaviors and emotions might look like”
・泣いている友達を見て
一緒に泣くふりをする・stimming(自己刺激)や没頭と考えられる反復的なパターン——
自傷行動は含まない(Kapp et al., 2019)
・返答が求められる場面で音声言語を使わないこと
🔴・
強い感情を感じているときに、自分から好きな調整の活動を始めること
🔴 最後の一つは、はっきり力として書かれています。気持ちを立て直すために、自分で何かを始める——それが「そう見えることがある」の欄にあります(→自己刺激行動とは?)。
🔴🔴 支援を検討する三つの目安
ASHAが挙げているのは、次に当てはまるものです——
① 機会を制限する② 苦痛や不快をもたらす③ 自己管理に影響する🔴
三つに「感情の激しさ」も「泣く回数」も入っていません。
また、ASHAは「自閉症の人には共感がある。ただし、思いやりの示し方が慣習的でないことがある」(DeThorne, 2020)としています。
環境の側でできること
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、環境を支援する側の義務の形で書いています。
ガイドラインより
「事業所等は、……次の事項に留意しつつ、計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない。」そこに挙げられているもの——
・
こどもによる選択ができるよう配慮すること・
温かで、親しみやすく、くつろげる場となるようにすること
🔴・
時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること🔴・
不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えること(→
環境調整とは?)
そして「認知・行動」領域には、行動障害の予防及び対応について「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる」という記述があります。出どころが三つ挙げられています(→かんしゃくが起きるとき)。
記録するとよいこと
解釈をつけずに、見たことを日付つきで。・
いつ崩れたか(場面・時間帯・直前にしていたこと)
・
何があったら落ち着いたか・
自分から何かを始めたか——ASHAが
力として挙げている部分です
・
崩れなかった日は、何が違ったか
この記事で書かないこと
🔴年齢ごとの感情の発達段階の表は書きません。こども家庭庁のガイドラインは発達過程を「おおむね」の区分で記述しており、感情についての年齢ごとの一覧は示していないためです。表は、安心にも不安にも使えてしまいます。
感情の種類の分類も書きません。確かめた一次情報にそうした分類がありません。
「こうすれば気持ちを扱えるようになる」という手順も書きません。国の文書が書いているのは「大人を介在して」「大人が相談にのること」「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて」という関わりの向きまでです。
書けるのは、国のガイドラインと学会が何と書いているかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 🔴ガイドラインが「安心の基地」と<自己の理解と行動の調整>を支援内容に挙げています。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 崩れる場面と、落ち着く条件の共有。合理的配慮は「意思の表明があった場合」に始まります |
| スクールカウンセラー | 学校教育法施行規則 第65条の3(児童の心理に関する支援に従事する) |
| 医療機関 | 🔴眠れない・食べられない・気持ちの落ち込みが続くとき。療育は医療ではありません |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
| 親の会・保護者同士の交流 | 同じ立場の人とつながる |
※本記事は一般的な情報提供です。発達には個人差があります。療育は医療ではありません。
出典
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン 令和6年7月)本人支援「人間関係・社会性」(ねらい=アタッチメント(愛着)の形成と安定/遊びを通じた社会性の発達/自己の理解と行動の調整/仲間づくりと集団への参加)/<アタッチメント(愛着)の形成>(環境に対する安心感・信頼感、人に対する信頼感、自分に対する信頼感を育む支援)/<アタッチメント(愛着)の安定>(自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう「安心の基地」の役割を果たせるよう支援する)/<遊びを通じた社会性の促進>(模倣行動/感覚・運動遊びから象徴遊びへ/一人遊びから並行遊び、連合的な遊び、協同遊びへ)/<自己の理解と行動の調整>(大人を介在して自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する)/<仲間づくりと集団への参加>(こどもの希望に応じて)/アタッチメントの脚注定義(こどもが怖くて不安なときに、身近なおとながそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで、安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台)/支援を行うに当たっての環境(計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない/こどもによる選択/温かで、親しみやすく、くつろげる場/時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること・不安な気持ちを落ち着かせる環境)/「認知・行動」(感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び対応)
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(放課後等デイサービスガイドライン 令和6年7月)<自己の理解と行動の調整>(自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解し、自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する)/思春期(様々な葛藤を抱えたり、家族・友人との関係などに悩んだりする繊細な時期/こどもの意思を受け止めつつ、一人一人の悩みや葛藤、個別性に合わせて寄り添って支援を行っていくことが重要)
- American Speech-Language-Hearing Association「Autism」(Practice Portal)“Behaviors and emotions might look like”(泣いている友達を見て一緒に泣くふりをする/stimming や没頭と考えられる反復的なパターン——自傷行動は含まない(Kapp et al., 2019)/返答が求められる場面で音声言語を使わないこと/強い感情を感じているときに、自分から好きな調整の活動を始めること)/支援を検討する三つの目安(機会を制限する・苦痛や不快をもたらす・自己管理に影響する)/「自閉症の人には共感がある。ただし、思いやりの示し方が慣習的でないことがある」(DeThorne, 2020)
- 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)/e-Gov法令検索第65条の3(スクールカウンセラーは小学校における児童の心理に関する支援に従事する)
- 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)/e-Gov法令検索第7条第2項・第8条第2項(合理的配慮=意思の表明があった場合において、負担が過重でないとき)
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
感情の調整は、ひとりで身につくものですか?
国のガイドラインの書き方は違います。<自己の理解と行動の調整>は「大人を介在して……気持ちや情動の調整ができるように支援する」で始まります。
気持ちが崩れてしまいます
ガイドラインは崩れることを前提に書いています——「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう『安心の基地』の役割を果たせるよう支援する」。
目標は、泣かないようになることですか?
ガイドラインの言い方は「自分の感情に折り合いをつけたりできるよう」です。感じなくなることとは書かれていません。
年齢ごとの目安はありますか?
この記事では書きません。こども家庭庁のガイドラインは発達過程を「おおむね」の区分で記述しており、感情についての年齢ごとの一覧は示していないためです。
自分で気持ちを立て直しているように見えます
米国言語聴覚協会(ASHA)は“そう見えることがある”の欄に「強い感情を感じているときに、自分から好きな調整の活動を始めること」を挙げています。力として書かれています。
どのくらいなら相談したほうがよいですか?
ASHAが挙げる目安は①機会を制限する ②苦痛や不快をもたらす ③自己管理に影響するの三つです。🔴「感情の激しさ」も「泣く回数」も入っていません。
放デイと児発で、書き方が違うのですか?
同じ項目ですが、放課後等デイサービスガイドラインには「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて」という一句が入っています。自己肯定が先で、気持ちの調整があとという順番です。
環境でできることはありますか?
ガイドラインは環境について「計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」とし、「不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えること」を挙げています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。