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💬 ことばの困りごと

ことばが出ない・遅い気がする——「様子を見ましょう」でいいのか

最終更新:2026年9月3日
「ことばが遅い気がする」と相談すると、「様子を見ましょう」と言われることがあります。この言葉に、ほっとする方と、もやもやが残る方がいます。

この記事では、数字で正直にお答えします。「様子を見ましょう」が当たっている割合、当たらない割合、そしてどちらになるかが事前にはわからないという、いちばん大事な点まで。米国言語聴覚学会(ASHA)が公開している研究の整理と、母子保健法の条文にもとづいています。

まず、目安の数字があります

「ことばが遅い」は感覚の話に聞こえますが、研究では広く使われてきた目安があります。

研究で広く使われてきた目安
2歳(24か月)の時点で、話せることばが50語未満で、2語をつなげた言い方(2語文)が出ていない。

ASHAは、この基準が「ことばの出はじめが遅い状態(Late Language Emergence)」の目安として広く使われてきたものだと紹介しています(Paul, 1991/Rescorla, 1989)。

「2語文」とは、「わんわん いた」「ママ きて」のように、2つのことばをつなげた言い方のことです。

ASHAは、この目安を定期的に(たとえば6か月ごとに)見直すことが不可欠だとしています。また、語彙が増えていく速さ、音の発達、文法の芽生えなども合わせて見る必要があるとされています。

※これは診断の基準ではなく、研究で広く使われてきた目安です。ことばの育ちには大きな個人差があります。

「様子を見ましょう」は、半分以上の子には当たっています

先に、安心していただける数字からお伝えします。

報告されている経過
ことばの出はじめが遅かった子どものうち、およそ50〜70%は、就学前後までに周りの子に追いつき、通常の言語発達を示すと報告されています(Dale et al., 2003/Paul et al., 1996)。

つまり「様子を見ましょう」という言葉には、根拠があります。半分以上の子は、時間とともに追いついていきます。ことばが遅いというだけで、すぐに何か大きな問題があると考える必要はありません。

でも、5人に1人には残ります

同時に、こちらの数字もあります。

7歳の時点で言語の障害があった割合割合
ことばの出はじめが遅かった子20%(5人に1人)
そうでなかった子(対照群)11%

Rice et al.(2008)の報告です。およそ2倍の差がありますが、言いかえれば5人のうち4人は、7歳の時点で言語の障害はなかったということでもあります。

この2つの数字を並べると、正直なところが見えてきます。「大丈夫ですよ」とも「大変です」とも、言い切れない——それが今わかっていることです。

🔴 追いつく子とそうでない子は、「後からしか」わかりません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

ASHAの記載
追いついていく子(late bloomers)と、そうでない子を、始まりの時点で見分けることは難しく、この区別は「あとになってから」しかできない——ASHAはそう説明しています。

これが「様子を見ましょう」の限界です。様子を見ている間、その子がどちらなのかは、誰にもわかりません。見分けられるのは、時間が経ってからです。

だからこそASHAは、6か月ごとに見直すことを求めています。「待つ」のではなく、今の状態を記録して、期間を決めて確かめ直す——これが、様子を見ることの本来の意味です。

「様子を見ましょう」と言われたときに、「いつ、何をもって見直しますか」と確認しておくと、そのあとが変わります。

分かれ目になりやすいのは、話すことより「わかること」

ASHAは、ことばの出はじめが遅い状態を2つのタイプに分けて説明しています。

タイプ状態報告されている経過
表出のみ遅い話すことばが少ない。聞いて理解する力は年齢の範囲内比較的、経過が良いとされる
表出も理解も遅い話すことばが少なく、聞いて理解する力にも遅れがある理解が正常範囲の子に比べ、経過がよくないと報告されている(Marchman & Fernald, 2013)
だから「わかっているか」を確かめてください
「話さないけれど、こちらの言うことはわかっているみたい」——多くの保護者がそうおっしゃいます。その根拠を、いちど確かめてみてください。

家庭で見るときの手がかりです。

身ぶりや場面の流れで通じているのか、ことばそのものが通じているのか——ここが分かれ目です。気になる場合は、早めに調べる意味が大きくなります。

もうひとつの手がかり——ことば以外で伝えようとしているか

ASHAは、追いついていった子どもたちについて、初期の違いを示唆する研究も紹介しています。

そのひとつが、追いついた子は、伝えるための身ぶり(コミュニケーションのジェスチャー)をより多く使っていたという報告です。

つまり、ことばは出ていなくても「伝えよう」としているかが、ひとつの見どころになります。

伝えようとする気持ちが育っている子には、その手段を増やす方法があります。AAC(拡大・代替コミュニケーション)マカトン法は、まさにその考え方にもとづく方法です。これらを使っても、話さなくなることはないと研究で示されています。

最初に確かめておきたいこと——聞こえ

ASHAは、ことばの出はじめが遅いときの見立てにあたって、聴力の問題を考慮し、あわせて認知・コミュニケーション・感覚・運動といった全般的な発達を見ていくことを挙げています。

聞こえていなければ、ことばは入っていきません。生まれつきのものだけでなく、中耳炎のあとなど、一時的に聞こえにくくなっていることもあります。

こうした様子があるときは、耳鼻咽喉科にご相談ください。聞こえの確認は、ことばの相談の順番として先に来ます。

研究で挙げられているリスク要因

ASHAは、研究で提案されているリスク要因として、次のようなものを挙げています。

要因内容
性別男の子は女の子より、ことばの出はじめが遅くなる割合が高いとされています
運動の発達運動の障害や症候群がない場合でも、運動発達がゆっくりだったという報告があります

※リスク要因があるからといって、必ずそうなるわけではありません。研究上の傾向として報告されているものです。

また、ことばの出はじめの遅れは、社会的コミュニケーション症、自閉スペクトラム症、知的発達症、学習障害、注意欠如・多動症など、ほかの状態として明らかになっていくことがある、ともされています。だからこそ、全般的な発達をあわせて見ていくことが大切だという文脈で書かれています。

※これは可能性の説明であり、診断ではありません。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。

日本では、いつ相談の機会があるか

日本には、法律で定められた健康診査があります。

母子保健法 第12条(健康診査)
市町村は、次に掲げる者に対し、内閣府令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない
一 満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児
二 満3歳を超え満4歳に達しない幼児

つまり1歳6か月児健診と3歳児健診は、市町村の法律上の義務です。必ず機会があります。

時期位置づけことばの目安との関係
1歳6か月児健診母子保健法 第12条第1号「2歳で50語・2語文」の目安の半年ほど手前
(この間 約1年半)——ここが空きます。気になることがあれば、健診を待たずに相談できます
3歳児健診母子保健法 第12条第2号目安の時期から1年後

気をつけたいのは、1歳6か月児健診と3歳児健診のあいだが、約1年半あくことです。「2歳で50語・2語文」の目安は、ちょうどこの空白の中に入ります。

健診を待つ必要はありません。お住まいの区市町村には、子どもの発達について相談できる窓口があります。東京23区の窓口は東京23区の申請窓口 一覧・比較にまとめています。

今日からできること

  1. 話せることばを、書き出して数える——紙でもスマホのメモでもかまいません。はっきりしない音でも、その子が同じ物に同じ音を使っていれば1語に数えます。
  2. 日付を書いて残す——大事なのは今の数より、これから増えるかどうかです。
  3. 「わかっているか」を書き留める——身ぶりなしで通じた指示、通じなかった指示をメモしておきます。
  4. 聞こえを確かめる——気になる様子があれば耳鼻咽喉科へ。
  5. 6か月後に、もう一度数える——ASHAが求めている見直しの間隔です。増え方が見えます。
  6. 気になったら相談する——健診を待たなくてかまいません。調べた結果「心配はいりません」となることも、大事な結果です。

記録があると、相談したときの話がまったく変わります。「なんとなく遅い気がする」ではなく、「2歳0か月で30語、2歳6か月で45語」と言えれば、専門職はそこから見立てを始められます。

どこに相談すればいいか

相談先できること
区市町村の発達相談窓口・保健センター無料で相談できます。必要に応じて専門機関につないでもらえます
言語聴覚士(ST)ことばの検査・評価と、それにもとづく助言・指導。国家資格です
耳鼻咽喉科聞こえの確認
小児科・児童精神科医学的な診断が必要な場合

言語聴覚士については言語聴覚士(ST)とは?で、作業療法士・理学療法士との違いはST・OT・PTの違いで説明しています。

最後にもう一度。ことばの出はじめが遅かった子の50〜70%は、追いついていきます。けれども、どちらになるかは、あとからしかわかりません。だから「待つ」のではなく、「記録して、期間を決めて見直す」——それがいまわかっている、いちばん確かなやり方です。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

2歳ですが、ことばが20語くらいです。相談したほうがいいですか?
研究で広く使われてきた目安は「2歳で50語未満、かつ2語文が出ていない」です。この目安にあてはまる場合でも、およそ50〜70%の子は就学前後までに追いつくと報告されています。ただし、追いつく子とそうでない子を事前に見分けることはできません。記録をとりながら相談してみることをお勧めします。
「様子を見ましょう」と言われました。待っていいのですか?
ASHAは6か月ごとに見直すことが不可欠だとしています。「様子を見る」は、何もせずに待つことではなく、今の状態を記録して、期間を決めて確かめ直すことです。「いつ、何をもって見直しますか」と確認しておくことをお勧めします。
話さないけれど、言っていることは分かっているようです。大丈夫ですか?
理解が年齢の範囲内であれば、比較的経過が良いとされています。ただし、理解にも遅れがある子は、理解が正常範囲の子より経過がよくないと報告されています(Marchman & Fernald, 2013)。身ぶりや場面の流れで通じているのか、ことばそのものが通じているのか——身ぶりなしの指示が通るかどうかで、いちど確かめてみてください。
男の子だから遅いだけ、と言われました
ASHAは研究上のリスク要因として、男の子は女の子よりことばの出はじめが遅くなる割合が高いことを挙げています。傾向としては事実ですが、だから調べなくてよい理由にはなりません。性別にかかわらず、目安に照らして記録し、見直すことをお勧めします。
絵カードやサインを使うと、話さなくなりませんか?
研究では逆のことが示されています。ASHAは早期のAAC使用が発話とことばの発達を助けうるとしています。また、追いついていった子どもたちは伝えるための身ぶりをより多く使っていたという報告もあります。詳しくはAACとは?をご覧ください。
健診まで待ったほうがいいですか?
待つ必要はありません。母子保健法第12条により1歳6か月児健診と3歳児健診は市町村の義務ですが、この2つの間は約1年半あきます。「2歳で50語・2語文」の目安は、ちょうどその間に入ります。区市町村の発達相談窓口には、健診の時期にかかわらず相談できます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。