🔴 「自然さの連続体」——遊びの形の位置づけ
ASHAは、支援のやり方を自然さの連続体として整理しています(Fey, 1986/Paul et al., 2018 として示されています)。
| 位置 | 形 |
| より構造化された側 | 机の上で、決められた手順で行う |
| 中間 | 活動を決めたうえで、やりとりの中で行う |
| より自然な側 | 日常の遊びや生活の中で行う |
読みどころ
この連続体は、
どれが正しいかの順位ではありません。目的と、その子の段階によって
どこを選ぶかが決まる——という整理です。
つまり
遊びの中で行うことは、方法として位置づけられているということです。
「本格的な練習ができないから遊びで代用する」のではありません。
🔴 返答を求めない方法があります
ASHAは、話しことばの支援の一つとして焦点化された刺激(focused stimulation)を記述しています。
どういう方法か
対象のことばを、決められた文脈の中で繰り返し聞かせる方法です。
そして——
子どもには、一度も返答を求めません。「言ってごらん」も「はい、どうぞ」も使いません。
聞かせることが方法の中身です。
家庭で「練習」と聞くと、言わせることを思い浮かべがちです。しかし言わせない形が、確立した方法として存在します(→言語聴覚士の個別支援では何をする?)。
これは、ご家庭の負担を軽くする話でもあります
毎日、言わせる時間を作らなくてよい。
やることは
「その場面で、そのことばを、何度も使う」だけです。
お風呂で「あたたかいね」を毎日言う。着替えで「はく」「ぬぐ」を毎日言う。
返事は求めません。
道具のいらない遊び
特別な教材は要りません。同じ場面で、同じことばを繰り返す——それが軸です。
| 場面 | 使うことば | やり方 |
| お風呂 | あたたかい/つめたい/ながす/あわあわ | 毎日同じことばを使う。返事は求めない |
| 着替え | はく/ぬぐ/いれる/だす | 動きのことばを、動きと同時に言う |
| 食事 | たべる/のむ/もっと/ おいしい | 「もっと」は要求を伝える形につながります |
| 片づけ | いれる/おしまい/ないない | 終わりの合図と、ことばをそろえる |
| 散歩 | いた/あった/おおきい/はやい | 見つけたものに、その場で名前をつける |
動きのことばを、意識して入れてください
ASHAは
動詞(動作を表すことば)の獲得の遅れに触れています。
物の名前は自然に増えやすい一方、
動きのことばは、大人が意識しないと出てきません。
「くつ」だけでなく「はく」。「ジュース」だけでなく「のむ」。——二語文は
「なにが」+「どうする」の形です(→
二語文が出ない)。
やりとりを増やす、小さなコツ
- 短く言う——長い文の中の一語は拾いにくくなります。2〜3語に。
- 待つ——先回りして出さず、間をあけます。伝える必要が生まれます。
- 同じ高さで——顔が見える位置に。物と顔が同じ視界に入ると、注意が共有されやすくなります(→共同注意)。
- 本人が見ているものに、ことばをつける——こちらが見せたいものではなく、本人の関心の先に合わせます。
- 一語に、一語足して返す——「ジュース」→「ジュース、のむ?」。今の一語を否定しない。
- ことば以外の手段を止めない——指差し・身振り・サインは、ことばと競合しません(→AACとは?・マカトン法)。
うまくいかない日は、やめてかまいません
毎日続けることより、
やりとりが嫌な時間にならないことのほうが大事です。
ASHAは、支援を検討する目安の一つに
「苦痛や不快をもたらす」を挙げています。
家庭での関わりが、そこに近づいたら止める——これは後退ではなく、判断です。
この記事で書かないこと
「この遊びをすると、ことばが増える」とは書きません。個々の遊びの効果を示す一次情報を確認できていないためです。
確認できたのは、ASHAが支援のやり方を「自然さの連続体」として整理していること、その中に日常の遊びの中で行う形が位置づけられていること、返答を求めない「焦点化された刺激」という方法があること——ここまでです。
効果がないという意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。
国のガイドラインも「遊び」を支援の中に置いています
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、留意事項として
「こどもの成長は、『遊び』を通して促されることから、周囲との関わりを深めたり、表現力を高めたりする『遊び』を通し、職員が適切に関わる中で……具体的な支援を行うこと」としています。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 言語聴覚士(ST) | その子に合う「位置」を選んでもらえます。連続体のどこで行うかは見立て次第です |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 「言語・コミュニケーション」は国のガイドラインが定める五つの支援領域の一つです |
| 耳鼻咽喉科 | 聞こえを外しておきたいとき(→聞こえの検査) |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
遊びの中で教えるのは、本格的な練習の代わりですか?
代わりではありません。ASHAは支援のやり方を自然さの連続体として整理しており(Fey, 1986/Paul et al., 2018)、日常の遊びの中で行う形も意図的に選ばれた位置として書かれています。
「言ってごらん」と促したほうがいいですか?
促さない方法が確立しています。ASHAが記述する焦点化された刺激は、対象のことばを決められた文脈で繰り返し聞かせ、子どもには一度も返答を求めない方法です。
特別な教材が必要ですか?
必要ありません。軸になるのは同じ場面で、同じことばを繰り返すことです。お風呂・着替え・食事・片づけ・散歩——日常の場面がそのまま使えます。
どんなことばを選べばいいですか?
動きのことばを意識して入れてみてください。ASHAは動詞の獲得の遅れに触れています。物の名前は自然に増えやすい一方、動きのことばは大人が意識しないと出てきません。
この遊びをすると、ことばが増えますか?
効果は断定しません。個々の遊びの効果を示す一次情報を確認できていないためです。効果がないという意味ではなく、ここでは判断しない、という意味です。
毎日続けられません
続けることより、やりとりが嫌な時間にならないことのほうが大事です。ASHAは支援を検討する目安の一つに「苦痛や不快をもたらす」を挙げています。そこに近づいたら止める——それは後退ではなく判断です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。