確かめる順番
「振り向かない」の背景は一つではありません。推測を並べる前に、外せるものから外すのが実際的です。
- 聞こえを確かめる——耳鼻咽喉科へ。これが最初です。
- どんなときに反応するかを見る——後ろから/前から、静かな部屋/にぎやかな部屋、好きな音/名前。
- 反応の「小ささ」に気づく——振り向かないのではなく、動きが小さい・遅いだけのことがあります。
- そのときの活動を見る——集中している最中は、大人でも呼びかけに気づきません。
- 記録する——日付・場面・呼び方・反応。解釈をつけずに、見たことだけを。
なぜ聞こえが最初なのか
ASHAは、
「わずかな難聴、特定の周波数のみの難聴、遅発性の難聴、あるいは進行性の難聴は、新生児聴覚スクリーニングでは把握されないことがある」と記述しています。
生まれたときの検査に通っていても、あとから起こりえます。また、中耳に水がたまって一時的に聞こえにくくなることもあり、ASHAは自然に治まるまでを見込んだ
6〜8週間の間隔での再検査に触れています(→
なぜ「聞こえの検査」が先なのか)。
🔴 「低反応」という現れ方
ASHAは、自閉症のあるこどもに見られうる感覚の困難を次のように記述しています。
ASHAの記述
環境音・におい・光・触覚といった感覚への、過剰反応(hyperreactivity)・低反応(hyporeactivity)、あるいは混合したパターン——過敏さだけでなく、
反応が小さいことも同じ枠組みの中に置かれています。
感覚過敏は知られるようになりましたが、低反応は「特性」として受け取られにくいという問題があります。
| 現れ方 | 周りからどう見えるか | 実際に起きているかもしれないこと |
| 呼んでも振り向かない | 「無視している」「聞いていない」 | 音への反応が小さい |
| 痛みやけがに気づきにくい | 「がまん強い」 | 感覚の受け取りが小さい |
| 汚れ・濡れに気づかない | 「だらしない」 | 触覚の受け取りが小さい |
| 動きが少ない・遅い | 「やる気がない」 | 反応そのものが小さい |
※この表は考えるための手がかりであり、診断の基準ではありません。感覚の受け取り方の幅は誰にでもあります。診断は医師が行います。
詳しくはこちらにまとめています(→音や肌ざわりに敏感——感覚過敏・感覚鈍麻)。
「見ないこと」と「共有していないこと」は別
呼んで振り向かないと、「関わりが育っていない」と心配になります。ここについて、ASHAははっきりした記述を残しています。
共同注意について
共同注意は、
二人以上が同じ物や出来事に注意を共有することと説明されます。
そしてASHAは、
目を合わせないかたちでも、共有された物や活動に注意を向けることがあることを記述しています。
——
「目を合わせない=共有していない」ではありません(→
共同注意とは?)。
さらにASHAは、社会的コミュニケーションについて「目を合わせる、表情、ボディランゲージといった行動は、社会文化的および個人的な要因の影響を受ける」と明記しています。
呼び方を変えてみる
確かめながら、同時に試せることがあります。
- 近づいて、前から呼ぶ——距離と向きを変えるだけで反応が変わることがあります
- 音を減らしてから呼ぶ——テレビを消す、静かな部屋で
- 触れてから呼ぶ——肩に軽く触れる。ただし触覚が過敏な場合は逆効果になります
- 名前のあとに、短い用件を続ける——「◯◯くん、おやつ」。呼ばれることに意味が伴います
- 返事を求めない呼び方も混ぜる——用がないときにも名前を呼ぶ
- 反応の小ささを、反応として数える——目が動いた、手が止まった。振り向くことだけを反応としない
いちばん避けたいこと
呼びかけが、注意される合図になってしまうことです。
名前を呼ばれるのが「叱られる前ぶれ」になると、反応はさらに小さくなります。
用がないときにも呼ぶ、呼んで良いことが起こる——この積み重ねのほうが、結果として早いことがあります。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 耳鼻咽喉科 | まずここ。聞こえの確認(新生児で通っていても) |
| 言語聴覚士(ST) | 言語聴覚士法第2条は対象に「又は聴覚」を含みます |
| 作業療法士(OT) | 感覚の受け取り方が関わっていそうなとき |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
わざと無視しているのでしょうか?
ASHAは、感覚の受け取り方を「過剰反応・低反応・混合したパターン」として記述しています。低反応——反応が小さいこと——は、「無視している」「聞いていない」と受け取られやすい現れ方です。
生まれたときの聴覚検査は通りました
それでも確かめる価値があります。ASHAは「わずかな難聴、特定の周波数のみの難聴、遅発性の難聴、あるいは進行性の難聴は、新生児聴覚スクリーニングでは把握されないことがある」と記述しています。
テレビには反応するのに、名前には反応しません
音への反応の有無だけでは決まりません。距離・向き・周囲の音・そのときの活動によって変わります。まず耳鼻咽喉科で聞こえを確かめたうえで、どんなときに反応するかを場面ごとに記録すると手がかりになります。
目も合いにくいのですが、関わりが育っていないのでしょうか?
そうとは限りません。ASHAは、共同注意について目を合わせないかたちでも、共有された物や活動に注意を向けることがあると記述しています。また、目を合わせる・表情などの行動は社会文化的および個人的な要因の影響を受けるとも明記しています。
呼び方で、工夫できることはありますか?
近づいて前から呼ぶ/音を減らしてから呼ぶ/名前のあとに短い用件を続ける/用がないときにも呼ぶ——このあたりから試せます。触れてから呼ぶ方法は、触覚が過敏な場合には逆効果になることがあります。
反応が小さいときは、どう数えればいいですか?
振り向くことだけを反応としないことをおすすめします。目が動いた、手が止まった、声が止まった——それも反応です。記録するときは解釈をつけず、見たことだけを日付つきで残してください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。