話しことばと読み書きは、つながっています
ASHAは、話しことばの障害について次のように記述しています。
ASHAの記述
「話しことばの障害のある子どもは、読むことと書くことの習得に困難を抱えることが多い」そして、話しことばの障害のある児童生徒には
読み書きの問題のリスクが高まっているという認識が必要だとしています。
ASHAは言語を五つの領域で整理しています。音韻(音のしくみ)・形態(語の形)・統語(文の組み立て)・意味(語彙)・語用(使い方)です(→理解と表出)。
だから、相談先に言語聴覚士が入ります
ASHAは、評価に
読み書き(literacy)を含め、支援の目標にも読み書きを含めています。
読み書きの相談先というと学校や学習塾が思い浮かびますが、
ことばの専門職の対象領域でもあるということです(→
言語聴覚士(ST)とは?)。
とくに、
幼児期にことばがゆっくりだったお子さまの場合、読み書きの入口でつまずくことがある——という順序で見ておく価値があります(→
ことばが遅い)。
🔴 音声教材は、原則無償で提供されています
文部科学省は、発達障害等により、通常の検定教科書で一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な児童生徒に向けて、音声教材を提供しています。
- パソコンやタブレット等の端末を活用して学習する教材
- 原則として無償で提供されます
- 肢体不自由等によりページめくりが困難な児童生徒も対象
- 令和6年7月19日から、日本語指導が必要な児童生徒も対象に加わりました
文部科学省のページには、提供されている音声教材として次のものが挙げられています。
| 音声教材 | 製作 |
| マルチメディアデイジー教科書 | 日本障害者リハビリテーション協会 |
| Access Reading | 東京大学先端科学技術研究センター |
| ペンでタッチすると読める音声付教科書 | 茨城大学 |
| UD-Book教科書・UD-Pdf教科書 | 広島大学 |
| 音声教材BEAM | NPO法人エッジ |
知られていないことが、いちばんの壁です
診断がなくても対象になりうる——文部科学省の記載は「発達障害等により……
認識することが困難な児童生徒」であって、診断名を条件とする書き方にはなっていません。
申請の方法や、学校を通すかどうかは
教材ごと・自治体ごとに異なります。文部科学省のページに提供申請の案内があります。
まず学校(担任・特別支援教育コーディネーター)にお尋ねください。
※提供の可否・手続きは、教材の製作団体や学校・教育委員会の運用によります。最新の内容は文部科学省のページと学校でご確認ください。
🔴 通級は「遅れを取り戻す場」ではありません
学校教育法施行規則第140条は、通級による指導の対象を八つ挙げています。第6号が「学習障害者」です。
そして文部科学省の手引は、通級の内容についてこう明記しています。
原文
通級による指導は
「障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする指導」であり、
特別支援学校の自立活動に相当する指導とされている。
「あくまで障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的として行われることが必要であり、単なる各教科の遅れを補充するための指導とはならないようにしなければなりません」
「通級に行けば勉強が追いつく」という期待とは、位置づけが違います。通級で扱うのは困難そのものへの手立てです(→通級指導教室とは?)。
授業時数は、学習障害者・注意欠陥多動性障害者について年間10単位時間から280単位時間までを標準としています(他の障害は35単位時間から)。月1回程度からでも成り立つ設計です。
国の文書が認めている、指導方法の現状
文部科学省の資料には、次の記載があります。
そのまま引用します
「発達障害の場合、指導方法が十分に確立しているとは言い難い」——文部科学省『発達障害等のある子供達の学びを支える~共生に向けた「学び」の質の向上プラン~』
同じ資料は、通級による指導を受ける児童の割合に都道府県で大きなばらつきがあることも示しています(小学校で、高いところは3%超、低いところは0.4%)。
同じ子でも、住んでいる場所で受けられる指導が違う——国自身が課題として挙げている状況です。
この記事で書かないこと
特定の練習方法が読み書きを改善する、とは書きません。国自身が「指導方法が十分に確立しているとは言い難い」と書いている領域で、効果を断定することはできないためです。
効果がないという意味ではなく、
ここでは判断しないという意味です。
代わりに書けるのは、
制度として用意されているもの(音声教材・通級・合理的配慮)と、
練習をつらい経験にしないための工夫です。
家庭でできること——練習嫌いにさせない
- 「読む」と「分かる」を分ける——読み上げてもらえば内容が分かるなら、内容を学ぶ道は残っています。音声教材は、そのための道具です。
- 量を減らして、終わりを見せる——「3行」「5分」。終わりが見えると、始めやすくなります。
- 書く量と、覚える量を分ける——漢字は「10回書く」ではなく「1回ていねいに+見て確かめる」で足りる子がいます。同じやり方を全員に当てない。
- 道具を変える——マス目の大きさ、鉛筆の濃さ、定規で行を隠す、拡大コピー。道具で解ける部分があります。
- できたところに印をつける——間違いに赤を入れるより、できた字に丸を。受け取る印象がまったく違います。
- 記録する——読めた行数、書けた字。増えているかどうかは記録がないと分かりません。
いちばん守りたいのは、学ぶ気持ちです
読み書きの練習がつらい経験として重なると、
読み書きだけでなく、学ぶこと全体を避けるようになることがあります。
放課後等デイサービスガイドラインは、支援の中で
「成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする」と書いています(→
自己肯定感を守るほめ方)。
学校に相談するとき
学校での配慮は、合理的配慮のしくみで求めることができます。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律は、行政機関等(公立学校を含みます)について次のように定めています。
条文の要点
「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは……必要かつ合理的な配慮をしなければならない」読みどころは二つです。
①
意思の表明が起点——言わないと始まりません
②
負担が過重でないとき——何でも通るわけではなく、話し合って決めるものです
(→
合理的配慮とは?)
- 何が難しいか(読む/書く/写す/時間)を分けて具体的に
- 家庭で効いている工夫を実例で
- お願いしたいこと——音声教材、板書の写真、量の調整、時間の延長、書く代わりの方法
- 音声教材を使えるかを、はっきり尋ねる
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 学校(担任・特別支援教育コーディネーター) | 音声教材、合理的配慮、通級の相談 |
| 教育委員会の教育相談 | 就学・通級・学びの場の相談(→就学相談) |
| 言語聴覚士(ST) | ASHAは評価と支援に読み書きを含めています |
| 小児科・児童精神科 | 診断について知りたいとき |
| 眼科 | 見え方の確認(読みにくさの背景を一つずつ外す) |
※本記事は一般的な情報提供です。診断は医師が行います。制度の運用は自治体・学校により異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
音声教材は、お金がかかりますか?
文部科学省は「原則として無償で提供」と記載しています。申請の方法や学校を通すかどうかは教材ごと・自治体ごとに異なるため、まず学校(担任・特別支援教育コーディネーター)にお尋ねください。
診断がないと、音声教材は使えませんか?
文部科学省の記載は「発達障害等により……文字や図形等を認識することが困難な児童生徒」であり、診断名を条件とする書き方にはなっていません。ただし実際の提供の可否は製作団体や学校・教育委員会の運用によります。学校でご確認ください。
通級に通えば、勉強の遅れは取り戻せますか?
文部科学省の手引は、通級について「単なる各教科の遅れを補充するための指導とはならないようにしなければなりません」と明記しています。通級で扱うのは障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服することです。
ことばの相談と、読み書きの相談は別ですか?
ASHAは「話しことばの障害のある子どもは、読むことと書くことの習得に困難を抱えることが多い」と記述し、評価にも支援にも読み書きを含めています。幼児期にことばがゆっくりだった場合は、あわせて相談する価値があります。
どんな練習をすれば読めるようになりますか?
この記事では、特定の練習方法が改善につながるとは書きません。文部科学省自身が「発達障害の場合、指導方法が十分に確立しているとは言い難い」と書いている領域で、効果を断定することはできないためです。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しない、という意味です。
学校に配慮をお願いするには、どうすればいいですか?
意思を伝えることから始まります。障害者差別解消法は、合理的配慮の提供を「意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないとき」と定めています。何が難しいかを読む/書く/写す/時間に分けて具体的に伝えると、話が進みやすくなります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。