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💬 ことばの困りごと

言語聴覚士(ST)の支援では、実際に何をするのか

最終更新:2026年9月3日
「言語聴覚士のところに通うと、ことばの練習をするのですか?」——よくいただくご質問です。

答えは「練習の前に、まず調べます」。これは方針の話ではなく、法律にそう書かれています。この記事では、言語聴覚士法の条文と、米国言語聴覚学会(ASHA)の実践ポータルにもとづいて、評価で何を集めるのか支援はどんな形をとるのか、そして家庭でできることまで説明します。

法律が定める順番——「訓練」の前に「検査」

言語聴覚士法第2条は、業務をこう定めています。

言語聴覚士法 第2条(抜粋)
言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。

日本言語聴覚士協会も、STの仕事を「問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行う」と説明しています。

「ことばが出ない」の理由はひとつではありません。聞こえ、口や舌の動き、理解する力、伝えようとする気持ちの育ち——原因が違えば、やることが変わります。だから、練習の前に調べます。

評価は「テストをする」だけではありません

ASHAは、包括的な評価に含まれるものとして、まず生育歴の聴取を挙げています。集める情報は次のとおりです。

集めること内容
出生・医療・発達の経過生まれたときの様子、病気やけが、これまでの発達
ご家族の経過家族の中に、認知・発話・言語・読み・学習の困りごとがあったか
ご家族の心配ご家族が、お子さまのことばについて何を心配しているか
本人から見た得意・苦手その子自身が、何が得意で何が苦手だと感じているか
使っている言語使っている言語や方言、いつから触れているか、どんな場面で使うか
ことばの覚え方ご家族から見て、そのお子さまがどうことばを覚えてきたか
保護者の話が、評価の材料そのものです
「うまく説明できるか心配」とおっしゃる方がいますが、ご家族が何を心配しているか、そのものが評価に含まれる項目です。整理して話す必要はありません。気になっていることを、そのままお話しください。

日付つきのメモがあれば、なお役に立ちます。

ASHAは、この評価がご家族・介護者、担任の先生、言語聴覚士、特別支援教育の担当者などの協働で行われるべきものだとしています。STひとりで完結する作業ではありません。

🔴 一度の検査で決めない——「教えてみて、もう一度見る」

ASHAが紹介している評価方法のひとつに、動的アセスメント(dynamic assessment)があります。

test(調べる)— teach(教える)— retest(もう一度調べる)
その人の今の力だけでなく、学ぶ可能性(learning potential)を見る方法です。

ASHAは、教えることでことばを変えられる人は「ことばの違い」であることが多く、教えても変えられない人は「ことばの障害」である可能性が高いと説明しています。

つまり「今できるか」ではなく「教えたら伸びるか」を見るという考え方です。

この方法があるからこそ、一度の検査の点数だけで判断しないことに意味があります。ASHAは、動的アセスメントをほかの評価と組み合わせて使うことで、見立てと今後の見通しを立てる助けになるとしています。

聞こえの確認は、評価の入口に入っています

ASHAは、ことばのスクリーニングに含めるものとして「ことばの困難の要因になりうる聴力の低下を除外するための聞こえのスクリーニング」を挙げています。

聞こえていなければ、ことばは入っていきません。聞こえの可能性を外してから、ことばの話に進む——これが評価の順番です。

気になる様子(後ろから呼んでも気づかない、聞き返しが多い、テレビの音を大きくしたがる)があれば、耳鼻咽喉科での確認をお勧めします。

支援の形は「自然さの連続体」の中から選ばれます

ASHAは、支援の方法が「自然さの連続体(continuum of naturalness)」の上に並ぶと説明しています(Fey, 1986/Paul et al., 2018)。

どんな進め方か自然さ
大人が主導する形
(clinician-directed)
セラピー室で、課題を決めて繰り返す低い
中間の形
(hybrid)
とても自然な活動を組み立てながら、その中で目標のことばが自然に出てくる機会をつくる中間
子ども中心の形
(child-centered)
日常の活動をそのまま模した場面で進める高い
遊びの形をとるのは、方法として選んでいるからです
「遊んでいるだけに見える」と言われることがあります。けれども遊びの形は、自然さの連続体の中で意図的に選ばれた方法です。

ASHAは、どの方法が有効かはその子の言語の状態や必要に応じてSTが判断するとしています。遊ばせているのではなく、その子に合う位置を選んでいるということです。

🔴 「言わせない」という、確立した方法があります

ここは、家庭でいちばん役に立つ部分かもしれません。

ASHAが中間の形の例として挙げている方法のひとつに、焦点化された刺激(focused stimulation)があります。

焦点化された刺激(focused stimulation)
大人が、目標のことばを、意味があり役に立つ場面で、高い密度で出す。その場面は、子どもがそのことばを言いたくなるように組み立てられている。

ただし——子どもには、一度も返答を求めない。

「もういちど言ってごらん」「これは何?」——つい言ってしまいます。けれども返答を求めないやり方が、方法として確立しているのです。

もうひとつ、広げて・分けて・また広げる(buildups and breakdowns)という方法もあります。

段階やること
広げる(buildup)子どもの言ったことばを、大人が広げて返す子「わんわん」→ 大人「わんわんが いるね」
分ける(breakdown)広げた言い方を、文法のまとまりに分けて示す「わんわんが」「いるね」
また広げるもう一度、広げた形に戻す「わんわんが いるね」

どちらも共通しているのは、子どもに求めるのではなく、大人が出す回数を増やすという考え方です。

家庭でできること

  1. 「言わせる」をいったんやめてみる——「〇〇は?」「言ってごらん」を控えます。返答を求めない方法が確立しています。
  2. 大人が、同じことばを多く出す——目標にしたいことばを決めて、その場面で繰り返し使います。
  3. 言ったことを、少し広げて返す——「わんわん」→「わんわんが いるね」。1〜2語足すだけで十分です。
  4. 場面を決めて繰り返す——おやつ、お風呂、着替えなど、毎日必ずある場面がやりやすいです。
  5. 記録する——話せることばの数と日付。通じた指示・通じなかった指示。次の相談で、そのまま材料になります。

うまくいかないと感じたときは、内容を増やすより場面をひとつに絞るほうが定着しやすくなります。

知っておきたいこと——読み書きとのつながり

ASHAは、言語聴覚士の役割の説明の中で、次の点を挙げています。

ASHAの記載
話しことばの障害があると判定された子どもは、読み書き(リテラシー)の問題のリスクが高まることを認識しておくこと。

話しことばの育ちは、就学後の読み書きにつながっていきます。就学前に評価を受けておくことには、そういう意味もあります

就学後のしくみについては、ことばの教室(通級による指導)とは?で説明しています。

STの役割には「つなぐこと」も含まれます

ASHAは、言語聴覚士の役割としてほかの専門職への紹介を明記しています。ほかの状態を除外するため、原因を確かめるため、そして必要なサービスにつなぐためです。

日本の法律でも同じです。

条文内容
言語聴覚士法 第43条第1項医師、歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない
同 第43条第3項福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない

「うちの担当ではない」で終わらせないことが、法律にも書かれた仕事の一部です。作業療法士・理学療法士との役割の違いはST・OT・PTの違いにまとめています。

当教室での形

児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区)では、言語聴覚士によるマンツーマンの個別支援と、小集団での般化(お友だちとのやりとりへ広げる練習)を組み合わせています。

般化を分けて考えるのは、訓練の場だけでできても意味がないからです。場所や相手が変わっても使えるようになって、はじめて生活の中で役に立ちます。

見学・ご相談は、診断の有無にかかわらず承っています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、小児科や児童精神科など医療機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

個別支援は週にどれくらいの頻度で受けるのですか?
頻度は、お子さまの様子・受給者証の支給量・ご家庭のご都合により一人ひとり異なります。見学・相談の際に、無理なく続けられる形を一緒に考えます。
親は同席できますか?
教室・プログラムによって形式が異なります。当教室では、家庭での関わりに活かしていただくため、様子の共有やフィードバックを大切にしています。詳しくは見学時にご確認ください。
ことばの検査だけ受けることはできますか?
評価・相談のみのご相談も承っています。田中ビネー知能検査も実施しています。まずはお問い合わせください。
「言ってごらん」と促したほうがいいのでしょうか?
ASHAが紹介している焦点化された刺激(focused stimulation)という方法では、大人が目標のことばを意味のある場面で高い密度で出しますが、子どもには一度も返答を求めません。促すより、大人が使ってみせる回数を増やすほうが方法として確立しています。
遊んでいるだけに見えるのですが、これで良いのですか?
ASHAは、支援の方法が「自然さの連続体」の上に並ぶとしています。セラピー室での課題中心の形から、日常の活動をそのまま模した形まで幅があり、どれを選ぶかはその子の言語の状態や必要に応じて判断されます。遊びの形は、その連続体の中で意図的に選ばれた方法です。
一度の検査で判断されてしまいませんか?
ASHAは動的アセスメント(test–teach–retest)という方法を紹介しています。今の力だけでなく学ぶ可能性を見る方法で、教えることで変えられるかどうかを確かめます。ほかの評価と組み合わせて使われ、一度の点数だけで決めるものではありません。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。