「こだわり」は、専門の文書で何と呼ばれているか
ASHAは自閉症について、DSM-5-TRの記述にもとづいて反復的な行動様式を次のように挙げています。
- 常同的・反復的な発話、運動、または物の使用
- 決まった手順への、融通のきかない固執
- 限定された興味
- 感覚への過敏さ、または鈍感さ
日本語で「こだわり」と呼ばれているものの多くは、2番目の「決まった手順への融通のきかない固執」にあたります。
どちらの文書にも出てこない言葉があります
ASHAの記述にも、国のガイドラインにも、
「わがまま」にあたる語は出てきません。こども家庭庁の
児童発達支援ガイドラインは、「認知・行動」という支援の領域を設け、その支援内容として
「こだわりや偏食等に対する支援を行う」と書いています。
つまり
制度の側では、こだわりは「認知の特性」の話として扱われている——しつけの話としては書かれていません。
🔴 支援を考えるかどうかの、三つの目安
ASHAは、こうした行動について支援(介入)を検討する目安として、次の三つを挙げています。
| 目安 | 家庭で見るときの言い換え |
| 機会を制限する | そのために行けない場所・できない活動が増えていないか |
| 苦痛や不快をもたらす | 本人がつらそうか。崩れたあとに立て直すのに時間がかかっていないか |
| 自己管理に影響する | 食事・睡眠・身支度など、自分で自分のことをするのに支障が出ていないか |
三つの中に「強さ」は入っていません
目安になっているのは
結果として何が起きているかであって、こだわりの
強さでも
数でもありません。
強いこだわりがあっても、この三つに当てはまらないなら、
その子の過ごし方の一つとして置いておける、という読み方ができます。
逆に、周りから見て小さなこだわりでも、本人が毎日つらいなら、それは考える理由になります。
※これは支援を検討する際の考え方であって、診断の基準ではありません。診断は医師が行います。
なぜ「いつもと同じ」が必要なのか——ここでは書かないこと
「不安だから」「予測できると安心だから」——そうした説明はよく見かけます。しかしASHAも国のガイドラインも、こだわりの原因を断定していません。
この記事では、確認できた記述の範囲を超えて理由を書くことはしません。理由がないという意味ではなく、ここでは決めないという意味です。
そのうえで、文書に書かれていることは次の二つです。
- ASHAは、反復的な行動様式と感覚への過敏さ・鈍感さを、同じ一群の中に並べて記述しています(→感覚過敏・感覚鈍麻)
- 国のガイドラインは、発達障害のあるこどもへの配慮として「予定等の見通しをわかりやすくすること」を挙げています
感覚と見通し——この二つは、家庭で動かせる余地があります。
国のガイドラインが書いている「環境から変える」
児童発達支援ガイドラインは、事業所が整えなければならない環境として、次のように書いています。
- 「障害の特性を踏まえ、時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること」
- 「不安な気持ちを落ち着かせる環境を整える」
- 「こども自らが環境に関わり、自発的に活動し……こどもによる選択ができるよう配慮すること」
三つ目が、こだわりの話ではいちばん効きます
「選択ができるよう配慮する」——これは国の文書の言葉です。
「これしかだめ」と「なんでもいい」の間に、
「この二つのどちらか」という形があります。
決まりを崩さずに
幅だけを増やすやり方で、本人が決めている、という形は保たれます。
広げたいときの進め方
- 今の形を書き出す——何が、どこまで決まっているのか。「青い服」なのか「この一枚」なのか。幅がどこにあるかを先に見ます。
- 変えるのは一度に一つだけ——服・道順・順番を同時に動かさない。崩れたとき、何が原因だったか分からなくなります。
- 予告する——「予定等の見通しをわかりやすくすること」は、国のガイドラインが挙げている配慮です。当日その場で変えるのが、いちばん負担が大きくなります。
- 「どちらか選ぶ」の形にする——こちらが決めた一つに変えるのではなく、選べる形にします。
- 戻せるようにしておく——うまくいかなかったときに元へ戻せると、次に試しやすくなります。
- 記録する——日付と、何を試して、どうだったか。増えているのか減っているのかは、記録がないと分かりません。
うまくいかない日が続くとき
広げるのをいったん止めるのも一つの選択です。
ASHAの三つの目安に戻ってください。
機会が減っていないか。つらそうでないか。自分のことができているか。どれにも当てはまらないなら、急ぐ理由はありません。
園・学校に伝えるとき
発達障害者支援法第7条(保育)は、市町村について「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めています。配慮を相談することには、法律の裏づけがあります。
- 何が決まっているか(何を、どこまで)
- 崩れたときに何が起きるか、そして落ち着くまでにどれくらいかかるか
- どうすれば過ごせるか——予告、選べる形、戻す場所
- やめさせようとしないでほしいことを、はっきりと
「何が苦手か」だけを伝えると、園は困ります。「どうすれば過ごせるか」とセットで伝えると、その日から使えます。
専門職が園を訪問して一緒に考えるしくみもあります(→保育所等訪問支援とは?)。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「認知・行動」は国のガイドラインが定める支援の領域の一つです |
| 作業療法士(OT) | 感覚の受け取り方が関わっていそうなとき |
| 小児科・児童精神科 | 診断について知りたいとき |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
こだわりは、やめさせたほうがいいのですか?
ASHAは、支援を検討する目安として「機会を制限する」「苦痛や不快をもたらす」「自己管理に影響する」の三つを挙げています。この三つに当てはまらないなら、やめさせる理由として文書に書かれているものはありません。
わがままとの違いは何ですか?
ASHAの記述にも、こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインにも、「わがまま」にあたる語は出てきません。ガイドラインはこだわりを「認知・行動」という支援の領域の中に置いています。
なぜ「いつもと同じ」を求めるのですか?
この記事では書きません。ASHAも国のガイドラインも、こだわりの原因を断定していないためです。理由がないという意味ではなく、確認できた記述を超えて書かない、という意味です。
広げたいとき、何から変えればいいですか?
一度に一つだけです。そして予告してから変えます。国のガイドラインは、発達障害のあるこどもへの配慮として「予定等の見通しをわかりやすくすること」を挙げています。
「これしかだめ」と言われたら、どうすればいいですか?
「どちらか選ぶ」の形を試す方法があります。国のガイドラインは、環境を整えるときの留意事項として「こどもによる選択ができるよう配慮すること」と書いています。決まりを崩さずに幅だけを増やす形です。
園に相談してもいいのでしょうか?
発達障害者支援法第7条は、市町村について「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めています。「何が苦手か」と「どうすれば過ごせるか」をセットで伝えると伝わりやすくなります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。