定義は「知的機能」と「適応能力」の二つ
| 定義の部分 | 手引が挙げている中身 |
| 知的機能 | 認知や言語などにかかわるもの |
| 適応能力 | 他人との意思の交換/日常生活/社会生活/安全/仕事/余暇利用などについての能力 |
🔴 「余暇利用」が入っています
適応能力として手引が並べているものの中に
「余暇利用」があります。
——
できるようになるべきことの一覧ではなく、
暮らしの広がりとして書かれていることが分かります。
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインも、基本活動の一つに
「こどもが望む遊びや余暇を自分で選択する」ことを挙げています。
手引が挙げている「適応行動の困難さ」の見方
「適応行動の困難さの有無を判断するには、特別な支援や配慮なしに、同じ年齢段階の者に標準的に要求されるものと同様の適応行動をとることが可能であるかどうかを調査することが大切となる。」——
「特別な支援や配慮なしに」という条件がついています。
つまり
支援があればできることは、この判断の場面では別に扱われる、ということです。
🔴🔴 手引は、検査の結果に何重もの留保をつけています
ここは、結果を受け取るときに知っておくと支えになる部分です。手引の文をそのまま並べます。
- 「判断に当たっては、使用した知能検査等の誤差の範囲及び検査時の被検査者の身体的・心理的状態、検査者と被検査者との信頼関係の状態などの影響を考慮する必要もある。」
- 「知能検査の結果がほぼ同じであっても、生活年齢や経験などによって、その状態像が大きく異なる場合もあることに留意する必要がある。」
- 「発達上の遅れ又は障害の状態等は、ある程度、持続するものであるが、絶対的に不変であるということではない。」
- 「特に、幼児期の発達検査に基づく判断は学童期の実態と異なる場合がある。また、発達検査や知能検査上、軽度の遅れの段階にある子供の判断は、経過を追いつつ慎重にする必要がある。」
- 「教育的対応を含む広義の環境条件を整備することによって、知的発達の遅れがあまり目立たなくなったり、適応行動がある程度改善されたりする場合もある。」
- 「さらに、適応行動の問題は、その適応行動が要求されない状況になると顕在化しなくなるということもある。」
🔴🔴 手引自身の結論
「つまり、知的障害は、個体の条件だけでなく、環境的・社会的条件との関係で、その障害の状態が変わり得る場合があることに留意する必要がある。」——
国の手引が、ここまではっきり書いています。
検査そのものについては→田中ビネー知能検査とは?/発達検査について
🔴 就学先の基準も、数値では書かれていません
特別支援学校への就学を検討する際の「障害の程度」は学校教育法施行令 第22条の3の表に定められています。その知的障害者の欄は、こうです。
学校教育法施行令 第22条の3(知的障害者の欄)
一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの🔴
数値ではなく、生活の様子で書かれています。
しかも、この表に当てはまれば就学先が決まるわけではありません。学校教育法施行令 第5条は、市町村教育委員会が「その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して」判断するとしています(→特別支援学校とは?)。
制度での位置づけ
| 法令・制度 | 書かれ方 |
| 学校教育法 第81条第2項 | 特別支援学級の六区分の第1号「知的障害者」 |
| 学校教育法 第72条 | 特別支援学校の五区分に「知的障害者」 |
| 学校教育法施行規則 第140条 | 🔴通級による指導の対象八区分に知的障害は含まれていません |
| 児童福祉法 第4条第2項 | 「障害児」の定義に「知的障害のある児童」が含まれます(→受給者証について) |
| 発達障害者支援法 第2条第1項 | 「発達障害」の列挙に知的障害は入っていません(別の法律の枠組みです) |
| 児童福祉法 第11条第1項第2号ハ | 都道府県の業務=医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定(→療育手帳について) |
🔴 通級に含まれていないことの意味
学校教育法施行規則 第140条の八区分に知的障害はありません。
これは
支援がないという意味ではありません。特別支援学級と特別支援学校のほうには
名指しで書かれており、そちらでは
特別の教育課程によることができます(学校教育法施行規則 第138条)。
——
制度ごとに、想定している支援の形が違います。
軽度の場合に、手引が注意を促していること
🔴🔴 手引より
「なお、知的機能の発達の遅れが軽度な場合は、就学時健康診断などでも『知的障害はない』と判断される場合が多く見られ、小学校入学後に授業についていけずに自己肯定感が低下し、二次的な障害が生じることもあることから、十分な注意が必要である。」
🔴「『知的障害はない』と判断される場合が多く見られ」——国の手引が、見落とされやすさを明記しています(→グレーゾーンとは?/二次障害とは?)。
だから「経過を追う」と書かれています
「発達検査や知能検査上、軽度の遅れの段階にある子供の判断は、経過を追いつつ慎重にする必要がある。」——
一度の結果で終わりにしない、という書き方です。
気になることが続いているなら、
時期をおいて相談し直すことは、手引の記述に沿っています。
早期からの対応について、手引が挙げていること
手引は、幼児期の一般的な発達上の目標として次を挙げ、「知的障害のある子供にとっても同様である」としています。
- 運動・姿勢能力の向上
- コミュニケーション能力の促進
- 食事や排せつ等の身辺自立の習慣形成
- 周囲の人との情緒的なつながりに基づく、安定した人間関係の形成
- 自分と自分を取り巻く社会についての簡単な概念の形成
- 社会的ルールについてのある程度の理解の学習
- 小集団における最低限の自己コントロールの学習
- 認知機能の向上
🔴 保護者の心情について書かれていること
「……保護者が子供の成長や発達に不安を抱く場合が多い。そのため、保護者の心情を十分に理解しながら、子供の成長や発達の状態を的確に把握し、子供が生活に必要な望ましい習慣等を身に付けることができるよう、発達の段階に応じた適切な教育的対応を早期から行うことが大切である。」手引が挙げている具体例——
「保護者と指導者が連携して子供の言語理解に適した言葉で働き掛けをすること」「言葉の理解を促すために絵カードなどの視覚的な情報を補足するなど、支援を工夫していくこと」(→
視覚支援とは?)
この記事で書かないこと
🔴数値・判定の基準・程度の区分は書きません。手引自身が、判断にあたって検査の誤差の範囲、検査時の身体的・心理的状態、検査者との信頼関係の影響を考慮する必要があるとしており、一般の記事が数値を示せば、実施した専門職の説明と食い違ったときにご家族が迷うことになるためです。
療育手帳の判定の基準も書きません。判定の考え方は自治体によって異なり、全国共通の基準を一次情報として確認できなかったためです。
支援や指導の効果も書きません。ただし、手引が「教育的対応を含む広義の環境条件を整備することによって、知的発達の遅れがあまり目立たなくなったり、適応行動がある程度改善されたりする場合もある」と書いていることは、事実としてお伝えできます。
書けるのは、国の手引と法令が何と書いているかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 小児科・児童精神科など | 診断に関する判断。療育は医療ではありません |
| 児童相談所 | 児童福祉法 第11条第1項第2号ハの判定。療育手帳に関する相談 |
| 市区町村の障害福祉の窓口 | 児童発達支援・放課後等デイサービスの利用(→受給者証について) |
| 市区町村教育委員会(就学相談) | 学びの場の相談(→就学相談とは?) |
| 園・学校 | 日々の配慮、個別の教育支援計画 |
| 親の会・ペアレントメンター | 同じ立場の人とつながる |
※本記事は一般的な情報提供です。診断・判定に関する判断は、医師などの専門機関と自治体によります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月5日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
知的障害は、変わらないものですか?
国の手引は「その状態は、環境的・社会的条件で変わり得る可能性があると言われている」と明記し、さらに「発達上の遅れ又は障害の状態等は、ある程度、持続するものであるが、絶対的に不変であるということではない」としています。
この記事に数値は載っていますか?
載せていません。手引自身が、判断にあたって検査の誤差の範囲、検査時の身体的・心理的状態、検査者との信頼関係の影響を考慮する必要があるとしているためです。結果の解釈は、実施した専門職にお尋ねください。
検査の日の調子は、結果に影響しますか?
手引は、判断に当たって「検査時の被検査者の身体的・心理的状態、検査者と被検査者との信頼関係の状態などの影響を考慮する必要もある」と書いています。
同じ結果の子でも、様子がずいぶん違うようです
手引も「知能検査の結果がほぼ同じであっても、生活年齢や経験などによって、その状態像が大きく異なる場合もあることに留意する必要がある」としています。
軽度と言われました。様子を見てよいのでしょうか?
手引は「軽度の遅れの段階にある子供の判断は、経過を追いつつ慎重にする必要がある」とし、さらに「軽度な場合は就学時健康診断などでも『知的障害はない』と判断される場合が多く見られ、小学校入学後に授業についていけずに自己肯定感が低下し、二次的な障害が生じることもある」と注意を促しています。気になることが続いているなら、時期をおいて相談し直すことは手引の記述に沿っています。
通級は使えますか?
学校教育法施行規則 第140条の対象八区分に知的障害は含まれていません。一方、特別支援学級(学校教育法 第81条第2項第1号)と特別支援学校(同 第72条)には名指しで書かれています。制度ごとに想定している支援の形が違います。
発達障害には含まれますか?
発達障害者支援法 第2条第1項の列挙に知的障害は入っていません。ただし児童福祉法 第4条第2項の「障害児」の定義には「知的障害のある児童」が含まれ、児童発達支援などの対象になります。
就学先は、検査の数値で決まるのですか?
条文はそうなっていません。学校教育法施行令 第22条の3の知的障害者の欄は「他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度」などと生活の様子で書かれ、さらに第5条は「地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して」としています。
家ではできるのに、園ではできないことがあります
手引は「適応行動の問題は、その適応行動が要求されない状況になると顕在化しなくなるということもある」と書いています。場面によって現れ方が変わることは、手引に書かれていることです。
今からできることはありますか?
手引は幼児期の一般的な発達上の目標を挙げ「知的障害のある子供にとっても同様である」としたうえで、「保護者と指導者が連携して子供の言語理解に適した言葉で働き掛けをすること」「言葉の理解を促すために絵カードなどの視覚的な情報を補足するなど、支援を工夫していくこと」を具体例として挙げています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。