まず、今夜のうちに変えられるところだけを並べます。全部やる必要はありません。上から見て、できそうなところで止めて構いません。
睡眠の習慣は、一晩で切り替わるものとして書かれていません。厚生労働省の睡眠ガイドが挙げている手立ては、いずれも「体内時計を整える」「入眠しやすくする」という向きのもので、効き方には日数がかかる前提で書かれています。
今夜やってみて変わらなくても、それは方法が間違っているという意味ではありません。三日〜一週間ほど、同じ形を続けてから、効いたかどうかを見てください。
※ ここに挙げたのは、いずれも公的な資料に書かれている内容だけです。「これをすれば眠る」という方法は、確認できた範囲の公的資料には書かれていません。ガイド自身が、リラクゼーションについて「全ての人に効果が保証されたリラクゼーション法はない」と明記しています。
「何時間寝かせればいいのか」は、いちばん多く検索される問いだと思います。ここは推測を混ぜずに、公的な資料に書いてある範囲だけを示します。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、成人版・こども版・高齢者版という三つの推奨事項があります。このうちこども版の推奨事項は、次の二つです。
・小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する。
・朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける。
根拠=厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」3(2)こども版・RECOMMENDATION 2
推奨事項そのものは小学生からですが、ガイドの本文には、より小さい年齢の数字も引用されています。ガイドは「米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine)は、1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間の睡眠時間の確保を推奨しています」と書き、「睡眠時間に関する疫学調査や生理研究に基づき、主要な睡眠研究者が各成長時期における心身機能の回復・成長に必要な睡眠時間を見積もったものであり、多くの国で参考にされています」と説明しています。ガイド自身の推奨ではなく、ガイドが紹介している海外の学会の推奨である、という点は正確に押さえておいてください。
ただし、幼児の数字は厚生労働省が自分の名前で出したこども向けの資料にも書かれています。同省のこども向けリーフレット「みんなねむれている?すいみんのひみつ」は、「どのくらいねむればいい?」という問いに対して、「3〜5さいは10〜13じかんくらい、しょうがくせいは9〜12じかんくらい、ねむりましょう」と答えています。
| 年齢 | よりどころと、書かれている時間 |
|---|---|
| 1〜2歳 | 11〜14時間。ただしこれは、睡眠ガイド2023が引用している米国睡眠医学会の推奨です 根拠=睡眠ガイド2023 こども版「こどもの睡眠時間の目安」 |
| 3〜5歳 | 10〜13時間。厚生労働省のこども向けリーフレットに、同省の資料として直接書かれています 根拠=厚生労働省「みんなねむれている?すいみんのひみつ」/睡眠ガイド2023 こども版 |
| 小学生 | 9〜12時間。睡眠ガイド2023 こども版の推奨事項そのものです |
| 中学生・高校生 | 8〜10時間。同じく推奨事項そのものです |
| 0歳台 | 確認できた公的資料に、推奨時間の記載は見当たりませんでした。睡眠ガイドは、生まれたばかりの赤ちゃんは「数時間おきに寝たり起きたりを繰り返します」「生後数週間経過すると、徐々に夜眠る時間が延びる」と、時間ではなく変化のしかたを書いています |
ガイドは、この時間を「参考に睡眠時間を確保する」という言い方で書いています。目標として置かれているのであって、届かない日を数えるためのものではありません。
ガイド自身も「成長・加齢とともに必要な睡眠時間は減少していきますが、成長期である高校生までは成人よりも長い睡眠時間を必要とすることがわかっており、一般的な認識よりも長い睡眠時間であることに驚くかもしれません」と書いています。つまり、多くの家庭で足りていないことは、国の側でも見込まれています。いま足りていないとしても、それはその家庭だけの話ではありません。
※ 必要な睡眠時間には個人差があります。ガイドは成人について「必要な睡眠時間には個人差があり」と明記しており、こどもについても各発達段階で睡眠習慣が変わることを前提に書いています。時間の数字だけで良し悪しを決めないでください。
「寝ない」とひとまとめにすると、打つ手がなくなります。分ければ、一つずつ確かめられます。以下は、公的な資料に記載のあるものを中心に整理したものです。どれか一つが原因ということは少なく、いくつか重なっていることのほうが多いと思ってください。
睡眠ガイドは「就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まります。それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、催眠効果のあるメラトニンの分泌が抑制されることから、睡眠・覚醒リズムが遅れ、入眠が妨げられることが報告されています」と書いています。そして「寝ている間は、低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されて」いる、とも書いています。
さらに、こどもは大人より光の影響を受けやすいとされています。ガイドのQ&Aは「加齢とともに眼の水晶体(レンズ)は白く濁っていきます。10歳代のレンズの光透過性は、白内障と診断されていない70歳代よりも5倍近く高いことが報告されており、光の影響は若年者で大きいと考えられています」と説明しています。同じ明るさでも、大人が感じるより強く届いている、ということです。
ガイドは、寝室内で測定した騒音が「睡眠効率の低下、入眠潜時・中途覚醒時間の延長と有意に関連した」という研究を挙げ、「静かな睡眠環境の確保が重要」としています。また「騒音に対する感受性には個人差があり、騒音による影響を受けやすいとされるこども・高齢者・疾病を有する人の健康を守る観点から、欧州WHOガイドラインは夜間の屋外騒音を40dB未満とすることを推奨」とも書かれています。音に敏感なお子さんの場合、この差は家庭の中でもっと大きく出ます。→ 感覚過敏
ガイドは「ヒトの深部体温……は、およそ24時間周期で変動しており、日中の覚醒時に上昇し、夜間の睡眠時には低下します」「就寝前に、手足の皮膚血流が増加することで体温が外部に放散され、深部体温が低下し始めると、入眠しやすい状態となります」と説明しています。入浴のタイミングが効くのはこのためで、「就寝の約1〜2時間前に入浴した場合、しなかった場合に比べて速やかな入眠が得られる」という報告が挙げられています。ただし「極端に湯温が高いと、交感神経の活動が亢進し、かえって入眠を妨げる可能性もあります」とも書かれています。
パジャマのタグ、布団の重さ、シーツの手ざわり、部屋のにおい。大人には気づけない刺激が、寝つきの邪魔をしていることがあります。こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)は、本人支援の五領域のうち「運動・感覚」の支援内容に「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う」を挙げています。国の文書が、慣れさせるのではなく環境の側を調整すると書いている領域です。
ガイドは「座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイム……が長くなりすぎないようにしましょう。小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」と書き、「長時間の座位行動(及びスクリーンタイム)は肥満の増加や睡眠時間の減少と関連し、逆に、適度な運動は、良い眠りにつながります」としています。一方で「就寝前1時間以内の激しい運動はかえって睡眠の質を低下させる可能性がありますので、寝る直前の運動は控えたほうが良いでしょう」とも書かれています。
「いつ寝るのか」「何をしたら終わりなのか」が読めないと、寝るという行為そのものが不安になります。児童発達支援ガイドラインは、本人支援「健康・生活」の支援内容に「構造化等による生活環境の調整」を挙げ、「障害の特性に配慮し、時間や空間を本人に分かりやすく構造化する」と書いています。家庭でこれに当たるのが、寝る前の手順を毎日同じにすること、順番を先に伝えること、絵や写真で並べておくことです。
園や学校で気を張っていた日ほど、夜に出ることがあります。行事の練習の期間、進級の直後、引っ越しの後などです。これは後退ではなく、多くの場合は疲れです。安心できる場所に着いてから出る、という順番で起きます。
※ 上の七つのうち、④⑥は児童発達支援ガイドライン、それ以外は厚生労働省の睡眠ガイド2023に記載のある内容です。⑦については、これを名指しで扱った公的資料は確認できませんでした。
睡眠ガイド2023には「良質な睡眠のための環境づくりについて」という節があり、冒頭に四つのポイントがまとめられています。原文のまま引きます。
・日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなる。
・寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる。
・寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝の約1〜2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
・できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながる。
このうち家庭でいじれるところを、具体的に落とすと次のようになります。
| 整えるところ | 公的資料に書かれている内容と、家での落としどころ |
|---|---|
| 明かり | 寝室は「できるだけ暗く」。暖色のLEDでも足りません——ガイドのQ&Aは「現在使われているLED照明は青色発光ダイオードを使用していることから、調光しても短波長光(ブルーライト)が多く含まれます。夜間の使用時は明るすぎないように調節することが必要です。また、就寝時には照明は消すように心がけましょう」と書いています。 → 真っ暗が怖い場合は、消さずに照度を落とす。夜間に授乳や付き添いで明かりが要るときも、同じく照度を落とす(ガイドQ&A) |
| 画面 | 寝室にスマートフォン・タブレットを持ち込まず、電源を切って別の部屋に。ガイドは「寝そべりながらデジタル機器を使うと、ディスプレイの視聴距離が近くブルーライトを浴びやすくなるため、寝つきや睡眠の質の悪化につながります」と書いています。 → 「寝室に置かない」だけで済むので、今夜すぐできる部類です |
| 温度 | 暑すぎず寒すぎず。夏は「エアコンを用いて涼しく維持することが重要」。冬について、ガイドは「WHOの住環境ガイドラインは冬の室温を18℃以上に維持することを推奨」と紹介し、「冬季は就寝前にできるだけ温かい部屋で過ごすことも重要だと思われます」としています。 → 寝る部屋そのものより、その前に過ごす部屋の温度が効く、という書き方です |
| 音 | 静かな環境を。窓の外の音については、Q&Aが「カーテンを防音や遮光の機能があるものに取り換え、寝床の位置をできるだけ窓から遠くに移動させることで眠りが改善する可能性があります」と答えています。 → 買い足さなくても、寝床をずらすだけなら今夜できます |
| お風呂の時刻 | 就寝の約1〜2時間前。ガイドは、この時刻に入浴した場合、しなかった場合に比べて速やかな入眠が得られると報告されている、としています。湯温が極端に高いと逆効果になりうるとも書かれています。 → 寝る時刻から逆算して、お風呂の時刻を先に決めるほうが早い |
※ この節はすべて、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」4(1)「良質な睡眠のための環境づくりについて」に書かれている内容です。同じ内容は、新宿区の「質の良い睡眠について」のページにも区の資料としてまとめられています。
夜だけをいじっても動かないことがあります。睡眠ガイドのこども版の推奨事項が「朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける」という、ほぼ昼の話でできているのは、そのためです。
ガイドは、乳幼児期について具体的にこう書いています。「朝起きる時間を決め、カーテンを開けて部屋を明るくしましょう。朝食後は戸外に出て活動しましょう」。小学生以降については「登校時や学校で日光を十分に浴びましょう。週末休日も普段と同じ時間に起床して、日光を浴びましょう」。
順番が大事です。寝る時刻を動かすのではなく、起きる時刻を固定する。ガイドは小学生以降について「早起き習慣を保ったうえで、前述の推奨睡眠時間から逆算して、夜寝る時間を決めることをお勧めします」と書いています。
「朝ごはんを食べましょう」は標語のように聞こえますが、ガイドは仕組みとして書いています。「朝の日光浴は体内時計の調整に役立ちますが、朝食もまた同様に体内時計の調整に寄与します。1週間程度の期間、朝食を欠食することで体内時計が後退(遅寝・遅起き化)することが報告されています」。また「就寝前の夜食や間食は、朝食の欠食と同様に体内時計を後退させ」るとも書かれています。
なお、文部科学省は平成18年4月に発足した「早寝早起き朝ごはん」全国協議会と連携して、「子供の生活習慣づくりについて、社会全体の問題として子供たちの生活リズムの向上を図っていく」ための国民運動を推進しています。家庭だけの課題として置かれてはいない、ということです。
ガイドは、こどもについて「我が国を含む諸外国及びWHOの健康ガイドラインでは、こどもに1日60分以上の身体活動を推奨していますが、これは良い睡眠を保つ上での目安にもなります」と書いています。まとまった運動でなくてもよく、ガイドは生活活動(通勤・通学などの活動、犬の散歩、こどもと遊ぶ等)と運動を分けたうえで、両方を身体活動として数えています。
ただし前の節でも触れたとおり、就寝前1時間以内の激しい運動は逆に働く可能性がある、とされています。夜のじゃれ合いが長引いて寝つきが悪くなる、という感覚は、この記述と方向が合っています。
ここは、いちばん誤解が起きやすいところなので、ガイドのQ&Aを原文に近い形で引きます。
「4〜5歳以降は昼寝の必要性が低下し、昼寝をすることによりむしろ、夜の寝つきの悪さ、睡眠不足、朝の目覚めの悪さなどが悪化する可能性が報告されています。このため夜の寝つきが悪い幼児は、昼寝をしない選択肢が望ましい可能性があります。他方で、保育園や幼稚園、学校への通園・通学が始まると、朝の始業時刻が定められていることから、十分に睡眠時間を確保することに苦労する家庭も増えてくることと思います」
根拠=厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」3(2)こども版 3.よくある質問と回答
こども家庭庁の5歳児健康診査マニュアル(令和7年度改訂版)のQ&Aにも、「夜なかなか寝ない、早起きができない」という問いに対して「夜なかなか寝ない原因は様々ですが、昼寝が長いと就寝時刻も遅くなりがちです」という答えが載っています。
大事なのは、これは家庭が独断で決めることではないという点です。園に通っているお子さんの午睡は園の日課の一部です。「夜の寝つきに困っている」と園に伝えたうえで、午睡の長さや時刻を相談するのが順番になります。この記事の最後の節で、園への伝え方を扱います。
※ ガイドは、乳幼児期については「こどもの睡眠習慣が親の睡眠習慣に影響されやすいため、家族ぐるみで早寝・早起き習慣を目指すと良いでしょう」とも書いています。お子さんだけを早く寝かせる形にすると、続きにくいということでもあります。
寝かしつけよりも、こちらのほうがつらいという方が多いと思います。ここも、公的資料に書かれている範囲で示します。
睡眠ガイドのQ&Aに、まさにこの場面の記載があります。
「夜中、お子さんが途中で目覚めたときに、部屋を明るくしたり動き回ったりすると、再度寝つくのにかえって時間がかかることがありますので注意が必要です。こどもは、大人よりも光の影響が強いことがわかっています。小さなこどもの場合、真っ暗で眠るのがこわいというケースもあるかもしれませんが、寝室の照明をつける場合でも、照度は落とすようにしましょう」
根拠=厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」4(5)妊娠・子育て・更年期と良質な睡眠について 5.よくある質問と回答
つまり、電気をつけない・移動しない・声を小さくの三つが、公的資料から取り出せるいちばん具体的な手立てです。起きた本人を寝室から出して別の部屋であやすと、そのぶん明かりと刺激が増えます。
ガイドは、この種の出来事を年齢とともに減っていくものとして説明しています。「こどもの睡眠の不安定さや症状は、睡眠の成熟の過程で一時的に出現することが多く、年齢とともに自然に消失するケースがほとんどです」。具体的な数字も挙げられていて、「錯乱性覚醒の発生率は3〜13歳では17%ですが、15歳以上では3%程度です。睡眠時遊行症は8〜12歳がピークといわれています」と書かれています。
ただし、放っておけばよいという書き方ではありません。同じ箇所に「睡眠時間が極度に不足したり、生活が不規則になると、睡眠症状が増えるため、規則正しく、安心して就寝できる睡眠環境を整え、十分な睡眠時間を確保することを心がけてください」と続きます。前の節までの手立てが、そのまま夜中の出来事の減らし方になっている、という構造です。
これは、生活の工夫の話ではありません。こども家庭庁の5歳児健康診査マニュアルは、健診で「要紹介」とする例のひとつに「いびきや睡眠時の無呼吸を保護者が心配している場合」を挙げています。また、睡眠に問題がある場合の聞き取りとして「大きないびきをかいたり、呼吸が止まっていることはありますか?」「口蓋扁桃肥大やアレルギー性鼻炎はありませんか?」を挙げ、いずれか「はい」であれば診察所見とあわせて耳鼻咽喉科の受診を勧める、としています。
ご家庭で心当たりがあるなら、次の節の「相談してよい目安」を待たずに、かかりつけの小児科に伝えてください。
※ 「夜中に起きたとき、抱き上げるべきか、少し待つべきか」については、睡眠ガイドが米国の研究として「しばらく対応せずに様子をみる方がそのまま眠れることが増え、夜泣きが減ると報告されています」と紹介したうえで、「わが国では、赤ちゃんが泣くたびに抱き上げてあやすことが多いと思いますが……住宅事情で難しい場合もありますが、一呼吸おいてみてもよいでしょう」という、控えめな書き方をしています。どちらが正しいと断定した公的資料は確認できませんでした。
ここは、お子さんの話ではありません。いま検索している方自身の話です。
こども家庭庁の5歳児健康診査マニュアル(令和7年度改訂版)には、親(主な養育者)に関する設問として、次の問診項目が置かれています。
・保護者ご自身の睡眠で困っていることはありますか(問診票番号35)
マニュアルは、この設問についてこう書いています。「安定した子育てには、保護者が休養を確保することも重要です。保護者が自分の心身の健康にも気遣えるように、家庭環境などもあわせて聞き取りましょう。ゆとりのある子育ては児童虐待の防止につながります」
根拠=こども家庭庁「令和7年度改訂版 5歳児健康診査マニュアル」第1節(7)親(主な養育者)に関する設問
同じマニュアルは、健診で確認する「子育て状況」の項目として「育てにくさを感じることはあるか、きょうだいを含めた発達状況、家族の睡眠環境、喫煙者の有無などを確認します」とも書いています。家族全体の睡眠が、健診の確認事項として国の様式に入っているということです。
こども家庭庁の通知「乳幼児に対する健康診査について」(改正後全文)に載っている問診票を見ると、保護者自身への設問が並んでいます。
この並び方には意味があります。困っていることを言えば、次の設問が用意されているという設計です。健診の場で「実は自分が眠れていません」と言っても、想定外の発言にはなりません。
公的資料から取り出せる範囲で、大人の側の手当てを並べます。
※ 東京23区にも、大人の側の相談が受け皿として置かれています。たとえば江戸川区の「子どもの相談」のページは、育児ストレス相談の対象として「おちこんだ気分で眠れない。泣けてくる」を例に挙げ、専門医・相談員が個別相談を受けると案内しています。眠れないこと自体が、相談してよい理由として区のページに書かれているということです。
いつ相談していいのか。ここも、公的な線引きが一つだけあります。
・睡眠に関連する症状は、「睡眠環境、生活習慣、嗜好品」によるものと「睡眠障害」によるものがある。
・睡眠環境や生活習慣、嗜好品に起因する睡眠関連症状は、本ガイドの実践で改善する可能性がある。
・本ガイドを実践しても睡眠に関連する症状が続く場合、睡眠障害が潜んでいる可能性がある。
・睡眠障害が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診する。
根拠=厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」4(4)睡眠障害について
つまり、この記事に書いたようなことを一通り試しても続くなら、それが相談してよい目安です。それより前でも、いびきや呼吸が止まるように見えるとき、日中の眠気が強くて生活に響いているときは、待つ理由がありません。
なお、眠りに関わる薬をどう考えるかは、この記事で扱える範囲を超えています。使う・使わないの判断は、お子さんを実際に診た医師が行うものです。ここでは、相談先までをお伝えします。
| 相談先 | どういうときに、何を話せるか |
|---|---|
| かかりつけの小児科 | いちばん近い入口です。いびき・呼吸が止まるように見える・極端に朝起きられない・日中の強い眠気は、まずここへ。5歳児健診マニュアルは、いびきや無呼吸の心配について耳鼻咽喉科の受診を勧める場合があるとしています |
| 区市町村の保健センター・保健相談所 | 乳幼児健診を担当している窓口です。健診の間の時期でも、保健師に相談できます。「起床・就寝の時刻を書く欄」が国の問診票にあるので、そのまま話の入口になります |
| 発達相談(区市町村・発達センター等) | 眠りだけでなく、感覚の受け取り方、切り替えの難しさ、見通しの立たなさなど、背景ごと相談したいとき。江戸川区は発達相談の例に「夜泣きがひどい」を明記しています → 発達相談 |
| 児童精神科・小児神経科など | 医療につなぐ段階です。多くの場合、かかりつけ医や保健師からの紹介という形になります。予約に時間がかかることがあるので、迷った段階で一度聞いておくほうが早く進みます |
同じ「相談」でも、区によって名前も対象年齢も違います。2026年9月7日に各区の公式ページを開いて確認した内容です。
| 区 | ページに書かれている窓口 |
|---|---|
| 新宿区 | 育児相談=保健師・助産師・栄養士・歯科衛生士による個別育児相談と体重測定。対象は1歳の誕生日の月末までのお子さまと保護者。予約は不要。持ち物は母子健康手帳。会場は牛込・四谷・東新宿・落合の4保健センター。 すこやか子ども発達相談=小児発達専門医による個別相談。対象は0歳から小学校入学前。会場は牛込保健センター。予約制で、担当の保健センターの保健師に相談して申し込みます。 区は「質の良い睡眠について」というページも持っていて、睡眠ガイド2023のこども版の内容(小学生9〜12時間、中学・高校生8〜10時間)と、4保健センターの相談先を載せています |
| 江戸川区 | 健康サポートセンターの発達相談=相談してよいことの例として「夜泣きがひどい」がページに明記されています。ほかに「首のすわりが遅い」「ことばを話さない、増えない」「落ち着きがない」「強いこだわりがある」など。 育児ストレス相談=「おちこんだ気分で眠れない。泣けてくる」などについて、専門医・相談員が個別相談を受けます。申し込みは各健康サポートセンター。 同じページから、都が保健所・保健センターの閉庁時間帯に行っている電話相談にもつながっています |
| 練馬区 | 1歳児子育て相談(予約制)=「保健師が身長・体重の増え具合を確認。成長の様子や生活リズムなど1歳児の子育てについてお話しをしています」「生活リズムやお子さんとのかかわり方などご相談ください」と書かれています。対象は区内在住で、おおむね10か月から1歳4か月児。対象者に個別の案内はなく、自分で申し込みます。会場は豊玉・北・光が丘・石神井・大泉・関の各保健相談所。 生活リズムが相談内容として名指しで書かれている、数少ない例です |
※ 他の区にも同じ趣旨の窓口があります。名前は「保健センター」「保健相談所」「健康サポートセンター」「子ども家庭センター」などさまざまです。お住まいの区のサイトで「乳幼児 相談」「発達相談」で探すか、乳幼児健診の通知に載っている問い合わせ先に電話してください。→ 東京23区の窓口一覧
眠りは家の中の話に見えますが、昼の過ごし方でできている部分が大きいぶん、園や事業所と分け合える話です。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)は、本人支援の五領域のひとつ「健康・生活」のねらいに「生活習慣や生活リズムの形成」を挙げ、その支援内容にこう書いています。
<生活習慣や生活リズムの形成>
「睡眠、食事、排泄等の基本的な生活習慣を形成し、健康状態の維持・改善に必要な生活リズムを身につけられるよう支援する。」
<基本的生活スキルの獲得>
「こどもが食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすること等の生活に必要な基本的技能を獲得できるよう、生活の場面における環境の工夫を行いながら、こどもの状態に応じて適切な時期に適切な支援をする。」
根拠=こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)第3章 児童発達支援の提供すべき支援の具体的内容 2.(1)本人支援(ア)健康・生活
同じガイドラインは、支援の基本として「こどもの生活リズムを大切にし、健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境や、自己を十分に発揮できる環境を整えること。特に、3歳未満までのこどもの場合には、健康状態や生活習慣の形成に十分な配慮を行いながら、こどもの心身の発達に即して支援を行うこと」とも書いています。
つまり、事業所に「夜、眠れていません」と伝えることは、その事業所の支援内容そのものに入っている話を持ち込むことになります。個別支援計画に書き込める領域です。→ 個別支援計画
こども家庭庁の通知に載っている問診票には、1歳6か月児は24番、3歳児は20番に「朝起きる時間と、夜寝る時間を書いてください」(朝( )時頃起床/夜( )時頃就寝)という欄があります。生活習慣の欄です。ここに書くこと自体が、その場で睡眠の話を始める入口になります。
また、こども家庭庁「標準的な乳幼児期の健康診査と保健指導に関する手引き」は、3〜4か月児健診について「授乳・睡眠・排泄は、保健指導・支援のきっかけとなる」と書き、3歳児健診については「食習慣、歯磨き習慣、睡眠時間、排泄の自立、遊び等、健康的な基礎習慣が確立する時期である」としています。健診の側が、睡眠を入口として使うつもりでいるということです。
健診の判定は「1 異常なし/2 既医療/3 要経過観察/4 要紹介(要精密・要治療)」の四つで書かれ、そのほかに「子育て支援の必要性の判定」(1 特に問題なし/2 保健師による支援が必要/3 その他の支援が必要)という別の欄があります。眠れない・大人が疲れているという話は、こちらの欄でも受け取られます。→ 3歳児健診
※ 事業所や園に伝えるときは、一週間ぶんの記録が一枚あると早く進みます。カレンダーの端に「就寝◯時/起床◯時/夜中に起きた回数」を書き足すだけで十分です。うまくいった日を探すためではなく、いつ崩れやすいかを外側から見るためのものです。
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
「何時」を決めた公的資料は、確認できた範囲では見当たりません。厚生労働省の睡眠ガイド2023が書いているのは順番のほうで、小学生以降について「早起き習慣を保ったうえで、前述の推奨睡眠時間から逆算して、夜寝る時間を決めることをお勧めします」としています。
ですので、決める順番は「朝起きる時刻 → そこから必要な睡眠時間を引く → 寝る時刻」になります。乳幼児期についても、ガイドは「朝起きる時間を決め、カーテンを開けて部屋を明るくしましょう」と、起床の側から書いています。
睡眠ガイド2023のQ&Aは「4〜5歳以降は昼寝の必要性が低下し、昼寝をすることによりむしろ、夜の寝つきの悪さ、睡眠不足、朝の目覚めの悪さなどが悪化する可能性が報告されています。このため夜の寝つきが悪い幼児は、昼寝をしない選択肢が望ましい可能性があります」と書いています。5歳児健康診査マニュアルにも「昼寝が長いと就寝時刻も遅くなりがちです」とあります。
ただし、園に通っているお子さんの午睡は園の日課の一部です。家庭だけで決めずに、園に「夜の寝つきに困っている」と伝えたうえで、午睡の長さや時刻を相談してください。
責める話ではありません。まず、公的資料が書いている内容だけをお伝えします。こども家庭庁の5歳児健康診査マニュアルは「寝る直前まで動画を見ていると眼に光が入って、光によってメラトニンの分泌が抑制されます。その結果、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといったことが起きます」と説明しています。同じマニュアルは「生活スタイルに合わせて使い分けをしてよいのですが、寝る直前まで利用させるのは賛成できません」という書き方をしています。
つまり、見せること自体ではなく寝る直前かどうかが問題にされています。時間帯を前にずらすだけでも、資料の趣旨には沿います。
添い寝の可否を書いた公的資料は、確認できた範囲では見当たりませんでした。確認できないので、この記事では判断を書きません。
睡眠ガイド2023が乳児について書いているのは、寝具と寝かせ方のほうです。「赤ちゃんが自分で寝返りができるようになる1歳頃までは、柔らかすぎる寝具を避け、寝かせるときは仰向けに寝かせましょう」。乳幼児突然死症候群の発症予防の観点から挙げられている記述です。
時期を約束できる資料はありません。睡眠ガイド2023は「こどもの睡眠の不安定さや症状は、睡眠の成熟の過程で一時的に出現することが多く、年齢とともに自然に消失するケースがほとんどです」と書き、数字として「錯乱性覚醒の発生率は3〜13歳では17%ですが、15歳以上では3%程度です。睡眠時遊行症は8〜12歳がピークといわれています」を挙げています。
あわせて「睡眠時間が極度に不足したり、生活が不規則になると、睡眠症状が増える」とも書かれています。夜中の出来事を減らす手立ては、結局のところ日中と就寝前の整え方と同じ、という構造です。
睡眠ガイド2023は、小学生以降について「週末休日も普段と同じ時間に起床して、日光を浴びましょう」と書いています。厚生労働省のこども向けリーフレットにも「おやすみのひも、おなじじかんにおきましょう」とあります。
理由も書かれていて、休日に起床時刻を遅らせると「午前中の時間帯に日光を浴びることができず、睡眠・覚醒リズムは後退しやすくなります」とされています。とはいえ、大人が倒れてしまっては続きません。お子さんの起床時刻をそろえたうえで、大人が交代で休む形のほうが現実的です。
薬を使うかどうかは、お子さんを実際に診た医師が判断することです。この記事では扱えません。
お伝えできるのは、相談してよい目安のほうです。睡眠ガイド2023は「本ガイドを実践しても睡眠に関連する症状が続く場合、睡眠障害が潜んでいる可能性がある」「睡眠障害が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診する」と書いています。また、いびきや呼吸が止まるように見える場合は、5歳児健康診査マニュアルが健診での「要紹介」の例に挙げているほど明確なサインですので、待たずにかかりつけの小児科にお伝えください。
待つ必要はありません。区市町村の保健センター・保健相談所は、健診の日以外でも相談を受けています。たとえば新宿区の育児相談は1歳の誕生日の月末までのお子さまが対象で予約不要、江戸川区は発達相談の例に「夜泣きがひどい」を明記、練馬区の1歳児子育て相談は「生活リズムやお子さんとのかかわり方などご相談ください」と案内しています。
健診の場でも同じ話はできます。国の問診票には起床・就寝時刻を書く欄があり、判定とは別に「子育て支援の必要性の判定」という欄が置かれています。今日相談しても、健診の日に相談しても、どちらでも受け取られる形になっています。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。