法令から逆算した、就学のスケジュール
3つの政令が、それぞれ期限を定めています。すべて翌学年の初め(4月1日)から数えた期限です。
| いつまで | 何が行われるか | 根拠 |
5月前まで (=10月末ごろ) | 市町村の教育委員会が学齢簿を作成する。前学年の初めから終わりまでの間に満6歳に達する者について | 学校教育法施行令 第2条 |
4月前まで (=11月末ごろ) | 就学時の健康診断を行う(就学に関する手続の実施に支障がない場合は3月前まで) | 学校保健安全法施行令 第1条 |
2月前まで (=1月末ごろ) | 教育委員会が保護者に入学期日を通知する | 学校教育法施行令 第5条第1項 |
だから就学相談は「年長の春〜夏」に始まります
学齢簿ができるのが
10月末ごろ、入学期日の通知が
1月末ごろ。
学びの場を検討し、意見を聴き、判断するには、その前に時間が要ります。多くの自治体が
年長の4月〜7月ごろに就学相談の受付を始めるのは、このためです。
ただし
受付の開始も締切も自治体ごとに違います。東京23区の就学相談の時期は
東京23区の申請窓口 一覧・比較に並べています。
就学相談は、どんな順番で進みますか
手順は自治体ごとに違います。ただ、国の資料に「例えば下記のようなプロセスで行われていた」として載っている流れがあります。文部科学省が令和3年度に行った実態調査の、個別ヒアリングの結果です。
- 保護者と担任で話し合い
- 校内委員会で協議——学校の中の会議です
- 市町村教育支援委員会による調査
- 市町村教育支援委員会で審議・判断
- 判断結果をもとに学校と保護者が話し合い——🔴 判断が出て終わりではありません
- 学びの場の決定
🔴 途中でも相談できる、と書かれています
同じ資料には、このプロセスについての注記がついています。
「上記のプロセスにおいて、
保護者からの要望や児童生徒の教育的ニーズの変化などを受けて、随時、相談を受け付け、対応している」
——決められた面談の日以外は聞けない、というものではありません。
気になったことが出てきた時点で、教育委員会や学校に相談してかまいません。
これは1つの自治体の例です。回数も、呼び名(教育支援委員会・就学支援委員会など)も、日程も自治体で異なります。お住まいの教育委員会の案内で確かめてください。東京23区の窓口と時期は東京23区の申請窓口 一覧・比較に並べています。
🔴 基準に当てはまっても、自動的に特別支援学校にはなりません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
学校教育法施行令 第22条の3は、視覚障害者・聴覚障害者・知的障害者・肢体不自由者・病弱者について、障害の程度を表で定めています。知的障害者については次のとおりです。
| 号 | 障害の程度(第22条の3の表・知的障害者) |
| 一 | 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの |
| 二 | 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの |
この表に当てはまると、特別支援学校に行くことになる——と思われがちですが、条文はそうなっていません。
学校教育法施行令 第5条第1項(認定特別支援学校就学者の定義)
…第22条の3の表に規定する程度のもの(「視覚障害者等」)
のうち、当該市町村の教育委員会が、
その者の障害の状態、
その者の教育上必要な支援の内容、
地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、その住所の存する
都道府県の設置する特別支援学校に就学させることが適当であると認める者をいう。
| 内容 |
| ①障害の状態 | 表に当てはまるかどうか。これは4つのうちの1つにすぎません |
| ②教育上必要な支援の内容 | その子に何が必要か |
| ③地域における教育の体制の整備の状況 | 地域に何があるか。通級指導教室や特別支援学級の設置状況など |
| ④その他の事情 | 上記以外の事情 |
読み取れること
「表に当てはまる」=「特別支援学校」ではありません。表に当てはまる子の
うち、4つの事情を勘案して
教育委員会が適当と認めた者だけが「認定特別支援学校就学者」になります。
③に
「地域における教育の体制の整備の状況」が入っている点も重要です。
その子の状態だけで決まるものではない——条文がそう書いています。
🔴 保護者の意見を聴くことは、政令に書かれています
学校教育法施行令には、第3節の2「保護者及び視覚障害者等の就学に関する専門的知識を有する者の意見聴取」という節が独立して置かれています。
学校教育法施行令 第18条の2
市町村の教育委員会は、児童生徒等のうち視覚障害者等について、第5条…又は第11条第1項…の通知をしようとするときは、
その保護者及び
教育学、医学、心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の
意見を聴くものとする。
つまり通知を出す前に、保護者の意見を聴くことが定められています。お願いして聴いてもらうものではなく、手続きとして組み込まれています。
あわせて教育学・医学・心理学などの専門的知識を有する者の意見も聴くこととされています。言語聴覚士など専門職の評価記録が役に立つのは、この場面です。
4つの学びの場——説明を求めてかまいません
文部科学省の通知(令和4年4月27日/4文科初第375号)は、「改善が必要な具体的な事例」としてこう挙げています。
改善が必要な具体的な事例(文部科学省通知より)
通常の学級、通常の学級における指導と通級による指導を組み合わせた指導、特別支援学級、特別支援学校という学びの場の選択肢を、本人及び保護者に説明していない。
| 学びの場 | 内容 |
| 通常の学級 | そのまま通常の学級で学ぶ |
| 通常の学級+通級による指導 | 通常の学級に在籍し、一部の時間に特別の指導を受ける(学校教育法施行規則第140条)。「ことばの教室」はここ |
| 特別支援学級 | 特別支援学級に在籍する |
| 特別支援学校 | 特別支援学校に在籍する |
この4つの説明を受けることは、保護者として当然に期待してよいことです。説明がなければ、「4つの選択肢について、それぞれ説明していただけますか」と尋ねてかまいません。
同じ通知は、通級による指導の場を設けることが容易ではない場合に、安易に特別支援学級を開設することは適切とは言えないとも述べ、どのような学びの場がふさわしいかは、その児童生徒の教育的ニーズが大前提だとしています。
通級のしくみはことばの教室(通級による指導)とは?にまとめています。
就学相談では、何を聞かれますか
尋ねられることは、条文から逆算できます。教育委員会が判断のときに勘案するとされている4つの事情(学校教育法施行令 第5条第1項)が、そのまま材料になるからです。
| 条文の勘案事項 | 実際に尋ねられる形 |
| ①障害の状態 | 園や家庭での様子。診断や検査の結果があれば、その内容 |
| ②教育上必要な支援の内容 | どんな配慮があれば動けるか。「予告があれば切り替えられる」「一対一なら伝わる」など |
| ③地域における教育の体制の整備の状況 | これは教育委員会が持っている情報です。近隣の通級指導教室・特別支援学級の設置状況を、こちらから尋ねられます |
| ④その他の事情 | 通学の距離、きょうだいの就学先、家庭の事情など |
③は、こちらが説明する項目ではありません
4つのうち
③は地域側の事情です。「近くに通級指導教室はありますか」「特別支援学級は何学級ありますか」——
尋ねる側に回ってよい項目だと、条文の並びが示しています。
あわせて第18条の2は、通知の前に保護者の意見と、教育学・医学・心理学その他の専門的知識を有する者の意見を聴くものとしています。準備するものが2種類あるのは、このためです(→下の「用意しておくとよいもの」)。
就学相談に向けて、用意しておくとよいもの
第18条の2が保護者の意見と専門的知識を有する者の意見を聴くと定めている以上、この2つを用意しておくと、話が進みます。
- 困っていることを、場面ごとに書き出す——「集団の中で」「一対一なら」「初めての場所で」。場面によって違うことが、そのまま情報になります。
- できていることも書き出す——支援の内容を決めるには、両方が要ります。
- 専門職の記録をそろえる——言語聴覚士の評価、発達検査の結果、事業所の記録。日付つきで。
- 園の様子を聞いておく——家庭と園で違うことがあります。担任の先生に、集団の中での様子を聞いておいてください。
- 希望と、その理由を言語化する——「◯◯だから、この場がよいと思う」。理由まで言えると、意見として扱われやすくなります。
相談の前の整理は発達相談で聞かれることメモも参考になります。
「発達検査を受けてください」と言われたら
就学相談の過程で、発達検査や知能検査を勧められることがあります。驚かれる方が多い場面ですが、これも第18条の2から説明がつきます。
学校教育法施行令 第18条の2(再掲)
市町村の教育委員会は……その保護者及び
教育学、医学、心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くものとする。
条文が「専門的知識を有する者の意見を聴く」としている以上、その意見のもとになる資料が要ります。検査は、その資料の1つとして位置づけられています。
- 合否を決める試験ではありません。条文は「意見を聴く」であって、点数で就学先を決めるとは書いていません
- 判断材料は4つあります。第5条第1項が挙げるのは①障害の状態 ②教育上必要な支援の内容 ③地域における教育の体制の整備の状況 ④その他の事情。検査結果はこのうち①の一部にすぎません
- すでに受けた検査があれば、それを出せる場合があります。いつ・どこで受けたかを添えて相談してください
- 結果は、支援の内容を考えるためにも使えます。就学相談のあとも、学校や事業所と共有する材料になります
検査そのもののしくみは発達検査とは?と田中ビネー知能検査とは?にまとめています(当ラボでは検査の項目や数値は扱いません)。
決まったあとも、変えられます
就学相談でいちばん重く感じられるのは、「ここで決めたら6年間このまま」という受け取り方かもしれません。政令は、そうは書いていません。
学校教育法施行令 第6条の3 第1項
特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒で
その障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情の変化により当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の設置する小学校、中学校又は義務教育学校に就学することが適当であると思料するものがあるときは、当該学齢児童又は学齢生徒の在学する
特別支援学校の校長は、速やかに、……都道府県の教育委員会に対し、その旨を通知しなければならない。
🔴 4つの事情が、そのまま出てきます
就学先を決めるときの
第5条第1項の4つの事情と、
まったく同じ4つが第6条の3にも並び、そこに
「の変化により」が付いています。
——
状況が変われば見直すことが、条文の作りとして組み込まれています。しかも
校長には「速やかに……通知しなければならない」と義務の形で書かれています。
特別支援学級や通級による指導についても、令和4年4月27日の通知が、特別支援学級に在籍する子どもが大半の時間を通常の学級で学んでいる場合には学びの場の変更を検討するべきだとしています(→交流学級とは?)。
就学相談は入口の手続きであって、その後を固定するものではない——そう読める作りになっています。
新宿区の場合
当ラボを運営する教室は東京都新宿区にあります。新宿区の就学相談の窓口・時期・申し込みの流れは、区の案内にもとづいて新宿区の就学相談にまとめています。
就学後に、放課後等デイサービスを使う場合
学びの場の相談は教育委員会ですが、放課後等デイサービスは児童福祉法にもとづく別の制度で、窓口は区市町村の障害福祉担当です。
| <b>就学相談</b> | <b>放課後等デイサービス</b> |
| 根拠 | 学校教育法・同施行令 | 児童福祉法 |
| 窓口 | 区市町村の教育委員会 | 区市町村の障害福祉担当 |
| 時期 | 政令の期限から逆算(上記) | 入学に合わせて受給者証の内容を切り替える |
就学前に児童発達支援を使っていた場合も、入学のタイミングで受給者証の内容を切り替える手続きが必要です(→放課後等デイサービスとは?)。
※就学相談の具体的な受付時期・回数・持ち物は、区市町村の教育委員会によって異なります。必ずお住まいの教育委員会でご確認ください。本記事は一般的な情報提供です。
出典
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
就学相談は、どんな流れで進みますか?
自治体で異なりますが、文部科学省の実態調査に自治体の例として①保護者と担任で話し合い ②校内委員会で協議 ③市町村教育支援委員会による調査 ④同委員会で審議・判断 ⑤判断結果をもとに学校と保護者が話し合い ⑥学びの場の決定という流れが載っています。同じ資料は、この過程で保護者からの要望などを受けて随時、相談を受け付けているとも書いています。
就学相談では、何を聞かれますか?
学校教育法施行令第5条第1項が挙げる4つの勘案事項が材料になります。①障害の状態 ②教育上必要な支援の内容 ③地域における教育の体制の整備の状況 ④その他の事情です。③は地域側の事情なので、「近くに通級指導教室はありますか」とこちらから尋ねてよい項目です。
発達検査を受けるように言われました。合否が決まるのですか?
いいえ。学校教育法施行令第18条の2は、教育委員会が保護者及び教育学・医学・心理学その他の専門的知識を有する者の意見を聴くと定めており、検査はその意見のもとになる資料の1つです。判断は第5条第1項の4つの事情を勘案して行われ、検査結果はそのうち①障害の状態の一部にあたります。
いちど決まったら、変えられないのですか?
変えられます。学校教育法施行令第6条の3第1項は、障害の状態・教育上必要な支援の内容・地域における教育の体制の整備の状況その他の事情の「変化により」小中学校に就学することが適当と思料するときは、特別支援学校の校長が速やかに都道府県の教育委員会に通知しなければならないとしています。就学先を決めるときと同じ4つの事情が、そのまま並んでいます。
新宿区の就学相談について知りたいのですが
新宿区の窓口・時期・申し込みの流れは新宿区の就学相談のページにまとめています。就学前の相談先は新宿区の発達相談窓口、就学後の受給者証は新宿区の受給者証のページをご覧ください。
就学相談はいつから始まりますか?
自治体によって違いますが、法令の期限から逆算できます。学齢簿の作成は翌学年の初めから5月前まで(学校教育法施行令第2条)、就学時の健康診断は4月前まで(学校保健安全法施行令第1条)、入学期日の通知は2月前まで(同令第5条第1項)です。そのため多くの自治体が年長の春から夏ごろに受付を始めます。
障害の基準に当てはまると、特別支援学校になりますか?
なりません。学校教育法施行令第5条第1項は、第22条の3の表に該当する者のうち、教育委員会が①障害の状態 ②教育上必要な支援の内容 ③地域における教育の体制の整備の状況 ④その他の事情を勘案して適当と認める者を「認定特別支援学校就学者」と定義しています。表への該当は、4つのうちの1つにすぎません。
保護者の希望は聞いてもらえますか?
学校教育法施行令第18条の2は、教育委員会が通知をしようとするときはその保護者及び教育学・医学・心理学その他の専門的知識を有する者の意見を聴くものとすると定めています。お願いして聴いてもらうものではなく、手続きとして組み込まれています。
どんな選択肢があるのか説明されませんでした
文部科学省の通知(令和4年4月27日)は、通常の学級/通常の学級+通級による指導/特別支援学級/特別支援学校という4つの選択肢を本人及び保護者に説明していないことを「改善が必要な具体的な事例」として挙げています。説明を求めていただいてかまいません。
何を用意して行けばいいですか?
第18条の2が保護者の意見と専門的知識を有する者の意見を聴くと定めているので、この2つです。①困っていること・できていることを場面ごとに書き出す ②言語聴覚士の評価や発達検査の結果を日付つきでそろえる ③園での様子を担任に聞いておく ④希望とその理由を言語化する——この4つをお勧めします。
放課後等デイサービスの相談も就学相談でできますか?
別の窓口です。学びの場の相談は教育委員会(学校教育法)、放課後等デイサービスは区市町村の障害福祉担当(児童福祉法)です。就学前から児童発達支援を利用していた場合も、入学のタイミングで受給者証の内容を切り替える手続きが必要です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
制度のこと、見学のときに一緒に確認できます
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)では、受給者証の申請や利用料のしくみについても、見学・ご相談の際にご案内しています。手続きが不安な段階からお声がけいただけます。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。