ASHAの欄の分け方
ASHAの自閉症のページは、領域ごとに二つの見出しを立てています。「般化の困難」がどちらに置かれているかが要点です。
| 見出し | そこに置かれているもの |
“might look like” (そう見えることがある) | 自閉症の人によく見られるあらわれ方。それ自体は支援の必要を意味しません |
“might require skilled services” (専門的な支援を要しうる) | 🔴この欄に「日課の変化への対応や、活動から活動への移行の困難」と並んで「学んだ技能を般化させることの困難」が挙げられています |
🔴 隣に並んでいるもの
同じ欄には、こうしたものが並んでいます——
・
日課の変化への対応、活動から活動への移行の困難(→
切り替えが難しいとき)
・
学んだ技能を般化させることの困難・物の変わった使い方、物への珍しい愛着
・眠りにくさ
——
「場面が変わると出てこない」ことは、「切り替えの難しさ」と同じ欄に置かれています。
「般化」ということばの位置
先に、この言葉の扱いをはっきりさせておきます。
確かめた結果(2026年9月6日)
・
e-Gov法令検索——「般化」を含む法令はありますが、
化学物質の規制など、まったく別の文脈です。
発達支援の意味での「般化」を定めた条文はありません・
文部科学省「教育支援の手引」——出てくるのは
てんかんの「二次性全般化発作」で、学習の般化ではありません
・
こども家庭庁のガイドライン——この語は使われていません
——
日本の制度の文書では、この言葉は使われていません。使われているのは
ASHAの記述と、国のガイドラインの
別の言い方です(次の節)。
🔴🔴 国のガイドラインは、別の言い方で同じことを書いています
「般化」という語は使われていませんが、場面をまたいで力が使えるようにすることは、国の文書の中心にあります。
指定基準省令 第26条の3(障害児の地域社会への参加及び包摂の推進)
「指定児童発達支援事業者は、障害児が指定児童発達支援を利用することにより、地域の保育、教育等の支援を受けることができるようにすることで、障害の有無にかかわらず、全ての児童が共に成長できるよう、障害児の地域社会への参加及び包摂(以下「インクルージョン」という。)の推進に努めなければならない。」🔴
療育を利用することが「手段」、地域の保育・教育を受けられるようにすることが「目的」という書き方です。
——
これは、般化そのものの話です。教室の中で完結させない、と省令が書いています。
児童発達支援ガイドライン(移行支援)
「……障害のあるこどもが、可能な限り、地域の保育、教育等を享受し、その中で適切な支援を受けられるようにしていくことや、同年代のこどもをはじめとした地域における仲間づくりを図っていくことが必要である。」そして——
🔴
「現時点で特段の具体的な移行先がない場合は、こどもが地域で暮らす他のこどもと繋がりながら日常生活を送ることができるように支援を提供する」(→
移行支援とは?)
また、こども家庭庁のガイドラインは、支援内容として「生活の場面における環境の工夫を行いながら」基本的技能を獲得できるよう支援するとしています。教える場面と、使う場面をつなぐことが前提になっています。
評価の考え方——「今できること」と「学べる可能性」
ASHAは、話しことばの障害の評価の方法として動的アセスメント(dynamic assessment)を挙げています。
ASHA「Spoken Language Disorders」より
test–teach–retest(テストする → 教える → もう一度テストする)
これにより
いま持っている力と
手がかりを与えたときにどのくらい伸びるか(学ぶ可能性)を
分けて見る、という考え方です。
🔴 ここから読めること
「教室ではできた」——これは
手がかりのある場面でできたということかもしれません。
「家ではやらない」——これは
手がかりのない場面ではまだ、ということかもしれません。
——
どちらも本当で、
あいだにあるのは手がかりの差という見方ができます。
だとすれば、次にできることは
「家にも同じ手がかりを置けるか」を確かめることです。
共有するときに、そろえておくとよいこと
児童発達支援ガイドラインは、移行支援の支援内容として「こどもの状態・親の意向・支援方法についての伝達」を挙げ、併行利用先との共有の例として、次のものを挙げています。
ガイドラインが挙げている共有の例
「得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段」——🔴
困りごとの一覧ではなく、「どうすればうまくいくか」を渡すという書き方です。
そろえると伝わりやすいもの
- できた場面の条件——場所、時間帯、いた人、直前にしていたこと
- そのときの手がかり——声かけの言い方とタイミング、見せたもの、道具、待った長さ
- やらない場面の条件——同じ四つを、そのまま書き出す
- 二つの差——ここが、次に試すことになります
- 誰と、いつ試すか——「二週間おなじ手がかりを家でも置いてみる」など、期限を添える
🔴 記録は解釈をつけずに
「やる気がない」ではなく「洗面所では自分で袖をまくった。台所ではまくらなかった」のように。
解釈を足さない記録は、
園・学校・事業所・医療機関のどこに出してもそのまま使えます。
通所支援を利用している場合、省令は少なくとも六月に一回以上の計画の見直しを定めています。「教室でできたことを、家や園でも」という目標は、計画に書き込める事柄です(→個別支援計画とは?)。
この記事で書かないこと
🔴般化を促す技法やその手順は書きません。確認できた一次情報の範囲は、ASHAが「支援を検討する項目」として挙げていることと、国の文書が「教室の中で完結させない」ことを求めていることまでです。存在しないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。
どの方法が効くかも書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
「どのくらいの期間で般化するか」も書きません。確認できた一次情報にその目安がありません。
書けるのは、この現象が学会と国の文書でどう位置づけられているかと、そこから何を尋ねられるかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | できた場面の条件と手がかりの共有。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 園・学校 | 同じ手がかりを置けるかの相談。ガイドラインは「声掛けのタイミングやコミュニケーション手段」の共有を挙げています |
| 保育所等訪問支援 | 🔴専門職が園・学校を訪問する制度。児童福祉法は「当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援」と定義しています |
| 相談支援専門員 | 事業所と園・学校をまたいだ設計、連絡調整 |
| 言語聴覚士・作業療法士 | 手がかりの作り方(伝える手段、道具、姿勢)の側から |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
※本記事は一般的な情報提供です。発達には個人差があります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
「教室ではできるのに家ではやらない」のは、なぜですか?
米国言語聴覚協会(ASHA)は「学んだ技能を般化させることの困難」を、自閉症について専門的な支援を要しうる状況を並べた欄に挙げています。本人の努力の問題としてではなく、支援を検討する項目として書かれています。
「般化」は法律用語ですか?
発達支援の意味では使われていません。e-Gov法令検索で「般化」を含む法令はありますが、化学物質の規制など別の文脈です。文部科学省の手引に出てくるのもてんかんの「二次性全般化発作」で、学習の般化ではありません(2026年9月6日確認)。
国の文書には、同じ考え方はありますか?
言い方が違うだけで、中心にあります。指定基準省令 第26条の3は「障害児が指定児童発達支援を利用することにより、地域の保育、教育等の支援を受けることができるようにすることで……インクルージョンの推進に努めなければならない」としています。療育が手段で、地域の保育・教育を受けられるようにすることが目的という書き方です。
何から試せばよいですか?
できた場面と、やらない場面の条件を並べて書き出すことです。場所・時間帯・いた人・直前にしていたこと、そしてそのときの手がかり(声かけの言い方とタイミング、見せたもの、道具、待った長さ)。二つの差が、次に試すことになります。
園や事業所には、何を伝えるとよいですか?
児発ガイドラインは、共有の例として「得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段」を挙げています。困りごとの一覧ではなく「どうすればうまくいくか」を渡す形です。
「今できること」と「これからできること」は、分けて見られますか?
ASHAは評価の方法として動的アセスメント(test–teach–retest)を挙げています。いま持っている力と手がかりを与えたときにどのくらい伸びるかを分けて見る考え方です。
園に来てもらうことはできますか?
保育所等訪問支援という制度があります。児童福祉法 第6条の2の2は、その内容を「当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援」と定義しています。窓口は市区町村の障害福祉担当です。
どのくらいで般化しますか?
この記事では目安を書きません。確認できた一次情報にその記述がないためです。
どんな方法が効きますか?
この記事では効果を書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。実施している事業所や専門職とご相談ください。
計画に書いてもらえますか?
「教室でできたことを、家や園でも」は計画に書き込める事柄です。省令は少なくとも六月に一回以上の見直しを定めており、見直しの相談はいつでも申し出ることができます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。