「ことばが遅い」は感覚の話に聞こえますが、研究では広く使われてきた目安があります。
「2語文」とは、「わんわん いた」「ママ きて」のように、2つのことばをつなげた言い方のことです。
ASHAは、この目安を定期的に(たとえば6か月ごとに)見直すことが不可欠だとしています。また、語彙が増えていく速さ、音の発達、文法の芽生えなども合わせて見る必要があるとされています。
※これは診断の基準ではなく、研究で広く使われてきた目安です。ことばの育ちには大きな個人差があります。
先に、安心していただける数字からお伝えします。
つまり「様子を見ましょう」という言葉には、根拠があります。半分以上の子は、時間とともに追いついていきます。ことばが遅いというだけで、すぐに何か大きな問題があると考える必要はありません。
同時に、こちらの数字もあります。
| 7歳の時点で言語の障害があった割合 | 割合 |
|---|---|
| ことばの出はじめが遅かった子 | 20%(5人に1人) |
| そうでなかった子(対照群) | 11% |
Rice et al.(2008)の報告です。およそ2倍の差がありますが、言いかえれば5人のうち4人は、7歳の時点で言語の障害はなかったということでもあります。
この2つの数字を並べると、正直なところが見えてきます。「大丈夫ですよ」とも「大変です」とも、言い切れない——それが今わかっていることです。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
これが「様子を見ましょう」の限界です。様子を見ている間、その子がどちらなのかは、誰にもわかりません。見分けられるのは、時間が経ってからです。
だからこそASHAは、6か月ごとに見直すことを求めています。「待つ」のではなく、今の状態を記録して、期間を決めて確かめ直す——これが、様子を見ることの本来の意味です。
「様子を見ましょう」と言われたときに、「いつ、何をもって見直しますか」と確認しておくと、そのあとが変わります。
ASHAは、ことばの出はじめが遅い状態を2つのタイプに分けて説明しています。
| タイプ | 状態 | 報告されている経過 |
|---|---|---|
| 表出のみ遅い | 話すことばが少ない。聞いて理解する力は年齢の範囲内 | 比較的、経過が良いとされる |
| 表出も理解も遅い | 話すことばが少なく、聞いて理解する力にも遅れがある | 理解が正常範囲の子に比べ、経過がよくないと報告されている(Marchman & Fernald, 2013) |
家庭で見るときの手がかりです。
身ぶりや場面の流れで通じているのか、ことばそのものが通じているのか——ここが分かれ目です。気になる場合は、早めに調べる意味が大きくなります。
ASHAは、追いついていった子どもたちについて、初期の違いを示唆する研究も紹介しています。
そのひとつが、追いついた子は、伝えるための身ぶり(コミュニケーションのジェスチャー)をより多く使っていたという報告です。
つまり、ことばは出ていなくても「伝えよう」としているかが、ひとつの見どころになります。
伝えようとする気持ちが育っている子には、その手段を増やす方法があります。AAC(拡大・代替コミュニケーション)やマカトン法は、まさにその考え方にもとづく方法です。これらを使っても、話さなくなることはないと研究で示されています。
ASHAは、ことばの出はじめが遅いときの見立てにあたって、聴力の問題を考慮し、あわせて認知・コミュニケーション・感覚・運動といった全般的な発達を見ていくことを挙げています。
聞こえていなければ、ことばは入っていきません。生まれつきのものだけでなく、中耳炎のあとなど、一時的に聞こえにくくなっていることもあります。
こうした様子があるときは、耳鼻咽喉科にご相談ください。聞こえの確認は、ことばの相談の順番として先に来ます。
ASHAは、研究で提案されているリスク要因として、次のようなものを挙げています。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 性別 | 男の子は女の子より、ことばの出はじめが遅くなる割合が高いとされています |
| 運動の発達 | 運動の障害や症候群がない場合でも、運動発達がゆっくりだったという報告があります |
※リスク要因があるからといって、必ずそうなるわけではありません。研究上の傾向として報告されているものです。
また、ことばの出はじめの遅れは、社会的コミュニケーション症、自閉スペクトラム症、知的発達症、学習障害、注意欠如・多動症など、ほかの状態として明らかになっていくことがある、ともされています。だからこそ、全般的な発達をあわせて見ていくことが大切だという文脈で書かれています。
※これは可能性の説明であり、診断ではありません。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。
日本には、法律で定められた健康診査があります。
つまり1歳6か月児健診と3歳児健診は、市町村の法律上の義務です。必ず機会があります。
| 時期 | 位置づけ | ことばの目安との関係 |
|---|---|---|
| 1歳6か月児健診 | 母子保健法 第12条第1号 | 「2歳で50語・2語文」の目安の半年ほど手前 |
| (この間 約1年半) | —— | ここが空きます。気になることがあれば、健診を待たずに相談できます |
| 3歳児健診 | 母子保健法 第12条第2号 | 目安の時期から1年後 |
気をつけたいのは、1歳6か月児健診と3歳児健診のあいだが、約1年半あくことです。「2歳で50語・2語文」の目安は、ちょうどこの空白の中に入ります。
健診を待つ必要はありません。お住まいの区市町村には、子どもの発達について相談できる窓口があります。東京23区の窓口は東京23区の申請窓口 一覧・比較にまとめています。
記録があると、相談したときの話がまったく変わります。「なんとなく遅い気がする」ではなく、「2歳0か月で30語、2歳6か月で45語」と言えれば、専門職はそこから見立てを始められます。
| 相談先 | できること |
|---|---|
| 区市町村の発達相談窓口・保健センター | 無料で相談できます。必要に応じて専門機関につないでもらえます |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの検査・評価と、それにもとづく助言・指導。国家資格です |
| 耳鼻咽喉科 | 聞こえの確認 |
| 小児科・児童精神科 | 医学的な診断が必要な場合 |
言語聴覚士については言語聴覚士(ST)とは?で、作業療法士・理学療法士との違いはST・OT・PTの違いで説明しています。
最後にもう一度。ことばの出はじめが遅かった子の50〜70%は、追いついていきます。けれども、どちらになるかは、あとからしかわかりません。だから「待つ」のではなく、「記録して、期間を決めて見直す」——それがいまわかっている、いちばん確かなやり方です。
※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。