教科書は「代えられる」と法律に書かれています
学校教育法 第34条は、小学校の教科書について定めた条文です。第1項は検定教科書を「使用しなければならない」としていますが、第2項と第3項が、その例外を定めています。
| 項と、その対象 | どこまで代えられるか |
第2項 児童一般(教育の充実を図るため必要があると認められるとき) | 教育課程の一部において |
第3項 文部科学大臣の定める事由により教科用図書を使用して学習することが困難な児童 | 🔴教育課程の全部又は一部において |
🔴 第3項の条文(要点)
「……
視覚障害、発達障害その他の文部科学大臣の定める事由により教科用図書を使用して学習することが困難な児童に対し、
教科用図書に用いられた文字、図形等の拡大又は音声への変換その他の……方法で指導することにより当該児童の
学習上の困難の程度を低減させる必要があると認められるときは、……
教育課程の全部又は一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる。」
——
「拡大」「音声への変換」という手立てが、法律の条文そのものに書かれています。
そして、この「文部科学大臣の定める事由」を具体的に定めているのが学校教育法施行規則 第56条の5第3項で、そこに「視覚障害、発達障害その他の障害」と「日本語に通じないこと」が並んでいます。
「教科書バリアフリー法」という法律もあります
正式名称は「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(平成20年法律第81号)です。
第1条(目的)
「この法律は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の発行の促進を図るとともに、その使用の支援について必要な措置を講ずること等により……もって障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進に資することを目的とする。」
🔴 第7条——ここにも「発達障害」があります
見出しは
「発達障害等のある児童及び生徒が使用する教科用特定図書等に関する調査研究等の推進」。
「国は、発達障害その他の障害のある児童及び生徒であって検定教科用図書等において一般的に使用される文字、図形等を認識することが困難なものが使用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため、必要な調査研究等を推進するものとする。」
第9条——学校の側の義務
小中学校及び高等学校においては、在学する
視覚障害その他の障害のある児童及び生徒が、その障害の状態に応じ、
採択された検定教科用図書等に代えて教科用特定図書等を使用することができるよう、🔴
「必要な配慮をしなければならない。」
拡大教科書・点字教科書のほか、音声教材もこの枠組みの中にあります。文部科学省は音声教材について原則として無償で提供するとしており、対象は発達障害等により文字や図形等の認識が困難な児童生徒などです(詳しくは→読み書きが苦手なとき)。
「ICT支援員」は、子どもにつく人ではありません
ここは、名前から誤解されやすいところです。学校教育法施行規則は、教員以外の職を一文ずつ定義しています。
| 職名(省令の条) | 省令が定める従事の内容 |
情報通信技術支援員 (第65条の5) | 教育活動その他の学校運営における情報通信技術の活用に関する支援に従事する |
特別支援教育支援員 (第65条の6) | 教育上特別の支援を必要とする児童の学習上又は生活上必要な支援に従事する |
🔴 主語が違います
情報通信技術支援員(ICT支援員と呼ばれることが多い職)の条文は
「学校運営における」支援です。機器やネットワークが動くようにする側であって、
個々の子どもの学び方を支える職としては書かれていません。お子さまの学び方の相談は、
担任・特別支援教育コーディネーターが入口になります(→
学習支援員とは?)。
お願いするときの入口
配慮の提供は、法律上本人・保護者の側から言い出したときに始まります。
障害者差別解消法 第7条第2項・第8条第2項
合理的配慮の義務は、条文上
「……その旨の意思の表明があった場合において」始まります。そして
「その実施に伴う負担が過重でないときは」という留保も同じ条文にあります。
🔴
言わなければ始まりません。そして、必ず通るわけでもありません。この二つを、どちらも知っておくのが安全です(→
合理的配慮とは?)。
同法 第5条は環境の整備を別に定めていますが、こちらは努力義務です。個別の配慮(第7条・第8条)とは別の条文だという点は、押さえておくと話が整理できます。
伝えるときに整理しておくとよいこと
- どの場面で、何が起きているか——「板書を写す時間で手が止まる」「音読の順番の前から固まる」など、場面を特定して
- すでにうまくいっている方法——家庭やご利用中の事業所で試して合っていた形を、再現できるように
- 何を使いたいか——拡大、音声への変換、写真での記録、入力の代替など。手立ての名前で伝えると話が早く進みます
- 教科書に代える必要があるか——学校教育法第34条第3項の話になるのか、道具の使用の話なのかを分けて
- いつ見直すか——「一学期試して、面談で見直す」と期限を添える
🔴 「ずるい」と言われないために、と先回りしなくて大丈夫です
国のガイドラインも法律も、
手立ては学びの機会をそろえるためのものとして書かれています。
教科書バリアフリー法 第1条は
「教育の機会均等の趣旨にのっとり」「障害その他の特性の有無にかかわらず……十分な教育を受けることができる」ことを目的として掲げています。
そのうえで、学級全体への説明の仕方は、学校と相談して決めることになります。
「画面の時間」の話とは、分けて考えます
タブレットの話になると、使用時間の心配が一緒に出てくることがあります。ただし、この二つは別の話です。
| 位置づけ |
| 学びの手立てとしてのICT | 学校教育法 第34条第3項・教科書バリアフリー法。学習上の困難の程度を低減させるためのもの |
| 余暇としての画面の時間 | 家庭での過ごし方の話。別の判断になります |
🔴 学齢期の推奨時間は「書きません」
世界保健機関(WHO)の2019年のガイドラインは
5歳未満を対象としたもので、学齢期の推奨値ではありません。
確認できた一次情報に学齢期の目安がないため、
この記事では時間の目安を書きません。過ごし方については→
ゲーム・動画がやめられないとき
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインは、こどもが主体的に参画できる活動として「こどもとともに……過ごし方のルールをつくったりする」ことを挙げています。大人が決めて渡すのではなく一緒に作る、という書き方です。
この記事で書かないこと
具体的な機器・アプリ・ソフトの名前は書きません。学校や自治体で導入されているものが異なり、また特定の製品の効果について確認できた一次情報がないためです。
「ICTを使えば読み書きの困難が解消するか」も書きません。法令が定めているのは「学習上の困難の程度を低減させる必要があると認められるとき」に教科書に代えられる、というところまでです。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
学齢期の画面の時間の目安も書きません(上記のとおりです)。
書けるのは、法令に何が書かれているかと、相談の入口がどこにあるかまでです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 担任・特別支援教育コーディネーター | 授業での手立て、教科書に代わる教材の相談。まずここが入口です |
| 市区町村教育委員会 | 音声教材・拡大教科書等の申請、機器の貸与の仕組み。自治体により異なります |
| 特別支援学校(センター的機能) | 学校教育法 第74条。学校からの要請という形で助言・援助を受けられます |
| 医療機関(眼科・耳鼻咽喉科・小児科など) | 見え方・聞こえ方に心配があるとき。手立ての前に確かめておきたいことです |
| 通っている児童発達支援・放課後等デイサービス | うまくいっている手立ての共有(→移行支援とは?) |
| 発達障害者支援センター | 学校との調整に関する相談 |
※本記事は一般的な情報提供です。導入されている機器・申請の手順は自治体や学校により異なります。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
タブレットで学ぶことは、特別扱いになりませんか?
法律に位置づけられた方法です。学校教育法 第34条第3項は、文部科学大臣の定める事由により教科書で学習することが困難な児童に対し教育課程の全部又は一部において教科書に代えてデジタル教材を使用できるとしており、その事由には「視覚障害、発達障害その他の障害」が省令に明記されています。
条文に「発達障害」と書かれているのですか?
はい。学校教育法施行規則 第56条の5第3項第1号が「視覚障害、発達障害その他の障害」と定めています。また教科書バリアフリー法 第7条の見出しは「発達障害等のある児童及び生徒が使用する教科用特定図書等に関する調査研究等の推進」です。
教科書そのものを替えることもできますか?
教科書バリアフリー法 第9条は、学校において「採択された検定教科用図書等に代えて……教科用特定図書等を使用することができるよう、必要な配慮をしなければならない」と定めています。拡大教科書・点字教科書・音声教材などが、この枠組みに含まれます。
音声教材は有料ですか?
文部科学省は
原則として無償で提供するとしています。対象や申請の方法については、学校または市区町村教育委員会にご確認ください(→
読み書きが苦手なとき)。
ICT支援員に相談すればよいですか?
学校教育法施行規則 第65条の5の情報通信技術支援員は「教育活動その他の学校運営における情報通信技術の活用に関する支援」に従事する職です。個々の子どもの学び方を支える職としては書かれていません。学び方の相談は、担任・特別支援教育コーディネーターが入口になります。
どうお願いすればよいですか?
障害者差別解消法の合理的配慮は「その旨の意思の表明があった場合において」始まると条文にあります。どの場面で何が起きているかとすでにうまくいっている方法を具体的に伝えることが出発点です。
お願いすれば、必ず認められますか?
お約束はできません。合理的配慮の条文には「その実施に伴う負担が過重でないときは」という留保があります。手立てをいくつか用意して相談すると、話が進みやすくなります。
どの機器やアプリがよいですか?
この記事では書きません。学校や自治体で導入されているものが異なり、特定の製品の効果について確認できた一次情報がないためです。学校と教育委員会にご相談ください。
画面を見る時間が長くなるのが心配です
学びの手立てとしてのICTと余暇としての画面の時間は別の話です。なお、世界保健機関(WHO)の2019年のガイドラインは5歳未満を対象としたもので、学齢期の推奨値ではありません。この記事では時間の目安を書きません。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。