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共同注意とは?——ことばの前に育つ「同じものに向く」力

最終更新:2026年9月3日
共同注意(きょうどうちゅうい)は、2人以上が同じ物や出来事に注意を向けることです。

「指さした先を一緒に見る」「見つけたものを大人に知らせる」——このやりとりは、ことばが出るより前に育ちます。そして、ことばが育つ土台になります。

この記事は米国言語聴覚学会(ASHA)の実践ポータルにもとづき、「目を合わせない=共同注意がない」とは限らないという、近年重視されている見方まで含めて説明します。

定義——「同じものに、いっしょに向く」

ASHAは共同注意を「2人以上の人が、同じ物や出来事に注意の焦点を共有すること」と定義しています。

そして、社会的コミュニケーションは次の3つからできているとしています。

要素内容
共同注意(joint attention)同じ物や出来事に、注意を共有する
社会的相互性(social reciprocity)一方のふるまいが、もう一方のふるまいに影響を与える。やりとりが行き来する
社会的認知(social cognition)相手や場面を読み取る力

この3つのうち、いちばん早い時期に見えてくるのが共同注意です。

なぜ「ことばの前」なのか

ことばは、音と、それが指しているものを結びつけて覚えていきます。

たとえば大人が「わんわん」と言ったとき、その子が大人が何を見ているかを分かって初めて、「わんわん=あの生き物」という結びつきが生まれます。

だから土台になります
同じものに一緒に向く時間がないと、音とものの対応づけの機会そのものが少なくなります。ことばの数を増やす前に、「いっしょに見る」が成り立っているかを見るのは、そのためです。

2つの向き——応じる/始める

共同注意には、方向の違う2つがあります。どちらも大切ですが、育ち方は同じではありません。

どういうことか場面の例
応じる
(応答の共同注意)
相手が向けた注意に、こちらが合わせる大人が指さした方を見る/名前を呼ばれて振り向き、大人の視線の先を見る
始める
(始発の共同注意)
自分から相手の注意を引き、同じものに向かせる見つけたものを指さして大人の顔を見る/おもちゃを持ってきて見せる

「応じる」はできても「始める」が少ない、ということはよくあります。どちらがどれくらい出ているかを見ておくと、相談のときに具体的に話せます。

🔴「目を合わせない=共同注意がない」とは限りません

ここは、近年とくに強調されるようになった点です。

ASHAは、共同注意の現れ方として次のような例を挙げています。

見るところは「目線」ではなく「注意」
共同注意は注意が共有されているかであって、目が合っているかではありません。

同じ場にいて、同じ活動に向いていて、関わりが続くと反応が変わる——それは形の違う共同注意かもしれません。

「目が合わないから、この子は人に興味がない」——そう決めてしまうと、すでに起きている共有を見落とします

🔴 二重の共感の問題(double empathy problem)

ASHAは、自閉スペクトラム症のある人とそうでない人のあいだで起きるすれ違いについて、Milton(2012)の「二重の共感の問題」という枠組みを紹介しています。

どういう考え方か
すれ違いは一方の側に足りないものがあるから起きるのではなく、異なる視点・世界観・社会的な受け取り方どうしがぶつかっているから起きる——という見方です。問題は双方向にある、ということです。

ASHAは関連する研究として、情報の伝わり方は、自閉のある人が自閉でない人と関わるときのほうが、自閉のある人どうしで関わるときより難しく見えるという報告(Crompton et al., 2020)も挙げています。

これは、家庭や園での関わりにそのまま効いてきます。「その子に合わせ方を教える」だけでなく、「こちらの合わせ方を変える」——共同注意を育てる関わりは、その両方から考えることになります。

※ここで紹介しているのは共同注意のとらえ方に関する研究上の枠組みで、診断や特定のお子さまの状態を示すものではありません。

ジェスチャーの現れ方——順番が違うことがあります

共同注意は、ジェスチャーの形にも表れます。ASHAは次の点を挙げています。

内容
慣習的なジェスチャー渡す、指さす、うなずく・首を振る
慣習的でないジェスチャー大人の手を引っぱって、ほしい物のほうへ持っていくなど

ASHAは、慣習的でないジェスチャーが、慣習的なジェスチャーより先に、あるいはその代わりに現れることがあると説明しています。また、生後1年の後半に、表情・身振り・ボディランゲージをコミュニケーションの手段として使うことが遅れ、その後も慣習的でない形が残ることがある、ともされています。

伝えていないのではなく、形が違う
手を引っぱるのは、「伝えよう」としている行動です。形が慣習的でないだけで、意図はそこにあります。

まずその意図に応えてから、指さしなどの形を足していく——という順番になります。

なお、ことばが出ない・遅い気がするときで紹介しているように、ことばの出はじめが遅くても追いついていった子は、伝えるための身ぶりをより多く使っていたという報告があります。身ぶりが出ているかどうかは、それだけで見どころになります。

家庭でできること

  1. その子が見ているものを、大人が見る——逆をやりがちですが、まずこちらが合わせます。共同注意は「合わせさせる」より「合わせる」から始まります。
  2. 見ているものを、ことばにする——「くるま、きたね」。返事を求めなくてかまいません(焦点化された刺激と同じ考え方です)。
  3. 手を引かれたら、まず応じる——応じたうえで「これ?」と指さして見せます。意図をくじかずに、形だけ足します。
  4. 待つ——反応が返るまでに時間がかかることがあります。すぐに手を添えたり、答えを言ってしまわないこと。
  5. 目を合わせることを目標にしない——同じ活動に向いているか、関わりが続くと反応が変わるか。そちらを見ます。

早い時期の関わりについて

ASHAは、前言語期(ことばが出る前の時期)のコミュニケーションを標的とした関わりに、利益がありうるとする研究(Bradshaw et al., 2015/L. K. Koegel et al., 2014)を紹介しています。

また、早期の関わりが、多くの子どもの長期的な経過を改善しうるという研究も挙げられています(Dawson & Osterling, 1997/Dawson et al., 2010 ほか)。

つまりことばが出るのを待ってから始める必要はない、ということです。共同注意やジェスチャーは、ことばが出る前から働きかけられる部分です。

※これは一般的な情報の紹介であり、診断や治療の助言ではありません。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

どこに相談すればいいか

共同注意やことばの育ちについては、言語聴覚士(ST)が検査・評価と助言を行います。言語聴覚士法第2条は、業務を「言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助」と定めています。

伝える手段を増やす方法としては、AAC(拡大・代替コミュニケーション)マカトン法があります。これらを使っても話さなくなることはないと研究で示されています。

区市町村の発達相談窓口にも、診断の有無にかかわらず相談できます。東京23区の窓口は東京23区の申請窓口 一覧・比較にまとめています。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

目が合わないのですが、共同注意がないということですか?
そうとは限りません。ASHAは共同注意の現れ方として、目を合わせるのではなく共有された物や活動のほうに注意を向ける形や、みんなが集団活動をしているとき一人遊びを好むがその部屋に居続ける形を挙げています。共同注意は注意が共有されているかであって、目線そのものではありません。
何歳ごろに出てくるものですか?
共同注意は、ことばが出るより前の時期に育ちます。ASHAは、生後1年の後半に表情・身振り・ボディランゲージをコミュニケーションの手段として使うことが遅れる場合があると述べています。気になる場合は年齢で区切らず、応じる/始めるがどれくらい出ているかを記録して相談してみてください。
手を引っぱって連れていくのは、よくないことですか?
よくないことではありません。ASHAは、大人の手を引っぱって物のほうへ持っていくような慣習的でないジェスチャーが、指さしなどの慣習的なジェスチャーより先に、あるいはその代わりに現れることがあると説明しています。伝えようとしている行動です。まず応じたうえで、指さしなどの形を足していきます。
指さしを教えたほうがいいですか?
形だけを練習させるより、その子が見ているものに大人が合わせ、ことばにして返すところから始めるほうが自然です。共同注意は「合わせさせる」より「合わせる」から育ちます。手を引かれたときに応じてから指さして見せる、という形で少しずつ足していけます。
「二重の共感の問題」とは何ですか?
Milton(2012)が示した枠組みで、ASHAが紹介しています。自閉スペクトラム症のある人とそうでない人のすれ違いは、一方に足りないものがあるから起きるのではなく、異なる視点・世界観・社会的な受け取り方どうしがぶつかって起きるという見方です。関わる大人の側の合わせ方も見直す材料になります。
ことばが出てから考えればいいですか?
ASHAは、前言語期のコミュニケーションを標的とした関わりに利益がありうるとする研究を紹介しています。共同注意や身ぶりは、ことばが出る前から働きかけられる部分です。ことばが出るのを待つ必要はありません。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。