指差しは「共同注意」の一部として説明されます
ASHAは共同注意を、二人以上が同じ物や出来事に注意を共有することと説明しています。
🔴 大事な一文
ASHAは、
目を合わせないかたちでも、共有された物や活動に注意を向けることがあると記述しています。
例として挙げられているのは、
縄跳びをしている子のそばで、縄を回す——目は合っていなくても、同じ活動を共有している形です。
——
「目を合わせない=共有していない」ではありません(→
共同注意とは?)。
指差しは、この共有を作る手段の一つです。手段が一つではないということが、次の節につながります。
🔴 「手を引く」は、伝えていないのではありません
ASHAの記述
慣習的でないジェスチャー(例=大人の手を取って目的の物へ導く)が、慣習的なジェスチャーよりも先に現れることがある
冷蔵庫の前に大人を連れていく、大人の手をつかんでおもちゃに当てる——こうした行動は「伝えていない」のではなく、慣習的でない手段で伝えていると読めます。
| 行動 | 見え方 | 読み方 |
| 大人の手を引いていく | 「言えばいいのに」 | 要求を伝えている(慣習的でない手段で) |
| 物を持ってくる | 「渡してくるだけ」 | やってほしいことを伝えている |
| 物のほうへ体を向ける・近づく | 「勝手に動く」 | 行き先を示している |
| 声を出しながら見る | 「意味のない声」 | 注意を向けさせようとしている |
だから、まず「今ある手段」を数えます
指差しが出ているかどうかだけを見ると、
すでにできていることが見えなくなります。
大人を連れていく、物を持ってくる、体を向ける、声を出す——
いま何本の手段を持っているかを数えてみてください。
数が増えているかどうかが、いちばん役に立つ情報です。
※この表は考えるための手がかりであり、診断の基準ではありません。診断は医師が行います。
国のガイドラインも、指差しを「手段」として並べています
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、「言語・コミュニケーション」領域の支援内容としてこう書いています。
原文
「<コミュニケーション手段の選択と活用>・指差し、身振り、サイン等の活用——指差し、身振り、サイン等を用いて、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する」そして共同注意についても、こう書かれています——
「個々に配慮された場面における人との相互作用を通して、相手と同じものに注意を向け、その行動や意図を理解・推測するといった共同注意の獲得等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援を行う」
指差しは身振り・サインと並べて書かれています。唯一の手段ではないという前提です。
ことば以外の手段については、こちらにまとめています(→AACとは?・マカトン法とは?)。
家庭でできること
- 今ある手段を数える——大人を連れていく、物を持ってくる、声を出す、視線を向ける。指差し以外を「無い」に数えない。
- 手が届かない場所に置く——ただし見える場所に。伝える必要が生まれます。無理のない範囲で。
- 間をあける——先回りして出さず、少し待ちます。待つことが、伝える機会になります。
- 大人が指を差してみせる——本人にさせるのではなく、こちらが使ってみせる。国のガイドラインが挙げるのは「支援する」であって「させる」ではありません。
- 差した先を見て、ことばにする——「わんわんだね」。指差しの意味は、相手が応えることで育ちます。
- 手を引かれたら、応じたうえでことばを添える——連れていかれた先で「ジュース、ほしいのね」。手段を否定しないで、ことばを重ねます。
やらせる練習にしないこと
「はい、指差しして」を繰り返すと、
やりとりが練習の時間になってしまうことがあります。
ASHAは、話しことばの支援について
焦点化された刺激——
子どもには一度も返答を求めない形で対象のことばを繰り返し聞かせる方法——を記述しています。
「言わせない/させない」ことが、確立した方法として存在します(→
言語聴覚士の個別支援では何をする?)。
気になるときに、確かめておきたいこと
- 聞こえ——呼びかけに気づいているか。まず耳鼻咽喉科へ(→聞こえの検査)
- 見え方——遠くの物を見ているか
- 手の使いにくさ——ASHAは、道具が要らないAAC(サインなど)がある程度の運動のコントロールを要することに触れています(→固有覚とは?)
- ことばの理解——聞いて分かっているか(→ことばの理解がゆっくり)
健診の間隔にも注意してください
母子保健法第12条が定める健康診査は
1歳6か月児と3歳児で、あいだにおよそ1年半の間隔があります。
気になることが出てきたときに、
次の健診を待つ必要はありません。区市町村の発達相談窓口は、健診とは別に使えます。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 耳鼻咽喉科 | まず聞こえの確認 |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの手前のやりとりも対象領域です |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず。健診を待たなくてかまいません |
| 児童発達支援 | 「言語・コミュニケーション」は国のガイドラインが定める五つの支援領域の一つです |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
指差しをしないと、ことばが出ませんか?
そうとは書かれていません。ASHAは、慣習的でないジェスチャー(大人の手を取って目的の物へ導くなど)が、慣習的なジェスチャーよりも先に現れることがあると記述しています。指差し以外の手段で伝えていることがあります。
大人の手を引いて連れていきます。これはよくないことですか?
伝えている行動として読めます。否定せず、連れていかれた先でことばを添える(「ジュース、ほしいのね」)ことをおすすめします。
目が合わないのも心配です
ASHAは、共同注意について目を合わせないかたちでも、共有された物や活動に注意を向けることがあると記述しています。例として、縄跳びをしている子のそばで縄を回す形が挙げられています。
「指差しして」と練習させたほうがいいですか?
やらせる練習にしないほうがよいと考えられます。ASHAは、話しことばの支援として焦点化された刺激——子どもには一度も返答を求めない形で対象のことばを聞かせる方法——を記述しています。「させない」方法が確立して存在します。
大人が指を差してみせるのは意味がありますか?
国のガイドラインは「指差し、身振り、サイン等を用いて、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する」としています。支援する側が使うことも、その中に含まれる形で書かれています。
次の健診まで待ったほうがいいですか?
待つ必要はありません。母子保健法第12条の健康診査は1歳6か月児と3歳児で、あいだにおよそ1年半の間隔があります。区市町村の発達相談窓口は、健診とは別に、無料で使えます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。