🔴 「社会性の芽生え」として置かれています
児童発達支援ガイドラインは、模倣を本人支援「人間関係・社会性」の中に置いています。そして、その中の<遊びを通じた社会性の促進>には三つが順に並んでいます。
- 🔴模倣行動の支援——「遊び等を通じて人の動きを模倣することにより、社会性や対人関係の芽生えを支援する」
- 感覚・運動遊びから象徴遊びへの支援——「感覚機能を使った遊びや運動機能を働かせる遊びから、見立て遊びやつもり遊び、ごっこ遊び等の象徴遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する」
- 一人遊びから協同遊びへの支援——「周囲にこどもがいても無関心である一人遊びの状態から並行遊びを行い、大人が介入して行う連合的な遊び、役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する」
🔴 三つの順番
模倣が、いちばん最初に置かれています。そして、この節全体が
「遊びを通じた社会性の促進」という名前です。
——
まねること自体が目的として書かれてはいません。社会性や対人関係の芽生えのために置かれています。
この三つの前には
<アタッチメント(愛着)の形成と安定>が置かれています(→
愛着(アタッチメント)とは?)。
また、この一覧は「一人遊び→並行遊び→連合的な遊び→協同遊び」という並びを示しています。「集団に入れない」ではなく、途中の段階として書かれています(→集団に入りにくいとき)。
文部科学省の手引にある「模倣」
手引には9か所に出てきます。使われ方が場面ごとに違うので、そのまま並べます。
| どこで | 書かれていること |
| 参加のしかたとして | 「……配慮によって参加できるか、ほかの子供の活動を模倣することを通して参加できるか」 |
| 指導の場面で | 「教師の示範を受け止めて模倣しようとすること、他者からの指示を理解して応じようとすること」 |
| 手がかりを添えて | 「絵カードの使用や、視覚情報による模倣を促す」 |
| 発音の指導で | 「正しい音を聞かせて、それを模倣させる方法」 |
| ことばの育ちとして | 「気に入った言葉を模倣するようになる」 |
🔴 一つめが効きます
「ほかの子供の活動を模倣することを通して参加できるか」——これは
参加のしかたの一つとして書かれています。
——
先に説明を理解してから参加する、という道だけではないということです。
なお、手引は学習の困難の説明でも「動作の模倣」や「運動の模倣」に触れており、模倣そのものが難しい場合があることも書かれています。
学会の側の書き方
米国言語聴覚協会(ASHA)は、modeling という語をいくつかの場面で使っています。
① 自然な発達的行動介入(NDBI)
「活動と支援の目標は子ども主導で、自然な場面で提示され、発達的で自発的なモデリングを用いる。NDBIは遊びにもとづく行動的アプローチを含む。」🔴
「自発的な(spontaneous)」——手順として決められた見本ではなく、
その場で自然に出てくる見せ方という書かれ方です。
② 評価のときの手がかりとして
ASHAは
動的アセスメント(test–teach–retest)で見るものとして、
「コミュニケーションの力を高める文脈上の支え(例:AACやモデリング)」を挙げています。
——
モデリングは「支え」の一つとしてAACと並べられています(→
AACとは?)。
ASHAはAACのページでも、支援する側がその手段を使ってみせるやり方(Augmented input)を挙げています。ことばだけでなく、伝える道具についても「使ってみせる」ことが方法として書かれているということです。
見るときに分けておくとよいこと
国の文書の書き方に沿うと、「まねる」にもいくつかの層があることが分かります。
| 層 | 国の文書での現れ方 |
| 動きをまねる | 児発GL「遊び等を通じて人の動きを模倣する」/手引「動作の模倣」「運動の模倣」 |
| 音・ことばをまねる | 手引「正しい音を聞かせて、それを模倣させる方法」/「気に入った言葉を模倣するようになる」 |
| 手がかりを見てまねる | 手引「絵カードの使用や、視覚情報による模倣を促す」 |
| まねることで参加する | 🔴手引「ほかの子供の活動を模倣することを通して参加できるか」 |
🔴 記録するとよいこと
解釈をつけずに、見たことを日付つきで。・
誰のまねをするか(大人/同年代/年上)
・
いつまねるか(その場で/あとから)
・
何をまねるか(動き/音/手順/言い方)
・
まねないときは何が違うか——これは
できる/できないの二択から離れる書き方です。そのまま面談で使えます。
なお、ASHAはエコラリア(反響言語)について、コミュニケーションのために繰り返していることがあると記述しています。まねることと、伝えようとしていることは、別のことではありません(→オウム返しがあるとき)。
この記事で書かないこと
🔴「モデリング」の定義・技法・手順は書きません。確かめた一次情報にこの語の定義がなく、定義を書けば、それは私の作文になってしまうためです。そういう方法がないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。
🔴効果も書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
「何歳で何をまねるようになるか」も書きません。確認できた一次情報に年齢ごとの目安がありません。
「まねさせる方法」も書きません。国のガイドラインが書いているのは「遊び等を通じて」という場面までです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 🔴「模倣行動の支援」は児発GLの支援内容です。計画のどこに書かれているか(→個別支援計画とは?) |
| 言語聴覚士 | 音・ことばの模倣、伝える手段。ASHAはモデリングをAACと並べて「支え」に挙げています |
| 作業療法士 | 動作・運動の模倣、姿勢や道具の側から |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 🔴手引の「ほかの子供の活動を模倣することを通して参加できるか」 |
| 小児科・児童精神科など | 診断に関する判断。療育は医療ではありません |
| 発達障害者支援センター | 関係機関との連絡調整 |
※本記事は一般的な情報提供です。発達には個人差があります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
「モデリング」は国の文書にある言葉ですか?
見当たりませんでした。こども家庭庁のガイドラインにも文部科学省の手引にもこの語はありません(2026年9月6日確認)。国の文書が使っているのは「模倣」です。
国のガイドラインは何と書いていますか?
「・模倣行動の支援——遊び等を通じて人の動きを模倣することにより、社会性や対人関係の芽生えを支援する」です。まねること自体が目的としては書かれていません。
まねができないと心配です
国のガイドラインは、模倣を<遊びを通じた社会性の促進>の三つのうちの最初に置き、そのあとに象徴遊び・協同遊びを並べています。「一人遊び→並行遊び→連合的な遊び→協同遊び」という道筋も示されており、途中の段階として書かれています。
まねることで、集団に入れますか?
文部科学省の手引は、参加のしかたの一つとして「ほかの子供の活動を模倣することを通して参加できるか」を挙げています。先に説明を理解してから参加する道だけではないということです。
学会は何と書いていますか?
ASHAは、自然な発達的行動介入(NDBI)について「子ども主導で、自然な場面で提示され、発達的で自発的なモデリングを用いる」としています。また評価のときの「支え」としてAACと並べて挙げています。
何をまねているか、どう見ればよいですか?
誰のまねをするか/いつまねるか/何をまねるか/まねないときは何が違うかの四つを、解釈をつけずに書き留めると、そのまま面談で使えます。
オウム返しも模倣ですか?
ASHAはエコラリア(反響言語)について、
コミュニケーションのために繰り返していることがあると記述しています。
まねることと、伝えようとしていることは別のことではありません(→
オウム返しがあるとき)。
まねさせる方法を知りたいのですが
この記事では書きません。国のガイドラインが書いているのは「遊び等を通じて」という場面までで、手順は示されていないためです。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。