ASHAは「順番」をどこに置いているか
ASHAは、社会的コミュニケーションを次の四つの要素で説明しています。
| 要素 | 内容 |
| 語用(pragmatics) | 社会的な文脈の中で、目的に沿ってことばを使うこと |
| 社会的相互交流 | 少なくとも二人のあいだで起こるやりとり |
| 社会的認知 | 自分と他者の心の状態・感情の状態を理解すること |
| 言語処理 | ことばを内的に組み立てること(表出)と、理解・解釈すること(受容) |
そして、影響を受けうる具体的な行動として「会話に参加すること(会話を始める・入る、話題を保つ、順番交代、応じること)」と「行き違いを修復すること(誤解されたときに言い換えるなど)」を挙げています。
「順番交代」は会話の技能として書かれています
すべり台の順番と、会話の順番は、
同じ技能の別の場面だという整理です。
「うちの子は順番が待てない」という困りごとは、
やりとりの技能を練習する場面として見直せます。
この見方は、しつけの厳しさではなく
やり方を教える方向に手を向けます。
「待てない」を三つに分ける
ひとことで「待てない」と言っても、起きていることは同じではありません。
| どれか | そのときの様子 | 手を打つところ |
| あとどれくらいか分からない | 並んでいるが、そわそわして離れる | 見える形にする——あと何人、順番カード、数える |
| 待っているあいだ、することがない | 待つ場所から出ていってしまう | 待つ間の仕事を作る——数える、持っている、見る役 |
| 「かして」が言えない | 手が先に出る、取ってしまう | 伝える手段を先に用意する——ことば、サイン、カード |
三つ目は、順番の問題に見えて別の問題です
要求を伝える手段がないと、行動が先に出ます。ASHAは、周囲の課題として
「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」を挙げています。
「かして」が言える/示せるようになると、順番の場面そのものが変わることがあります(→
AACとは?)。
国のガイドラインが書いている「集団への参加」
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、五つの支援領域のうち「人間関係・社会性」の支援内容に「仲間づくりと集団への参加」を置き、こう書いています。
原文
「集団に参加するための手順やルールを理解し、こどもの希望に応じて、遊びや集団活動に参加できるよう支援するとともに、共に活動することを通じて、相互理解や互いの存在を認め合いながら、仲間づくりにつながるよう支援する」——ここに
「こどもの希望に応じて」と書かれていることは、見落とされやすい部分です。
同じガイドラインは、遊びの育ちを一人遊び → 並行遊び → 大人が介入して行う連合的な遊び → 役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びという順序で記述しています。
「ルールを守って遊ぶ」は、その順序のいちばん後ろに置かれています。順番が待てないことは、この道のりの途中にいる状態として読むことができます。
家庭でできる練習
- 二人・短い・すぐ回ってくる形から——長い列より、大人と二人で交互にやるほうが先です。「次はぼく」がすぐ来ることが大事です。
- 順番を、目で見える形にする——「わたし」「あなた」のカード、並べたコマ、指さし。ことばの押し問答を減らします。
- 待つ間にすることを決める——数える、持っている、応援する。何もしない時間がいちばん長く感じられます。
- 「かして」を先に教える——ことばでも、サインでも、カードでも。手が出る前に、通じる手段を持っておきます。
- 待てた瞬間に、その場で言う——あとで「今日は待てたね」と言うより、待てているその時に短く。
- 少しずつ長くする——待つ時間を、ほんの少しずつ。うまくいかない日が続いたら前の長さに戻します。
順番が回ってくることが、確かであること
待てば必ず回ってくる——この経験が積まれているかどうかで、待ちやすさが変わります。
途中で終わってしまう、大人が忘れる、兄姉に先を越される。そうした経験が重なると、
先に取るほうが確実になります。
回ってくることを、こちらが確実に守るのが先です。
園・公園で、その場でできること
- 先に伝えておく——並ぶ前に「三人待ったら順番」と決めておく
- 混んでいる時間を避ける——待つ長さそのものを短くします
- 割り込んでしまったとき——長く叱るより、戻って並び直すところまでを短く手伝う
- やってしまった相手には、大人が先に伝える——本人に謝らせることを最優先にしない
ASHAは、目を合わせる・表情・ボディランゲージといった行動は、社会文化的および個人的な要因の影響を受けると明記しています。「目を見て謝りなさい」が誰にとっても同じ意味を持つわけではない、ということは頭に置いておく価値があります。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「人間関係・社会性」は国のガイドラインが定める五つの支援領域の一つです |
| 言語聴覚士(ST) | 「かして」など、要求を伝える手段の相談 |
| 保育所等訪問支援 | 園での過ごし方を、専門職が園に入って一緒に考えるしくみ |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
順番が待てないのは、しつけの問題ですか?
ASHAは順番交代(turn-taking)を、会話を始めること・話題を保つこと・応じることと並べて社会的コミュニケーションの技能として挙げています。行儀ではなく、学ぶ技能として扱われています。
何から練習すればいいですか?
大人と二人・短い・すぐ回ってくる形からです。長い列に並ばせるより、「次はぼく」がすぐ来る経験のほうが先になります。
待っているあいだに、いなくなってしまいます
待つ間にすることを決める方法があります(数える、持っている、応援する)。何もしない時間がいちばん長く感じられるためです。
手が出てしまいます
「かして」を伝える手段が先にあるかを確かめてください。ことばでなくてもかまいません(サイン、カード、指さし)。ASHAは、周囲の課題として「困難な行動のコミュニケーション機能を解釈すること」を挙げています。
集団のルールは、いつごろ分かるようになりますか?
時期は書きません。個人差が大きく、確認できた一次情報にも時期の記載がないためです。国のガイドラインは遊びの育ちを一人遊び→並行遊び→連合的な遊び→ルールを守って遊ぶ協同遊びという順序で記述しており、ルールのある遊びはその順序の後ろに置かれています。
割り込んだら、その場で謝らせるべきですか?
謝ること自体を否定するものではありませんが、長く叱るより、戻って並び直すところまでを短く手伝うほうが、次につながりやすくなります。ASHAは、目を合わせる・表情などの行動は社会文化的および個人的な要因の影響を受けると明記しています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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