ASHAの定義
ASHA「Autism」Social Skills Training より
「ソーシャルスキルトレーニングのアプローチと枠組みは、社会的な集団の場やそのほかの場を用いて仲間とのやりとりの技能を教え、効果的なコミュニケーションを促すよう設計されている。
社会的スキルは、個別にも集団でも訓練されうる。さまざまな介入の技法が用いられ、ソーシャル・スクリプトを含む。」(Nelson, 1978)
ASHAが例として挙げているプログラム——
PEERS®(Laugeson et al., 2011)/
Social Stories™(Gray et al., 2002)/
Social Thinking®/
TalkAbility™
🔴 「個別にも集団でも」
集団でなければならない、とは書かれていません。——「グループがないから受けられない」という話にはならない、ということです。
ASHAはこの節から、社会的コミュニケーション障害のページと社会的コミュニケーションへの介入のエビデンスマップを参照するよう案内しています。
🔴🔴 ASHAが同時に書いている、大事な注意
ASHAの社会的コミュニケーション障害のページには、評価と支援にあたって考慮すべきこととして、こう書かれています。
ASHA「Social Communication Disorder」より
🔴
目を合わせること、表情、ボディランゲージなどは、社会文化的および個人的な要因の影響を受ける。
🔴 これが意味すること
「目を見て話す」「うなずく」といった振る舞いは、どこでも同じ意味を持つわけではない——と学会が明記している、ということです。
だから、練習の目標を立てるときに
「その振る舞いは、誰にとって必要か」を確かめる余地があります。
——
本人が困っているのか、周りが気にしているのか。
ASHAは自閉症のページでも、二重の共感の問題(Milton, 2012)を挙げています——行き違いが起きるのは、互いに異なる視点・世界の見え方・社会的な捉え方からコミュニケーションしているため。そして自閉症の人のコミュニケーションは、自閉症でない人と話すときのほうが目立って見える(Crompton et al., 2020)としています。
🔴 だから、練習の向きも一方通行ではありません
ASHAは
「自閉症の人には共感がある。ただし、思いやりの示し方が慣習的でないことがある」(DeThorne, 2020)とも書いています。
——
行き違いは双方向のものとして記述されています(→
友達とのトラブルがあるとき)。
何が「技能」として挙げられているか
ASHAの社会的コミュニケーション障害のページは、技能を具体的に列挙しています。練習の目標を考えるときの手がかりになります。
会話に参加すること(engaging in conversation)
・会話を始める、または入っていくこと・話題を保つこと・順番交代(turn-taking)・応じること・ちょうどよい量の情報を出すこと
そのほかに並んでいるもの
・場面や相手に応じて言い方やコミュニケーションの仕方を変えること・話を語り、理解すること🔴
・行き違いを修復すること(例:誤解されたときに言い直す)
・やりとりを調整するために、言語的な合図(例:話し方の抑揚)と非言語的な合図(例:身ぶり)を使うこと・やりとりの中で、相手の言語的・非言語的な合図を読み取ること・場にふさわしいあいさつを使うこと
🔴 この一覧に「かみ合った会話をすること」という項目はありません。並んでいるのは始める・保つ・交代する・応じる・直すといったできるようになっていく技能です(→会話がかみ合わないとき)。
国の文書での位置
| どこに | 書かれていること |
文部科学省「教育支援の手引」 (注意欠陥多動性障害の章) | 「社会的技能や対人関係に関わる困難さがある場合には、ソーシャルスキルやライフスキルに関することについて指導を行う」 |
| 同 | 「ソーシャルスキルの習得、対人関係形成の際に様々な困難が生じる場合がある。さらに、反抗挑発症や素行症などを併存することがあり、その場合には専門機関との連携を密に図る必要がある」 |
児童発達支援ガイドライン <仲間づくりと集団への参加> | 「集団に参加するための手順やルールを理解し、🔴こどもの希望に応じて、遊びや集団活動に参加できるよう支援するとともに、共に活動することを通じて、相互理解や互いの存在を認め合いながら、仲間づくりにつながるよう支援する」 |
| e-Gov法令検索 | 「ソーシャルスキル」に該当する法令なし |
🔴 「こどもの希望に応じて」
国のガイドラインは、集団への参加について
「こどもの希望に応じて」という条件を付けています。
——
無理に入れることとしては書かれていません。そして目標は
「相互理解や互いの存在を認め合いながら」とされており、
一方が合わせることとは書かれていません。
手引はまた、注意欠陥多動性障害の章で「自分の特性に気付き、自分を認め、生活する上で必要な支援を求めることができるようにすることが大切」としています。助けの求め方も、身につける事柄として書かれています。
目標を決めるときに確かめられること
- 困っているのは誰ですか——ASHAは「目を合わせること・表情・ボディランゲージは社会文化的および個人的な要因の影響を受ける」としています
- どの技能ですか——始める/保つ/交代する/応じる/量/直す。ASHAの一覧に沿うと具体的になります
- 個別ですか、集団ですか——ASHAは「個別にも集団でも訓練されうる」としています
- 本人の希望はどうですか——児発GLは「こどもの希望に応じて」としています
- 助けの求め方も入っていますか——手引は「必要な支援を求めることができるようにする」ことを大切としています
- いつ見直しますか——省令は少なくとも六月に一回以上と定めています
🔴 場面をまたげるか
ASHAは、専門的な支援を検討しうる状況の一つに
「学んだ技能を般化させることの困難」を挙げています。
——
教室でできたことが、家や園で出てくるかまで見る、という書き方です(→
般化とは?)。
この記事で書かないこと
🔴SSTの進め方・プログラムの内容・回数は書きません。ASHAが書いているのは定義とプログラムの例までで、手順は示されていないためです。
🔴効果も書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
🔴「こう振る舞うのが正しい」も書きません。ASHAが「目を合わせること、表情、ボディランゲージなどは社会文化的および個人的な要因の影響を受ける」と明記しているためです。
書けるのは、ASHAと国の文書が実際に何と書いているかと、目標を決めるときに確かめられることまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | 目標の中身と、本人の希望。計画の見直し(→モニタリングとは?) |
| 言語聴覚士 | 🔴ASHAは社会的コミュニケーションを言語聴覚士の領域としています |
| 園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 手引は「ソーシャルスキルやライフスキルに関することについて指導を行う」としています |
| スクールカウンセラー | 学校教育法施行規則 第65条の3(児童の心理に関する支援に従事する) |
| 小児科・児童精神科など | 手引は反抗挑発症や素行症の併存があるときに専門機関との連携を密に図る必要があるとしています |
| 親の会・保護者同士の交流 | 実際に受けている方の話 |
※本記事は一般的な情報提供です。プログラムの内容は事業所により異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
SSTとは何ですか?
米国言語聴覚協会(ASHA)の定義は「社会的な集団の場やそのほかの場を用いて仲間とのやりとりの技能を教え、効果的なコミュニケーションを促すよう設計されたアプローチと枠組み」です。
グループでないと受けられませんか?
ASHAは「社会的スキルは、個別にも集団でも訓練されうる」としています。
「目を見て話す」は練習したほうがよいですか?
🔴この記事では「こう振る舞うのが正しい」と書きません。ASHAが「目を合わせること、表情、ボディランゲージなどは社会文化的および個人的な要因の影響を受ける」と明記しているためです。
どんな目標が立てられますか?
ASHAが技能として並べているものが手がかりになります——会話を始める/話題を保つ/順番交代/応じる/ちょうどよい量の情報を出す/行き違いを修復する。
「かみ合った会話」は目標になりますか?
ASHAの一覧に「かみ合った会話をすること」という項目はありません。並んでいるのは始める・保つ・交代する・応じる・直すといったできるようになっていく技能です。
集団に無理に入れるのは心配です
こども家庭庁の児発ガイドラインは「集団に参加するための手順やルールを理解し、こどもの希望に応じて、遊びや集団活動に参加できるよう支援する」としています。
行き違いは、本人の側の問題ですか?
ASHAは二重の共感の問題(Milton, 2012)を挙げ、行き違いが互いに異なる視点・世界の見え方・社会的な捉え方から生じるとしています。双方向のものとして記述されています。
効果はありますか?
この記事では効果を書きません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
練習したことが、園や学校で出ません
ASHAは、専門的な支援を検討しうる状況の一つに「学んだ技能を般化させることの困難」を挙げています。本人の努力の問題としてではなく、支援を検討する項目として書かれています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。