ASHAが技能として挙げているもの
ASHAは、社会的コミュニケーションに影響が出うる行動として、次のようなものを挙げています。
- 会話に参加すること——会話を始める・入る、話題を保つ、順番交代、応じること
- 行き違いを修復すること——誤解されたときに言い換えるなど
- 文脈に応じて話し方を調整すること
- 他者の視点を理解すること
- ことばによる/ことばによらないやりとりの決まりを理解し、適切に使うこと
どれも「教えられるもの」として並んでいます
この一覧に
「がまんする」「思いやりを持つ」といった項目はありません。
並んでいるのは、
始める・保つ・交代する・直す——具体的な動作です。
トラブルが多いということは、
これらのどれかを、まだ練習の途中であるという読み方ができます。
🔴 行動の「前」を見る——国の文書が書いている出どころ
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、「認知・行動」領域の支援内容としてこう書いています。
原文
「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び適切行動への対応の支援を行う」出どころとして挙げられているのは
感覚・
認知・
コミュニケーションの三つです。
ASHAも、周囲の人の課題として「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」を挙げています。行動を、伝えようとしていることとして読むという向きです。
| よくある場面 | そのとき伝えたかったかもしれないこと |
| おもちゃを取る | 「かして」「使いたい」——要求を伝える手段が足りていない |
| たたく・押す | 「やめて」「近い」——拒否を伝える手段が足りていない |
| 邪魔をする | 「入れて」「見て」——参加や注目を求める手段が足りていない |
| 急に怒る | 「うるさい」「聞こえない」——感覚の面(→感覚過敏) |
※この表は考えるための手がかりであり、行動の原因を特定するものではありません。
🔴 行き違いは、双方向のものとして記述されています
ASHAは二重の共感の問題(double empathy problem)を紹介しています(Milton 2012、Crompton et al. 2020)。
何を言っているか
理解のずれは、一方の側だけの問題ではない——という考え方です。
自閉のある人と、ない人のあいだで起きる行き違いは、
どちらか一方が「読めない」からではなく、双方向に起きていると整理されます。
これは「だから何もしなくていい」という話ではありません。
直す努力を、片方だけに求める形にしないということです。
同じくASHAは、「目を合わせる、表情、ボディランゲージといった社会的コミュニケーションの行動は、社会文化的および個人的な要因の影響を受ける」と明記しています。
「目を見て謝りなさい」が、誰にとっても同じ意味を持つわけではない——ということは、園と話すときにも役に立ちます。
関わり方——起きたあと、何をするか
- まず、相手の安全と手当て——ここは先です。
- 叱る時間を短くする——長い説教が届く時間帯ではないことが多くあります。短く、はっきり。
- 「どうすればよかったか」を、その場でやってみせる——「かして、って言うんだよ」と言うだけでなく、実際に一緒に言う。
- やり直しをさせる——謝らせることより、正しいやり方をもう一度やるほうが技能として残ります。
- 謝り方は、その子に合う形で——ことばが出にくいなら、手紙・カード・お辞儀でもかまいません。形を一つに決めない。
- 伝える手段を、次までに用意する——「かして」「いれて」「やめて」。ことば以外でも(→AAC)。
- 記録する——日時・場所・直前に何があったか・誰といたか。繰り返している条件が見えてきます。
叱られる回数そのものが、影響します
ASHAが挙げる支援検討の目安の一つは
「苦痛や不快をもたらす」です。
トラブルが続く子は、一日に受け取る否定的な声かけが多くなります。
回数を減らす工夫——場面を先に整える、人数を減らす、役を渡す——は、行動そのものへの働きかけと同じくらい重要になります(→
自己肯定感を守るほめ方)。
園と連携するとき
園と話すときに、伝えると動きやすくなることを挙げます。
- いつ起きやすいか——時間帯、活動、人数。場面を特定することがいちばん役に立ちます
- 直前に何があることが多いか——待ち時間、狭い場所、音、予定変更
- 家庭で効いている手段——「かして」のカード、役を渡す、先に予告する
- 謝り方の形——本人が使える形をあらかじめ決めておく
発達障害者支援法第7条(保育)は、市町村について「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする」と定めています。配慮を相談することには裏づけがあります。
専門職が園を訪問して一緒に考えるしくみもあります(→保育所等訪問支援とは?)。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「人間関係・社会性」「認知・行動」は国のガイドラインが定める支援の領域です |
| 言語聴覚士(ST) | 要求・拒否を伝える手段の相談 |
| 保育所等訪問支援 | 園での過ごし方を、専門職が園に入って一緒に考える |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
手が出るのは、乱暴だからですか?
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、行動障害について「感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる」と書いています。ASHAも、周囲の課題として「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」を挙げています。
謝らせたほうがいいですか?
謝ること自体を否定するものではありませんが、「どうすればよかったか」を、その場で一緒にやってみるほうが技能として残りやすくなります。謝り方の形は、ことばに限らず、手紙・カード・お辞儀でもかまいません。
「目を見て謝りなさい」と言うべきですか?
ASHAは「目を合わせる、表情、ボディランゲージといった行動は、社会文化的および個人的な要因の影響を受ける」と明記しています。誰にとっても同じ意味を持つ行動ではない、ということです。
うちの子だけが悪いのでしょうか?
ASHAは二重の共感の問題を紹介しています(Milton 2012、Crompton et al. 2020)。理解のずれは一方の側だけの問題ではないという考え方です。直す努力を片方だけに求める形にしない、という視点が示されています。
園に何を伝えればいいですか?
いつ・どの場面で起きやすいかを特定して伝えるのが、いちばん役に立ちます。あわせて直前に何があることが多いかと家庭で効いている手段を添えてください。
毎日叱ってばかりで、つらいです
ASHAが挙げる支援検討の目安の一つは「苦痛や不快をもたらす」です。叱る回数を減らす工夫(場面を先に整える・人数を減らす・役を渡す)は、行動への働きかけと同じくらい重要になります。ご家族への支援も、国のガイドラインが定める支援の一部です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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