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💬 ことばの困りごと

ことばが遅いとき、なぜ「聞こえの検査」が先なのか——新生児で通っても、あとから起こります

最終更新:2026年9月4日
ことばがゆっくりだと、まず「様子を見ましょう」と言われがちです。

でも、その前に確かめておきたいことがあります。聞こえです。

「生まれたときの検査は通りました」——そう思われた方に、ASHA(米国言語聴覚学会)の一文をお伝えします。

「わずかな難聴、特定の周波数のみの難聴、遅発性の難聴、あるいは進行性の難聴は、新生児聴覚スクリーニングでは把握されないことがある」

🔴 新生児で通っても、あとから起こりうる

ASHAの記述
「Minimal, frequency-specific, late-onset, or progressive hearing loss may not be identified during newborn hearing screenings.(わずかな難聴、特定の周波数のみの難聴、遅発性の難聴、あるいは進行性の難聴は、新生児聴覚スクリーニングでは把握されないことがある)」

あわせてASHAは、「学齢期までに、米国の子どものおよそ15%が何らかの難聴を示す」としています。

つまり「生まれたときに通ったから大丈夫」とは言えないということです。新生児の検査は出発点であって、終わりではありません。

ASHAはまた、聞こえの発見が遅れた場合について次のように述べています——「先天性または後天性の難聴を子どもにおいて見つけられないことは、話しことばと言語の獲得における生涯にわたる不足、学業成績の低下、対人関係の不適応、情緒的な困難につながることがある」

だから「順番」が大事です
ことばがゆっくりなとき、いきなり療育やことばの練習に進むのではなく、まず聞こえを確かめる——という順序には理由があります。

聞こえの問題であれば、手立てがまったく変わるからです。

そしてこの確認は、診断がなくても、心配なだけでもできます。

🔴 日本の新生児聴覚検査は、どこまで届いているか

こども家庭庁は毎年、全国の自治体に対して新生児聴覚検査の実施状況を調査し、公表しています。令和4年度の結果は次のとおりです。

項目こども家庭庁の集計(令和4年度)
受検の割合出生児数に対する受検者数の割合は95.2%(722,165人/758,437人)
公費負担を実施している市区町村80.0%(1,392市区町村)
初回検査を受けられなかった理由(最多)「保護者が必要性を感じず、同意しなかった」26.6%(315市区町村)
同(次点)「児が聴覚検査の機器がない医療機関で生まれた、もしくは自宅分娩だった」13.9%(164市区町村)
要支援児への療育の指導援助を行っている市区町村87.9%(1,530市区町村)
この表の読みどころは二つあります
公費負担がある市区町村は80.0%。裏を返せば、2割の市区町村では公費負担が実施されていません。「うちは自己負担だった」は、地域差です。

受けられなかった理由の最多が「保護者が必要性を感じず、同意しなかった」であること。

——検査があることも、その意味も、十分に伝わっていないという状況が、国の集計に表れています。

こども家庭庁は、新生児聴覚検査の内訳も示しています——初回検査はおおむね生後3日以内、初回検査でリファー(要再検査)となった児を対象とする確認検査はおおむね生後1週間以内に実施するもの、とされています。

※数値は令和4年度の調査結果です。最新の状況はこども家庭庁のページでご確認ください。

耳の状態は、変わることがあります

ASHAは、聞こえの検査で「要再検査」となる背景の一つとして中耳の貯留液を挙げ、貯留液が自然に治まるまでの期間を見込んで6〜8週間の間隔での再検査を勧めています。

「この前は聞こえていたのに」——それは矛盾ではなく、変わりうる状態である場合があります。

聞こえを確かめたほうがよい場面

ASHAは、聞こえのスクリーニングを行う契機として「心配が表明されたとき(保護者、教師など)」を挙げています。心配していること自体が、検査を受ける理由になります。

「聞こえているのに聞き取れない」という状態もあります
耳の聞こえ自体には問題がないのに、聞き取りに困難があるとされる状態については、ASHAが「診断・評価・治療について専門職の間に長年の見解の相違がある」と明記している領域です。

断定的な説明には注意が必要です(→聴覚情報処理(APD)とは?)。

いずれにしても、順番は同じです。まず耳鼻咽喉科で、耳そのものを確かめます。

健診では、いつ聞かれるのか

母子保健法第12条は、市町村が行う健康診査を次のように定めています。

あいだが、約1年半あきます
1歳6か月児健診と3歳児健診のあいだには、およそ1年半の間隔があります。

この間に気になることが出てきたときは、次の健診を待つ必要はありません。耳鼻咽喉科も、区市町村の相談窓口も、健診とは別に使えます。

また発達障害者支援法第5条は、市町村について「母子保健法第12条及び第13条に規定する健康診査を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならない」と定めています。

どこに相談すればいいか

相談先何のため
耳鼻咽喉科まずここ。耳そのものと、聞こえの検査
市区町村の母子保健の窓口健診、新生児聴覚検査の公費負担の有無(自治体によって異なります
言語聴覚士(ST)言語聴覚士法第2条は対象に「又は聴覚」を含みます
区市町村の発達相談窓口無料。診断の有無にかかわらず

※本記事は一般的な情報提供です。聞こえに関する診断・治療は医師が行います。制度・公費負担の内容は自治体により異なります。療育は医療ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

生まれたときの検査に通ったので、大丈夫ですよね?
そうとは言い切れません。ASHAは「わずかな難聴、特定の周波数のみの難聴、遅発性の難聴、あるいは進行性の難聴は、新生児聴覚スクリーニングでは把握されないことがある」と記述しています。気になることがあれば、あらためて耳鼻咽喉科でご確認ください。
なぜ、ことばの相談より先に聞こえなのですか?
聞こえの問題であれば、手立てがまったく変わるためです。ASHAは、難聴を見つけられないことが話しことばと言語の獲得における生涯にわたる不足などにつながりうると記述しています。
新生児聴覚検査は、みんな受けているのですか?
こども家庭庁の令和4年度の集計では、出生児数に対する受検者数の割合は95.2%です。受けられなかった理由として最も多く挙げられたのは「保護者が必要性を感じず、同意しなかった」(26.6%の市区町村)でした。
検査の費用は、公費で出ますか?
自治体によって異なります。こども家庭庁の令和4年度の集計では、公費負担を実施している市区町村は80.0%(1,392市区町村)でした。お住まいの市区町村の母子保健の窓口でご確認ください。
この前は聞こえていたのに、今日は聞こえていない気がします
矛盾ではないことがあります。ASHAは、要再検査となる背景の一つに中耳の貯留液を挙げ、自然に治まるまでを見込んで6〜8週間の間隔での再検査を勧めています。かぜのあとなど、聞こえ方が変わることがあります。
健診まで待ったほうがいいですか?
待つ必要はありません。母子保健法第12条の健康診査は1歳6か月児と3歳児で、あいだにおよそ1年半の間隔があります。ASHAは、スクリーニングを行う契機として「心配が表明されたとき」を挙げています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。