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📖 用語・基礎知識

マカトン法とは?——サインとシンボルで、ことばの育ちを支える

最終更新:2026年9月3日
マカトン法は、話しことばに「サイン」(手の動き)と「シンボル」(線画)を添えて伝える言語指導法です。ことばだけでは伝わりにくいお子さんに、見てわかる手がかりを一緒に届けます。

この記事は、日本マカトン協会が公開している情報にもとづいてまとめています。「サインとジェスチャーは何が違うのか」「家庭でどう始めるか」「どこで正しく学べるのか」まで、順を追って説明します。

サインとシンボル、2つの手がかり

マカトン法では、話しことばと同時に2種類の視覚的な手がかりを使います。どちらも「ことばの代わり」ではなく、ことばと一緒に使うのが特徴です。

何かどう使うか
マカトンサイン手指による動作表現「ちょうだい」と言いながら、手を出す動きを添える。話しことばと同時に出す
マカトンシンボル絵文字のような線画カードを指さす、相手に手渡す。ことばやサインが出しにくいときの表出の手段になる

協会の説明では、サインもシンボルも視覚的な情報であり、ことばの獲得に困難のある方には、絵や物、場所などの視覚的な情報であれば記憶も理解も得意である場合が多く見られるとされています。得意な入力の回路を活かす、という考え方です。

ジェスチャーとサインは、どこが違うのか

ここが、マカトン法を理解するうえでいちばん大切な区別です。

子どもは、ことばが出る前から「バイバイ」(手を振る)や「ごちそうさま」(両手を合わせる)といったジェスチャーを使います。ジェスチャーは、一人ひとりの自由な表現です。

違いはここ
ジェスチャーは自由な表現、サインは動作が決められています。やりとりする人同士が共通して使えるように決められているからこそ、家庭でも園でも事業所でも「同じ意味」で通じます。マカトンサインは、誰でも使いやすいようにシンプルな動作でできています。

協会は、サインは話しことばよりも獲得が容易で、話しことばの前提となることばの概念を育てると説明しています。また、サインを表出の手段として使うことで、コミュニケーションの意欲が育つとされています。

「サインを覚えると、しゃべらなくなるのでは」と心配される方がいますが、協会の説明では、サインはことばの前提となる概念を育てるものと位置づけられています。

330の「核語彙」から選んで使う

マカトン法には、「核(かく)語彙」と呼ばれる330のことばがあります。この330すべてを一度に使うのではなく、その子の発達やニーズに合わせて語彙を選び、生活の中で繰り返し使うことでコミュニケーションを促していきます。

語彙は9つのステージに分かれており、学ぶ側もステージごとに段階を追って習得していきます。

※具体的なサインの動きやシンボルの図は、著作権により転載できません(後述)。実際のサインは、協会のワークショップや、マカトン法を用いている専門職からお受け取りください。

1972年、英国で生まれた

1960年代末の英国で、聴覚障害と知的障害を併せもつ方々のなかに、コミュニケーションがうまく取れないために問題行動が起きたり、引きこもりがちになる人がいることが明らかになりました。

「彼らの胸の内を伝える手段はないものか」——そうした思いから、1972年言語聴覚士であるマーガレット・ウォーカー氏を中心とした研究グループによって、英国サーレー州で開発されたのがマカトン法です。

現在は世界の40か国以上で使われており、日本マカトン協会は英国マカトン協会(The Makaton Charity)の支部として、日本での普及と研究を担っています。

開発したのが言語聴覚士だったという点は、この方法の性格をよく表しています。サインは手話の代わりではなく、ことばを育てるための道具として設計されています。

家庭では、どこから始めるか

協会の考え方にそって言えば、始め方の要点は次の3つです。

  1. よく使うことばを選ぶ——「ちょうだい」「おしまい」「もっと」など、その子の生活で毎日出てくることばから。330すべてを覚える必要はありません。
  2. ことばと同時に出す——サインだけにしないこと。話しことばと一緒に使うのがマカトン法です。
  3. まわりの大人がそろえる——サインは「動作が決められている」ことに意味があります。家族・園・事業所で同じ動きを使えるよう、揃えておくと伝わりやすくなります。

うまくいかないと感じたときは、サインの数を増やすより、使う場面を決めて繰り返すほうが定着しやすいと言われています。「おやつのときの『もっと』だけ」といった形から始めてかまいません。

🔴 正しく学ぶには——講習には資格が要ります

ここは、あまり知られていないけれど大切な点です。

知っておいてください
「マカトン」「MAKATON」は、英国マカトン協会(The Makaton Charity)の登録商標です。著作権所有者の書面による承諾がない限り、マカトン法に関わる出版物の複製・転載・宣伝広告・出版は禁止されています。

また、マカトン法の講習会を開けるのは、協会が認定したチューターおよびコーディネーターだけです。ワークショップを修了しても、講習会を行うことはできません。

つまり、インターネット上でサインの一覧を配布しているようなページは、正規のものではない可能性があります。サインを正確に学びたい場合は、日本マカトン協会のワークショップを受けるのが確実です。

コース内容受講料(協会サイト記載)
基礎1初めての方向け。9つのステージのうちステージ1〜3のサインとシンボル対面 12,100円/オンライン 14,300円(税込)
基礎2基礎1修了者向け。ステージ4・5・9対面 12,100円/オンライン 14,300円(税込)
アドバンス基礎1・2修了者向け。ステージ6〜8と全ステージの再確認14,300円(税込)

このほか、基本的な考え方を知り初歩的なサインとシンボルを体験する2時間のセミナーもあり、こちらはどなたでも参加できます。

※受講料・開催形式は協会サイトの記載(2026年9月3日確認)です。最新の日程・料金は日本マカトン協会の公式サイトでご確認ください。

ほかの方法との位置づけ

マカトン法は、AAC(補助・代替コミュニケーション)の方法のひとつです。AACには絵カードを使うもの、機器を使うものなどいろいろありますが、マカトン法は「話しことばと同時に使う」ことを前提にしている点に特徴があります。

話しことばとの関係主な手段
マカトン法話しことばと同時に使うサイン(手の動き)+シンボル(線画)
PECS絵カードを相手に手渡すことから始める絵カード
視覚支援見通しや手順を伝える幅広い工夫写真・イラスト・文字など

どれが良い・悪いではなく、その子が今どの段階にいるかで選ばれます。迷ったときは、言語聴覚士など、ことばの発達を評価できる専門職に相談してください。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

家庭でも使えますか?
使えます。「ちょうだい」「おしまい」「もっと」など、毎日の生活でよく使うことばに動きを添えるところから始められます。大切なのは話しことばと同時に使うことと、家族の間で同じ動きに揃えることです。
サインを覚えると、話さなくなりませんか?
日本マカトン協会は、サインについて「話しことばよりも獲得が容易で、話しことばの前提となることばの概念を育てる」と説明しています。サインはことばの代わりではなく、ことばと一緒に使うものです。
手話とは違うのですか?
違います。手話は独立した言語ですが、マカトンサインは話しことばに添えて使うことを前提に、誰でも使いやすいシンプルな動作で設計されています。目的も成り立ちも別のものです。
サインの一覧をネットで探してもいいですか?
「マカトン」は英国マカトン協会の登録商標で、マカトン法に関わる出版物の複製・転載は、著作権所有者の書面による承諾がない限り禁止されています。正確なサインは、協会のワークショップか、マカトン法を用いている専門職からお受け取りください。
何歳から使えますか?
年齢で区切られるものではありません。ことばが出る前の段階から使われます。その子の発達やニーズに合わせて330の核語彙から選ぶ、という考え方なので、どのことばから始めるかを専門職と一緒に決めるのが確実です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。