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📖 用語・基礎知識

自己刺激行動とは?——ASHAは自傷行動と分けて書いています

最終更新:2026年9月6日
自己刺激行動(stimming と呼ばれることがあります)——手をひらひらさせる、体をゆらす、同じ音を出す、といった繰り返しの動きを指して使われることばです。

米国言語聴覚協会(ASHA)の自閉症のページには、この行動が二つの欄に分かれて出てきます。

“そう見えることがある”の欄——「stimming(自己刺激)や没頭と考えられる、反復的な行動・興味・活動のパターン。自傷行動は含まない(Kapp et al., 2019)

“専門的な支援を検討しうる”の欄——「機会を制限する/苦痛や不快をもたらす/自己管理に影響する」ものに限る

🔴同じ行動でも、置かれている欄が違います。

🔴 ASHAは「そう見えること」と「支援を検討すること」を分けています

ASHAの自閉症のページは、領域ごとに二つの見出しを立てる書き方をしています。

見出し意味
“might look like”(そう見えることがある)自閉症の人によく見られるあらわれ方それ自体は支援の必要を意味しません
“might require skilled services”(専門的な支援を要しうる)専門職の関わりを検討する状況
行動と感情の欄に並んでいるもの(“そう見えることがある”)
・泣いている友達を見て一緒に泣くふりをする
🔴・stimming(自己刺激)や没頭と考えられる反復的な行動・興味・活動のパターン——自傷行動は含まない(Kapp et al., 2019)
・返答が求められる場面で音声言語を使わないこと
・音声言語が出にくくなったときに、部分的にAACを使うこと
🔴・強い感情を感じているときに、自分から好きな調整の活動を始めること

——最後の一つは、明らかに「力」として書かれています。
気持ちを立て直すために、自分で何かを始める。それも、この欄に並んでいます。
🔴🔴 支援を検討する三つの目安
反復的な行動・興味・活動のうち、専門的な支援を検討するものとしてASHAが挙げているのは、次に当てはまるものです——

① 機会を制限する(restrict opportunities)
② 苦痛や不快をもたらす(contribute to distress or discomfort)
③ 自己管理に影響する(impact self-management)

🔴三つに「回数の多さ」も「目立ちやすさ」も入っていません。
見るのはその子にとってどうかです。

🔴🔴 自傷行動は、分けて扱われています

ASHAの記述で、はっきりしているのはここです。

ASHAより
「……stimming や没頭と考えられる反復的な行動・興味・活動のパターン——自傷行動は含まない(Kapp et al., 2019)
🔴 だから、この記事も分けます
頭を打ちつける、身体を傷つける、強く噛むといった行動は、この記事の範囲ではありません。

けがにつながる行動が見られるときは、医療機関にご相談ください。

これは「自己刺激行動が心配ない」という意味ではなく、学会が別のものとして書いているので、この記事も同じように分けて扱うという意味です。

感覚の側から見ると

ASHAは、感覚のあらわれ方を三つのパターンで記述しています。

ASHAより(専門的な支援を検討しうる欄)
感覚の様式に関する困難——環境の音・におい・光・触覚の刺激・動き・視覚的な雑然さ・社会的な刺激(人との接触、他者との距離、声)に対する過剰反応(over-responsiveness)低反応(under-responsiveness)、または混合したパターン(mixed responsiveness)

🔴 いちばん誤解されやすいのは「低反応」です。呼んでも振り向かない、痛みに気づきにくい、といった様子は無視・がまん強い・だらしない・やる気がないと見られることがあります(→感覚過敏とは?呼んでも振り向かないとき)。

国のガイドラインが書いていること
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、本人支援の「運動・感覚」領域に<感覚の特性への対応>という項目を置いています——

「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。」

🔴「環境調整等の支援」と書かれています。行動をやめさせることではなく、環境の側を調整することが支援内容として挙げられています(→環境調整とは?)。

環境の側でできること

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、環境について支援する側の義務の形で書いています。

ガイドラインより
「事業所等は、……次の事項に留意しつつ、計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない。」

そこに挙げられているもの——
こどもによる選択ができるよう配慮すること
温かで、親しみやすく、くつろげる場時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えること

見るとよいこと

  1. いつ増えるか——場面・時間帯・人の多さ・音の大きさを、日付つきで書き留める
  2. いつ減るか——落ち着いている場面には、環境の手がかりがあります
  3. そのあとどうなるか——ASHAは「強い感情を感じているときに自分から好きな調整の活動を始めること」を挙げています。立て直しに役立っている可能性があります
  4. 三つの目安に当てはまるか——機会を制限する/苦痛や不快をもたらす/自己管理に影響する
  5. けがにつながる行動があるか——ある場合は、医療機関へ
🔴 記録は「解釈をつけずに」
「落ち着きがない」ではなく「音楽の時間の後半15分で手をひらひらさせた」

解釈を足さない記録は、園・学校・事業所・医療機関のどこに出しても、そのまま使えます。

園や学校に伝えるとき

配慮の提供は、法律上本人・保護者の側から言い出したときに始まります(障害者差別解消法 第7条第2項・第8条第2項=「その旨の意思の表明があった場合において」)。

伝えることそう言える根拠
いつ増えて、いつ減るか国のガイドラインは「感覚の偏りに対する環境調整等の支援」を支援内容に挙げています
やめさせる以外の案同ガイドラインは環境について「計画的に環境を整え、工夫して……行わなければならない」としています
落ち着くために役立っているように見えるかASHAは「強い感情を感じているときに自分から好きな調整の活動を始めること」“そう見えることがある”の欄に挙げています
困っているのは誰かASHAの三つの目安は本人にとってどうかを基準にしています
🔴 まわりへの説明について
「ほかの子が気にするので」という理由で行動を止める判断は、三つの目安のどれにも当たりません。

ASHAは、自閉症について「自閉症についての地域社会の認識の乏しさと、自閉スペクトラムの人と関わる機会の不足が、行動の誤解や誤った受け取り方につながることがある」とも書いています。

——どう説明するかは、園や学校とのご相談になります。

この記事で書かないこと

行動を減らす方法・訓練・その効果は書きません。確認できた一次情報にその記述がないためです。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。

感覚統合の訓練の効果も書きません。一次情報を確認できなかったためです(このシリーズで一貫している判断です)。

自傷行動の対応は書きません。ASHAが「自傷行動は含まない」と分けて書いており、この記事の範囲を超えるためです。けがにつながる行動が見られるときは、医療機関にご相談ください。

診断基準・チェックリストも書きません。診断は医師が行うものです。

どこに相談すればいいか

相談先何のため
小児科・児童精神科など🔴けがにつながる行動があるとき。診断に関する判断。療育は医療ではありません
園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター)場面の共有、環境の調整。合理的配慮は「意思の表明があった場合」に始まります
作業療法士のいる機関感覚と身体の使い方の側から
通っている児童発達支援・放課後等デイサービス計画の見直し(→モニタリングとは?
発達障害者支援センター発達障害者支援法 第14条。年齢で切られず、家族その他の関係者も相談できます
親の会・ペアレントメンター同じ立場の人とつながる

※本記事は一般的な情報提供です。診断に関する判断は医師などの専門機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

自己刺激行動は、やめさせたほうがよいのでしょうか?
ASHAは、stimming と考えられる反復的なパターンを“そう見えることがある”の欄に置いています。専門的な支援を検討する目安は①機会を制限する ②苦痛や不快をもたらす ③自己管理に影響するの三つで、🔴「回数の多さ」も「目立ちやすさ」も入っていません。
自傷行動も、同じものですか?
ASHAは分けて書いています——「stimming や没頭と考えられる反復的なパターン。自傷行動は含まない」(Kapp et al., 2019)。けがにつながる行動が見られるときは、医療機関にご相談ください。
落ち着くためにやっているように見えます
ASHAは“そう見えることがある”の欄に「強い感情を感じているときに、自分から好きな調整の活動を始めること」を挙げています。立て直しに役立っている可能性があります。
感覚と関係がありますか?
ASHAは感覚のあらわれ方を過剰反応・低反応・混合したパターンの三つで記述しています。こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインも「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う」としています。
園から「気になる」と言われました
国のガイドラインは環境について「計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない」としています。いつ増えて、いつ減るかを日付つきで書き留めて共有すると、環境の側の案を一緒に探しやすくなります。
ほかの子が気にするので、と言われました
ASHAの三つの目安は本人にとってどうかを基準にしています。また、ASHAは「自閉症についての地域社会の認識の乏しさと、関わる機会の不足が、行動の誤解や誤った受け取り方につながることがある」とも書いています。どう説明するかは、園や学校とのご相談になります。
どんな記録をつけるとよいですか?
解釈をつけずに——「落ち着きがない」ではなく「音楽の時間の後半15分で手をひらひらさせた」のように。いつ増えるか/いつ減るか/そのあとどうなるかの三つがあると、どこに出してもそのまま使えます。
感覚統合の訓練は効きますか?
この記事では効果を書きません。一次情報を確認できなかったためです。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
診断がないのですが、相談できますか?
発達障害者支援法 第14条の発達障害者支援センターは、対象を年齢や診断の有無で限定しておらず、家族その他の関係者も相談の対象としています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。