ASHAによる記述
定義
「話すことが期待される特定の社会的な場面(例=学校)において、ほかの場面では話しているにもかかわらず、一貫して話せないという状態を示す」そして
「緘黙の持続は少なくとも1か月」とされています。
ASHAはこれを「語用的な言語に影響する、複雑な不安の障害」と位置づけています。性格の話ではなく、不安として記述されているということです。
| ASHAが述べていること | 内容 |
| ことばを知らないからではない | 「話しことばについての知識の不足や、それに対する慣れのなさによるものではない」 |
| ほかの障害では説明できない | 「コミュニケーション障害によってよりよく説明されるものではない」 |
| 気質は要因の一つ | 内気な気質、臆病な気質などが関与することはあるが、それだけが原因ではない |
| トラウマ後の緘黙とは違う | つらい出来事のあとに話さなくなった子どもはすべての場面で話さない——ここが区別の手がかり |
| 有病率 | 多くの推計で0.2%〜1.6%。移民や言語的少数者の子どもではより高い可能性がある |
※診断は医師が行います。この記事は診断の目安を示すものではありません。
🔴 国のガイドラインが書いている「してはいけないこと」
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、障害特性に応じた配慮事項の中で、場面緘黙について次のように書いています。
原文
「場面緘黙(選択性かん黙)のあるこどもに対しては、話さないということだけに着目して、話すことを強制したり、話さないこどもとみなしたりするのではなく、こどもの心理的な要因や環境的な要因等により、他の場面では話せているにもかかわらず、場面によっては話ができないという状態であることを理解した上で支援に当たることが必要である。こどもの緊張や不安の緩和を目標にして、こどもの意思が表出しやすい場面を設け、指さしやカード、身振りなど言葉以外の方法でコミュニケーションを取れるよう工夫することが必要である」
ASHAも同じ方向のことを述べています——避けるべきこととして「子どもの代わりに話すこと、子どもの沈黙を弁解すること、話すよう圧力をかけること」を挙げ、これらは緘黙を強めることがあるとしています。
三つとも、善意でやってしまうことです
代わりに答える——気まずさを埋めるため。
「この子は恥ずかしがりやで」と説明する——場をやわらげるため。
「ほら、言ってごらん」——できると信じているため。
いずれも、
意図としては子どものためのものです。だからこそ、知らないと続いてしまいます。
家庭・園でできること
- 話す以外の手段を用意する——国のガイドラインが挙げているのは指さし・カード・身振りです。「話せないと伝えられない」状況を先に外します(→AACとは?)。
- 答えなくてよい形にする——「はい/いいえ」を指させる、うなずきでよい、選択肢を見せる。発話を必要としない返し方を増やします。
- 人数と場所を小さくする——教室の全員の前ではなく、一人と、隅で。国のガイドラインは不安の強いこどもに「少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境」を挙げています。
- できている場面を、そのまま守る——家では話せているなら、その環境を変えない。家でも話しにくくなることが、いちばん避けたいことです。
- ほめ方に注意する——話せた日に大きく喜ぶと、次に「話さなければ」という圧になることがあります。短く、静かに。
- 園と、対応をそろえる——家と園で方針が違うと、本人の負担が増えます。
待つことと、放っておくことは違います
ASHAは緘黙の持続を
「少なくとも1か月」と記述しています。
「そのうち慣れる」で年単位が過ぎてしまうことがあります。
圧力をかけないことと、
相談しないことは別です。
ASHAは、言語聴覚士が
多職種のチームの一員として評価・支援に関わるとし、
「多職種のチームによる診断は、鑑別診断が十分に行われたことを担保する」としています。
複数の言語がある家庭の場合
ASHAは、多言語の子どもについて次のように述べています。
ASHAの記述
「真に場面緘黙のある多言語の子どもは、両方の言語において、複数の慣れない場面で、相当の期間にわたって、話さないという状態を示す」——これは、第二言語の習得の初期に起こりうる
沈黙期(silent period)との区別の手がかりとして書かれています。
ASHAは
「多言語であることはコミュニケーション障害ではない」とも明記しています(→
家庭に二つの言語がある子のことば)。
またASHAは、場面緘黙の有病率について移民や言語的少数者の子どもではより高い可能性があることにも触れています。見分けが難しい領域であるということでもあります。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 言語聴覚士(ST) | ASHAは言語聴覚士を多職種チームの一員として評価・支援に位置づけています |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 小児科・児童精神科 | ASHAは場面緘黙を不安の障害として記述しています。診断は医師が行います |
| 保育所等訪問支援 | 園での過ごし方を、専門職が園に入って一緒に考える |
| 耳鼻咽喉科 | 聞こえを外しておきたいとき(→聞こえの検査) |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。ASHAは米国の職能団体であり、記述は米国の状況にもとづくものです。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
人見知りとは違うのですか?
ASHAは場面緘黙を「語用的な言語に影響する、複雑な不安の障害」と記述し、緘黙の持続は少なくとも1か月としています。内気な気質などが関与することはあるがそれだけが原因ではないとも述べています。診断は医師が行います。
「言ってごらん」と促してもいいですか?
ASHAは、避けるべきこととして「話すよう圧力をかけること」を挙げ、緘黙を強めることがあるとしています。こども家庭庁のガイドラインも「話すことを強制したり、話さないこどもとみなしたりするのではなく」と明記しています。
代わりに答えてあげるのは、よくないのですか?
ASHAは「子どもの代わりに話すこと」「子どもの沈黙を弁解すること」も避けるべきこととして挙げています。いずれも緘黙を強めることがあるとされています。
話さないままで、どう伝えればいいのでしょう?
国のガイドラインは「指さしやカード、身振りなど言葉以外の方法でコミュニケーションを取れるよう工夫すること」を挙げています。「話せないと伝えられない」状況を先に外す、という考え方です。
そのうち慣れるのを待っていて大丈夫ですか?
圧力をかけないことと、相談しないことは別です。ASHAは緘黙の持続を「少なくとも1か月」と記述し、言語聴覚士を含む多職種のチームによる評価・支援を位置づけています。
家庭に二つの言語があります。第二言語の沈黙期でしょうか?
ASHAは、真に場面緘黙のある多言語の子どもは、両方の言語において、複数の慣れない場面で、相当の期間にわたって話さないとしています。これが沈黙期との区別の手がかりとして書かれています。ご判断は専門職にご相談ください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。