根拠と、対象の8区分
学校教育法施行規則第140条が、通級による指導を制度として位置づけています。通常の学級に在籍する児童生徒について、特別の教育課程によることができる、という形です。
対象として挙げられているのは、次の8区分です。
| 号 | 対象 |
| 第1号 | 言語障害者(→ことばの教室) |
| 第2号 | 自閉症者 |
| 第3号 | 情緒障害者 |
| 第4号 | 弱視者 |
| 第5号 | 難聴者 |
| 第6号 | 学習障害者 |
| 第7号 | 注意欠陥多動性障害者 |
| 第8号 | その他障害のある者で、この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの |
🔴 知的障害は、この8区分に含まれていません。
また第141条は、他の学校で受けた授業を在籍校で受けた授業とみなすことができる旨を定めています。他校通級の根拠になる規定です。
通級による指導の三つの実施形態と、授業時数。文部科学省の通知と手引にもとづく。
🔴 何をするのか——「自立活動に相当する指導」
文部科学省の手引の記載
障害に応じた特別の指導は、
「障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする指導」とされている。
これは
特別支援学校の特別な指導領域である自立活動の目標とするところであり、
通級による指導とは、特別支援学校の自立活動に相当する指導とされている。
特に必要があるときは、障害の状態に応じて各教科の内容を取り扱いながら行うこともできる。
「ただし、この場合も、あくまで障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的として行われることが必要であり、単なる各教科の遅れを補充するための指導とはならないようにしなければなりません」
つまり、扱うのは困難そのものへの手立てです(→自立活動とは?)。
期待とのずれが起きやすいところ
「通級に行けば勉強が追いつく」という期待で始めると、
ずれが生まれます。教科の遅れへの手当ては、
通常の学級での合理的配慮や、学習支援員などの別のしくみの話になります(→
合理的配慮とは?)。
🔴 授業時数——LDとADHDだけ下限が違います
小・中学校(義務教育学校・中等教育学校前期課程を含む)の授業時数は、文部科学省の告示で次のように定められています。
| 対象 | 年間の授業時数 |
| 第1号〜第5号・第8号(言語障害・自閉症・情緒障害・弱視・難聴 ほか) | 年間35単位時間から280単位時間までを標準 |
| 第6号(学習障害者)・第7号(注意欠陥多動性障害者) | 年間10単位時間から280単位時間までを標準 |
下限が10になっている意味
月に1回程度からでも制度として成り立つということです。
文部科学省の手引は、この二つの対象について
通常の学級での配慮で足りる場合があることを踏まえ、慎重に判断する必要があるという趣旨の説明を置いています。
——
取り出して指導することだけが道ではないという前提が、時数の設計そのものに入っています。
高等学校・中等教育学校の後期課程では、年間7単位を超えない範囲で修得単位数が定められています。
どの学校でも同じように受けられるわけではありません
文部科学省の資料は、通級による指導を受ける児童の割合に都道府県で大きなばらつきがあることを示しています。
実際の差
小学校で、高いところは
3%超、低いところは
0.4%。
同じ資料には、こうも書かれています——
「発達障害の場合、指導方法が十分に確立しているとは言い難い」そして、通級指導を受ける児童生徒数は5年間で
1.5倍、特別支援学級の在籍者数は
1.4倍に増えている一方、義務教育段階の児童生徒数は
5%減っています。
うまく進まないときは、担任だけで抱えない形——特別支援教育コーディネーター、教育委員会の教育相談——に広げる価値があります。
三つの形と、進め方
文部科学省の通知(令和4年4月27日/4文科初第375号)は、通級の形を三つ示しています。
- 自校通級——在籍する学校の中で受ける
- 他校通級——他の学校へ通って受ける(規則第141条)
- 巡回指導——担当の教員が学校を巡回して指導する
同じ通知は、「通級による指導の場を設けることが容易でないという理由で安易に特別支援学級を開設することは適切とは言えない」という趣旨を示しています。
- 担任・特別支援教育コーディネーターに相談する
- 教育委員会の教育相談につなぐ——手続きは自治体により異なります
- 何を目的にするかを確認する——教科の補習ではないことを前提に
- 時数と形を相談する——自校/他校/巡回、年間何単位時間か
- 在籍学級での配慮とセットで考える(→合理的配慮)
※就学・転学に関する手続きと判断は教育委員会が行います。制度の運用は自治体により異なります。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 担任・特別支援教育コーディネーター | まずここ |
| 教育委員会の教育相談 | 通級・学びの場の相談(→就学相談) |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの面。第1号「言語障害者」に関わります |
| 小児科・児童精神科 | 診断について知りたいとき |
※本記事は一般的な情報提供です。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
通級では、勉強の遅れを取り戻してもらえますか?
文部科学省の手引は「単なる各教科の遅れを補充するための指導とはならないようにしなければなりません」と明記しています。通級で扱うのは障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服することです。
では、通級では何をするのですか?
特別支援学校の自立活動に相当する指導とされています。特に必要があるときは各教科の内容を扱いながら行うこともできますが、その場合も目的は困難の改善・克服であることが必要とされています。
どのくらいの時間、通うのですか?
小・中学校では年間35単位時間から280単位時間までが標準です。ただし学習障害者・注意欠陥多動性障害者は年間10単位時間からで、下限が下げられています。
知的障害でも通級を利用できますか?
学校教育法施行規則第140条が挙げる8区分に知的障害は含まれていません。学びの場については教育委員会の就学相談でご確認ください。
在籍校に通級がありません
他校通級(規則第141条)と巡回指導という形があります。文部科学省の通知は、通級の場を設けることが容易でないという理由で安易に特別支援学級を開設することは適切とは言えないという趣旨を示しています。
学校によって対応が違う気がします
文部科学省の資料は、通級を受ける児童の割合が都道府県で3%超〜0.4%とばらついていること、また「発達障害の場合、指導方法が十分に確立しているとは言い難い」ことを記しています。担任だけで抱えない形に広げる価値があります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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