🔴🔴 「療育に通うこと」と「園で過ごすこと」は、対立していません
第26条の3の条文を、もう一度ゆっくり読んでみます。
条文の構造
「障害児が指定児童発達支援を利用することにより、地域の保育、教育等の支援を受けることができるようにすることで」——
療育を利用することが、
手段として書かれています。
そして
目的は
「地域の保育、教育等の支援を受けることができるようにする」こと。
🔴
療育に通うことは、園や地域から離れることとしては条文に書かれていません。むしろ逆向きです。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインも、同じ向きで書いています。
児童発達支援ガイドラインより
「事業所等は、障害児支援だけでなく、こども施策全体の中での連続性を意識し、こどもの育ちと個別のニーズを共に保障した上で、地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の推進の観点を常に持ちながら、こどもや家族の意向も踏まえ、保育所、認定こども園、幼稚園等の一般のこども施策との併行利用や移行に向けた支援や、地域で暮らす他のこどもとの交流などの取組を進めていくことが求められる。」🔴
「共に保障した上で」——個別のニーズか、みんなと一緒か、の二択にはなっていません。
実際に、園と児童発達支援を併行して利用することは制度上できる形です(→併行利用について)。
保育について、法律が書いていること
🔴🔴 発達障害者支援法 第7条(保育)
「市町村は、児童福祉法第二十四条第一項の規定により保育所における保育を行う場合又は同条第二項の規定による必要な保育を確保するための措置を講じる場合は、発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする。」🔴
「他の児童と共に生活することを通じて」——共に生活することが、
発達が図られる道すじとして条文に書かれています。
そして主語は
「市町村は」。園だけの話ではありません。
また障害者基本法 第16条第1項は、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」としています。同条第2項は保護者への十分な情報提供と可能な限りその意向を尊重することを定めています。
保育の内容そのものについては、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第35条が「保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とし、その内容については、内閣総理大臣が定める指針に従う」としています。同 第36条は、保育所の長が「常に入所している乳幼児の保護者と密接な連絡をとり」理解と協力を得るよう努めなければならないと定めています。
園に、専門職が来る制度があります
保育所等訪問支援は、児童福祉法に定義された障害児通所支援の一つです。その定義の中身が、まさにこの記事の主題と重なります。
児童福祉法 第6条の2の2(保育所等訪問支援)
「保育所その他の児童が集団生活を営む施設として内閣府令で定めるものに通う障害児……につき、当該施設を訪問し、当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与することをいう。」🔴
「障害児以外の児童との集団生活への適応のための」——条文が、
ほかの子どもたちと一緒に過ごすことを支援の目的としてはっきり書いています。
同じ第6条の2の2は、児童発達支援についても「日常生活における基本的な動作及び知識技能の習得並びに集団生活への適応のための支援」と定義しています。集団生活への適応という言葉が、両方に入っています。
使い方
保育所等訪問支援は、
支給決定を受けて利用する制度です。
・窓口=
お住まいの市区町村の障害福祉担当・設計を手伝う人=
相談支援専門員・訪問先=
通っている保育所・幼稚園・認定こども園など詳しくは→
保育所等訪問支援とは?
「移行支援」という考え方
こども家庭庁のガイドラインは、移行支援を支援の柱の一つとして位置づけています。
児童発達支援ガイドラインより
「地域社会で生活する平等の権利の享受と、地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の考え方に立ち、全てのこどもが共に成長できるよう、障害のあるこどもが、可能な限り、地域の保育、教育等を享受し、その中で適切な支援を受けられるようにしていくことや、同年代のこどもをはじめとした地域における仲間づくりを図っていくことが必要である。」そして——
🔴
「現時点で特段の具体的な移行先がない場合は、こどもが地域で暮らす他のこどもと繋がりながら日常生活を送ることができるように支援を提供する」——
移行先が決まってから始めるものとは書かれていません(→
移行支援とは?)。
さらに、計画の作成にも同じ観点が入っています。指定基準省令 第27条第4項は、児童発達支援計画の原案に「……第26条第4項に規定する領域との関連性及びインクルージョンの観点を踏まえた指定児童発達支援の具体的内容」を記載しなければならないとしています(→個別支援計画とは?)。
面談で聞けること
「計画の中で、インクルージョンの観点はどこに書かれていますか」——これは、省令に根拠のある問いです。
あわせて
「園と情報を共有していただけますか」も、ガイドラインが移行支援として挙げている内容です。
園と話すときに、整理しておくとよいこと
こども家庭庁のガイドラインは、支援を行うにあたっての環境について「しなければならない」という書き方をしている部分があります。子どもを場に合わせるのではなく、場のほうを整えるという向きです。
- 時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること
- 不安な気持ちを落ち着かせる環境
- こどもによる選択
この三つは、そのまま園との話し合いの材料になります。
- 困っている場面を特定する——朝の会、着替え、給食、外遊びからの切り替えなど
- そのとき何が起きているかを、解釈をつけずに書き留める——日付と場面つきで
- うまくいっている方法を伝える——家庭や事業所で合っていた形を、再現できる形で
- 環境の側でできることを一緒に探す——見通しの示し方、順番、場所、人
- いつ見直すかを決める——「一学期試して面談で見直す」と期限を添える
🔴 「他の子と同じにできるか」を目標にしない
ガイドラインは、遊びの育ちを
一人遊び → 並行遊び → 大人が介入して行う連合的な遊び → 協同遊びという順で記述し、参加については
「こどもの希望に応じて」という言い方をしています。
——
入れないのではなく、
途中という捉え方です(→
集団に入れないとき)。
この記事で書かないこと
加配の基準・人数・申請の方法は書きません。配置は自治体の制度として運用されており、全国共通の基準を確認できなかったためです。
園ごとの受け入れ体制や、園の選び方も書きません。地域と園によって大きく異なり、またどの園が向いているかを判断できる一次情報がないためです。
「一緒に過ごせば、どうなるか」も書きません。発達障害者支援法 第7条は「他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めていますが、個々の子どもに何が起きるかを保証する記述ではありません。
書けるのは、法令と国のガイドラインが何を求めているかと、使える制度がどこにあるかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 通っている園(担任・主任) | 困っている場面の共有、環境の調整、見直しの時期 |
| 市区町村の保育の窓口 | 入園・転園、加配の仕組み。自治体により大きく異なります |
| 市区町村の障害福祉の窓口 | 保育所等訪問支援・児童発達支援の支給決定 |
| 相談支援専門員 | 併行利用の設計、園と事業所の連絡調整 |
| 通っている児童発達支援 | 計画に書かれたインクルージョンの観点、園への情報共有 |
| 発達障害者支援センター | 園との調整に関する相談 |
※本記事は一般的な情報提供です。加配・保育所等訪問支援の運用は自治体により大きく異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
「インクルーシブ保育」は法律用語ですか?
いいえ。ただし「インクルージョン」は省令上の定義語です。児童発達支援の指定基準省令 第26条の3が「障害児の地域社会への参加及び包摂(以下「インクルージョン」という。)」と定義し、その推進に努めなければならないとしています。
療育に通うと、園から離れてしまいませんか?
条文はむしろ逆向きに書かれています。指定基準省令 第26条の3は「障害児が指定児童発達支援を利用することにより、地域の保育、教育等の支援を受けることができるようにすることで」インクルージョンを推進するとしています。園と併行して利用することもできます。
園に、専門職が来てもらうことはできますか?
保育所等訪問支援という制度があります。児童福祉法 第6条の2の2は、その内容を「当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援」と定義しています。窓口は市区町村の障害福祉担当です。
園に配慮をお願いする根拠はありますか?
発達障害者支援法 第7条は、市町村が保育を行う場合に「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めています。また障害者基本法 第16条第1項は「可能な限り……共に」としています。
加配はつけてもらえますか?
この記事では書きません。配置は自治体の制度として運用されており、全国共通の基準を確認できなかったためです。市区町村の保育の窓口にご確認ください。
集団に入れないのですが、無理に入れたほうがよいのでしょうか?
こども家庭庁のガイドラインは、遊びの育ちを一人遊び→並行遊び→大人が介入して行う連合的な遊び→協同遊びと記述し、参加については「こどもの希望に応じて」としています。入れないのではなく途中、という捉え方が国の文書には書かれています。
移行先が決まっていないと、移行支援は始まりませんか?
いいえ。児童発達支援ガイドラインは「現時点で特段の具体的な移行先がない場合は、こどもが地域で暮らす他のこどもと繋がりながら日常生活を送ることができるように支援を提供する」としています。
計画に、園のことは書かれますか?
指定基準省令 第27条第4項は、児童発達支援計画の原案に「領域との関連性及びインクルージョンの観点を踏まえた……具体的内容」を記載しなければならないとしています。「インクルージョンの観点はどこに書かれていますか」と尋ねることができます。
園と一緒に過ごせば、発達は進みますか?
この記事では書きません。発達障害者支援法 第7条は「他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めていますが、個々の子どもに何が起きるかを保証する記述ではありません。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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