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📖 用語・基礎知識

感覚探求とは?——この言葉は、一次情報のどれにも出てきませんでした

最終更新:2026年9月6日
感覚探求——強い刺激を自分から求めるように見える様子を指して使われることばです。

この記事は、いつもと少し違う始め方をします。

🔴🔴「感覚探求」という語は、確かめた一次情報のどれにも見つかりませんでした。
——法令、文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」、こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン、米国言語聴覚協会(ASHA)の自閉症のページ。いずれにもこの語はありません(2026年9月6日確認)。

そのかわり、近いことを書いている記述はあります。
この記事では、それだけを扱います。

先に、確かめた結果を

調べたもの「感覚探求」の語
e-Gov法令検索(全法令を横断)該当なし
文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月改訂)出てきません
こども家庭庁 児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)出てきません
ASHA「Autism」(Practice Portal)この語にあたる記述は見つかりません
🔴 これが意味すること
「そういう様子がない」という意味ではありません。

その様子を、この呼び名で分類した一次情報を確かめられなかった、という意味です。

ですから、この記事では「感覚探求とは○○である」という定義を書きません。
かわりに、一次情報が実際に書いていることを並べます。

——このほうが、園や学校や医療機関でそのまま使えるからです。

ASHAが書いている、三つの記述のしかた

米国言語聴覚協会(ASHA)は、感覚のあらわれ方を三つで記述しています。

ASHA「Autism」より(専門的な支援を要しうる欄)
感覚の様式に関する困難。環境の音・におい・光・触覚の刺激・動き・視覚的な雑然さ・社会的な刺激(人との接触、他者との距離、声)に対する——

🔴・過剰反応(over-responsiveness)
🔴・低反応(under-responsiveness)
🔴・混合したパターン(mixed responsiveness)

🔴 三つめの「混合したパターン」があることが大事です。同じ子の中で、過敏な感覚と、気づきにくい感覚が同時にあることがある——それが記述として書かれています。

そして、もう一つの記述
同じ欄に、こうあります——

非社会的な刺激への好み——それが物や出来事の感覚的な側面への強い関心につながるもの」

これが、日本語で「感覚探求」と呼ばれることのある様子にいちばん近い記述です。

——「探し求める」ではなく「強い関心」という書き方になっています。

🔴 ASHAは「能力」としても書いています

ASHAの自閉症のページは、領域ごとに“そう見えることがある”“専門的な支援を要しうる”を分けて書きます。感覚についても同じです。

“Sensory and feeding may look like”(そう見えることがある)
・好きな食器、食感、色の食べ物への好みを示すこと
立ったまま食事を楽しむこと
🔴・食べ物の食感や味の小さな変化を見分けることができること
・食事に決まった道具を使い続けること

🔴 三つめは、はっきり「できること(the ability to)」として書かれています。小さな違いに気づける——それが、この欄に並んでいます(→偏食があるとき)。

🔴🔴 支援を検討する三つの目安
ASHAが挙げている目安は、感覚についても同じです——

① 機会を制限する(restrict opportunities)
② 苦痛や不快をもたらす(contribute to distress or discomfort)
③ 自己管理に影響する(impact self-management)

🔴三つに「刺激の強さ」も「回数の多さ」も入っていません。
見るのはその子にとってどうかです。

国のガイドラインが書いていること

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、本人支援の「運動・感覚」領域に<感覚の特性への対応>という項目を置いています。

ガイドラインより(全文)
「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。」

——一文です。

🔴 使われている語は「過敏」と「鈍麻」「探求」はありません。
そして支援内容として書かれているのは「環境調整等の支援」です(→環境調整とは?)。

同じ「運動・感覚」領域には、もう一つ——「……情報を収集し、状況を把握しやすくするよう、眼鏡や補聴器等の各種の補助機器やICTを活用することや、他の感覚や機器による代行が的確にできるよう支援する」とあります。

🔴 「代行」ということば
感覚の使い方を変えるのではなく、別の感覚や道具で置き換える——それも支援内容として書かれています。

たとえば、音が入りにくい場面で目で見て分かるようにすることは、この記述に沿った手立てです(→視覚支援とは?)。

環境の側でできること

児童発達支援ガイドラインは、環境について支援する側の義務の形で書いています。

ガイドラインより
「事業所等は、……次の事項に留意しつつ、計画的に環境を整え、工夫して、こどもに対し支援を行わなければならない。」

そこに挙げられているもの——
こどもによる選択ができるよう配慮すること
温かで、親しみやすく、くつろげる場時間や空間を本人にわかりやすく構造化すること不安な気持ちを落ち着かせる環境を整えること

書き留めておくとよいこと

  1. どの感覚か——音、光、におい、触った感じ、動き、味や食感、まわりの雑然さ
  2. どちらの向きか——強い刺激を好むように見えるのか、気づきにくいように見えるのか。ASHAは「混合したパターン」も記述しています
  3. いつ増えるか/いつ減るか——場面、時間帯、人の多さ、直前にしていたこと
  4. そのあとどうなるか——落ち着くのか、続くのか
  5. 三つの目安に当てはまるか——機会を制限する/苦痛や不快をもたらす/自己管理に影響する
🔴 記録は解釈をつけずに
「刺激を求めている」ではなく「昼休みの後、教室に戻る前に机の脚を10回たたいた」のように。

解釈を足さない記録は、園・学校・事業所・医療機関のどこに出しても、そのまま使えます。
そして「感覚探求」という呼び名を使わなくても伝わります。

この記事で書かないこと

🔴🔴「感覚探求」の定義・分類・タイプ分けは書きません。確かめた一次情報のどれにもこの語がなく、定義を書けば、それは私の作文になってしまうためです。そういう様子がないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。

🔴🔴感覚統合の訓練の効果も書きません。一次情報を確認できなかったためです(このシリーズで一貫している判断です)。

「こうすれば刺激を求めなくなる」といった対応も書きません。確認できた一次情報にその記述がありません。国のガイドラインが書いているのは「環境調整等の支援」までです。

診断基準・チェックリストも書きません。診断は医師が行うものです。

書けるのは、ASHAと国のガイドラインが実際に何と書いているかまでです。

どこに相談すればいいか

相談先何のため
作業療法士のいる機関感覚と身体の使い方の側から。療育は医療ではありません
小児科・児童精神科など🔴けがにつながる行動があるとき。診断に関する判断
耳鼻咽喉科・眼科🔴聞こえ方・見え方を先に確かめる。手立てを考える前にできることです
園・学校(担任・特別支援教育コーディネーター)場面の共有、環境の調整。合理的配慮は「意思の表明があった場合」に始まります
通っている児童発達支援・放課後等デイサービス計画の見直し(→モニタリングとは?
発達障害者支援センター関係機関との連絡調整

※本記事は一般的な情報提供です。診断に関する判断は医師などの専門機関にご相談ください。療育は医療ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月6日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

「感覚探求」とは何ですか?
🔴この記事では定義を書きません。法令・文部科学省の手引・こども家庭庁のガイドライン・ASHAのいずれにもこの語が見つからなかったためです(2026年9月6日確認)。そういう様子がないという意味ではなく、確かめられた一次情報が手元にないという意味です。
近い記述はありますか?
ASHAは感覚のあらわれ方を過剰反応・低反応・混合したパターンの三つで記述し、別に「非社会的な刺激への好み——それが物や出来事の感覚的な側面への強い関心につながるもの」を挙げています。これがいちばん近い記述です。
強い刺激を求めているように見えます。支援が必要でしょうか?
ASHAが挙げる目安は三つです——①機会を制限する ②苦痛や不快をもたらす ③自己管理に影響する。🔴「刺激の強さ」も「回数の多さ」も入っていません。
同じ子で、過敏なところと鈍いところがあります
ASHAは「混合したパターン(mixed responsiveness)」を三つの記述の一つとして挙げています。同じ子の中で両方があることは、記述として書かれています。
国のガイドラインは、何と書いていますか?
本人支援の「運動・感覚」領域に一文あります——「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。」使われている語は「過敏」と「鈍麻」で、支援内容は環境調整です。
感覚統合の訓練は効きますか?
この記事では効果を書きません。一次情報を確認できなかったためです。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
園にはどう伝えればよいですか?
呼び名を使わずに、見たことを書き留めて渡すのが確実です。どの感覚か/どちらの向きか/いつ増えていつ減るか/そのあとどうなるか。「刺激を求めている」ではなく「昼休みの後、教室に戻る前に机の脚を10回たたいた」のように。
先に確かめておくとよいことはありますか?
聞こえ方と見え方です。手立てを考える前に、耳鼻咽喉科・眼科で確かめておくことができます(→聞こえの検査について)。
道具で助けることはできますか?
児発ガイドラインは「運動・感覚」領域で「眼鏡や補聴器等の各種の補助機器やICTを活用することや、他の感覚や機器による代行が的確にできるよう支援する」としています。別の感覚や道具で置き換えることも支援内容として書かれています。
けがをしそうな行動があります
医療機関にご相談ください。ASHAは、繰り返しの行動について記述する際「自傷行動は含まない」と分けて書いています(→自己刺激行動とは?)。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

お子さまのこと、専門スタッフに相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。