言語聴覚士法第2条は、業務をこう定めています。
日本言語聴覚士協会も、STの仕事を「問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行う」と説明しています。
「ことばが出ない」の理由はひとつではありません。聞こえ、口や舌の動き、理解する力、伝えようとする気持ちの育ち——原因が違えば、やることが変わります。だから、練習の前に調べます。
ASHAは、包括的な評価に含まれるものとして、まず生育歴の聴取を挙げています。集める情報は次のとおりです。
| 集めること | 内容 |
|---|---|
| 出生・医療・発達の経過 | 生まれたときの様子、病気やけが、これまでの発達 |
| ご家族の経過 | 家族の中に、認知・発話・言語・読み・学習の困りごとがあったか |
| ご家族の心配 | ご家族が、お子さまのことばについて何を心配しているか |
| 本人から見た得意・苦手 | その子自身が、何が得意で何が苦手だと感じているか |
| 使っている言語 | 使っている言語や方言、いつから触れているか、どんな場面で使うか |
| ことばの覚え方 | ご家族から見て、そのお子さまがどうことばを覚えてきたか |
ASHAは、この評価がご家族・介護者、担任の先生、言語聴覚士、特別支援教育の担当者などの協働で行われるべきものだとしています。STひとりで完結する作業ではありません。
ASHAが紹介している評価方法のひとつに、動的アセスメント(dynamic assessment)があります。
つまり「今できるか」ではなく「教えたら伸びるか」を見るという考え方です。
この方法があるからこそ、一度の検査の点数だけで判断しないことに意味があります。ASHAは、動的アセスメントをほかの評価と組み合わせて使うことで、見立てと今後の見通しを立てる助けになるとしています。
ASHAは、ことばのスクリーニングに含めるものとして「ことばの困難の要因になりうる聴力の低下を除外するための聞こえのスクリーニング」を挙げています。
聞こえていなければ、ことばは入っていきません。聞こえの可能性を外してから、ことばの話に進む——これが評価の順番です。
気になる様子(後ろから呼んでも気づかない、聞き返しが多い、テレビの音を大きくしたがる)があれば、耳鼻咽喉科での確認をお勧めします。
ASHAは、支援の方法が「自然さの連続体(continuum of naturalness)」の上に並ぶと説明しています(Fey, 1986/Paul et al., 2018)。
| 形 | どんな進め方か | 自然さ |
|---|---|---|
| 大人が主導する形 (clinician-directed) | セラピー室で、課題を決めて繰り返す | 低い |
| 中間の形 (hybrid) | とても自然な活動を組み立てながら、その中で目標のことばが自然に出てくる機会をつくる | 中間 |
| 子ども中心の形 (child-centered) | 日常の活動をそのまま模した場面で進める | 高い |
ここは、家庭でいちばん役に立つ部分かもしれません。
ASHAが中間の形の例として挙げている方法のひとつに、焦点化された刺激(focused stimulation)があります。
「もういちど言ってごらん」「これは何?」——つい言ってしまいます。けれども返答を求めないやり方が、方法として確立しているのです。
もうひとつ、広げて・分けて・また広げる(buildups and breakdowns)という方法もあります。
| 段階 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 広げる(buildup) | 子どもの言ったことばを、大人が広げて返す | 子「わんわん」→ 大人「わんわんが いるね」 |
| 分ける(breakdown) | 広げた言い方を、文法のまとまりに分けて示す | 「わんわんが」「いるね」 |
| また広げる | もう一度、広げた形に戻す | 「わんわんが いるね」 |
どちらも共通しているのは、子どもに求めるのではなく、大人が出す回数を増やすという考え方です。
うまくいかないと感じたときは、内容を増やすより場面をひとつに絞るほうが定着しやすくなります。
ASHAは、言語聴覚士の役割の説明の中で、次の点を挙げています。
話しことばの育ちは、就学後の読み書きにつながっていきます。就学前に評価を受けておくことには、そういう意味もあります。
就学後のしくみについては、ことばの教室(通級による指導)とは?で説明しています。
ASHAは、言語聴覚士の役割としてほかの専門職への紹介を明記しています。ほかの状態を除外するため、原因を確かめるため、そして必要なサービスにつなぐためです。
日本の法律でも同じです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 言語聴覚士法 第43条第1項 | 医師、歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない |
| 同 第43条第3項 | 福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない |
「うちの担当ではない」で終わらせないことが、法律にも書かれた仕事の一部です。作業療法士・理学療法士との役割の違いはST・OT・PTの違いにまとめています。
児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区)では、言語聴覚士によるマンツーマンの個別支援と、小集団での般化(お友だちとのやりとりへ広げる練習)を組み合わせています。
般化を分けて考えるのは、訓練の場だけでできても意味がないからです。場所や相手が変わっても使えるようになって、はじめて生活の中で役に立ちます。
見学・ご相談は、診断の有無にかかわらず承っています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。
※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。