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📖 用語・基礎知識

ST・OT・PTの違い——法律が定める3つの守備範囲

最終更新:2026年9月3日
療育の場で名前を聞くST(言語聴覚士)・OT(作業療法士)・PT(理学療法士)。どれもリハビリテーションの国家資格ですが、法律が定める対象と仕事の中身は、はっきり分かれています

この記事は、言語聴覚士法理学療法士及び作業療法士法の条文にもとづいて、3つの違いを整理します。とくに「医師の指示」の扱いがSTだけ違う点は、「診断がないと相談できないのでは」と迷っている方に知っていただきたい部分です。

まず結論——3つは「何を対象にするか」で分かれています

法律の条文をそのまま並べると、違いがいちばんはっきりします。

<b>ST</b>(言語聴覚士)<b>OT</b>(作業療法士)<b>PT</b>(理学療法士)
対象音声機能、言語機能
又は聴覚に障害のある者
身体又は精神
障害のある者
身体に障害のある者
目的その機能の維持向上主として応用的動作能力
又は社会的適応能力の回復
主として基本的動作能力の回復
手段言語訓練その他の訓練、
これに必要な検査及び助言、
指導その他の援助
手芸、工作その他の作業
行なわせる
治療体操その他の運動
行なわせ、電気刺激・マッサージ・
温熱その他の物理的手段を加える
根拠法言語聴覚士法 第2条理学療法士及び
作業療法士法 第2条第2項
理学療法士及び
作業療法士法 第2条第1項
資格の制定1997年1965年1965年

STだけ32年あとにできた資格です。人数の差も、ここから生まれています。

「基本的動作能力」と「応用的動作能力」——PTとOTの分かれ目

PTとOTの違いは、条文の中の「基本的動作能力」「応用的動作能力又は社会的適応能力」という言葉に表れています。

法律の言葉子どもの場面でいうと
PT基本的動作能力の回復寝返る、起き上がる、座る、立つ、歩く——体の土台になる動き
OT応用的動作能力
又は社会的適応能力の回復
はさみを使う、箸を持つ、着替える、遊びに参加する——土台の動きを組み合わせて、生活の中で使うこと
「作業療法」の“作業”は、仕事のことではありません
法律は作業療法の手段を「手芸、工作その他の作業を行なわせること」と定めています。この「作業」は、生活の中のあらゆる活動を指します。遊ぶこと、着替えること、食べること——すべて作業療法の“作業”に含まれます。

また、作業療法の対象は条文で「身体又は精神に障害のある者」とされており、理学療法(「身体に障害のある者」)より広く定められています。OTが感覚の受け取り方や気持ちの安定にも関わるのは、この条文の広さと対応しています。

STだけ、対象が「身体」ではありません

3つの条文を並べると、STの位置づけが独特であることがわかります。

だから守備範囲が重ならない
PTとOTは「身体」「精神」というその人の状態を対象にしていますが、STは声・ことば・聞こえという“機能”を対象にしています。

体の動きが良くなればことばが出る、というものではありません。ことばには、ことばの評価が要る——法律の立て付けからも、そう読み取れます。

また、STの条文だけ「維持向上」という言葉が使われています(PT・OTは「回復」)。これは、失われた機能を取り戻す場面だけでなく、これから育っていく機能を支える場面も含めて読める書き方になっています。

🔴 決定的な違い——「医師の指示」が条文のどこに書かれているか

ここが、実際の相談のしやすさに直結する違いです。

条文医師の指示
PT「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう(第2条第3項)定義そのものに入っている
OT「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう(第2条第4項)定義そのものに入っている
ST「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、…言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう(第2条)定義には入っていない

言語聴覚士について、医師または歯科医師の指示が必要と法律に書かれているのは、別の条文で、行為を限定してです。

言語聴覚士法 第42条(業務)
言語聴覚士は、…診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

つまり、PT・OTは業務全体が「医師の指示の下に」行われるのに対し、STは、嚥下訓練や人工内耳の調整といった特定の行為についてのみ、医師・歯科医師の指示が定められている——という構造の違いがあります。

ただし、言語聴覚士法第43条第2項は「主治の医師又は歯科医師があるときは、その指導を受けなければならない」と定めています。かかりつけの医師がいる場合は、その指導のもとで進めることになります。

※これは資格と法令の説明です。医療機関で受けるリハビリテーションは医療保険など別の制度が関わります。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、まず小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

3つとも「名乗れる人」が決まっています

ST・OT・PTはいずれも名称独占の資格です。資格のない人がその名称を使うことは、法律で禁じられています。

条文内容
ST言語聴覚士法 第45条言語聴覚士でない者は、言語聴覚士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(違反は30万円以下の罰金・第51条第2号)
PT理学療法士及び作業療法士法 第17条第1項理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない
OT同法 第17条第2項作業療法士でない者は、作業療法士という名称又は職能療法士その他作業療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない

理学療法士及び作業療法士法は、「機能療法士」「職能療法士」という具体的な名称まで挙げて禁じています。それだけ、紛らわしい名乗りが問題になりやすいということでもあります。

事業所の案内や求人で「言語聴覚士」「作業療法士」「理学療法士」と書かれていれば、国家資格者です。確かめたいときは、見学の際にそのまま尋ねてかまいません。

秘密を守る義務も、3つとも法律に書かれています

条文内容
ST言語聴覚士法 第44条正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。言語聴覚士でなくなった後においても、同様
PT・OT理学療法士及び作業療法士法 第16条正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。理学療法士又は作業療法士でなくなつた後においても、同様

面談で話した内容が守られる根拠は、この条文にあります。資格を離れたあとも続く義務として定められています。

子どもの療育では、どう分かれるか

法律の言葉を、実際の困りごとに置き換えてみます。

気になっていることまず相談する専門職
ことばが出ない・増えないST
発音がはっきりしないST
聞き返しが多い、テレビの音が大きいST
こちらの言うことが伝わっているかわからないST
食べる・飲み込むことが気になるST(嚥下訓練は医師・歯科医師の指示のもと)
手先が不器用、はさみや箸が使いにくいOT
音や触られることに敏感/反応が薄いOT
着替え・トイレなど身のまわりのことOT
座っていられない、姿勢が崩れるOT/PT
歩き方や体の動かし方、運動の発達PT
重なる部分は、必ずあります
姿勢が安定しないと、息が続かず声が出しにくいことがあります。手が不器用だと、絵カードやサインを使いにくいことがあります。

だから3つの専門職は、法律でも連携することが求められています。言語聴覚士法第43条第3項は、「福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない」と定めています。

米国言語聴覚学会(ASHA)も、言語聴覚士の役割として作業療法士・理学療法士・特別支援教育の担当者・視覚の専門家など、他の専門職への紹介を挙げています。「うちの担当ではない」で終わらせないことが、専門職の仕事に含まれているということです。

どれか一つを選ぶ、という話ではありません

ST・OT・PTの3職種すべてが配置されている事業所は、多くありません。そのため実際には、「今いちばん困っていることは何か」から相談先を決めることになります。

  1. いま困っていることを書き出す——ことば、手先、体の動き、生活のどれに近いか。
  2. まず評価を受ける——どの職種でも、始まりは検査・評価です。「調べたら心配はいらなかった」も、大事な結果です。
  3. 必要なら紹介してもらう——専門職には、他の専門職につなぐ役割もあります。遠慮なく相談してかまいません。

ことばについて詳しくは、言語聴覚士(ST)とは?ことばが出ない・遅い気がするときもあわせてご覧ください。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

ST・OT・PTの違いを一言でいうと?
法律の定める対象が違います。PTは身体の基本的動作能力OTは身体または精神の応用的動作能力・社会的適応能力STは音声機能・言語機能・聴覚が対象です。PT・OTは1965年、STは1997年に制定された国家資格です。
STだけ医師の指示が要らないのですか?
条文の構造が違います。PT・OTは定義そのものに「医師の指示の下に」が入っています(理学療法士及び作業療法士法第2条第3項・第4項)。一方STは、言語聴覚士法第2条に「医師の指示の下に」はなく、第42条で嚥下訓練や人工内耳の調整など、行為を限定して医師・歯科医師の指示が定められています。ただし主治医がいる場合は、その指導を受けることになっています(第43条第2項)。
「作業療法」の作業とは何ですか?
法律は作業療法の手段を「手芸、工作その他の作業を行なわせること」と定めています。この「作業」は仕事のことではなく、遊ぶ・着替える・食べるといった生活の中のあらゆる活動を指します。
ことばが遅いのに、OTを勧められました。なぜですか?
ことばの育ちには、姿勢の安定、手の使い方、感覚の受け取り方など、周辺の力が関わることがあります。3つの職種は法律でも連携が求められており(言語聴覚士法第43条第3項)、重なる領域があります。気になる場合は、なぜOTを勧められたのかを担当の方に確認してみてください。
資格を持っているかどうかは、どう確かめますか?
ST・OT・PTはいずれも名称独占の資格です。「言語聴覚士」「作業療法士」「理学療法士」と書かれていれば、国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受けた人です。見学や面談の際に、そのままお尋ねいただいてかまいません。
3つとも受けたほうがいいのですか?
3職種すべてが配置されている事業所は多くありません。まずは今いちばん困っていることから相談先を決め、検査・評価を受けるところから始めるのが現実的です。必要があれば、専門職から他の専門職へつないでもらうこともできます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。